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グッドワイフ(日本ドラマ)の見逃し動画まとめ

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<見逃し動画>最終回(第10話) 「最後の審判」
 
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最終回(第10話)の公式あらすじ

壮一郎(唐沢寿明)の指揮により、神山多田法律事務所に現れた脇坂(吉田鋼太郎)は、多田(小泉孝太郎)を贈賄容疑で逮捕する。
壮一郎の私情が絡んでいるのではないかと、神山(賀来千香子)に指摘される杏子(常盤貴子)だが、多田は、過去に担当した案件の判決から、小宮裁判官(野間口徹)との関係を怪しまれていたのだ。
負ければ、神山多田法律事務所が潰れてしまいかねないと、神山と杏子を中心に、事務所一丸となり、検察を相手に裁判で戦うことに。一方で、朝飛(北村匠海)は不穏な動きを見せる。
 
そんな中、いよいよ多田の裁判が始まる。
しかし、多田にとって不利な証拠が次々と出てくるばかり。さらに検察側はさらなる隠し玉を控えていて…。さらに、杏子との関係が悪いままの円香(水原希子)は、脇坂と会っていた。そして、思わぬ行動をとってしまう…。
 
次々と追い込まれていく中で、どん底だった自分を救ってくれた多田を信じ、杏子は多田のピンチを救うことができるのか?
 
そして、亀裂が入った壮一郎との夫婦関係はどうなるのか?
 
妻として、女性として、杏子がする決断は…?
 
<出典>グッドワイフ(日本ドラマ)公式

最終回(第10話)のネタバレはここをクリック
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最終回(第10話)の感想はここをクリック
視聴後、公開いたします

<見逃し動画>第9話 「堕ちた正義」
 
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第9話の公式あらすじ

壮一郎(唐沢寿明)の一連の事件を計画した “裏切り者” の正体がついにわかった。その “裏切り者” は、壮一郎に衝撃の理由を語る。
そんな中、法律事務所では、円香(水原希子)のある秘密が波紋を呼び、円香は事務所を辞めることを決意していた。また、杏子(常盤貴子)と朝飛(北村匠海)の本採用を懸ける争いも、ついに決着がつく。果たしてどちらが採用されるのか !?
 
一方、一連の事件が解決した壮一郎だったが、あることがきっかけで多田(小泉孝太郎)からの留守電を消したことが杏子にばれてしまう。そのことで言い合いになり、夫婦の間に亀裂が…。
さらに、壮一郎は、多田に関して何か仕掛けようと画策していた。
そんなある日、多田の想いを改めて聞いた杏子は多田と二人きりになり、急接近する…
 
<出典>グッドワイフ(日本ドラマ)公式

第9話のネタバレはここをクリック
前回、蓮見たちは内閣官房副長官である南原の汚職についての証拠文書を遠山亜紀から受け取る約束をするところまでたどり着きました。しかし、遠山亜紀は駅の階段から落ちて意識不明の重体になってしまったのです。
 
また振り出しに戻ったと思いきや、多田が証拠文書を事務局長から手に入れることができました。しかし、佐々木は多田の手に入れた証拠文書の信用性を疑います。その指摘を受け入れ、壮一郎は文書を破棄するように佐々木に言ったのです。
 
しかし、壮一郎は真の裏切り者に罠を仕掛けていました。蓮見夫妻は、裏切り者を確かめに向かいます。
 
 
踏み外した道の先
「俺たちも確かめに行こう。裏切り者が誰なのか」
 
そういう壮一郎とともに蓮見は立体駐車場に来ていました。そこにいたのは、壮一郎の腹心の部下である佐々木だったのです。
 
「お前が罠を仕掛けようとしていたのか」
「どうしたんですか。蓮見さん」
 
蓮見はカバンから南原の証拠の文書を取り出しました。
それを見て佐々木は目を見開きます。
 
「お前に破棄しろといったのはコピーだ。あの日、多田先生から連絡があって、俺が多田先生に頼んだんだ。文書のオリジナルは保管して、コピーを持ってきてくれるように。お前を試すために」
 
佐々木は、南原の証拠文書を握りつぶすため、多田の持ってきた証拠文書の信用性を疑わせるような発言をしたのです。そうして証拠文書を手に入れ、南原に渡していました。
 
「まさか疑われていたとは。さすが蓮見さんだ」
「初めに俺たちの捜査情報を南原に漏らしたのもお前か?」
「少し歩きませんか?」
 
「先に帰っててくれ」と蓮見に言うと壮一郎も佐々木の後を追います。佐々木は、壮一郎と二人きりになると事の顛末を語りだします。
 
「教えて下さい。どうして私を疑ったんですか?」
「お前との電話だよ」
 
遠山亜紀が南原に買収された事実は皆が共有した情報でしたが、佐々木は蓮見との電話で買収された際の金額を8000万とはっきり言っていたのです。
 
「確かに遠山亜紀が南原に買収された話は聞いた。しかし、8000万という金額は知らないはずだ」
 
佐々木は、最初から事件に関わっており、遠山亜紀に取引を持ちかけてお金を渡したのも彼だったのです。
 
「なぜだ。お前が検事として立派に働いていたことを知っている。それなのにどうして、罪を犯した南原を守ろうとした?」
「大義のためなら、手段を選ばずやり通せ。そう教えてくれたのは蓮見さんですよ。ここ10年、検察はどんどん弱くなっています。うちに有利な司法改革をしている南原は検察にとって必要な政治家なんです。南原を失えば、蓮見さんと私が目指してきた強い検察はまた10年遅れます。私は検察の、ひいては日本の未来のために正しい決断を下しただけです」
 
そう主張する佐々木の胸ぐらを壮一郎は掴みました。
 
「国のために不正を見逃すのが正しいと思うなら、お前はもう検事じゃない。正義のためにどんな手を使ってでも粘り強く、真に強い検察魂を持つのが検事だ」
 
佐々木は目に涙を浮かべています。
 
「蓮見さんなら、そういうと思っていました。だから、黙ってやったんです」
 
壮一郎の手から力が抜けました。
 
「俺はお前にだけは何でも話してきた。お前となら、正義で戦えると思っていたよ。なあ、佐々木。そう思っていたのは俺だけだったのか?」
 
佐々木の目からは涙がこぼれます。
 
「あなたのことは尊敬していました。好きでしたよ。ただ、道が違っただけです。蓮見さん、見せてください。あなたが作る強い検察を」
 
そして、彼は立体駐車場から飛び降りたのでした。
 
 
帰宅した壮一郎を蓮見は玄関で迎えます。
 
「佐々木が死んだよーー」
「え!?」
 
蓮見は言葉を失いました。
 
翌日、テレビでは内閣官房副長官の南原次郎がインサイダー取引の疑いで緊急逮捕されたことを報じるニュースが流れていました。佐々木との関係性についても報じられ、彼が自殺したこともアナウンスされました。
 
「大丈夫?」
「佐々木に言われたよ。飛び降りる直前に俺が作る強い検察を見せてくれって」
「本当に佐々木さんが一人でやったことなの?」
「そうらしい。でも、御手洗さん辺りは佐々木のしていることに気づいていたはずだ。南原を守るために見て見ぬ振りをしていたんだ」
「御手洗さん?」
「政治が上手い人間だよ。今回の件でもきっと上手く責任を逃れる」
 
その頃、検事正の御手洗直人は、今回の南原の事件に佐々木が関与していたことで脇坂を呼び出し、彼に管理責任について追及していました。
 
「君が不正の隠蔽に協力していたなんて思っていないよ。しかし、佐々木の一件は検察の威信を揺るがす大問題だし、彼が勝手にやったこととはいえ、君の管理責任は確実に問われるよ」
 
 
その日、弁護士事務所では蓮見夫妻にかかっていた嫌疑がすべて晴れたことを神山に報告していました。神山のオフィスには多田も同席しています。
 
「これで蓮見さんの起訴は取り消されますね」と神山は喜びます。
 
「お世話になりました」
「今後、検察に復職なさるんですよね?」
「そのつもりです。今日、話をしていきます」
 
そして、壮一郎は多田の前に立ちました。
 
「多田先生にも感謝をしています」
「いえ」
「それでは、そろそろ失礼します」
 
そうして、夫妻は弁護士事務所を出ました。蓮見は夫に今夜子どもたちに今までの真実を伝えることにすると伝えました。しかし、壮一郎はその前に話したいことがあるから家に帰る前に時間をくれないかとお願いするのです。
 
「今じゃだめなの? 気になるんだけど」
「悪いが他で話したい」
「じゃあ、終わったら連絡する」
「ありがとう」
 
そうして二人は別れたのでした。そのとき、受付の凛子が蓮見を呼びに来ました。なんと事務所に脇坂が来ているのです。彼が伝えに来たことは、壮一郎の起訴が取り消しになったこととある事実でした。
 
「円香みちるというパラリーガルご存知ですよね?」
「ええ」
「彼女3年前にうちをやめたのは、蓮見くんと不適切な関係があったからなんです。円香くんは元のご主人について蓮見くんに相談に乗ってもらっていたようなんです」
「まさか、そんなことはありえませんよ」
 
否定する蓮見ですが、脇坂は二人が会っている決定的瞬間を捉えた写真を取り出しました。それは円香の元夫が興信所で調べさせたものでした。その不貞は3年前のもので、円香はそれをネタに元夫にお金を脅し取られ続けたのです。
 
「結局のところ、そういう人間なんですな。蓮見という男は」
 
自宅マンションに帰宅した蓮見は、夫の物をすべてダンボールに詰め、荷造りしました。そして、それが終わった頃に壮一郎は帰ってきます。
 
「どうした。連絡をくれるんじゃなかったのか?」
「私に話したかったのってこれ?」
 
彼女は脇坂の出した不貞の証拠の写真の資料を壮一郎に見せました。
 
「これも濡れ衣? 違うよね?」
「ああ、違う。彼女はーー」
「いい、何も聞きたくない。円香さんが事務所にいるって気づいたから話そうと思ったんでしょ。今までずっと隠してたんだから。この数ヶ月、あなたのことを信じられるかってそればっかり考えてた。でも、そんなの何の意味もなかったんだね。3年も前にあなたは家族を裏切ってたんだから」
「すまない」
「もう謝らなくていい。あなたに使うエネルギーなんて何も残ってないんだから。子どもたちにどう話せばいいか考えるだけで精一杯。30分後に宅配の車が荷物を取りに来る。子どもたちが帰る前に出ていって」
 
 
得たものと失ったもの
その後、壮一郎は検事正に就任しました。子どもたちは壮一郎が家に帰ってこないことを心配します。しかし、蓮見は「」と子どもたちに告げたのでした。何も知らない綾香は、父の疑いが晴れて喜び、家族四人の写真を改めて飾り直すのです。
 
壮一郎は、検事正になり、御手洗直人に南原不正を見つけたことを感謝されていました。
 
「佐々木のことは災難だったな。南原もやっと観念して自白を始めているよ。君のおかげで不正を暴くことができた。改めて検事正への就任おめでとう」
「御手洗さんも次長検事へのご就任おめでとうございます」
「この部屋の歴史を汚さないようにしっかり務めてくれよ」
「悪しき習慣まで継承しないように精進します」
「心配をかけたご家族のためにもがんばんなさい」
 
翌日、蓮見は区役所から離婚届をとってきました。事務所に着くと朝飛から今日、採用について答えが出されると教えられます。
 
「おはようございます。蓮見先生、いよいよ今日、決まるらしいです。僕と蓮見先生の勝負。どっちが採用されるか。偉そうですけど、良いライバルでした。蓮見先生が相手で良かったです」
「こっちこそ本気で競争してくれてありがとう」
 
そして、最初に呼び出されたのは朝飛でした。
神山のオフィスから戻った朝飛は蓮見に頭を下げます。
 
「おめでとうございます。蓮見先生の勝ちですよ」
 
そういった朝飛は、早足で事務所を後にしようとします。その後を追って、多田は朝飛に声をかけますが、彼は激高しました。
 
「おい、朝飛。待てって」
「今日でもう仕事辞めますから」
「話聞けって」
「蓮見先生を選んだのは、ご主人が検事正になったからですよね」
「そうじゃない」
「それ以外に理由はないでしょう。ご主人が検事正に返り咲いたときはやばいと思いました。だから、大きな案件を3つ同時にこなして勝ったんです。売上は僕のほうが上です。でも、事務所が必要としたのは実力ではなく、検事正の妻というステータスだったんですね」
「違う。確かに売上はお前のほうが少し勝ってる。ただ弁護士としての対応力や人間力は蓮見先生のほうが上だ。今うちに必要なのは、ただ優秀なだけじゃなく、替えのきかない弁護士なんだ。だけどな、お前だって必ずそうなる。ちゃんと話そう。今日の夜ーー」
「よかったですね。また蓮見先生と一緒に入られて」
 
そうして、朝飛はエレベーターの中へと去っていきました。
多田のオフィスに呼び出された蓮見は、離婚について多田に伝えます。
 
「夫のことが採用の理由なんですか?」
「違う。朝飛先生がそう勘違いしただけ」
「夫とは離婚しようと思っているんです。まだ子どもに話せてないのでそれからになりますけど」
「そう。でも、採用はあなたの実力。期待に応えてね」
 
離婚についてのことを神山は多田に告げます。
 
「あてが外れた」
「え?」
「離婚するかもしれないって蓮見先生。疑いが晴れたのに別れるってことは、何かあったね。検事正の妻だから採用したのに」
「それは違うでしょう」
「あたしは二人は五分五分だと思っていた。だから、検事正の妻というオプションがあるほうを選んだの」
「それ! 蓮見先生にそういったんですか?」
「言うわけないでしょう。わざわざモチベーション下げてどうするの。まあ、もう少し様子を見るけどね。朝飛先生は?」
「今日付で辞めるそうです」
 
 
夜、帰宅する直前に円香は蓮見に声をかけます。
 
「脇坂さんからお聞きになったんですね」
「子どもが待ってますので」
「二度と話しかけません。最後に聞いていただけませんか?」
 
二人は事務所の屋上へと行きました。
 
「好きになったのは私の方です。元の夫との仲裁をしていただいたのがきっかけでした。離婚しないと警察沙汰にするとご主人が言ってくださってやっと夫が承知したんです。ずっと夫をDVから立ち直らせられるのは私しかいないと思っていました。それだけが私の存在意義だって。でも、ご主人に言われました。依存しているのは私の方だって。ご主人が呪縛をといてくれたんです。あの頃は自分の思いしか見えていなくて。最後は、私が押し切る形で一度だけそうなりました。元の夫に知られて、ゆすられたので貯金を渡して検察を辞めて、ご主人にも黙って消えました。一年後にまた元の夫が現れて、また逃げて、今の事務所に入ったんです」
「そこに偶然私が入った」
「はい」
「わかりました」
 
蓮見が勝手に帰ろうとする後ろ姿に円香は続けます。
 
「最初にご主人のことを悪く言ったのは、遠山亜紀とも浮気をしていたと思ったからです。検察を辞めた自分が馬鹿に思えて、あなたのこともおめでたい奥さんだと思っていました。でも、一緒に働いて、あなたを知って後悔しました」
「私、蓮見のことで人間関係を全部失って、ここに来て何が嬉しかったってーーあなたっていう、あなたっていう友だちができたことだと思っていました。でも、あなたにとっては罪悪感だったんですね」
「それは違います。私に本当の友だちはいません。でも、あなたと出会って人生はもしかしたらもっと楽しいものなのかもしれないと思いました」
「後悔していることは信じます。でも、過去は変えられない。そういったのはあなたです。私には仕事が必要でどんな状況でも事務所を辞めることはできません。これからも仕事上では今まで通りよろしくお願いします」
「わかりました。申し訳ありませんでした」
 
そうして二人は別れました。蓮見はたくさんの涙を流しながら、円香の後ろ姿を見ました。彼女の脳裏には今まで彼女と過ごしてきた時間が過ります。そして、屋上で一人崩れ落ちたのでした
 
円香は、屋上を降りる階段で立ち止まり、涙を流します。彼女は前に蓮見が言ってくれた「今、円香さんと出会えて幸せです」という言葉を思い出していました。その足で円香は多田のオフィスに行き、退職を願い出ました。
 
 
始まる新たな戦い
その日の夜から蓮見壮一郎は、東京地検で特捜チームを立ち上げ、自らも捜査に参加し、東京地検で行った今までの事件の見直しを始めました。そして、彼はあることを見つけるのです。
 
翌日、蓮見は事務所で多田に呼び出されました。
 
「いや、円香さんがさ、うちを辞めるって言ってるんだよ。うちの不満とか、他所へ行くとか言ってた?」
「さあ、別に」
「なんか知ってんの? 辞める理由とか」
「ううん、知らないけど」
「そう。悪かったな。仕事中」
「ううん」
 
仕事に戻ろうとする彼女の後ろ姿に多田は声をかけて引き止めます。
 
「あのさ、元気?」
「神山先生に聞いた? 離婚のこと」
「まあ。あ、これは純粋な心配だから。別にあわよくばとか思ってないから」
「なに、あわよくばって」
「いや、さすがにはっきりフラれたんだからさ」
「ちょっと待ってフラれたってなに?」
「ちょ、そうくる? そうか、なかったことにする系?」
「じゃなくてフラれたってなに?」
「だって、あの日来なかったでしょ」
「そんな電話しらない」
「は!?」
「かけ間違えたんじゃない?」
「違うよ。蓮見にかけたんだよ。留守電にも残した」
「なかったよ。聞いてない」
「じゃあ、誰かが消した?」
 
 
蓮見は、夫をカフェに呼び出して離婚届を渡します。そして、留守電について問い詰めることに。
 
「話って?」
「子どもたちへの話が済んだら出すからサインして。円香さんとのことは言わない。この数ヶ月で食い違った気持ちが戻らなかったって説明する」
「悪かったと思ってる。本当に」
「サインしたらうちに送って」
「君の言う通り、彼女とのことは墓場まで持ってくつもりだった。でも、大事なのは君と子どもたちなんだ。3年間、家族を失うと思ったらどうしてもーー」
「勝手なことばかり言わないでよ。好き勝手やっても、あとでキレイな本音を勝ったって謝れば許されるとでも思ってるの?」
「許されるとはーー」
「多田くんの留守電を消したのもあなた?」
 
壮一郎は黙りました。
 
「どうして? これも隠し通そうと思ってたの? もうあなたのことが本当に全然わからない」
「多田ならわかるのか?」
「そういう話をしてるんじゃないでしょ」
「弱ってるところにつけこんで人の妻に告白するような男だぞ。それは許されるのか?」
「あなたに多田くんのことをどうこう言う資格なんてない。あなたが逮捕された後、私を助けてくれたのは多田くんなの。弁護士に復帰できたのも、励ましてくれたのも多田くん。子どもたちと多田くんがいなかったら私もうとっくにだめになってた」
「多田は君が思ってるような人間じゃない」
「あなたもね」
 
蓮見との話が終わり、東京地検に戻ると壮一郎は脇坂を呼び出しました。
 
「華々しく返り咲いた検事正が、今さら私になんの予定ですか? 家庭を壊されたと恨み言でもいうつもりですか?」
「私がいま捜査内容の見直しをしていることをご存知ですよね? 実はその過程で思わぬものが出てきたんです。ある弁護士が不正をしている疑いがあります」
「弁護士が?」
「裁判で不自然な勝ち方をしていることに気づいたんです」
「特定の裁判官のときは勝率が高い。調べたら、二人には個人的な付き合いがあるとわかったんです。その弁護士と裁判官は癒着している可能性があります」
「で、それが私になんの関係があるんでしょうか?」
「異動の内示が出たそうですね。協力してくださるなら、ここに残れるように手配します。あなたにも悪い話ではないでしょう。このままではあなたの検事としての人生は終わりです。あなたも返り咲きたいなら、これが最後のチャンスですよ」
「で、弁護士の名前は?」
 
壮一郎が手渡した封筒の中には多田の資料が入っていました。
 
「なるほど」
「多田を調べてください。徹底的に」
 
彼からの申し出に脇坂は笑いが止まりませんでした。そして、朝飛に声をかけて多田の裁判のやり方などを調べ始めたのです。朝飛は円香を呼び出しました。
 
「突然呼び出してすみません」
「どうしたんですか?」
「検察が多田先生のことを調べてるみたいです。多田先生の仕事の仕方について色々聞かれました」
「仕事の仕方?」
「多田先生が結構グレーな手を使って弁護してるのを見たことがあります。僕は検察に協力することにしました。巻き込まれないように気をつけてください」
 
その夜、事務所で蓮見は帰宅前に多田に留守電のことを聞かれました。
 
「お疲れ様。先に帰るね」
「やっぱりご主人だった? 留守電消したの」
「うん。ごめんね。なんなんだろうね」
「気持ちはわかるよ。僕も握りつぶそうとしたからね。南原の不正の証拠を。思い直したけどね。ご主人の疑いが晴れて、蓮見と元通りになるのが嫌だった。昔さ、蓮見が結婚してショックだったけど、再会してわかった。俺は君を忘れられない」
 
そして、多田は彼女にキスをしようとします。蓮見は彼からのキスを避けて逃げ出しました。しかし、彼女の脳裏には弁護士に復帰しようと復職活動を始めた際に多田が声をかけてくれたときのことが浮かんでいました。
 
 
後日、弁護士事務所には脇坂率いる東京地検の捜査が突然やってきました。
 
「多田征大さん、贈賄容疑で逮捕状が出ています」と脇坂は彼に逮捕状を突きつけます。そうして、多田は東京地検へと連れて行かれてしまったのです。
第9話の感想はここをクリック
とうとう蓮見壮一郎のすべての嫌疑が晴れましたが、信頼していた友・仲間を失った事実はとても大きく、視聴していて大変心が痛かったです。このドラマで唯一美しかった蓮見と円香の友情が失われたことは大きなショックでした。
 
次回、それぞれ失ったものがありつつ、蓮見と壮一郎は戦うことになるようです。行き着いた先に何があるのか。夫婦はどうなってしまうのか気になります。
<見逃し動画>第8話 「裏切り者」
 
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第8話の公式あらすじ

杏子(常盤貴子)は壮一郎(唐沢寿明)のスキャンダル相手である遠山亜紀(相武紗季)に会いに行くが、亜紀は何も話そうとしない。
そしてついに、壮一郎の裁判が始まる。検察側は賄賂の証拠を揃え、さらに証人にトミオカ精工の社長も呼び、すべて壮一郎の指示だったと証言させる。検察側の絶対的有利な状況で裁判が進んで行く中、壮一郎は事件の “本当の情報提供者” を見つけることが、事件解決に繋がると杏子たちに説明する。
一方で、脇坂(吉田鋼太郎)が円香(水原希子)に接触。脇坂は木内(丸山智己)と円香に関して何かを掴んでおり、円香を利用しようと画策しているが…。
 
そんな折り、多田が蓮見家を訪ね、壮一郎に、このままでは杏子は壮一郎の裁判に負け、朝飛(北村匠海)との正式採用争いにも破れると言い、ある衝撃的な宣言をする。
 
杏子は亜紀を調べていく過程で、新聞社時代の上司・上森(松尾貴史)から亜紀の隠された過去を聞き出す。そして、再び亜紀の元へ…
 
絶体絶命の状況の中、次第にわかってくる真実――
 
そして、壮一郎たちはついに “本当の情報提供者” にたどり着く… その正体は !?
 
<出典>グッドワイフ(日本ドラマ)公式

第8話のネタバレはここをクリック
前回、蓮見杏子は事務所の仕事をこなしつつ、夫の弁護もすることにしました。有名IT企業ケンズランド社長の剣持の案件は、朝飛と多田の活躍で無事に顧問弁護契約を得ることができました。
 
一方、夫の壮一郎は、内閣官房副長官である南原の汚職に関する証拠文書がなければ、自身の裁判には勝てないほどに追い込まれています。そして、情報提供者からの連絡があり、接触するだけとなったときに情報提供者は検察側に捕まってしまったのです。
 
そこで、蓮見は夫と不倫スキャンダルの疑いがある遠山亜紀さんが事件の証拠を握っている可能性にかけて彼女に会いに行きました。
 
 
苦しい心
蓮見は、毎朝新聞を辞めて工場に勤務する遠山亜紀に必死に食いつき、話を聞こうとしました。しかし、遠山は不倫スキャンダルになった話を持ち出し、蓮見の質問には答えずに工場の作業を続けます。
 
「あなたが追っていたのは経済特区に関係する事件なんじゃないですか? たとえば、政治家の不正とか」
「違います」
「記事を出せそうだってことは、何か証拠を掴んでいたんじゃないんですか」
「勝手な想像ならいくらでもどうぞ」
「誰かに口止めでもされているんじゃないですか」
 
遠山はまったく取り合ってはくれませんでした。蓮見は、その足で裁判の準備のために事務所へと戻ります。夫の裁判はもうすぐそこに迫っていました。
 
そうして、夫・蓮見壮一郎の第一回公判が始まったのです。
 
「トミオカ精工に対する捜査を中断し、謝礼の主旨であることを知りながら、金500万円、及び、真珠つきブローチ、時価60万円相当一点の提供を受け、自己の職務に関し、請託を受けて賄賂を収受したものである。罪名および罰条、加重収賄罪、刑法第197条の3、第一項」
「今、検察官が読み上げた内容に何か誤りはありますか?」
 
「すべて否認します」と壮一郎。
 
「弁護人は?」
「被告人と同様です。無罪を主張します」
 
蓮見は弁論を始めます。トミオカ精工の音声データの「そうだな。一つもらおうか」に関しては会合で壮一郎がオードブルを勧められた際の会話を録音合成されていると指摘し、壮一郎の口座への賄賂の振り込み後にすぐに告発したのは明らかに仕組まれて行われたからではないかと問いました。
 
しかし、どれも検察側から異議を唱えられてしまいます。蓮見の弁論は、どれも証拠に対して弱いものでした。
 
公判後、二人は事務所で今後について話していました。
 
「自白がない分、検察は証拠をガッチリ固めてる。予想通り、裁判はまともに戦っても勝ち目はないね」
「そうだな」
「とにかく、明日、遠山亜紀さんのほうにもう一度あたってみる」
 
そんな中、壮一郎の裁判がどうなっているのか多田は気になっていました。
 
「神山先生。どうでした? 裁判」
「気になるなら見に行けば?」
「難しそうですか?」
「このままではいずれ有罪判決が出るね。ともかく、今回で決めるから。蓮見先生と朝飛先生どちらを採用するか」
 
蓮見と壮一郎が事務所から出ようとしているところで円香と朝飛に会いました。朝飛は、円香に護身術をかけられて壁に押さえつけられています。
 
「何しているんですか?」と蓮見は声をかけました。壮一郎と円香は互いを見て、少し目を見開きます。
 
「護身術です。別れた夫がDVだったので」
「え!? 夫とは前に同じ職場だったんだよね」
 
その話に朝飛は驚きます。円香は蓮見に説明しました。
 
「上司でした。夫のDVで仕事に支障が出るようになったので、蓮見さんに相談して依願退職したんです。でも、やっぱり辞めなきゃならなくなったのが悔しくて、ずっと蓮見さんを逆恨みしていました。失礼します」
 
 
蓮見は帰り道、夫に円香の退職理由について尋ねました。
 
「円香さんって本当にあんな理由で検察辞めたの? 前にあなたに首にされたって言ってたけど、逆恨みするような人には思えないし」
 
蓮見が口を開こうとしたとき、蓮見は止めました。
 
「ああ、やっぱりいい。こういうことは本人に聞く。謎だらけだけど、気持ちに嘘がなくて優秀で、今の私には唯一本音を話せる人なの」
 
円香は、蓮見にとって夫の事件が起きてからできた唯一本音を話せる友人なのです。
 
その頃、神山多田法律事務所の入口に円香の元夫が訪ねてきていました。円香は彼に待ち伏せされていたのです。
 
「良い事務所だな。知ってるのか? ここの事務所の人間は。 検察事務官時代のお前が何をして検察辞めたのか」
 
立ちふさがる夫から円香は「どいて」と去ろうとしますが、元夫に腕を掴まれてしまいます。
 
「みちる。50でいいよ。仕事が上手く行かなくて困ってんだよ」
 
そのとき、朝飛がたまたま居合わせます。彼は間に入り、円香を助けようと試みました。しかし、円香の元夫に突き飛ばされてしまいます。
 
「バラされたくないだろ」と元夫は彼女に告げ去っていきました。立ち上がった朝飛は彼女に駆け寄ります。
 
「怪我はないですね?」
「今のって、もしかして」
「私のことはもう詮索しないでください」
「本当だったんですね。DVのご主人って」
 
 
守りたいもの
その夜、朝飛と多田は、フットサルクラブに来ていました。同じくフットサルクラブに参加している裁判官の小宮竹生は、いつになく攻撃的なプレイをする多田に言います。
 
「なんだよ。今日はずいぶん荒れてるな」
「そうですか?」
「法定の恨みをここで晴らすなよ」
 
それを聞いた朝飛は、多田の気持ちに共感しました。
 
「わかりますよ。多田先生の気持ち」
「はあ?」
「辛いですよねえ。好きな相手がご主人の弁護なんて」
 
「勝手に人の気持ちを決めるな」と多田は彼にタオルを投げました。
 
「わかりますよ。僕も同じなんで。僕、空手始めます」
「誰を倒したいんだよ」
「なんか全然頼りにしてくれないっていうか。ま、ていうか全然頼りにならないっていうか」
「お前泣いてんの?」
「泣いてません。悔しいんです。僕、泣いたことありません。人生で」
 
二人は帰るために立ち上がりました。
 
「どれ行くぞ。まあ、何もできないのは悔しいよな」
「ん? もしかして、蓮見先生に告白しました? そんで、フラレて荒れてんだー」
 
朝飛の辛みに彼も対抗します。
 
「お前の話してんだよー! 悔しいよなー何もできないのは」
 
 
翌日、蓮見は遠山亜紀の元上司である毎朝新聞の上森孝明にもう一度会いに行っていました。彼女は上森との会話で遠山に離婚歴があることを知ります。その後、円香に電話をかけました。
 
「遠山亜紀さんの追加調査ですか?」
「離婚歴あるらしいの。そっちの面で何か出ないか急ぎで調べてもらえますか? 事情も話してなくて申し訳ないんですけど」
「事情は必要ありません。わかりました」
「お願いします。いつもありがとうございます」
「大至急調べます」
 
その夜も壮一郎のために裁判の準備をがんばる蓮見ですが、検察側の証拠に対して対抗する手段は見つかっておらず、状況は難航するばかりでした。
 
翌朝、朝早くから蓮見家には多田がやってきていました。彼は壮一郎の裁判の状況が悪いことを蓮見の状況を見て知っていたので、壮一郎の裁判の弁護を手伝いたいと申し出たのです。
 
「お気持ちはありがたいですが、必要ありません」と壮一郎は断ります。
 
「この裁判に負ければ、彼女はクビになります」
「クビ?」
「もう一人の新人と採用を競っています。裁判に負ければ、その勝負にも負けたことになる」
 
蓮見は彼を止めようとしますが、多田は話を止めませんでした。
 
「これ以上、彼女をあなたの犠牲にするつもりですか? 今の彼女より私のほうが経験があります。勝ちたいなら、私を利用してください」
 
その日、多田と蓮見と壮一郎は事務所に集まって打ち合わせを始めました。今後の裁判のために作戦を決めなければなりません。
 
「こんなもの。どうやって不正を暴くつもりだったんですか。結局、この情報提供者とも会えなかったんですよね?」
「無理だと思うなら降りてもらって結構ですよ」
「私が言っているのは、よくこんな案件を彼女一人にさせていたなと」
 
蓮見は口を挟みます。
 
「言い合いをしている暇はないの。私が決めてやっていることなんだから」
 
「ちょっと調べてみました。発想を変えてみませんか?」と多田は説明します。
 
「発想?」
「うん。なんでイーデンスだったんでしょうか」
「南原が手に入れた裏金の実態はわかっているんですか?」
「南原の銀行回りは全部調べたが、不正なお金の流れは出てこなかった」
 
経済区への候補には当時、5社があがっていました。しかし、南原はその中からイーデンスを選んだのです。そして、その5社の中でイーデンスだけが上場していませんでした。
 
「経済特区に内定される前の発表では上場していて、株は自由に売買できる状態になっていた」
「南原は事前に未公開株を入手していて、上場が内定したという発表で株価が上がったところで売って儲けたってこと? それってインサーダー取引でしょう。すぐにバレるよ」
 
蓮見の意見で壮一郎は思いつきます。
 
「いや、イーデンスの株を直接持っていなければバレる可能性は低くなる」
「そこです。イーデンスの上場でイーデンスの株主企業の資産価値も急上昇する。その株主企業の株を買っておく。これもインサイダー取引だけど、バレる可能性はぐっと下がる」
「当たってみる価値はあるな」
「名義を変えている可能性があります。南原につながる会社がないかあたってみます」
 
 
その頃、円香はいつものように検事の塚地から情報をもらっていましたが、その様子を脇坂の部下である吉村に見られてしまいました。吉村はそれを脇坂に伝えてしまうのです。
 
円香が塚地から手に入れた遠山亜紀の娘についての情報が蓮見の手に入りました。彼女は遠山亜紀の元夫の家を訪れます。遠山には心臓病の幼い娘がいたのです。そうして、蓮見は再度、遠山亜紀に接触しました。
 
「娘さんに会ってきました。アメリカで心臓移植の手術を受けたそうですね」
「いいかげんにしてください」
「その手術のためにあなたが数千万のお金を用意したとご主人から聞きました」
「だからなんですか。人のそんなことまで」
「そのお金が口止め料だったんですか? 政治家の不正の証拠の。時期もちょうど一致します」
「勝手な想像にもほどがありますよ」
 
そういって去ろうとする遠山の背中に蓮見は投げかけます。
 
「じゃあ、マスコミに公表します。疑惑のレベルでも面白ければ記事にしてくれるところもありますから」
「やめてよ! 娘を巻き込むんですか」
「それが嫌だったら、今ここで事実を話して娘さんを守ってください」
 
遠山の娘は、母のことを知りません。しかし、心臓病の手術のために寄付してくれた女性のことは知っているのです。鞄の中から遠山の娘から渡された手紙を取り出し、蓮見は彼女に手渡しました。それでも遠山は手紙を開きません。
 
「読まないんですか?」
「そんな資格ないから」
「大事なのはあなたじゃなくて、娘さんの気持ちです」
 
手紙を開くと遠山は娘の手紙の「すき」という文を見て涙しました。
 
「私にも子どもがいます。父親のことでもうずっと傷ついて苦しんでいます。子どもたちのこれからの人生のために親が何をしたのか。何が起こったのか。真実を調べて教えてあげなきゃいけないんです」
 
娘の手紙を閉じると遠山は話し出しました。
 
「お金は確かにある政治家から受け取りました」
「それは南原さんですか?」
「そうだと思います。でも、口止め料ではありません。あることをする見返りです」
「あること?」
「社会的信用を落とすためにご主人と関係しろと言われました。ハニートラップです。南原の個人秘書に取引を持ちかけられたんです。ご主人をはめれば、娘の手術代を出してくれるって。ご主人とは取材で二人になることもありました。だから、私が目をつけられたんだと思います。ご主人の保釈中にインタビューを受けたのもその秘書の指示です。でも、ご主人と私の間にはなにもありません」
「え?」
「ご主人がそういう誘いに乗ってこないのはわかっていました。取材を口実に呼び出して、薬を使ってそういうことがあったとご主人に思い込ませたんです。私は娘より仕事を選んで離婚しました。私は娘を自分の野心の犠牲にしたんです。だから、せめてーー」
「じゃあ、あなたは取引をしただけだったんですね。南原の不正の証拠を掴んだんでいたわけじゃなくて」
「南原たちはそう思っていると思います」
「え!?」
「当時、私が経済特区の取材をしていたのは本当です。そのとき、南原の汚職についてある人から情報提供されました。記事にするって約束したんですけど、裏取りに時間がかかってしまって。東京地検に情報提供すると言われてしまいました」
「その人に会ったなら、文書をもらっていませんか?」
「あります。南原に言わずに保管してあります」
 
 
すれ違う思い
蓮見はあるホテルの一室で壮一郎と佐々木、多田の四人で落ち合いました。遠山が持っているという南原の汚職の証拠文書について報告します。
 
「あなたが受け取る約束だった証拠の文書。それと同じものを遠山亜紀さんが受け取っていたの。明日、受け取る約束をしました」
 
「どういう文書なんですか?」と佐々木。
 
「経済特区についての決裁文書だそうです。表に出ているものはすでに改ざんされています。でも、改ざんされる前の文書には南原の不正の証拠となる記録があるそうです」
 
決済文書を改ざんしたのは、内閣府の特命推進事務局長である宮前文昭だろうと壮一郎は言います。南原が彼に圧力をかけ、改ざんを指示させたのです。
 
多田はイーデンスの株についての情報を掴んでいました。イーデンスの上場を事前に知っている南原は、その前に株を購入して5億円も儲けていたのです。この情報で南原のインサイダー取引を明らかにすることができます。
 
「それが南原が手にした裏金の証拠か。あとは遠山亜紀の証拠の文書だな。株を買った3月17日より前に上場予定を知っていたと書いてあれば南原の不正を暴ける」
「その遠山亜紀さんとあなたのことだけどーーあなたと遠山さんの間にはないもなかったの」
 
 
先程の打ち合わせの帰り道。壮一郎と蓮見は、スキャンダルの真相を知って改めて話をします。
 
「すまなかった」
「あなたは被害者でしょ」
「俺の脇が甘かったせいだ。子どもたちには裁判も含め、全部終わってから話したい。それでいいかな?」
「うん。晩ごはんは作り置きがあるから子どもたちと食べて」
「君は?」
「私は円香さんと書類の受け渡しがあるからついでに一緒に食べる」
「わかったーー気をつけて」
 
 
円香とレストランで食事をする蓮見は、壮一郎のスキャンダルがハニートラップだったことを伝えます。
 
「何もなかったんですか?」
「どう思えばいいか、わからなかった。ここまで来るのにいろいろありすぎて。何もなかったから今まで通りとかそう簡単にはいかないね。夫も嬉しそうな顔もしないし」
「すぐには無理ですよ。お互い見せたくない顔も見せあってきましたし」
「そうですね」
 
二人はワインで乾杯しました。
 
「たった一年前は全然違う生活をしていたな。毎日小さな悩みを抱えて料理して掃除して」
「その頃会ってみたかったーー」
「その頃会っていたらこんなふうになっていなかったかもしれませんよ」
 
蓮見の言葉に彼女は微笑みますが、脳裏には元夫の「知ってんのか? お前が何をして検察を辞めたのか」という言葉がよぎっているのです。そして、「私は今、円香さんに出会えて幸せです」と言う蓮見の顔を見て、円香は薄っすらと目に涙をためるのでした。
 
 
その後、円香は元夫に50万を渡すために駅で待っていました。
しかし、来たのは脇坂です。
 
「安心しなさい。元ご主人は来ないよ。うちの戸梶くんから親しくしてると聞いてね。元ご主人から暴力ふるわれて金までせびられてるそうじゃない。俺が元ご主人と直接あって追っ払っておいた」と脇坂は言います。
 
「でも、ご主人から気になることを聞いてね。これは知られたらマズいんじゃないか。今の事務所に。もちろん、俺は言うつもりはない君が俺の頼みを聞いてくれたらな」
 
 
翌朝、蓮見は遠山が来るのを待っていました。しかし、彼女はまだ現れません。
そのとき、朝飛から電話が入ります。
 
「ちょっと後でかけなおすね。遠山亜紀さんと待ち合わせしてて」
「蓮見先生大変ですよ。その遠山亜紀が駅の階段から落ちて意識不明の重体だってネットでニュースになってますよ」
 
蓮見は壮一郎にも連絡しました。
 
「ああ、いま確認した」
「こんなときに事故?!」
「もしくは、誰かに突き落とされたか」
 
状況を知った壮一郎は、激怒し、自宅で資料を投げ飛ばしました。そして、彼は南原に会いに行ったのです。南原は、少年野球を見に来ていました。
 
「誤算でしたね。遠山亜紀が死ななかったこと」
「この子は良いバッティングをするんですよ」
「もし彼女が目を覚まして突き落とした犯人が捕まったら、あなたは終わりますよ。その犯人の口も今から塞いでおきますか?」
 
南原は立ち上がって野球の試合状況を見ます。
 
「ストライクか。この審判は低めが広いんだな」
「一度ストライクにしたら、間違ったと思ってもそのコースはストライクにせざる終えない。あなたも同じことを続けるつもりですか? この辺で試合を中止したらどうです」
「私に疑いがあったら、正式に捜査してもらえませんか? もっとも今の貴方を検察が相手にするとは思えませんがね。勝っている試合を中止にする人間がいますか?」 
 
 
夜、多田はフットサル仲間の小宮裁判官に特命推進事務局の知り合いがいないかと尋ねていました。
 
「小宮裁判長」
「特命推進事務局?」
「知り合いがいたら紹介していただきたいんです」
 
翌日、多田は内閣府の特命推進事務局長である宮前文昭に接触していました。
 
「事務局長、弁護士の多田と言います」
「すいませんが、改めて約束をとってもらえせんか?」
「遠山亜紀をご存知ですよね? ある政治家の汚職疑惑の取材をしてーー」
 
「急いでるんで」とタクシーを拾おうとする事務局長を多田は止めます。
 
「あなたの息子さん。帝都大学に通っているんですよね? そこの学長さんとはゴルフ仲間だそうで。知り合いを通じて調べたらあなたのきな臭い噂が出てきました」
 
多田は彼のスキャンダルに関する情報を元に取引を持ちかけます。その情報と南原の汚職の証拠と交換しようという取引です。しかし、彼は逃げようとしました。多田は彼の背中に叫びました。
 
「南原はいざとなったらあなたを切る。文書の改ざんを命じたのはあなただ。事件が発覚すれば誰が責任を取らされるかわかるだろう! 今なら内部告発で済む」
 
そうして、多田はとうとう南原の汚職の証拠となる文書を手に入れたのです。しかし、それで壮一郎の事件が解決した場合、蓮見と壮一郎の仲は元に戻ってしまいます。 
 
事務所に戻ると多田は蓮見から事務局長について確認されたました。
 
「どうだった? 事務局長は」
「駄目だった。口を割らなかったよ」
 
一晩考えた彼は、蓮見たちに文書を渡そうと考え直します。
彼は蓮見と壮一郎と落ち合いました。
 
「特命推進事務局長から証拠の文書を手に入れました」
「え、でも昨日はだめだったって」
「あれからもう一度行って説得したんだよ」
 
多田は改ざん前の議事録と改ざん後の議事録を2つ出しました。
 
「文書の中に経済特区の候補に残った5社を呼んで、それぞれ面談をした議事録があります。改ざん前の議事録にはこのとき、すでにイーデンスが上場のための審査入りをしていて、すでに上場は決まっているとアピールしたことが書かれています。この会合を堺に南原がイーデンスを強く押すようになった。会合の3日後、南原はイーデンスの株主企業の株を買っています。つまり、南原は株を買う前にイーデンスの上場予定を知っていたことになる」
「南原はインサイダー取引を目的にイーデンスの経済特区への内定を決めた。この改ざん前の証拠はその不正の証拠になる」
 
壮一郎と多田は握手をすると別れました。
佐々木は遠くから様子を見ています。そして、電話で蓮見夫妻に忠告します。
 
「本物ですかね? それ」
「え?」
「どうも腑に落ちません。まだ遠山亜紀の意識が戻ったわけでもないのに、そんな簡単に本物の文書を渡しますか?」
「事務局長が多田先生に偽物の文書を渡したってことですか?」
「事務局長は南原サイドの人間ですから。罠の可能性もあります。もしくは、事務局長から本物を受け取った多田先生が中身を改ざんしてもってきたか。失礼ですが、多田先生は奥様に特別な感情をお持ちですよね。蓮見さんの無実が証明されて、奥様との仲が修復するのを妨害したいと考えてもおかしくありません」
「そんなことを考える人ではないですよ」
「偽物の文書で南原を告発すれば、今度こそ蓮見さんは終わります。絶対に信用できる証拠でなければ使えません」
 
それを聞いた壮一郎は思案すると「わかった。この証拠は見送ろう」と言います。
 
「ちょっと待って」
「昨日一旦は駄目だと行ったんだろう。確かに今になって持ってくるのは不自然だ。他の手段を考える。これは破棄していてくれ」
「わかりました」
 
そして、壮一郎は多田からもらった文書をすれ違いざまに佐々木に渡すのでした。壮一郎は歩きながら妻に言います。
 
「俺達も確かめに行こう」
「え、なに?」
「本当の裏切り者が誰なのか」
 
蓮見夫妻はそのままある場所に立ち寄りました。そこにはとある人物がいたのです。
第8話の感想はここをクリック
皆の境遇が揺れ動いた今回の話は、たくさんの真実が明らかになりました。壮一郎のスキャンダルも収賄容疑も冤罪であるとわかったのにも関わらず、夫妻があまり喜んでいないのは少し不思議でした。
 
そして、多田が証拠の文書を一度、蓮見たちに渡さなかった場面は心が痛かったです。今後、多田がどのような行動に出るのか楽しみにしています。
<見逃し動画>第7話 「消された真実」
 
TVerでの無料配信は終了しました
 
第7話の公式あらすじ

杏子(常盤貴子)への多田(小泉孝太郎)の告白を聞いてしまった夫・壮一郎(唐沢寿明)は、怒りに満ちていた。しかし、多田の告白自体を知らない杏子は、壮一郎の弁護人として、事件の全容を聞くことになる。
1年前、特捜部長時代の壮一郎のもとに、大物政治家・南原(三遊亭円楽)の汚職のタレコミが入った。佐々木(滝藤賢一)と共に極秘捜査をし、匿名の情報提供者から汚職を証明する決定的な “ある文書” をもらう約束を取り付けたが、その直前に逮捕されてしまっていた。南原の汚職を暴くためには、1年前の匿名の情報提供者を見つける必要があるのだが…。
 
一方、神山多田法律事務所には、カリスマ IT 社長・剣持(浜野謙太)から大きな案件が持ち込まれ、多田、杏子、朝飛(北村匠海)の3名で担当することに。剣持は SNS を駆使し、自らが広告塔となり若くして成功を収めている人物。最近、彼がモデルと思われる主人公の映画が無断で公開されたうえ、剣持を誹謗したかのような内容だった。自分のイメージも、さらには企業イメージまで下がったと憤慨し抗議するが、映画会社は一貫して剣持をモデルにしたことを否定。剣持は名誉毀損で映画会社を訴えることにしたのだ。
のらりくらりとかわす映画プロデューサー(田中要次)らを相手に杏子たちは裁判に臨むが、思うようにいかず窮地に追い込まれる。
 
そんなとき、杏子と打ち合わせで事務所に来ていた壮一郎と多田が鉢合わせる…!
 
<出典>グッドワイフ(日本ドラマ)公式

第7話のネタバレはここをクリック
前回、神山多田弁護士事務所で3年もの間、無料で相談を受けてきた海老塚建設との集団訴訟に蓮見杏子たらは勝利しました。
 
そんな中、蓮見家では夫の壮一郎が保釈されたことで夫婦の話し合いが始まったのです。しかし、何も話さない壮一郎のせいで夫婦仲は悪化し、林弁護士にも見限られてしまいました。
 
蓮見は家族のために夫の弁護をすると決意します。そんな蓮見夫妻の記者会見を見た多田は、とうとう彼女に告白しました。
 
 
伝わらない思い
蓮見夫妻の記者会見後、多田征大は蓮見へ電話をかけました。留守電に彼女への告白のメッセージを残します。
 
「もうごまかすのはやめる。この先ずっと自分の気持ちに嘘をついて生きていくのはもう嫌だ。ずっと好きだった。司法修習の頃からずっと。
 
一度ちゃんと話したい。今日の夜7時に事務所の屋上で待ってる。その気がなかったら来なくていい。俺も忘れるから」
 
しかし、彼女は記者会見が終わったばかりで携帯から離れていました。着信に気付き、留守電を聞いたのは夫の壮一郎だったのです。
 
そのまま、壮一郎は多田からの留守電を履歴から削除してしまいました。
 
 
記者会見が終了し、蓮見と壮一郎はカフェで佐々木達也と落ち合っていました。二人は彼に壮一郎の弁護を妻である蓮見杏子がすることを伝えます。
 
「申し訳ありませんが、奥様が弁護をなさることは私には賛成しかねます。奥様が巻き込まれますよ」
「それだけ大変な相手だってことですよね」
 
壮一郎は相手の名前をとうとう言いました。
 
「南原次郎。現職の内閣官房副長官だ。ある情報提供者からタレコミがあった」
 
壮一郎と佐々木は事件の一連の流れを妻へ説明します。
 
「南原がイーデンスというIT企業から莫大な裏金をもらって経済特区への内定を決めたという情報が入った」
 
詳細を佐々木が説明しました。
 
「南原が自分の汚職を隠すためにトミオカ精工を使って蓮見さんに収賄の罪を着せた。我々はそう見ています」
「そもそも、なんで二人だけで捜査をしていたの?」
 
蓮見は夫を問いただしました。
 
「確実な証拠がなければ上に握りつぶされるからだ」
「情報提供者の身元はわからないのよね」
「ああ、最後に来た連絡で南原の不正の証拠となる文書を持っているといっていた」
「文書」
「その受け渡しの直前に逮捕された」
「じゃあ、不正を暴くにはこの情報提供者と接触してその文書を手に入れるしかないのね」
「いまのところ、ほかに手段はない」
 
その夜、自宅マンションには壮一郎の母がやってきていました。彼女は蓮見が壮一郎の弁護を決めたことにとても感謝しますが、蓮見は信じると決めたわけではないと伝えます。
 
その日の間、壮一郎はずっと時計を気にしていました。なぜなら、その夜に多田が弁護士事務所の屋上で蓮見のことを待っていると知っているからです。蓮見はそれを知る由もなく、夜は過ぎ去っていきました。
 
 
翌日の朝、神山のオフィスで今後、夫の弁護を行うことを蓮見は報告していました。
 
「ご主人の裁判、有力な反論や証拠なんて本当に見つかるの? 公判まであと2週間もないでしょう」
「すいません。ご迷惑にならないようにします。夫を無罪にできれば事務所のPRにもなりますし」
「あなたがそこまでいうからOKはしたけどね。検察は威信をかけてご主人を有罪にしようとする。担当弁護士のあなたも目の敵にされる。浮気した夫をかばる妻には世間だって同情しない。あなたの採用には不利なことばかり。またご主人に人生を狂わされて、バカバカしくない?」
 
そこへ多田が入っていきました。
 
「あとにしますか」
「いいの。待ってた入って」
 
神山は去ろうとする多田を止めました。
 
「とにかく、引き受けたからには勝ってもらわないと困る。事務所の仕事もちゃんとこなして」
 
蓮見は「はい」とうなずきました。
 
「例の案件、蓮見先生をサブにつけて」
「いえ、朝飛先生つけてますから」
「だめ、大事なクライアントでしょう。三人でやって」
 
神山のオフィスを出たあと、蓮見は彼から新しい案件の資料を渡されます。彼の態度はどこかよそよそしいものであると蓮見は気づきました。去っていく多田の嘘ろ姿を彼女は見つめるのでした。
 
「蓮見先生! 多田先生の案件一緒にやるんですよね。緊張しますよねえ」
 
朝飛は興奮気味に彼女へ声をかけます。
 
「緊張?! 朝飛先生が珍しい」
「だって依頼人はあの剣持宏光ですよ。超有名IT企業ケンズランドのカリスマ社長ですよ」
「そうなの!?」
 
蓮見は案件の資料を見ました。
 
「僕、前のめりになっちゃうなあ」
 
 
多田と蓮見と朝飛の三人は、依頼人の剣持宏光が住む古民家を訪れました。
土間と囲炉裏、まさに昔ながらの佇まいが広がる家に三人は驚きます。
 
「こんにちは。神山多田法律事務所の者です」
「ああ、どうもどうも。剣持です。お待ちしておりました」
 
隙かさず、朝飛は自分をアピールします。
 
「お会いできて光栄です。僕、SNSとか全部フォローしています」
 
そんな朝飛を多田は退けました。
 
「こちら、剣持さんのご自宅なんですね」
「田舎育ちなんでね。こういうのが落ち着くんですよ」
 
剣持宏光が訴えたいのは、映画の製作会社です。剣持のことを勝手にモデルにして製作された映画「成り金」には、彼の古民家での私生活がすべてパフォーマンスだけの嘘であるということや成金のような悪いイメージの誹謗中傷が含まれていたのです。
 
「うちはアパレルやインテリアの通販サイトもやっていて、僕のライフスタイルが商品のイメージに繋がっているんです。それなのにこの映画のせいで「#一番ダサい剣持が優勝」というハッシュタグができてSNSは大炎上ですよ。株価も下がって一千億円の損失が出ました」
 
損失額に三人は驚きの表情を浮かべました。
剣持の主張は続きます。
 
「映画の制作会社にいって抗議しましたけど、平行線でした。なので、名誉毀損で訴えることにしました。賠償金の請求はしません。その代わり、上映の中止とうちの動画サイトで謝罪の動画を流させてもらいます。着手金はもちろん払います。それから、裁判で勝ってもらえれば、うちの顧問弁護士をお宅に変えます。ぜひ、期待に答えてください」
 
 
事務所に戻った三人は、神山と円香も交えて会議を行います。
 
「剣持宏光か代表をつとめるケンズランドは、通販サイトのほかにも幅広い事業を展開していて、前年度の年商は950億です」
 
円香の説明に神山は笑顔です。
 
「最高ね」
「顧問弁護士になるのはでかいですよ」
 
そんな二人に多田は言います。
 
「さっそく映画の制作会社から連絡があって会ってきました。プロデューサーは全否定ですね」
 
多田が会ってきた映画「成り金」のプロデューサー・制作会社社長の二見芳郎は、「いえいえ、剣持さんがモデルだなんてとんでもない。テーマがね。転落からの成功なんで設定上、偶然似てしまったところは多少あるかもしれませんけど、映画を見てもらえれば完全に別人だとはおわかりいただけると思うんで」と剣持側の訴えをすべて否定したのでした。
 
「実績の少ない小規模の映像制作会社です。この映画の前までは経営状況もよくありませんでした」と円香は制作会社についての資料を皆に配ります。
 
「映画をヒットさせるために剣持さんの知名度を利用した可能性もありますよね」
「あの映画が剣持さんをモデルにしたことを証明できれば、俺たちの勝ちだな」
 
そこで神山は宣言しました。
 
「顧問弁護の契約とれたら、ボーナス出すよ!」
 
 
蓮見たちは、映画と剣持の類似点や情報を古民家の剣持の姿、SNSでの関係者の発言、関係者への聞き込みといったさまざまな方向性から探していきます。
 
 
伝わる悪意
そんな中、仕事の合間に蓮見は壮一郎の弁護の件も行わなければなりません。佐々木とともに彼女は、東京地検に出向きました。
 
「あれから、情報提供者からの連絡はありましたか?」
「いや、まだです」
「奥さん。蓮見さんがあまり無茶をしないように見ていてもらえませんか?」
「え?」
「私の言うことなんて聞いてくれませんから。また南原に直接会いに行かれたりしたら危なくてしょうがない」
「わかりました」
「中に事務官もいますから、くれぐれもこちらの関係を悟られないようにしてください」
 
ある一室にはいるとそこには脇坂特捜部長と以前、法定で戦ったことのある吉村祐介検事が待っていました。
 
「どうされたんですか?」
 
佐々木が問うと、脇坂は話し出しました。
 
「今日はご紹介をと思いまして。覚えてらっしゃいますか? 以前、あなたにこてんぱんにやられた吉村です。今度、特捜に異動になったんで佐々木と一緒にやらせようと思いましてね」
 
吉村は蓮見につっかかります。
 
「裁判所に公判期日の変更を申請されたそうですね。意見を聞かれたんでその必要はないと答えておきましたよ」
「公判まで半月しかないんですよ。弁護を変わったばかりで準備期間が足りません」
「それはそちらの都合でしょう」
 
「いずれにせよ。それは裁判所が決めることですから」と脇坂。
 
「裁判所に手を回すつもりですね」
「いやいや、我々にそんな力はありませんよ。検察を何だと思っているんですか?」
 
蓮見が帰ったあと、佐々木は吉村を牽制しました。
 
「これは私が進めてきた案件ですから、私のやり方でやります。勝手な真似は遠慮してください」
「そう言われたと脇坂部長に報告しておくよ」
 
 
帰宅後、蓮見は壮一郎と佐々木について話をします。
 
「脇坂さんは佐々木さんを疑ってるの?」
「たぶんな」
「じゃあ、なんで担当を外さないんだろう」
「こっちの動きを知るためにわざと泳がせてるのか、脇坂に何か魂胆があるんだろうな」
 
蓮見はコーヒーカップをとりあげ、キッチンへと向かいます。
 
「佐々木さんが心配していた。あなたが無茶をするって」
「俺の最終的な目的は無罪になることでなくて、南原の不正を暴くことだから。そのためにはリスクをとってでも動くしかない」
「情報提供者から連絡がなかったらどうするの? その文書を受け取れなかったら、もう証拠はないのよね」
「連絡は来るよ。手は打ってある」
「手?」
 
会話の間に蓮見の携帯が鳴りました。電話の相手は多田でした。
 
「もしもし、多田くん?」
「悪いけど、今日まとめてくれたファイルできてたら目メールで送ってくれないかな?」
「わかった。そっちまだやってるんだね。私も行くね」
「いや、もういいよ。終わるから。うん、よろしく」
 
 
そして、剣持の公判の日。
蓮見たちは剣持の私生活と映画の類似点を剱持の尋問を元に明らかにしていきますが、映画のプロデューサーである二見芳郎の尋問では、のらりくらりと言い訳をするばかりです。
 
「いやあ、すべて偶然ですね。古民家に関しては、企画を考えているときに旅行に行きましてね。そこで閃いたんです。剣持さんをモデルにしたわけではありません」
 
朝飛は証拠について映像をあげます。そこには映画の中で主人公が会議の前に逆立ちをするという習慣を披露していました。
 
「この演出意図はなんでしょうか?」
「そうすれば、頭がすっきりして会議に挑めるということにして主人公の性格にオリジナリティを加えたんです」
 
次に朝飛は剣持の習慣としてドキュメンタリー番組で紹介された会議の前に逆立ちをする彼の映像を証拠として提示しました。
 
「剣持さんは大事な会議の前に頭をすっきりさせるために5分間逆立ちをしますが、これはまったく同じですね。偶然なんでしょうか」
「ええ、剣持さんもそうなんですか? これ僕の癖なんですよ。会議の前に逆立ち。これはまったく偶然だなあ」
 
次に、脚本家の田所正二を蓮見が証人尋問しました。
 
「改めてお伺いしますが、あなたはこの映画の脚本を書くにあたって、剣持さんをモデルにしてくれと依頼を受けませんでしたか?」
「いいえ、オリジナルだと言われました」
「脚本を書く前に剣持さんの友人に会って、剣持さん自身についての取材をしていますよね? 剣持さんをモデルにするためではなんですか?」
「IT社長の友人がどんな人間なのかを取材をしたんです。インターネットという自体の見えない世界で金に狂っていく主人公を友人がどう思い、どう見つめていくのか、その心のひだを描くことでーー」
 
 
公判後、事務所には依頼人の剣持と蓮見ら3人が集まっていました。
映画製作側は、この裁判ごと話題にして炎上商法で映画の宣伝に利用するつもりでいることを剣持に説明します。
 
「相手にしないほうが賢いってことですね」
「こちらも徹底的に戦いますよ。長引くほど映画に客が入ってしまう可能性がありますが、確認をと思いまして」
「うちの実家って農家なんですよ。汗流して実直に野菜作っている人たちでなかなか僕の仕事を認めてもらえなかったんですけど、時間をかけて説明して、最近やっと理解してもらえるようになってたんです。
 
それがこの一本の映画で台無しです。うちの母親が泣きながら電話かけてきました。映像の力ってのは強いですよ。意図をもって流された映像や動画は人の心を壊す凶器にもなるんです」
 
剣持の言葉で夫と関係を持った遠山亜紀のインタビュー映像と、記者に囲まれる娘の光景を蓮見は思い出します。
 
その頃、家にいる壮一郎のもとに情報提供者から連絡が入っていました。
蓮見、壮一郎、佐々木の三人は弁護士事務所の屋上で落ち合います。
 
「情報提供者から連絡があった。明日、証拠の文書を渡してくれるそうだ」
「本当ですか」
「これで南原の不正が暴ける」
「思ったより早く記者会見の成果が出ましたね」
 
佐々木の一言で蓮見の顔色は変わりました。
 
「記者会見の成果?」
「俺がまだ諦めていないことを公の場で伝えたかった」
「でも、あの記者会見は子どもたちのために開くって言ってたよね」
「もちろん、その目的もあった」
「目的もってーー」
 
夫婦の口論が激しくなるにつれて、居づらくなった佐々木はその場をあとにしました。
 
「では、私はこれで。また明日、ご連絡します」
 
「また家族を利用したの? 脇坂さんを失脚させるために私を利用したみたいに」
「違うよ。事前に説明しなかったのは悪かった。隠してたわけじゃなくて、重要事項は極力漏らさないのが癖になってるんだ。職業病みたいなもんだ」
「わかるけど、全て話してもらうためにあなたの弁護人になったのに、これじゃ信用できないじゃない」
「昨夜話そうと思ったら君に電話が入ってーー多田という男から」
「え、何? 仕事の電話だよ」
「いや、どうだかな。向こうは君に気があるんじゃないのか」
「何いってんの。あなたが逮捕されてから私がどんな気持ちで過ごしてきたのか全然わかってないんだね。もっと前からだってーー」
「なんだ?」
「もういい」
「もっと前からなに?」
「言いたくない」
「ふ、君は言わないからな。俺には本音は」
「え?」
「君は完璧主義で良妻賢母でいつも正しいよ。俺に弱音も吐いたことない」
「そんなふうに思ってたの? だからあなたもあたしには本当の姿は見せなかったの? あの彼女だけには見せて」
「あのインタビューは嘘だ!」
 
二人は涙目で見つめあいました。
 
「仕事に戻る」
 
 
壮一郎と別れたあと、蓮見は仕事のために会議室に戻っていました。そこへ夕飯を持って円香も戻ってきます。
 
「顔が怖いですよ」
「ええ、本当」
「なんかあったんですか?」
「なんかどんどん嫌な女になっていくなあと思ってーー夫が逮捕されるその前から16年間、家族のために自分を犠牲にしてきたって言いそうになった。好きだった仕事をやめて、子どもを育てて、転勤についていって家を守ってきたのにあなたに壊されたって」
「言えばよかったんじゃなかったんじゃないですか。多田先生のことだって選択肢に入れていいんですよ。惹かれてるなら、家庭とか子どもとか忘れて飛び込んでいくとか」
「そんなの私じゃない」
「あなたですよ。あなたがなりたいと思う自分のあなた」
「じゃあ、本音を言います。多田くんのこと。昔は、本当に弟にしか見えなかったんですよ。でも、再開したらいろいろ違って見えるようになった。もし、若いときにそれに気づいてたら多田くんとの人生もあったのかもしれない。円香さんは? なりたい自分になれてる?」
「いいえ、大嫌いです。続きはないですよ」
「ないのか」
 
ふと、円香はつぶやきます。
 
「遠山亜紀さんはなんで嘘をついたんですかね」
「うん?」
「ご主人の言う通り、彼女がインタビューで嘘をついていたのなら、何か理由があったのはずですよね」
「一つの可能性は、嘘をついているのは夫」
「もしくは彼女が片思いをしていて、一度は思いを遂げたものの、家族を大切にするご主人を見て、悔しくなって嘘をついた」
「遠山亜紀さんに会おうと思ったことはないんですか?」
「ええ、そんなの嫌ですよ」
「修羅場を避けていたら、真実はわかりませんよ」
 
 
消失
翌日、蓮見は毎朝新聞にいました。しかし、件の遠山亜紀はすで毎朝新聞を辞めていて不在だったのです。スキャンダルのインタビューのあと、すぐに辞めたのだと遠山の元上司は言いました。
 
「辞めた!? あの、どういう方でしたか? 遠山さんは」
「そりゃもう記者としては優秀で、熱心でしたよ。だから、悔しいんですよ。ご主人との記事が出る前まで、大きな事件の独自取材を続けていてね。もうすぐ記事にできるって張り切っていたのに」
 
その頃、事務所では剣持の案件について、多田と朝飛が映画の中で使用されているTシャツなどのグッズに目をつけていました。
 
「グッズもかなり売れているらしいですよ」
「グッズ?!」
「映画の中で主人公が来ている変な服を映画のサイトが通信販売しているらしいです。プロデューサーの思うツボですよ」
「おい、これじゃん! 狙いが間違ってたんだよ」
 
蓮見が事務所に戻ったあと、多田は皆にグッズの件を説明します。
 
「プロダクトプレイスメント」
「そ、映画やドラマの中で企業名や商品を出して広告すること。この映画は、このやり方でスポンサーを募って、金を集めてる」
 
円香はスクリーンを使って商品を提示します。
 
「映画の中では23個、実在の商品が使われています」
「問題は、有名な役者も出ていないマイナーな映画になぜそんなにスポンサーが付いたのか」
「剣持さんという有名IT社長の映画だからヒット間違いなしと説明された」
「そう証言してもらえれば、故意に剣持さんをモデルにして映画を作ったことが立証できる」
「あとは、どうやって証言させるかですね」
「証言して映画が中止になればスポンサーも困りますからね」
「これをしくじったらもう突破口なからな。慎重にやらないと」
 
そこで突然、蓮見は受付から呼び出されます。
彼女を訪問したのは、夫の壮一郎でした。
 
「悪いな。仕事中に」
 
「どうしたの?」
 
そこへ神山も入っていきました。
 
「失礼します! 神山と申します。お会いできて光栄です」
「妻がお世話になっております。では、失礼します」
 
「どうしたの? 情報提供者と会うのは18時でしょ」
「検察が俺に尾行をつけてる」
「え!?」
「今もこの事務所の前で待ってる。尾行を巻きたい。協力してくれないか?」
 
夫につく尾行を巻くために、蓮見は囮になることになったのです。
事務所を少し出ることを彼女は多田に説明しました。荷物を取りに蓮見はデスクへと戻っていきます。
 
多田と壮一郎の二人は、緊迫した空気でした。
その場を去ろうとする壮一郎を多田は呼び止めます。
 
「失礼」
「ご存知ですか? 彼女はあなたの弁護を引き受けて、事務所で不利な立場に立たされている。彼女は言わないでしょうね。あなたには。僕にはあなたが彼女を幸せにできるとは思えない」
「そうかもしれませんね。でも、あなたに関係ありますか? 余計なことは考えず、ご自分の職務を全うしたらどうです? 苦戦しているんでしょう。今担当している案件」
 
壮一郎からの言葉で彼の表情は変わりました。その足で多田は円香にあることを調べさせたのでした。
 
 
蓮見と壮一郎は、二人でタクシーに乗ると後ろについてくる検事の車を巻くために信号を黄色のギリギリでタクシーを渡らせました。あとから検事たちが追いついた頃には、壮一郎だけがタクシーを降りて行方をくらませることに成功したのです。
 
 
一方、多田と朝飛は映画に登場するTシャツのショップを訪ねて、証言を得ようと交渉しに行っていました。
 
「お、これは映画の主人公が着てるTシャツですよね」と朝飛はショップのオーナーに話しかけました。
 
「はい。映画用のオリジナル商品です。売れてますよ」
 
「なになに映画って?」と多田。
 
「知らないんですか? ケンズランドの剣持さんがモデルの映画ですよ」
「そうですよ。面白いんで見てくださいよ」
「いやあ、いい映画に広告出しましたよ。剣持さんがモデルであの内容だったら絶対ヒットしますから」
「じゃあ、剣持さんがモデルだからスポンサーになったってことですか?」
「そりゃそうですよ。じゃなかったら、こんなマイナーな映画に金は出せませんよ」
 
その言葉を聞いて多田は動きました。
 
「今の話、裁判で証言してもらえませんか? 剣持さんの代理人をしています。剣持さんがモデルだからスポンサーになったってことは予め制作会社に説明されたってことですよね? それを裁判で証言してほしいんです」
「いや、無理無理。裁判で負けたら映画は中止でしょう」
「剣持さんは許可なくモデルにされてデタラメを流されて大きな精神的苦痛を受けています」
「それはうちに関係ないからね。あの、お客さんじゃないなら帰ってもらえます?」
 
そこで多田は強硬手段に出ました。
 
「こちらのお店、2年前に脱税しようとして売上をごまかした。それによってかなりの追徴金を払っていますよね? しかも、その後、違う名義で会社を作っている。その会社、国税庁に調べてもらったら何が出てくるでしょうね?」
「ちょっとあなたーー」
「証言してもらえますよね?」
 
 
夜、尾行を巻いた壮一郎は、ある公園の一角で南原の汚職に関する情報の提供者を待っていました。遠くから歩いてくる人影を彼は注意深く見つめ、待っていました。しかし、その人影はたくさんの人に囲まれ止められてしまいます。
 
遠くから聞こえてくるのは、尋問するような会話でした。
 
「すみません。ちょっといいですか? ここで何をしているんですか?」
「別に何も帰宅中です」
「ここから先は行き止まりなんですけどね。どこへ帰宅中ですか? 何か身分を証明できるものは?」
「ちょっとご同行願いますか」
 
悔しそうに顔を歪めた壮一郎はとっさに去ろうときびすを返すとそこには検事の吉村が立っていました。
 
「蓮見さんじゃないですか。夜のお散歩ですか? 気をつけてくださいよ。不審者が多いんで」
 
自宅に戻って、壮一郎は佐々木に報告の電話をします。
 
「申し訳ありません。吉村の動きを把握しきれませんでした」
「情報提供者は?」
「名前も何も喋りません」
 
脇坂に取り調べをされる情報提供者は、身分を証明できるようなものを身に着けていませんでした。
 
しかし、脇坂の「保釈中の被告人と接触し、その上になんらかの機密を漏らそうとしていたら機密漏洩罪にも問える事案なんですがね。しかし、それは私の本意ではない。今回に限り、今なら何もなかったことにできますが」という申し出に負けてしまうのです。
 
そうして情報提供者の持つ南原の汚職の証拠文書は、脇坂の手によって南原の手に渡ってしまったのでした。
 
 
事態が悪化したことで、壮一郎は蓮見に弱音をこぼしました。
 
「これで証拠の文書は南原の手に渡ったな。検察が本気になれば個人など簡単に潰せる。組織の後ろ盾を失った検事なんか無力なもんだ」
「初めて聞いたあなたの弱音。私も正直に言うと、遠山亜紀さんに会いに行ったの。どういう人か知りたくて。もう会社を辞めてて。上司の人が悔しがってた。彼女はとても優秀な記者で、あなたとのことがあるまで大きな事件のことを追っていて、もう少しで記事にできたのにって」
「大きな事件!? 記事にできるって?」
 
壮一郎は、蓮見のいう記事について何か引っかかります。
 
「え? 何?」
「いや、あの頃、遠山亜紀に聞かれたことがあった。ネタのためにしょっちゅうそういう質問をされていたから、そのときは聞き流してた。でも、もしかしたら彼女も南原の事件を追ってたのかもしれない。彼女に会ってみる」
「無理でしょ。また検察に尾行されるよ」
「記事にできるって言ってたってことは、何か証拠を掴んでいた可能性があるかもしれない」
「私が会うから。本当に証拠があるなら、遠山亜紀さんに確認する」
 
 
事務所では、多田と朝飛の活躍のおかげで剣持の案件に勝利し、無事に顧問弁護士の座も獲得。映画のプロデューサーである二見芳郎にSNS上へ剣持に向けた謝罪動画をあげさせることができたのでした。
 
多田はその件の報告で蓮見に電話します。
 
「今日の午後、ケンズランドと正式に顧問弁護契約結ぶから」
「やっぱり多田くんは流石だねえ」
「あ、そろそろつく頃でしょ。上手くいくといいな」
「うん。どうなるかわからないけど、やれることやってみる。じゃあ、行ってくるね」
 
とうとう、蓮見は遠山亜紀と彼女が現在働いている工場で接触するのでした。
 
「お伺いしたいことがあってきました。遠山さんは、蓮見とのことがある前まで何か大きな事件を取材されていたそうですね。もう少しで記事を出せるとおっしゃっていたとか」
「ずいぶん冷静なんですね。夫の不倫相手を前にして。本当に聞きたいのはあたしとご主人の関係じゃないんですか?」
第7話の感想はここをクリック
多田と蓮見の関係性にも、夫の壮一郎の事件にも大きな動きがあった回でした。
 
蓮見が夫とともに事件の真実を追うことになったことで、尾行を巻くといった刑事ドラマのような緊張感があって面白かったです。
 
多田の告白を知らない蓮見ですが、このまま彼女に伝わらないまま終わってしまうのか大変気になります。今後の展開に期待しています。
<見逃し動画>第6話 「崖っぷちの選択」
 
TVerでの無料配信は終了しました
 
第6話の公式あらすじ

多田(小泉孝太郎)が賠償金15億円を見込める健康被害に対する集団訴訟の代理人をすることになる。多田が3年かけて無料相談にのり、満を持して臨む案件だった。
杏子(常盤貴子)と共に正式契約を結びに行く日、そこにはもう一人の弁護士が呼ばれていた。車椅子に乗った弁護士・三栗谷剛(春風亭昇太)だ。人づてに聞きつけて、首を突っ込んできたのだ。病気により車椅子生活を送っている立場を巧みに利用して「みなさんの気持ちがわかる」と被害者たちに取り入っていく一方で、次々と用意周到な手を打ち、杏子と多田のペースは乱されていく。結局、どちらが代理人になるかは、被害者たちの多数決で決まることに。しかし、訴える相手企業と三栗谷が繋がっている可能性が浮上する…。
 
一方、ついに保釈され、帰宅が決まった壮一郎(唐沢寿明)。佐々木(滝藤賢一)と共に、南原(三遊亭円楽)を決定的に追い込める証拠を探していた。そんな中、南原と脇坂(吉田鋼太郎)が接触するところを目撃。南原に自ら接触をはかる―
 
<出典>グッドワイフ(日本ドラマ)公式

第6話のネタバレはここをクリック
前回、蓮見杏子は総資産20億円のロックスターの離婚協議と東京地検特捜部長である脇坂の離婚協議の2つの案件を見事に成功させました。
 
その脇坂の離婚協議の過程で、自宅マンションが脇坂によって盗聴されていることを知った蓮見は、事実を夫に伝えたのです。
 
盗聴を使用した違法捜査の情報を妻から仕入れた壮一郎は、それを利用して脇坂から保釈を勝ち取ります。そして、蓮見の夫の保釈が決まったことを彼女から知らされた多田は、「話がある」とついに彼女を屋上に呼び出したのでした。
 
 
弱者の戦いと保釈された夫
事務所の屋上にやってくると多田は彼女に切り出しました。
 
「ご主人帰ってきたらどうするの?」
「まずは話し合うかな」
「つまり、こういうことか。1、話し合って何らかの納得を得られれば、離婚せず家族4人で行きていく。2、離婚して、その先は自分ひとりで子どもたちを守っていく」
「なんかの条件の提示みたいだけど、まあ、そうなるね」
「3、他の男との可能性にかけてみる。たとえば俺とか」
 
多田の提案に彼女は黙りました。そして、彼を見つめます。少しの沈黙の後、微笑んで彼女は口を開きました。
 
「多田くん」
「いや、選択肢はいろいろあるってことだよ。そういう気持ちでご主人と話し合って」
「そういう?」
「そうそうそう、そういうーー寒いなあ。屋上」
 
多田はそう自分の告白をごまかしたのでした。
少しギクシャクしたまま蓮見が一人で事務所の中へと戻ると神山に呼び止められました。
 
「蓮見先生、多田先生見なかった?」
「あの、ちょっとーー」
「円香さん、蓮見先生に概要説明しておいて!」
 
意気揚々と歩く神山の後ろを追いつつ、蓮見は尋ねます。
 
「新しい案件ですか?」
「賠償金15億が見込める、集団訴訟よ!」
 
 
会議室で円香の概要説明が始まりました。
「訴えるのは海老塚建設。中堅の建設会社です。1998年にマンションの建設現場で働いていた作業員が2010年頃から相次いで体調不良を訴え始めました。原因は工事で使われていた資材クロソナイト。大量に吸い込むと10年程度の潜伏期間をへて、肺炎や肺線維症など深刻な健康被害を引き起こすリスクがあります」
 
そうして蓮見たちはこの集団訴訟に挑むこととなります。三年間、神山多田弁護士事務所が無料で相談を受け入れてきた海老塚建設を相手にした集団訴訟は待ちに待った案件なのです。
 
多田と蓮見は「海老塚建設 クロソナイト被害者の会」に参加します。会場周辺には車椅子やマスクをした人々がたくさんいました。
 
被害者の方々は、クロソナイトの影響で肺を患い、車椅子に頼らなければならない人がほとんどです。会場につくと入口で車椅子の男性が段差に阻まれ困っていました。 
 
「あ、大丈夫ですか?」
 
多田が声をかけると男性は、顔を上げました。
 
「ああ、すいません。車椅子の種類を変えたら慣れなくって」
「失礼します」
「ああ、ありがとうございます」
「せーの」
 
多田と蓮見の二人で段差の上に持ち上げてあげました。
 
「よかった」
「すいません」
「お気をつけて」
 
男性は上着のポケットを確認して慌てだしました。
 
「あれ、財布がない」
「「え!?」」
 
二人は慌ててあたりを探しましたが財布は落ちていません。
 
「じゃあ、あそこかも。さっきコーヒー買って飲んだから」
 
男性は少し離れたところにあるカフェを指差しました。
 
「あ、あたしが。先行ってて追いかけるから」と蓮見は自ら申し出ました。
 
「すいません。ありがとうございます。そこになかったらあっちのベンチかも」
「はい」
 
蓮見は走ってカフェへと向かっていきました。蓮見に彼の財布をまかせて、多田だけが先に会場に入ると、依頼人から予定外の事実を告げられます。
 
「他の弁護士!? よそに頼むんですか? ここまで来て」
「いえいえ、そうではなくて、一応、ほかの弁護士さんにも相談してみたらどうかってことになって」
「どっちに頼むか、比べてから決めるってことですか?」
「いやあ、多田先生には感謝していますし、事前にご相談すべきだったんですけど、両方の話を聞いてみたいって意見が多くて。ああ、実は今日その弁護士さんも急きょ参加を」
「ああ、ちょうど来はりました」
 
現れたもう一人の弁護士は、先程、多田と蓮見が助けた男性でした。蓮見がいないまま、会場では三栗谷弁護士の弁論が開始してしまいました。
 
「それでは、これより先生方にそれぞれ説明をしていただきます。皆さんはよく聞いて、どちらの先生に代理人をお願いするかを決めてください」と依頼人の代表である坂口孝彦は進行しました。
 
「じゃあ、私から始めましょうか。そちらはまだお揃いになっていないようなので。はじめまして、弁護士の三栗谷と申します」
 
途中で蓮見がやっとたどり着きました。
 
「先に始めてますよ。遅かったので」
 
会場には「遅刻かよ」という声とざわめきが広がりました。三栗谷弁護士の話は引き続きます。
 
「私は脳梗塞の後遺症で左半身が不自由です。こういうもの(車椅子)に乗っているとジロジロ見ちゃいけないって目をそらす人も多いんですが、しばらくしたら慣れますから遠慮しないでどんどん見てください。レンタル車椅子の種類を変えたら慣れなくってーー」
 
三栗谷弁護士の車椅子談義に被害者の会の人たちには笑いが巻き起こります。
 
「さて、今回の訴訟で我々が勝利するために何をすべきか、まずお話をさせていただきますーー」
 
その後、蓮見たちの番になりましたが、三栗谷弁護士のわざとらしくボールペンを落として自ら時間をかけて拾うという邪魔が入ってしまいます。それによって、被害者の方々はまったく蓮見たちの弁論に集中することができません。
 
「今回の集団訴訟の立ち上げにつきましては、私どもは三年間に渡って無料で相談に乗らせていただきました」
 
「そうなんです。本当は有料なのにちゃんと形になるまではとおっしゃってくださって」と坂口は説明しました。
 
「じゃあ、これからも無料で相談に乗るんですか? 私の方は、こういう訴訟は結果が出てからの成功報酬だけで、着手金はいただかないので」と三栗谷弁護士。
 
「うちは着手金はいただいますが、優秀な弁護士たちが複数名担当しますし、豊富な経験によって培った集団訴訟のノウハウもありますから」
「優秀な事務所の持つノウハウは貴重ですよね。私も最近まで業界最大手にいましたので、よくわかります。そこを辞めて一人でやっていますので、低コストで済むんですよ。最大手のノウハウと低コスト、お買い得でしょ。あえていいますが、私はいわゆる社会的弱者です。皆さんも、海老塚建設という大企業の前で弱者としてないがしろにされてきました。だからこそ、私はこの訴訟を知ったとき、どうしても皆さんの力になりたい。一緒に戦いたいと心から願ってしまったのです」
 
「どちらにお願いするかは多数決で決めたいと思います。より多くの票を集めた方に一括して代理人をお願いする」と坂口は投票について説明しました。
 
会が終了し、財布がなかったことを確認すると三栗谷弁護士はとぼけた顔で胸ポケットから財布を取り出しました。
 
「ああ、勘違いでした。どうもご親切に」
 
去っていく三栗谷弁護士の後ろ姿に二人は言いました。
 
「最凶、最悪なのが来ちゃった? これ」
「何が弱者だよ」
 
 
今日、東京拘置所から夫の蓮見壮一郎は保釈されました。佐々木からの連絡で蓮見は、彼の保釈を知ります。そして夜、自宅マンションにインターホンの音が鳴り響きました。蓮見が出ると、そこには警察とともにいる壮一郎が立っていました。
 
「ただいま」
 
蓮見は彼の言葉に軽く頭を下げただけでした。父親の帰宅に戸惑う娘の綾香は、壮一郎にスリッパを出します。息子の隼人は蓮見に呼ばれました。
久しぶりの家族四人での夕飯ですが、四人の間に会話はありません。壮一郎が最初に口を開き、息子に話しかけます。
 
「隼人、サッカーはどうだ?」
「とっくにやめたけど」
 
そして、壮一郎はとうとう事件について切り出しました。
「ちょっと、話をしてもいいか? 皆には迷惑をかけてすまなかった。でも、お父さんは賄賂は受け取ってないんだ」
 
「テレビでは証拠があるって」と綾香が指摘しました。
 
「その証拠は偽物だよ。今、事情は話せないけど、誰かがお父さんに罪を着せようとしてるんだ。だけど、必ず無実を証明する。お前たちを犯罪者の子どもには絶対にしない。それからーーお父さんと記事になった女の人のことだけど」
「その話は、子どもたちの前ではーー」
「嫌だろうけど、聞いてほしい。記事が出た頃は家に帰れなくて、直接話せてないから。あの人は、毎朝新聞の記者で本当に仕事だけの付き合いだったんだ。でも、一度だけ絶対にしてはいけないことをした。後悔している。これから人生をかけて償っていきたい。お前たちにもう一度信頼してもらえるように努力したい」
「もう終わった? もういいよね?」
 
話に耐えきれなくなった隼人は夕飯もそこそこに自室へと戻ってしまいました。それに次いで、父に促されると綾香も自室に戻っていきます。立ち上がった綾香は、父に「おかえりなさい」と一言。食卓に取り残された壮一郎は、一人食事を噛みしめるのでした。
 
「お風呂、沸いてるから」
「ありがとう。久々だよ。ちゃんとしたお風呂は」
 
夜、ベッドの準備をしていた蓮見は、お風呂を終えた壮一郎と寝室で事件についての話になります。
 
「あたしは綾香の部屋で寝るから」
「俺はソファーでいいよ」
「あなたの荷物はそこに入ってる」
「わかった」
「さっきの話だけど、誰があなたに罪を着せようとしてるの?」
「ごめん、それはまだ言えない」
「林先生は政治がらみじゃないかっていうけど」
「林先生は何も知らないよ」
「だったらなおさら教えて。弁護士にも言えないことが起こっていたら、子どもたちが危ない目にあったらどうするの? この家は盗聴までされていたのよ」
「盗聴していたのは事件とは関係ないから」
「だから、何が関係してどうなってるのか話して。じゃなかったら私はおかえりなんて言えないから。考えといて」
 
壮一郎の洗濯物をとろうとした蓮見の手と壮一郎の手は合わさってしまいましたが、彼女は不倫の女性のことを思い出して夫の手を避けました。そのまま蓮見は、綾香の部屋へと去っていきました。
 
 
難航する代理人争い
翌日、壮一郎が蓮見の出勤を見送ったあと、蓮見家のマンションには林弁護士が来ていました。彼は壮一郎の事件の裏に何があるのかを聞きに来たのです。しかし、壮一郎は一貫してわからないの一点張り。
 
「どうしても話してくださる気はなさそうだ」
「申し訳ありませんが、先生は公判の準備を進めておいてくれませんか?」
 
 
そのあと、壮一郎は佐々木と外で落ち合っていました。
 
「それで、納得したんですか? 林弁護士は」
「南原が絡んでるとはっきりした以上、何も話すわけにはいかないだろう」
 
二人の話は、一年前の南原官房副長官の汚職事件へとさかのぼります。
一年前。東京五輪の跡地が経済特区として指定され、南原はその経済特区にIT企業のイーデンスを選びました。そして、南原はイーデンスから裏金をたくさんもらったのです。そのような内容のタレコミが、当時特捜部長だった壮一郎に入ったのでした。
 
情報源であるタレコミをした人物はまだはっきりしておらず、その捜査状況が漏れていたために壮一郎は南原にハメられ、逮捕されてしまったのです。
 
「この男と連絡がとれさえすればな」
「ああ、情報提供者ですか。南原の不正をたれこんできた」
「その男が不正の証拠を握っている」
「でも、その証拠の受け渡し直前に蓮見さんが逮捕されたということは、その男はすでに南原に押さえられてる可能性が高いんじゃないですか」
 
壮一郎はニヤリとしました。
 
「ちょっと何する気ですか? 動くなら、私が動きますよ。保釈を取り消されますよ」
「じっとしてるなら拘置所にいたって同じだろう」
 
その頃、東京地検で盗聴で仕入れた林弁護士と蓮見の会話の録音を脇坂は繰り返し聞いていました。
 
「(林弁護士の録音声)政治がらみの可能性があると睨んでいます」
 
「なるほど、そういうことか」と脇坂はつぶやきました。
 
 
弁護士事務所では、円香の調べでわかった三栗谷弁護士の情報を共有していました。
 
「三栗谷弁護士は確かに三ヶ月前まで業界最大手のG&Y法律事務所に在籍していました」
「本当だったんですねえ」
「いや、違うな。G&Yなら企業側の代理人だろう」
「企業側? 被害者側じゃなくて?」
 
会議室に入ると円香は資料を渡しました。
 
「数多くの集団訴訟で企業側を専門に弁護し、賠償金を低い金額に抑えているやり手の弁護士です」
「企業側の弁護士がわざわざ被害者側に?」
 
「あの男のことだからなあ。こういう可能性もある」と多田は、海老塚建設と三栗谷弁護士のつながりを怪しみます。
 
「でも、もしそうなら利益相反になるよ。流石にありえないんじゃない」
 
その頃、実際に三栗谷弁護士は海老塚建設に出入りしていたのでした。
円香は引き続き、三栗谷弁護士について調べることに。
 
 
円香は友人に頼んで海老塚建設の前にフードカーを設置し、建設会社の入り口の録画をはじめました。一方、蓮見たちは被害者の方々を戸別訪問して回っています。しかし、三栗谷弁護士に一歩先をいかれてしまって、投票数は7票も先を越されてしまいました。
 
その夜、蓮見は戸別訪問をまだ続けていました。遅くなることを隼人に電話で知らせます。壮一郎は、蓮見からの電話を受けた隼人に声をかけますが、彼に離婚を勧められてしまうのでした。
 
「まさか、謝ったから浮気も許されると思ってる?」
「いや、思ってないよ」
「母さんも離婚するって言ってたよ。でも、綾香が泣くから迷ってんだよ」
 
 
円香は、事務所に戻ってきた蓮見に多田とのことを指摘します。
 
「多田先生も焦ってるんでしょうね。ご主人が帰ってきて」
「は?」
「保釈が決まったらすかさず呼び出してましたよね。多田先生は思い切って告白してみたものの、あなたの困った顔を見てフラれる怖さにごまかした」
「聞いてたんですか?」
「そういうタイプでしょ。二人とも」
「多田先生と私が若い頃に付き合ってたら、きっと数年で別れて思い出の一つになってたんじゃないですかね。何もなかったから惹かれるんですよ」
「でも、何もなかった過去は変えられませんから」
 
その頃、蓮見は綾香の部屋で多田と蓮見が一緒に写っている写真を見ていたのです。
 
 
翌日、弁護士事務所では被害者の方たちの保留票の4票がすべて蓮見たち側に入らないと担当弁護士の座を得ることができない事態になっていました。
 
しかし、円香の設置したフードカーのカメラが、海老塚建設へと入っていく三栗谷弁護士の姿をばっちりと捉えたのです。
 
これに蓮見たちはガッツポーズ。
「海老塚建設 クロソナイト被害者の会」へと急ぎました。会場に入ると多田は話を止めました。
 
「ちょっと待って下さい。三栗谷先生に聞きたいことがあるーー三栗谷先生。今朝、海老塚建設に行ったこと、もう皆さんに話したんですか? 偶然、うちの人間が海老塚建設に入っていく三栗谷さんを見かけたんです」
「三栗谷先生は海老塚建設となにか関係があるんですか?」
「確かに、海老塚建設に行きました。私が今回の集団訴訟について関わっているのを先方が知ったらしく、接触して来たんです」
「どういう要件だったんですか?」
「海老塚建設は今回の集団訴訟について責任を認め、賠償金を支払う用意があるそうです」
「ちょっと待って」
「一人につき500万で和解がしたいと言っています」
「訴訟を提起する前にしかもまだ代理人でもないのに、和解交渉まがいをするなんて聞いたことがない。しかも今回は、訴訟外なら3000万の交渉からスタートできるケースだ。いきなり500万なんてありえない」
「3000万、本気で言っていますか?」
「今回の場合、取れるだけとっておくべきだ」
 
蓮見は三栗谷弁護士の過去の経歴を説明します。
 
「三栗谷先生が前にやられていた集団訴訟で代理なさっていたのは被害者ではなく、企業側ですよね」
 
多田が引き継いで話します。
 
「20年間ですよ。20年間も企業側に立っていた弁護士が、今回わざわざ被害者側に名乗りをあげて、相場より安く和解をしろと言ってくる。海老塚建設となんらかの取引があるのではと疑われても仕方がないと思いませんか?」
「おっしゃるとおり。私は企業側に立つ弁護士でした。でも、辞めたんです。遅咲きながら間違いに気づいて。大企業の手の内をよく知っているからこそ力になれる。犠牲になられた方々のお役に立てると思ったんです」
 
それらの事実を聞いて、被害者の会の人たちはざわめきます。結局、どちらの主張も聞いた被害者の会の人たちの票は2つに割れてしまいました。
 
こうして、蓮見らと三栗谷弁護士は共同弁護人ということになってしまったのです。
ともに戦うことになって蓮見は彼に真意を確認しました。
 
「本当はどうなんですか? 海老塚建設と」
「関係ありませんよ」
「じゃあ、どうして500万なんですか。海老塚建設は国がクロソナイトを禁止したあとも使用を続けて、それで被害者が出てるんですよ」
「私だって被害者のことを思ってますよ。弱い立場になって初めてわかったんです。人は変われると思いませんか? たとえば、あなたのご主人も」
 
三栗谷弁護士が電話で席を外したすきに、蓮見は彼の手帳に挟まれてボールペンに目をつけます。それはある企業のものでした。
 
 
その頃、壮一郎は民自党の街頭演説に出ている南原に会いに行っていました。たくさんいる支持者の中に壮一郎はまぎれて南原と握手します。
 
「南原さん。例の件、情報提供者が見つかりました。これで真実を暴けます」
「応援ありがとうございます」
 
南原はほかの支持者の握手の流れと同じように振る舞い去っていきました。
 
その後、壮一郎は佐々木と地下駐車で落ち合いました。壮一郎が危険を犯して手に入れた情報の中には、大きな収穫もあったのです。南原とは脇坂もあっていました。
 
南原は、脇坂に壮一郎を確実に有罪にするようにとプレッシャーをかけているのです。
 
「おそらくこれで、脇坂は南原に抱き込まれたか。これで確証を得た。俺の事件と南原はつながっている。俺がこのまま有罪になれば、南原の不正は闇に葬られる。そんなことは絶対にさせない」
「蓮見さん。あとは私に任せてくれませんか。今は下手に動いて周囲を刺激しないほうがいい」
 
そのとき、不倫関係にあった遠山亜紀が昼のワイドショーで「二人の関係が初めてではなかった」と話すインタビューが流れてしまいます。佐々木は蓮見にタブレットを渡します。それは事務所で蓮見も見ていました。
 
「(テレビでの遠山亜紀のインタビュー)蓮見検事とはお互い気持ちがありました。関係を持ったのもあの夜が初めてではありません。奥様には申し訳ありませんが、私たちは想い合っていたんです。彼は私だけに本当の姿を見せてくれてそんな彼の姿にどんどん惹かれていきました」
 
それを見て、朝飛は蓮見に「すぐ帰ったほうがいいです。マスコミがご自宅に来ているかもしれません」と忠告します。
蓮見が慌てて自宅マンションに向かうと綾香がマンションの前でマスコミに囲まれていました。彼女はその中から綾香を救い出します。
 
 
踊らされた勝利と家族の戦い
帰宅した壮一郎は、蓮見にワイドショーの話は嘘だと告げます。しかし、彼女は事件の詳細を話さない夫のことを信じることができません。
 
「どうしてわざわざ嘘をつく必要があるの? 何かなければあんな嘘はつかないと思うけど」
「何があるのかはわからないけど、俺は嘘をついていない」
「だったらそれを信じさせてよ! 今後について話したいって言ったのは、ちゃんと話して信じられれば家族で居られると思ったから。だけど、あんなインタビューは出るし、事件の事情も話せないって言われる。これじゃどうやってあなたを信じればいいの? あなたという人を信頼させて! じゃないと私たち家族はもうここから前に進めない」
 
そんな中、蓮見の携帯に多田からの電話が入るのでした。
 
「もしもし、多田くん」
「ネットのインタビュー見たよ。家大丈夫?」
「うん。子どもたちは明日お義母さんのところに行かせるから。心配かけてごめん」
「今日もういいよ」
「戻る」
「いいよいいよ。俺やるから」
「むしろ、やらせて」
「うん」
 
壮一郎の脳裏には、面会に来た多田の顔が浮かんでいました。
事務所に戻った蓮見は、神山にワイドショーの話を謝罪します。
 
「すみません。またお騒がせして」
「悩みは深いね。夫婦のことはわからないけど、たまには自分の気持ちだけを大事にしてみれば。自分を最優先にすると決めることはあなたの人生にとってきっと大きな力になる」
 
蓮見は彼女の後ろ姿に深々とお辞儀をしました。
 
蓮見が円香に頼んでいた三栗谷弁護士の持っていたボールペンの件からテイショーコーポレーションにたどり着きました。海老塚建設とテイショーコーポレーションには繋がりがあることがわかったのです。
 
翌日、蓮見たちは三栗谷弁護士を事務所に呼び出しました。
そして、蓮見は例のボールペンを見せます。
 
「総合商社のテイショーコーポレーションが大事な顧客や関係者に配っているボールペンです。三栗谷先生もお持ちですよね?」
「それがなにか?」
 
多田が説明します。
 
「テイショーコーポレーションは最近、顧問弁護士が大きな案件をしくじった。それで変えることを検討しているそうですよね。しかも最近は、大規模なM&Aを何件も進めていて、顧問弁護士になれればかなりの儲けになることは間違いない」
 
多田とは蓮見もテイショーコーポレーションに売り込みに行き、情報収集してきたのでうす。蓮見は彼を問い詰めます。
 
「後任の候補の一人は三栗谷先生だそうですね。ずいぶん熱心に売り込みをなさっていたそうで」
「いけませんか?」
「海老塚建設とテイショーコーポレーションは直接の資本関係こそありませんが、社外役員が共通していたり、近い関係にありますよね」
 
最後は多田が締めます。
 
「あなたの本当の目的は、テイショーコーポレーションとの顧問弁護契約を結ぶこと。そのために、近い関係にある海老塚建設の集団訴訟を上手く収めて自分の能力をアピールしようとした。違いますか?」
「私と海老塚建設が繋がっているという確実な証拠がない限り、なんの証明にもなりませんよ。テイショーコーポレーションと海老塚建設は関連会社じゃないから利益相反も直ちには成り立たない」
「じゃあ、相談してみますか。被害者の会の皆さんに」
 
蓮見は、被害者の会の皆のもとにいる朝飛に電話をかけ、スピーカーにしました。
 
「もしもし、そちらどうですか?」
「重大発表いつでも準備オーケーです」
「証明できようができまいが、事の次第が世間にバレれば、あなたも海老塚建設も終了だ」
「条件は?」
「1、あなたはこの集団訴訟から手を引く。2、海老塚建設は一人3000万の賠償金を払う」
「この訴訟の相場は1500万ですよ。ふっかけるのもーー」
 
蓮見は「もしもし!」と大きな声で被害者の会に語りかけようとします。
 
「わかった! 1800だ!」
「残念だ」
「2000万だ。一切の経緯を公表しないという条件で今ここで和解に応じるなら、海老塚建設を説得する」
 
そして、帰宅する三栗谷弁護士に多田は聞きました。
 
「社会的弱者を売りにする作戦はこれらからも続ける気なんですか?」
「弱者というのは強いですからね。あなただって、大企業の被害者はぶんどれるだけぶんどっても許される、そう思ったでしょう。あなた方は昨日のように弱者というと同情して、大企業だと思うと目の敵にしますからね。弱者ハラスメントが横行する社会を作ってるのはあなた方ですよ」
「そうですよね。たぶん、弱者に必要なのは同情じゃなくて愛情なのだと思います。私も子どもや友だちの愛情で救われましたから」
 
神山のオフィスには多田と蓮見、朝飛と円香たちが集まっていました。
今回の集団訴訟は、企業側との示談が成立し、被害者の方一人2000万の賠償金、総額20億4000万でまとまったのでした。
 
「被害者のことを思えば、2000万は破格ですよ。仮に訴訟で勝ったとしても相場を大きく越えてますからね」
「上出来。1500でいいと思ってたんだから」
 
そこで朝飛は言いました。
 
「ちなみに、ゴールを決めたのは僕ですから」
 
そんな朝飛に神山は、彼と蓮見の手をとって「いいぶん」と言ったのでした。
 
神山のオフィスを出て、多田は蓮見の家庭を心配しました。
 
「あれからご主人と話せた?」
「ああ、うん。大丈夫」
「無理するなよ」
「うん、ありがとう」
「もしーー」
「うん?」
「いや、なんでもない」
 
多田は最後まで話す勇気がでませんでした。
蓮見は、事務所から出てすぐに三栗谷弁護士に声をかけられます。
 
「和解成立おめでとうございます」
「ありがとうございます」
「わたしもテイショーコーポレーションとの顧問契約が無事成立しましたよ」
「へ?」
「真意のほどはわかりませんが、あとから聞いた噂では海老塚建設はあの頃、大規模な再開発工事の受注をできるかどうかの瀬戸際だったそうです。つまり、その受注の前に集団訴訟で裁判になるのは困る状況だったわけです。
 
もしかすると裁判を避けるためだったら一人4000万ぐらいまで覚悟していたかもしれませんね。それを裁判をせずに済み、2000万で早急に片がついた。20億の節約だ。そして、そちらは20億取りそこねた。これ一本でね。
 
今からすべてを公表して再交渉したとしてもすでに1500万でも和解は難しいでしょうね。ま、あくまで噂ですけどね」
「全部あなたが仕組んだんですか? 裁判にならないようにわざとボールペンを私に気づかせて」
「あなたに人は変われるかって聞きましたけどね。実は私、変われないって思ってるんですよ。けして、変われない」
 
 
その夜、蓮見家には林弁護士が来ていました。
 
「これ以上マスコミが自宅に来ないように記者会見を開こうと思います。先生も弁護士として同席していただけますか?」
「あなたの弁護はもうできません。これ以上、お飾りの弁護士ではいられませんから」
「わかりました。お世話になりました」
 
そうして壮一郎は林弁護士に見限られてしまったのです。
 
「どうするの?」
「なんとかする」
「どうやって。隠し事をしてる依頼人を弁護する弁護士はいないよ。弁護士がいなければ裁判もできないしーーじゃあ、私があなたの弁護をする」
 
記者会見の前、蓮見は言いました。
 
「これが終わったら全部話して。あなたが変われないなら、待つのをやめる。中に入って自分で真実を探す」
「これは俺が解決しなきゃならない問題だ」
「違う。もう家族の問題。私が決めたの。あなたに選択権はない」
 
 
多田は、蓮見夫妻の記者会見をテレビで見たあとに、彼女の携帯に電話をかけました。そして、留守電にメッセージを残したのです。
 
「もうごまかすのはやめる。この先ずっと自分の気持ちに嘘をついて生きていくのはもう嫌だ。ずっと好きだった。司法修習の頃からずっと」
 
しかし、それを聞いていたのは夫の蓮見だったのです。
第6話の感想はここをクリック
集団訴訟の賠償金を破格の一人2000万で勝利した蓮見たちでしたが、それは三栗谷の手によって踊らされて手に入れた勝利でした。
 
今までどの案件でも蓮見たちが最終的には良い勝利を手に入れていたので、今回の話の終わり方はとても衝撃を受けました。
 
また、夫の壮一郎の弁護を自ら行うこととなった蓮見杏子の姿を見る多田の気持ちを思うと大変辛かったです。次回、蓮見壮一郎の事件の真相究明に期待しています。
<見逃し動画>第5話 「夫婦の条件」
 
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第5話の公式あらすじ

資産20億のロックスター東城数矢(宇崎竜童)の離婚訴訟を巡り、妻のちなみ(銀粉蝶)の代理人として担当することになった杏子(常盤貴子)。数矢は売れない時代を支えてきたちなみと別れ、若い恋人の唯奈(松本まりか)と結婚するつもりだという。杏子は、財産分与などで11億円を請求するが、数矢の代理人弁護士・栗山美咲(芦名星)は、6千万円が妥当だと主張。法律的根拠も相手側にあり、杏子たちは窮地に追い込まれる。しかも美咲は多田(小泉孝太郎)の元彼女。多田を知り尽くした様子から、交渉も難航する。そんな中、突然の事故で数矢は意識不明の重体に陥ってしまう。そんな数矢を前にして、妻と愛人は数矢の命と財産を巡り争い始める。
 
一方、杏子の元に東京地検特捜部長の脇坂(吉田鋼太郎)の妻・怜子(峯村リエ)が現れる。脇坂との協議離婚を希望しており、杏子に代理人をお願いしたいとやってきたのだ。しかも怜子は、壮一郎(唐沢寿明)に関する脇坂の弱みを握っているようで、脇坂は血相を変えて事務所に怒鳴り込んでくる。難題が山積の二つの離婚協議ははたしてどうなっていくのか…?
 
そして、壮一郎も、自らが逮捕された収賄事件の真相にたどり着きつつあった。遂に事件を画策した人物の正体を突き止めたのだ。その男とは一体…?
 
<出典>グッドワイフ(日本ドラマ)公式

第5話のネタバレはここをクリック
前回、過去の友人の息子の弁護に勝利した蓮見杏子は、弁護士としての勝利とともに人間としても一歩ずつ強くなっていくのでした。
 
そんな中、夫の壮一郎は東京地検特捜部長の脇坂を失脚させようと彼の過去の不祥事を明るみに出しましたが、失敗に終わってしまいます。そのまま保釈請求が却下されてしまった壮一郎は、拘置所から出ることができなかったのです。
 
 
ロックスターの衝撃
多田神山弁護士事務所には、資産20億円のロックスターである東城数矢の妻、東城ちなみが来ていました。蓮見と多田は、彼女の代理人として離婚協議の依頼を受けています。
 
「気を遣わなくていいのよ。ステータスを手にした男が若い女に走るなんてよくある話じゃない。フェイスリフトをしたって二十代には戻れないし、せめて今日は顔がこわばらないようにしないと」
 
蓮見はちなみを励まします。
 
「笑っていらしてください。怒るのは私たちがやりますから」
「ありがとう」
 
あとから、当人の東城数矢と愛人の小川唯奈がやってきました。蓮見は愛人の出席を止めようとします。
 
「東城さん。離婚協議なので、当事者以外はご遠慮願えますか?」
 
しかし、東城数矢は愛人の小川を席へと促しました。
 
「気にされませんよね? 私にも関係ありますし」
 
小川はちなみに言いました。
 
「どうぞ」
 
彼女は笑顔を崩さず、気丈に小川の出席を受け入れたのでした。
そんな彼らのもとに多田と神山が到着した頃、東城の弁護人である栗山美咲も一緒に到着しました。栗山は、多田の半年前の元彼女でした。
 
「多田先生、お久しぶりです」
 
「お知り合い?」と神山。
 
「栗山と言います。多田先生と以前お付き合いしていました」
「おい」
「ああ、元彼女?」
「半年前に一方的に別れ話されちゃって」
「一方的にじゃないよな。てか、何でここに来るんだよ」
 
そこへ蓮見が多田たちを呼びにやって来ました。
 
「多田先生、皆さんお待ちですけどーー」
「ああ」
 
すると、神山は栗原の肩に手をおいて「こっちにしておきなさい」と多田に言いました。慌てて多田は蓮見に弁解します。
 
「なんでもないから」
「あの、会議室はどちらですか? 東城さんの代理人です」
 
蓮見はそういう栗原にお辞儀しました。
 
「よろしくお願いします」
 
多田は苦い顔をするのでした。
 
 
東城側の主張は、総資産20億円は別居してから築いた資産。そのため財産分与には当てはまらず、同居中に築いた資産1億円が財産分与となり、その半分の5000万と慰謝料1000万の総額6000万が財産分与として妥当だというものでした。ちなみと東城は別居して7年たっていました。
 
「東城家の総資産は約20億円ですよ。財産分与や婚姻費用で10億円。そして、東城数矢という大スターが支払う慰謝料として1億円。合わせて11億円は妥当でしょう」と多田は主張します。
 
「そもそも、別居の原因は東城さんの女性関係なんですよ。少なくとも6人の女性と浮気したあげく勝手に家を出ていったんですから」
 
そんな多田の演説のあと、東城が口を開きました。
 
「ちなみ。キレイに終わらせようぜ。お前を強欲な女なんて思わせないでくれよな」
 
「強欲?」とちなみは彼を睨みました。
蓮見は彼女に変わって答えます。
 
「東城さんが売れるまでの15年間、生活を支えてきたのはちなみさんです。強欲な女性にそんなことができますか?」
 
「こちらは、交渉で金額を変える気はありません」と栗原はいいます。
 
 
蓮見と多田は休憩をとります。そこで円香が有力な情報を掴んできました。東城と愛人の小川は、来週末にタヒチで結婚式を上げる予定なのです。
 
「すごい。円香さん。そんな情報よく手に入る」
「友だちはいろいろなところにいますから」
「なるほどなあ。だから、来週末の結婚式までには何が何でも離婚したいわけだ」
「だね」
 
そうして早く離婚したい相手側の気持ちを利用し、多田と蓮見は話し合いをもっと長くする方針で調停でもなんでもどうぞと相手側を追い詰め、財産分与を5億まで引き上げさせたのでした。
 
東城たちが帰ったあと、ちなみは蓮見に感謝を伝えます。
 
「5億まで上がると思わなかった。ありがとう」
「次回こちらに署名、捺印をしてお持ちください」
 
蓮見は相手側の署名がある離婚届を出しました。
 
「今ここで書いちゃう。ちょうど、ハンコも持ってきてるし」
「これーー」
 
ちなみが取り出したポーチにはギターの形をしたキーホルダーがついていました。
 
「あ、数矢がソロになる前にやっていたバンドCRUSHERが初めて作った限定グッズなの」
「いいですねえ」
「もう30年前よ。あたしとマネージャーと数矢の3人でデザイン考えて。数矢はもう捨ててると思うけどねーー話がついたら吹っ切れるかと思ってたのに」
 
彼女はため息をつくと悲しそうに笑いました。
 
 
その頃、拘置所では壮一郎のもとに林弁護士が面会に来ていました。林弁護士は壮一郎が何かを隠していることに気づいており、彼から打ち明けてくれるように頼みに来たのでした。
 
「隠していることなんかありませんよ。とにかく、裁判まで時間がないんです。一日でも早く保釈をお願いします」
 
 
壮一郎を起訴に持ち込んだ脇坂はちょうど鰻屋で佐々木とともにうな重を食べているところでした。しかし、突然の電話が来てしまいます。
 
「はい、もしもし。仕事中だろう。もう。意味がわからんよ。何を言っているんだ! なんだよ」
 
彼に電話をしたのは、妻の脇坂怜子でした。
彼女は神山多田弁護士事務所に来て、蓮見を代理人として指名したのです。蓮見は「突然で悪いけどーー」と神山に呼び出され、彼女に引き合わされました。
 
「お待たせいたしました」
「始めまして。脇坂玲子です。ご主人の後任で特捜部長をしている脇坂の妻です。主人と離婚したいの。力貸してくださる?」
 
突然、事務所に脇坂の妻が現れたことで蓮見は大変驚いたのでした。
そして、あとから激怒した脇坂がやってきました。
 
「ご足労いただき申し訳ありません。直接話したいという奥様のご希望ですので」
「どうも」
 
蓮見に迎えられた脇坂は少し動揺していました。
会議室で脇坂は妻との話し合いになります。
 
「あなたの弁護士は?」
「そんなもんいらん。どういうつもりだよ。電話一本で家を出て」
「もうずいぶん前から荷造りしてたわよ。あなたが気づかなかっただけでしょう。出世ゲームに夢中で」
 
「忙しいだろう! 俺は!」と脇坂は怒鳴りました。
妻の玲子は彼から顔をそむけます。
 
「わかってるだろう。何年検事の妻やってんだよ」
「妻じゃなくて家政婦よねえ。あたしになんか無関心で」
「ああ、そういう問題なら二人で話そう」
 
脇坂は立ち上がります。そして、玲子も立ち上がりました。
 
「もういいのよ。子どももいないし。離婚してほしいだけ」
「奥様のご希望は法にそった財産分与だけです」
 
蓮見が口を挟むと「ちょっと黙っててもらえませんか」と脇坂。
 
「そうやってごねると思ったから弁護士さんにお願いしたの。あ、家はいらないから、お金で清算してね」
 
夫妻の話が再開するとともに蓮見は二人から目をゆっくりそらしました。
 
「あなたの見栄とコンプレックスが詰まったあの趣味の悪い家」
 
脇坂は妻にそう言われてなぜかゆっくりと蓮見を見ました。蓮見はもう一度ゆっくりと目をそらします。
 
妻が先に帰ると脇坂は残った蓮見にいいました。
 
「あれですか? 私がご主人の保釈に反対した仕返しですか?」
「奥様が私を指名したんです」
「そりゃ、あなたなら喜んで力になってくれるってわかってるからですよ」
「怒るより前に、奥様が離婚を切り出した気持ちをお考えになったらどうですか?」
「私は離婚しませんから。あなた、これ以上妻をあおるならこっちにも考えがありますよ」
 
 
その夜、蓮見は自宅で離婚協議書を作っていました。それをみた娘の綾香は蓮見がもう離婚の準備をしているのかと勘違いします。
 
「もう離婚の準備をしているの」
「違うよ。これは仕事の」
 
そう言われても綾香は動揺を隠せません。
「おいで」と蓮見は優しく娘を近くに呼び抱きしめて聞きます。
 
「綾香はお母さんとお父さんが離婚するのは嫌なんだよね」
 
何も言わない綾香に「思ってること言っていいんだよ」と語りかけます。
 
「だって、まだお父さんから何にも聞いてないもん」
「そうだね」
 
 
翌日は東城夫妻の最後の協議の日でした。しかし、東城だけが現れません。
皆が待っている中、東城の代理人の栗山は何度も電話をかけています。しかし、連絡はついていませんでした。
 
「遅いなあ」と多田は眉間にシワをよせます。
栗山の話によると東城は、近々あるレコーディングのために練習がしたいと昨夜から個人事務所のスタジオがある葉山に行っていました。
 
すると、円香によって情報が入ります。
 
「蓮見先生! 多田先生! 東城数矢が今朝、バイクで事故を起こしたようです」
 
慌てて病院に行くと東城は昏睡状態に陥っていました。
ちえみとマネージャーの三宅博之、多田と蓮見は東城数矢のそばについていました。しかし、担当医師はなかなか現れません。多田が看護師に聞くと「いま、奥様に説明中です」といいます。
 
説明している部屋に行くと医師のもとには愛人の小川と弁護士の栗山がいました。
 
「すいません。ちょっとまってもらえますか?」
 
説明を中断させる多田。
蓮見はちえみを医師の前に促しました。
 
「こちらが東城さまの奥様です」
 
驚く医師。
 
「もう離婚されますよね? 実質上の妻は私です」と主張する小川。
 
「まだ届けは出していません」
「何を言ってるの? サインされましたよね?」
 
二人を置いて、マネージャーの三宅は医師に容態を聞きます。
 
「そんなことより、数矢はどうなんですか?」
「おそらく、良くて植物状態と思われます。どうぞ、お座りください。現在も全身管理を行っていますが、極めて厳しい状態ということをご理解ください。ご本人は延命治療について、もしくは臓器提供の希望を残されていますか?」
「いえ、ないと思います」
「では、今後の方針についてはご家族に決めていただくことになります」
 
多田は問います。
 
「あの、それはつまり?」
「このような状態に陥った場合、治療をやめれば通常は数日で心停止に至ります」
 
「治療を続ければ意識が戻るかもしれないんですか?」
 
か細い声でちなみは医師に尋ねました。
 
「残念ながら、その可能性はほぼゼロだとおもってもらったほうがいいでしょう。長く行きていられる保証もありません」
「帰ってもらえる?」
 
妻のちえみは、強くいいました。
 
「いい加減にしてよ。離婚に同意されましたよね?」
「離婚はしません。この後のことは、全部私が決めます」
 
しかし、小川も引き下がりません。
 
「子どもがいるのよ。お腹に彼の子がいるの。この子だって彼の家族なんだから決める権利があるでしょう」
 
「おい。どういうことだよ」と多田が栗山に問いました。
 
「妊娠4ヶ月。DNA鑑定も済んでる」
 
 
離婚協議のブッキング
小川のお腹に子どもがいたからこそ、東城たちは離婚を急いでいたのでした。
しかし、東城の事故によって二人の状況は大きく変わってしまいました。
 
東城が健在だった際は、正妻のちなみが手に入れられるお金は5億で、愛人の小川が手に入れられたお金は15億でした。
 
しかし、事故によって東城が植物状態となった現在は、彼の延命治療を続ければ遺産のすべてを手に入れることができるのは東城ちなみになります。延命治療をやめれば、子のいる小川とちなみの二人で10億ずつ折半することになるのです。
 
「エグい話だ」と多田。
 
「エグい現実を生きるために皆お金が必要なの。実質的には著作権、その他、東城数矢のすべての権利が妻であり依頼人に管理されることになるからね。顧問弁護士の座はうちが頂く。きっちり殺しといて」
 
そう神山はいうのでした。
 
 
朝のニュースには、小川が内縁の妻として出演していました。事故の直前に小川には数矢から弾き語りの動画が贈られていたのです。それは事件の朝に葉山のスタジオで撮影されたものでした。
 
「お腹の子どもと三人で幸せになろう」と数矢は彼女に動画を送ったのです。
 
 
蓮見の家にはまた林弁護士が訪れていました。彼は壮一郎の裏に何があるのかを蓮見に聞きに来たのです。しかし、蓮見は何も知りません。
 
「あの裏って?」
「私は政治がらみの可能性があると睨んでいます」
 
 
翌日、蓮見は脇坂夫妻の離婚協議の続きを行っていました。
 
「時間の無駄だよ。離婚はしないよ」
 
「こちらは署名済みです」と蓮見は彼に署名済みの離婚届を差し出します。
 
「愛してるんだよ。お前騙さてるんだよ。俺たちは必ずやり直せる」
「彼女に話すわよ。あなたが家で使ってるパソコンの中身」
「え?」
「離婚するための武器を色々探したの。パソコンのパスワードがあなたの名前と誕生日で助かった。本当に自分が大好きなのね」
「玲子やめろ」
「この人のパソコンの中に、あなたのご主人のフォルダーがあった」
「検察の機密情報が漏れたら大問題になるぞ!」
「機密情報がどうして家のパソコンの中にあるの!? 後ろめたい違法捜査だからじゃないの? 離婚してくれなかったら彼女に話します」
 
 
蓮見は、佐々木とカフェで落ち合っていました。脇坂の妻が話していたフォルダの話と林弁護士が言っていた政治がらみの裏について報告したのです。
 
その後、佐々木は拘置所で壮一郎にトミオカ精工とイーデンスの関係性について報告していました。
 
「林弁護士が奥様に蓮見さんの逮捕は政治がらみの可能性があると話したそうです。見当違いならほおっておいてもいいんですが」
「なにかわかったのか?」
「あれからイーデンスを探りました。社長の井出はあの男に頻ぱんに会っていました」
 
佐々木の手帳には南原官房副長官の名があるのでした。
 
「南原か」
「我々の捜査がおそらく南原に漏れていたんです。そこで南原は捜査を止めるためにイーデンスを通じてトミオカ精工に蓮見さんへの贈収賄をでっち上げさせた」
「その見返りが計画倒産か」
「当時、トミオカ精工は経営難に苦しんでましたからね。幹部たちの再就職先を世話してもらう代わりに蓮見さんを売ったんじゃないでしょうか」
「これですべてが繋がったな。俺をハメて逮捕させたのは南原だったというわけだ」
 
 
その夜、多田はいつものバーで一人酒を飲んでいましたが、栗原弁護士が現れました。彼女は事務所の同僚と結婚することを多田に伝えました。
 
「よかったなあ! おめでとう」
「そのホッとした顔。避けてたもんねえ。結婚の話題。もしかして、蓮見先生? いつも私と比べてたのは」
「は?」
「この際だから言うけど、私は真剣だったのよ。あなたが重いのが嫌いだから軽いフリをしてただけ。でも、途中で気づいちゃった。あなたは重いのが嫌いなんじゃなくて、他に好きな人がいたんだね」
「そんなんじゃないよ」
 
 
翌日、蓮見は昏睡状態の東城の病室に出向いていました。
そこには妻のちなみとマネージャの三宅がいました。三宅はすぐに帰りました。
 
「本当に古くから一緒にいらしたんですね」
「どんなときもかっこいい人だって言ってたでしょ。この人の彼女」
「はい」
「そう見えて本当は怖がりで気が小さい人なの。そんなふうに見抜いてる私が嫌になったのかもね。若い彼女の前だったらかっこいいスターでいられるから。延命治療も本当はわからない。往生際は悪いけど、苦しいのも嫌いなこの人がどうしてほしいのか」
「納得行くまで考えてもいいんじゃないでしょうか。延命治療はもちろん本人のためですけど、残された人の気持ちのためでもあると思うので」
 
そこに警察が事情聴取に現れたのでした。なぜなら、事故の原因を探るために東城数矢の血液検査を行ったことで睡眠導入剤が検出されたからです。警察は、殺人の方向性も視野に入れて捜査を始めていました。
 
警察に来た蓮見に円香から電話が入ります。
 
「睡眠導入剤? 誰かが飲ませたってことですか?」
「ちなみさんは重要参考人の一人です」
「まさか。理由は?」
「自宅に一人でいてアリバイがなく。しかも、東城数矢が飲まされたのと同じ睡眠導入剤を使用しています」
 
 
夕方、蓮見は事務所に帰ってきました。
 
「お疲れさまです」と朝飛。
 
「お疲れさまです。とりあえず、今日は事情聴取だけで帰してもらえました」
「まあ、動機はありますよね。離婚が成立する前に夫を殺害してしまえば、財産をすべて相続できる。子どものことは知らなかったんだから、まあ、そう考えるのもおかしくないし」
「でも、本人は否定してます。東城さんのことをすごく大切に思ってらっしゃるし、財産のために殺害なんかするでしょうか?」
 
「おつかれー」と多田は蓮見にコーヒーを手渡しました。
 
「ありがとう」
「大切に思っていたからこそ、憎さ100倍ってこともあるよ」
「そうだけどお」
 
多田の指摘に蓮見は渋い顔をしました。
 
「参考までに。恋人にはアリバイがあります。この時間、犬の散歩をしているのを近所の住人が目撃しています」と円香は資料を持ってきました。
 
「恋人の場合、殺すなら離婚したあとじゃないと。子どもの相続分が減って大損しちゃうんだから」
「東城さんが自分で睡眠薬飲んだとか」
「自殺ってことですか? それこそ動機がないでしょう」
 
そこへ神山がやってきました。
 
「お金にならない議論は時間の無駄。逮捕されて、依頼されてから考えて」
 
「はい」と答えたのは朝飛だけでした。皆が動き出すのを見てから神山は去っていきました。蓮見はカバンの中にさきほどの資料を入れます。それを見ていた朝飛はすかさず指摘しました。
 
「あ、それ家で検討しようとしてるでしょ。ちなみさんが犯人じゃないことを立証できるかどうか」
「ちょっと声がでかい」
「いや、だから一緒にやりましょうよ」
「え!?」
「将来の大口クライアントの疑いを晴らせば事務所的にも助かるわけだし」
「本当!?」
 
そんな二人をみて、多田と円香も口を挟みました。
 
「お前、蓮見先生に抜け駆けされたくないだけだろう」と多田。
円香も「神山先生に見つかったら怒られますよ」といいます。
 
「円香さんちでやりましょう」
「嫌です。言い出した人の家でどうぞ」
「いや、うちは狭いワンルームなんですよ。じゃあ、多田さんちで」
「お前ーーうちは二時間くれたら片付ける」
「長いなあ」
 
円香も「2時間待つなら帰ります」と拒否。
「じゃあ、もうここしかーー」と朝飛は蓮見の顔を見ました。
 
「うち!?」
 
そうして、蓮見を含む四人は蓮見のマンションで議論することになりました。
 
「どうも、お母さんの同僚の朝飛です」
 
子どもたちは久しぶりにたくさんの人が来たことで楽しそうです。
綾香は朝飛に夢中で、隼人は円香に見惚れるのでした。
 
「なんかごめんね。突然、こんなことになって」
 
お茶を準備する隼人に蓮見は謝りました。
 
「いいよ。明日休みだし」
 
綾香の申し出で皆は写真をとることになりました。
しかし、円香は撮影係を申し出たのでした。蓮見と多田は二人ならんで子どもたちは朝飛と前に並んで撮りました。
 
皆は、東城が恋人の小川に送った動画について確認します。
この動画が撮影されたときは葉山のスタジオに犯人も一緒にいた可能性が高いことを検討しているのです。蓮見と多田は、司法修習時代を思い出して笑い合いました。
 
そして、朝飛と円香は途中、お酒の買い出しに二人で出たのでした。円香は彼の身の上話を聞いたついでにDVの夫から逃げていることを打ち明けました。
 
夜、男性陣がお酒と疲れで眠りについたあと、蓮見と円香は片付けながら壮一郎との離婚についての話になります。
 
「今日、来てもらえてよかったです」
「どうしてですか?」
「子どもたちが嬉しそうだったから。賑やかでーー離婚しようかと思ってたんです。裁判のことがはっきりしたら」
「やめたんですか?」
「迷ってます。娘が泣いちゃって。それに夫も今、見えている以上に大変な立場にいるのかもしれなくて。保釈されて帰ってきたら、今度こそちゃんと話し合って、離婚するかどうかはその後決めようかなって」
「女性とのことも許せるんですか?」
「それはーーわかりませんけど。まだ、家族だから」
 
 
愛と資産と思惑と
翌日、皆は葉山のスタジオで動画の検証を行おうとしました。しかし、動画は一人でとるにはタイマーがないので誰かにとってもらうか、自分で携帯をセットしてとるしかありませんでした。
 
しかし、テレビで流れた映像はすでに彼が一人で座って歌いだしている映像しかないのです。蓮見と多田は、恋人の小川にオリジナルの動画を確認させてもらうことを頼みに相手側の弁護士事務所へと出向きました。
 
「嫌です。どうしてちなみさんの無実を証明するためにどうして私が協力しなくちゃいけないんですか?」
 
小川は拒否しました。
 
「僕らが見ていたのは、テレビで流れた映像を録画したものなんです。オリジナルの映像を最初から見せて頂けませんか?」
 
多田のお願いに彼女は怒りを示します。
 
「あの人が数矢を殺そうとしたのよ。それ以外ないじゃない。数矢を殺す動機がある人なんて」
 
「小川さん」と栗山弁護士はなだめました。
 
「東城さんのためにも真実を明らかにしたいんです」
「お願いします」
 
蓮見と多田は静かに頭を下げます。
小川はテーブルの上に携帯を投げ捨てました。
 
映像は、東城が携帯をセットして椅子に座るまでの一連の流れも映っていました。そして、蓮見は映像に映っているあるものに気づいてしまいます。
 
 
事務所に戻り、蓮見はそれを東城ちなみに見せたのでした。
 
「何が映っていたの?」
「これはその部分を拡大してプリントアウトした画像です」
 
そこには東城の最初のバンドCRUSHERの限定グッズであるキーホルダーが映っていました。
 
「これはちなみさんが30年前に作った東城さんのバンドの限定グッズですよね? あの事故の日、東城さんと一緒に葉山のスタジオにいらっしゃいましたか?」
「私のじゃない」
「え?」
「覚えてない? 三人で作ったって言ったでしょう。まだこれ使ってんの私だけじゃないのよ」
 
その指摘に蓮見は固まりました。
ちなみも困惑して言います。
 
「でも、どうして?」
 
 
警察は、東城のマネージャーである三宅を連行していきました。
 
 
蓮見と多田は、事務所で今回の経緯を神山に報告します。
 
「三宅は東城さんから遺言書を預かっていたんですよ」
 
「ん? 遺言書はなかったんじゃないの?」と神山。
 
「唯奈さんと出会う前にちなみさんには内緒で作ってたんですよ。財産は苦楽を共にしてきたちなみさんと三宅の二人に残すっていう内容で。ところが、東城さんに子どもができてしまったことで事情が変わった。正式に離婚したあとに、遺言書を書き換えて三宅を外すと言ったんです。財産は新しい妻と子ども、それからちなみさんに遺すという内容で。それで、離婚が成立する前に殺そうと考えた」
「嫉妬心もあったんだと思います。ずっと一緒にやってきた東城さんが恋人のいいなりになってーー」
 
 
昏睡状態の東城の病室では、恋人の小川とちなみに遺言書の説明がされました。もともとあった遺言書の内容通りに遺産はちなみさん一人に相続されることとなります。しかし、請求されれば、小川のお腹の子には5億を支払うという形です。
 
「何なのよ。その遺言」
「愛情じゃないわよ。気が弱くてあたしを捨てきれなかっただけ」
 
ちなみはため息を付きました。
 
「そういう人なの。破天荒なロッカーを気取ってるくせに悪人になりきれない。私、もう数矢の財産はいらない。放棄します。あなたと数矢の子どもに全部あげる」
 
「本気ですか?」と栗山。
「ちなみさんお金は必要ですよ」と蓮見もちなみに語りかけます。
 
「わかってる。でも、そうしたいの。その代わり、延命治療のこと、二人でもう一度話し合わせて。お金じゃなくて、あなたと私の気持ちが納得するように」
 
 
一方、脇坂夫妻の離婚協議は脇坂の苦悩の末、無事に離婚する方向で決まりました。
 
「ご主人が離婚に応じるそうです」
 
蓮見は玲子に脇坂の署名が入った離婚届を渡しました。
 
「ありがとう。あなたのおかげ」
「内容を確認して、ご署名お願いします」
「ここにサインしたら、あの人の秘密はもう喋っちゃいけないのよね」
「はい。離婚に応じる代わりに脇坂さんのパソコンから知り得た情報をすべて明かさないとの条件ですので」
 
玲子は彼女を見つめました。
 
「結婚記念日にご主人にネックレスをもらった?」
「え?」
「そのことでうちの主人になにか言われたんじゃない?」
「あのどういうーー」
「盗聴しているのよ。あなたの家を脇坂が。パソコンのフォルダに録音したのが入ってて。保存はできなかったけど。知ってるのはこれだけ」
 
後日、自宅を調べると情報通りに盗聴器が見つかったのでした。
蓮見はそれを壮一郎に伝えます。
 
壮一郎はその夜の取り調べで脇坂に伝えました。
 
「私の自宅がどうも引っ越しのどさくさで盗聴器を取り付けられていたらしいんですよ。盗聴を指示した人間の奥さんから聞いたそうです」
「証明できるなら証明してみろ。もし仮にそうだとして、そんなことをお前に伝えた人間も守秘義務違反になるぞ」
「そうかもしれませんが、裁判になれば指示をした人間の違法捜査も明るみに出て、彼は追い込まれるでしょうね。ただ、私は今回この件を闇に葬るつもりです。その代わり、もう一度保釈を請求させていただきます」
 
脇坂は荒れ狂いました。
蓮見のもとには夫の保釈が決まったことの連絡が入ります。
 
「夫の保釈が決まった。明日、帰ってくるって」
 
蓮見はそう多田に伝えました。
すると多田は笑って言います。
 
「話がある」
第5話の感想はここをクリック
今回の案件は、ロックスターである東城数矢の資産に関する離婚協議でした。正妻である東城ちなみの彼に対する愛情がとても健気で感動しました。長年連れ添い支えてきて、たとえ彼に離れていかれても、そんな彼のことをずっと大切に思っていたことが彼女の言動からひしひしと伝わってきます。
 
最後に東城ちなみが遺産を放棄して、彼の延命治療だけはちゃんと一緒に考えたいと愛人に申し出た場面では見ていて涙が出ました。そして、弁護士としてお金が手に入らないことは不利益であるものの、依頼人の意向をちゃんとくんであげた多田と蓮見も素晴らしかったです。
 
今回、夫の壮一郎の件についても大きく進展しました。とうとう彼は保釈されることになるのです。家族とどうなるのか、多田と蓮見の関係性はどうなってしまうのか。 
次回が大変気になるところです。
<見逃し動画>第4話 「過去との決別」
 
TVerでの無料配信は終了しました
 
第4話の公式あらすじ

杏子(常盤貴子)が以前住んでいた家の近所の男子高校生・荻原翔平(佐藤緋美)が傷害致死容疑で逮捕された。翔平の母・奈津子(須藤理彩)は、かつて杏子の親友だったが、壮一郎(唐沢寿明)の逮捕後、真っ先に杏子との連絡を絶った人だった。杏子は、奈津子のことを考えて、この事件を朝飛(北村匠海)にメインでやってもらうようにお願いする。翔平は容疑を否認するが、指紋や目撃証言があり、無実を証明する手がかりが見つからない。朝飛は早々と情状酌量にすべきだと主張。本人が否認している限り、裁判で争うべきだという杏子と対立する。そんな中、朝飛が隠していたある事実が発覚する…
 
一方勾留中の壮一郎の起訴が決まる。脇坂(吉田鋼太郎)は、壮一郎を何としても有罪にすべく、さらに追い込みをかける。そんな時、壮一郎のもとにある男が会いにやってくる。それは杏子を想う多田(小泉孝太郎)だった…。
 
<出典>グッドワイフ(日本ドラマ)公式

第4話のネタバレはここをクリック
前回、蓮見杏子らは鉄道事故の案件に無事に勝利しました。しかし、その裏には横浜地検も過去に関与していたことがテレビのニュースで明らかになってしまったのです。
 
蓮見は、夫の壮一郎に自分が利用されていたことに気づき、彼が自分に向き合ってくれたのではないとわかったことで打ちのめされてしまいます。そして、同僚である多田征大の前で涙してしまったのでした。
 
 
裏切りの友人と息子
夫の思惑に踊らされていたと気づいた蓮見は、たくさんの涙を流しました。それを見ていられない多田は、彼女を強く抱きしめるのです。
 
「もうやめろよ。もう別の未来を行けばいい」
 
ふと我に返って多田は彼女から離れます。
 
「ごめん」
 
蓮見は首を小さく横に振りました。
 
「私の方こそ、職場でこんな話」
「いや、蓮見は悪くない」
「もう大丈夫。落ち着いたから。じゃあ、仕事戻る」
「うん」
 
彼女は慌てて多田のオフィスを出ました。互いに少し動揺したのでした。
 
 
多田と蓮見が互いを意識して少し関わりが薄くなっている中、ある日、弁護士事務所に高校生がやってきました。
 
「蓮見さん、お客さんです。息子さんかな? イケメンですね」
 
受付の佐竹凛子が取次、蓮見を呼びます。
蓮見が会いに行くと、そこには以前住んでいた住宅街で友人だった女性の息子が待っていました。
 
「翔平くん!?」
 
彼は静かにお辞儀しました。
荻原翔平の話によると、彼は昨夜にマンションの屋上に行って隠れて友人とタバコを吸っていたところをマンションの管理人に見つかってしまったのです。管理人をふりきって逃げましたが、翌日になって友人の家にパトカーが来ているのに気づいた彼は慌てて蓮見のいる弁護士事務所にやってきたのでした。
 
「誰かが警察に通報したらしくて。今朝、学校行くときに友だちの家の前に警察がいて」
「喫煙は補導の対象だからね。不法侵入もしてるし」
「なんとかできない? 俺たち野球部だからこのままじゃ大会に出られなくなるんだよ」
 
 
二人は彼の家がある住宅地に来ていました。
 
「昨夜の雪まだ残ってるねえ」
「なんで親に話さないといけないの? おばさんいつも味方になってくれたのに」
「未成年なんだからご両親に黙ってるわけにいかないでしょう。あたしだってお母さんとは友ーー」
「友だち? おじさんの事件があっておばさんをすぐに無視したのに? そういうやつだよ。うちの母親はーーおばさんの家、売れたんだね」
 
蓮見の過去の自宅の前に差し掛かり、彼はそう言いました。蓮見の脳裏には、過去の引っ越してきた頃の自分たち家族の光景が蘇りました。
 
「行こう」
 
翔平の家にたどり着き、チャイムを鳴らすとすぐに彼の母である荻原奈津子が出てきました。
 
「どうしたの? 急に」
「お久しぶり」
「元気で良かった。電話しようとしてたのよ」
「急にごめんなさい。実は外にーー」
「いいんだけど、今皆来ててーー」
 
彼女の家の中にはたくさんのママ友が来ていました。
中からわざわざ出てきたのは、以前にママ友だった宇佐美沙織でした。
 
「久しぶりねえ、蓮見さん。よく顔出せるわね。あの頃は、お宅のせいでワイドショーなんかも来るし、この辺の皆が迷惑したのよ」
「ごめんなさい」
 
突然、パトカーのサイレンが鳴り響きます。そして、自宅の前で翔平はパトカーへと強引に乗せられてしまいます。
 
「ちょっと、この子が何をしたんですか?」
「署で話を聞かせてもらうだけですから」
「待ってください。弁護士です。どういう嫌疑ですか?」
「ある死亡事件の重要参考人としてですよ」
 
翌日、事務所では改めて皆で荻原翔平の事件に関する情報共有を行いました。
円香が事件の概要を説明しています。
 
「荻原翔平17歳。傷害致死の嫌疑のようです。事件当日、部活終わりに友人の中村明宏とマンションの屋上で喫煙しているところを管理人が発見。二人は急いで別々の方向へ逃げたが、管理人は翔平くんを追いかけたようです。逃げる途中、管理人に捕まってもみ合いになり、弾みで管理人がバランスを崩して地面に落下して死亡。昨日、任意同行で連れてかれ、そのまま逮捕されました。ちなみに、本人は否認しているようです」
 
「証拠は?」と多田。
 
「管理人のベルトの部分についた指紋と一緒にいた友だちの目撃証言みたいですね」
「死亡事件となると検察に逆送される事案ね。そうなると起訴はほぼ間違いないか」
 
神山はそう言いました。
ふと朝飛は疑問に思います。
 
「あの、どうして僕が担当なんですか? 蓮見先生の知り合いですよね?」
「親御さんとの関係がいろいろとあって、サブにつくのでメインをお願いできますか?」
「じゃあ、多田先生どうですか? 蓮見先生と一緒に」
 
多田は「俺は別件があるの」と退席してしまいます。
 
「とにかく、頼んだわよ。この子の父親は会社経営者だし、クライアントにしといて損はないから」
 
と神山は朝飛を後押しします。
 
「はい」と答える朝飛ですが、いつもの元気がありません。
「よろしくお願いします」と蓮見は彼に頭を軽く下げました。
 
 
先程の多田の態度に違和感を覚えた神山は、そのまま彼のオフィスへと向かいました。
 
「何かあった? 蓮見先生と」
 
そう言われて多田は吹いてしまいます。
 
「別に何もないですよ」
「もう。私だっていい歳した大人の恋愛にあれこれ口を出したくない。だけど、蓮見壮一郎の妻と不倫スキャンダルなんて、うちの評判に傷がつく」
「だから、別にーー」
「あなたの気持ちを知って一番困るのは蓮見先生よ。冷静になりなさい。これ以上、彼女に大変な思いをさせたい?」
 
 
その頃、拘置所では脇坂が壮一郎の取調べを行っていました。
壮一郎の手によって、横浜地検の頃にあった不祥事が明るみに出てしまった脇坂は更に苦しい状況に立たされていました。
 
「俺を失脚させるつもりだったんだな。君は根回しが上手だから。俺さえいなくなれば、次に来た人間に取り入って起訴を逃れられるかもしれないと」
「被害妄想ですよ」
「君の思惑通り。最初は責任をとって辞職をするつもりだったんだが、君のこの件を処理できるのは俺しかいないと検事正に頭を下げられてしまったんでね」
 
そういう脇坂でしたが、実際のところは彼が検事正に土下座をしてまで壮一郎の件だけは自分でケリをつけたいと頼んだのでした。
 
「お前を起訴してやる!」
 
壮一郎は脇坂をにらみつけています。
 
「それだよ。その顔を見たかったんだよ。正義感ヅラが悔しさに歪むのがな。裁判で有罪になれば、当然、検事も辞めるはめにもなる。女房まで使って小細工したのに残念だったな」
 
 
その事、蓮見は事務所で円香に過去の話をしていまいた。
翔平の母親は、蓮見があの住宅街に引っ越して最初に友人になった人でしたが、夫の事件があったときに一番最初に彼女を裏切った人物でもあるのです。
 
「そういうものですよね」
 
それを聞いて、円香は答えました。
 
「経験あるんですか?」
「いいえ。そういう目にあいたくないから諜報をくれる友だち以外はいらないんです」
 
蓮見は少し悲しそうな顔をしました。そして「行ってきます」と翔平の面会に向かったのでした。
 
「俺やってないよ。管理人なんて殺してない」
「友だちの目撃証言は警察からは聞かされてない?」と朝飛。
 
友人である中村明宏の証言によると、逃げ遅れた翔平のことが気になってマンションに戻ると非常階段で管理人ともみ合いになっている彼のことを目撃し、そのまま管理人が落ちたのを見たとのことでした。
 
「嘘だよ。もみ合いにはなったけど、非常階段じゃないし。ふりきって逃げてそのまま家に帰ったんだよ。信じてよ。俺やってないよ」
「信じるために調べてるから」
 
 
蓮見と朝飛は住宅街の野球部員に聞き込みをはじめました。
朝飛は尋ねます。
 
「今、野球部員の皆に話を聞かせてもらってるんだけど、荻原翔平くんと中村明宏くんは仲が良かったのかな?」
「はい。最近、特によく二人でつるんでいました」
 
そして、宇佐美沙織の家にも聞き込みに行きました。
 
「いい加減にしてよ。あなたの事件の騒ぎがやっと収まったと思ったら、今度は奈津子さんなの?」
「お騒がせしてごめんなさい。少しだけ息子さんのお話をーー」
「だいたい、奈津子さんがあんな状態の息子をほっとくから悪いのよ」
 
そういって玄関は閉められそうになりましたが、朝飛が割って入りました。
 
「あんな状態?」
 
 
「翔平くんは野球部のエースだったんですが、半年前に肩を壊してエースを外されたんです。それが理由で素行が悪くなっていたみたいです」
 
蓮見と朝飛は、聞き込み調査で入った情報を事務所で皆に共有します。
 
「やけになってグレちゃったかあ」と神山。
「学校で聞いたところ、一緒にいた中村くんは真面目な優等生でしたが、翔平くんに同情するうちに不良行為が見受けられるようになったようです」
 
スライド画面を操作しつつ、朝飛は説明しました。
 
「その中村くんが嘘をついている可能性は? 自分が管理人を突き落として、翔平くんに罪をかぶせた」
 
多田の意見を朝飛は否定します。
 
「それはないと思います。指紋の件もありますし。足跡もありますから」
「足跡!?」
 
新たな証拠に神山は驚きました。
足跡について円香は説明します。
 
「管理人が突き落とされた非常階段に犯人のものと思われる足跡が見つかったそうです。その足跡が、荻原翔平が逃げる途中に落としていた靴と一致したそうなんです。野球部で揃えて履いている運動靴でサイズは27。一緒にいた中村くんのサイズは24.5で足跡には一致しません」
「足跡、指紋、目撃証言かあ。厳しいなあ。これだけ揃っちゃ」
 
そう発言する多田を蓮見は見つめていました。
 
「なので、被害者遺族と示談にしようと思います。未成年だし、故意的ではなかったことに加え、反省する姿勢もあります。遺族と示談が済んでいれば、要件もだいぶ軽くなります」
 
朝飛の発言に蓮見は驚きました。
 
「ちょっと待って。罪を認めるんですか?」
「認めないまま裁判で負けたら情状酌量もつきません。もちろん、致死事件なので示談も難航するとは思いますが、僕は交渉には自信があるので」
「でも、本人はやってないと言ってるんです」
「だけど、証明できるんですか? 有力な反論も証拠もまったくないし。起訴されれば裁判員裁判ですよ。やけになってグレた不良と真面目だった優等生。裁判員がどっちを信じると思いますか?」
「将来のある未成年に傷害致死の前科がつくかどうかの瀬戸際です。示談より前にもっと検討させてください」
 
蓮見も朝飛も譲りません。
多田は二人の意見を理解しつつ、答えます。
 
「二人の意見はわかった。でも、大事なのは依頼人の意向だから。本人にはもちろん。両親にもこれからどうしたいのか聞いてそれで決めよう」
「わかりました」
「じゃあ、そういうことで。とにかく、最終的にこの事務所にプラスになるように判断するのを忘れないで」
 
神山がそういって出ていくと、朝飛も同じように部屋を出ていきます。少しうなだれている朝飛に「どうしたんですか。いつもの余裕がありませんね」と円香もついて部屋を出ていきました。多田は蓮見を呼び止めます。
 
「蓮見先生。ちょっといいかな」
「はい」
 
二人は多田のオフィスへと行きました。
 
「改めてだけど、こないだは本当にごめん。なんか変な雰囲気になっちゃって」
 
多田は深々と頭を下げました。しかし、彼の表情は明るいものです。
 
「いやいや、あんなに目の前で泣かれちゃ慰めろって言われてるようなもんだよね」
「でも、あれは本気だよ」
「え?」
「未来なんていくらでも変えられるんだからさ。もうこっちがだめだって思ったら、別の未来を行けばいい。どんな道を選んでも、俺は応援するよ。友だちとして」
 
多田は笑顔で彼女を励ましました。
 
「ありがとう」
 
 
お昼休み、屋上で昼食をとろうとする蓮見のもとに円香がやってきました。
 
「多田先生に告白でもされました?」
「ん?」
「さっき呼ばれてましたよね」
「意外。円香さんもそういう話ありなんですね」
「情報収集です。ほおっておこうかと思いましたけど、職場での色恋沙汰は業務にも影響するので」
「色恋なんてないですよ。多田先生とは長い友だちなんで」
 
円香は携帯にメモしました。
 
「今何メモしました?」
「でも多田先生の気持ちには気づいていますよね?」
「熱い友情を頂いております」
「建前はおいといて、薄々は気づいてますよね?」
「ランチにはちょっと会話が濃くないですか?」
 
と蓮見はおどけて円香を小突きますが、彼女の顔は本気です。
観念した蓮見はしぶしぶ本音を語ります。
 
「おぼろげには気づいてます。つい最近ですけど」
 
隙かさずメモする円香を蓮見は慌てて止めました。
 
「ちょ、メモやめて! 本当そういうの困るんで。朝飛先生との競争で多田先生に私情が絡んでると思われたらここで働けなくなりますから」
「利用すればいいじゃないですか。相手の好意を」
「そんなふうに手に入れた職場で働いたら、もう自分の力を信じられなくなります。ほら、今あたしこれ以上信じられないものが増えたらマズいんで」
「ご主人のことですか?」
「たった数ヶ月前なのに前に住んでた街がすごく遠く感じました。夫も、あたしが知ってる夫とはもう違うのかも」
 
 
保釈請求と見えない犯人
夫の壮一郎は、相変わらずトイレで佐々木と密会していました。
 
「トミオカ精工の計画倒産ですが、やはり林弁護士に動いてもらわなくて正解でした」
「どういう意味だ?」
「倒産後、トミオカ精工の大物役員はすでに再就職が決まっています。その再就職先は、すべてがある企業と取引のある会社ばかりでした」
「ある会社?」
「イーデンスです。トミオカ精工とイーデンスは繋がっていました」
「やはりそうか。引き続き関係を調べてくれ」
「はい。それともう一つ。起訴が正式に決まりました。なんとか引き延ばそうとしたんですが、脇坂に押し切られました」
 
脇坂は検事正に見切り発車ではないかと心配されますが、彼はそれを否定し、確実に有罪にすると宣言しました。
 
 
林弁護士が訪れたことで夫の起訴が確定したことと保釈請求が行われることを知った蓮見は、子どもたちに離婚する意思を伝えることにしました。その夜、蓮見はリビングに子どもたちを呼び出しました。
 
「二人には先に話しておきたいんだけど、裁判のことがはっきりしたらお母さん、お父さんと離婚しようと思っているの」
 
子どもたちはうつむきます。娘の綾香の目には涙が溜まっていました。
 
「ごめんね。でも、もしそうなったら隼人と綾香のことはお母さんがちゃんと守っていくから」
「俺は賛成だよ」
 
息子の隼人は、すぐに賛成しました。
 
「しょうがないよね」
 
綾香は声を振り絞り、答えました。そして、目からは涙がこぼれました。彼女の瞳からは次々に涙が溢れて止まりませんでした。「ごめん」と一言いうと自室へと戻ってしまいます。隼人はそんな妹のあとを追いました。リビングに取り残された蓮見は、一人涙を流すのでした。
 
 
翌日、蓮見は荻原翔平の自宅へ両親に会いに向かいます。
途中で過去の自宅を見つめて幸せだった頃の夫と子どもたちを思い出すのでした。
 
荻原家につくと翔平の母である奈津子に示談か裁判かの確認をとります。
 
「翔平くんの起訴が決まったの。これから裁判になるんだけど、こないだ話した示談の件、どうするのか聞きたくて。状況が厳しいのはたしかよ。でも、私としては本人が一貫して否認している以上、示談はせずに裁判で争ってあげたい」
「私も罪を認める示談なんてしたくない。翔平は嘘をつくような子じゃないの。主人も同じ考えよ」
「わかりました。最善は尽くすから」
「杏子さん。あのとき、庇えなくて本当にごめんなさい。周りの目が怖くて、ずっと気になってたの」
 
彼女の謝罪を聞いた蓮見は、過去彼女が言っていた陰口を思い出しただけでした。
蓮見が帰宅する際、奈津子は息子の着替えを彼女にたくしました。
 
「これ、翔平の着替え。渡してもらえる?」
「お預かりします」
「寒いはずねえ。今夜は雪なのね」
「予報でそう言ってたね」
「翔平も寒いでしょうねえ」
 
住宅街の道路では業者が塩化カルシウムをまいているのでした。
 
「あなたがいてくれて本当によかった。翔平のことお願いします」
 
 
蓮見と円香、朝飛の三人は、さっそく事件現場での目撃証言についての検証を始めました。
 
「管理人が落ちたのはここからですね。ここには管理人と犯人のものと思われる足跡しかありませんでした」
「で、犯人の足跡があったのがここ」
「それと繊維痕の鑑定結果と足跡から検出された成分の一覧表です」
「こんなもの証拠にありましたっけ?」
 
それは円香の諜報の友人である検事の戸梶涼太に頼んで入手した検察側の捜査資料でした。
 
「証拠として開示されていない資料もすべて手に入れました」
「すごい。ありがとうございます」
 
足跡から検出された成分は、ナトリウム、アンモニウム、塩化カルシウム、亜硝酸、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、酸化マグネシウムでした。
 
「それが関係あります? そんな情報でどう裁判で戦えっていうんですか?」
 
朝飛はそのまま屋上へと上がっていってしまいます。
 
「どうしたんでしょうね?」
「朝飛先生は法廷にたった経験がないんです」
「え!?」
「様子がおかしいので調べてみました。前の事務所では企業案件が専門で取引交渉ばかりを担当していたようです。和解交渉の能力はあるので、トラブルになっても裁判になる前に交渉で済ませてきたんでしょう」
 
蓮見は中村明宏の証言のとおりに再現して、地上から事件現場の非常階段を見上げた状況をカメラで撮影していました。そこであることに気づきました。朝飛にも確認してもらうと彼も納得します。
 
「本当だ。これならいけるかも」
 
 
そして、とうとう公判。
朝飛の主導で弁論が始まりました。しかし、緊張のあまり彼の口からはなかなか言葉が出てきません。「弁護人大丈夫ですか?」と小宮裁判長にも心配されてしまいます。何度かの確認の後に彼は話し始めました。
 
「中村くん。あなたはなぜ、被害者を突き飛ばしたのが被告人だと思ったんですか?」
「そう見えたからです」
「確かに荻原翔平くんが突き飛ばしたのを見たんですね」
「はい」
「裁判長。証人の供述明確化のため、映像を使用して尋問してもよろしいでしょうか?」
 
そこで相手側の検事が口を挟みます。
 
「ちょっと待って下さい。事前に申請もせず、ここで証拠調べもしていない映像を使用するなど認められるはずがありません」
「そのとおりです。弁護人、まずはその主旨と理由を明確にしてください」
「あ、と、証人の目撃証言の信用性がないことを証明ーー」
「弁護人、それは理由になっていませんよ」
「すいません」
 
小さな声で謝る朝飛。
検事側はどんどん発言します。
 
「裁判長。もうよろしいでしょう。早く打ち切って、尋問を再開させてください」
「弁護人、いかがですか?」
 
完全に萎縮してしまった朝飛は、言葉が上手く出てきませんでした。
見かねた蓮見はそこで発言します。
 
「裁判長。弁護人の蓮見です。こちらが尋問で使用したい映像は、証人が被告人を目撃した状況を再現し検証したものです」
 
検察側はさきほどの朝飛の発言をとり、反論してきます。
 
「裁判長。検察としては先ほどの弁護人の信用性がないという発言によって裁判員に著しい先入観を与えてしまった可能性があるため、証拠採用と再生、いずれも承服できません」
 
しかし、蓮見はすかさず反論します。
 
「その信用性がないという先入観を払拭するためにもこちらの証拠をしっかりと確認したほうがいいんじゃないでしょうか」
「双方の言い分はわかりました」
 
少しの審議のあと、裁判長は答えました。
 
「裁判所としては審理に必要な証拠だと判断し、証拠として採用します。検察官は、この証拠と尋問の結果に反論があれば主張する機会を後ほど設けます。それでいかがですか?」
「承知しました」
 
映像が承認されて、朝飛は席へと戻ってくると蓮見へ「代わりにお願いします」と言ったのでした。
 
「え!?」
「これ以上、失態を演じたくないので」
 
証拠として流れる映像は、証人である中村明宏が目撃した状況を再現したものでした。しかし、午後9時に証人が非常階段を見上げて目撃したという状況では、非常階段には夜間照明がついていたので逆光になる犯人の顔は見えないはずなのです。
 
「証言通りの状況なら、犯人の顔は逆光で見えないことになります。本当に見えていたんですかね?」
「でも、ウィンドブレーカーが見えるじゃないですか」
「この野球部のウィンドブレーカーですか?」
「はい。そうです。それは野球部員しか持っていないし、あのとき、それ着てここにいたのは僕と翔平だけだったんだから」
「では、あなたは顔ではなくウィンドブレーカーを見て、犯人は被告人だと思い込み証言したんですね」
「俺、ちゃんと見ました」
「あなたが見たのは、野球部のウィンドブレーカーを来た別の野球部員だった可能性もあるのではないですか?」
 
「異議あり、意見を求める尋問です」と検事。
 
「弁護人、ご意見は?」
「いえ、結構です。これで終わります」
 
 
支え合いと決別
事務所に戻り、蓮見と朝飛は神山のオフィスで神山と多田に公判の報告をします。
 
「野球部員の中に真犯人がいるかもしれないってことね」と神山。
 
「でも、証人が顔を見てないってだけじゃ、荻原翔平が犯人だという検察側の主張を崩せないからなあ」
 
多田は資料を見ながら言いました。
 
「はい。大至急野球部員のアリバイを調べます」
 
そんな朝日を見て神山は褒めます。
 
「さすがね。その調子で頑張って」
「はい。失礼します」
 
神山のオフィスを出てから蓮見に彼は言います。
 
「どうして言わなかったんですか? 自分の手柄だって。僕なら絶対言います」
「言ったらあたしを恨むでしょう。同情じゃなくて、今は余計な敵を作っている余裕がないから」
 
蓮見はそう言って笑いました。彼女が去ったあと、円香は彼に資料を渡しに来ました。
 
「朝飛先生。野球部員の住所と朝飛先生の分担分です」
「どうも」
「少しだけ見直しました。朝飛先生のこと」
「見直すポイントなんかありました?」
「弁護を蓮見先生に任せたのは、依頼人のためですよね」
 
円香は初めて彼に微笑みました。
 
 
多田は夜、フットサルに参加していました。同じフットサルに参加している裁判官の小宮竹生は蓮見のことについて語ります。
 
「お前の事務所の蓮見杏子? なかなかやるなあ。どんなもんかと思ってたけど」
「どうです? あの裁判」
「まあ、なかなか厳しいな。でも、蓮見杏子はいい。年食ってるわりに色っぽくて」
「やめましょうよ。そういう言い方するの」
 
多田は上着を脱ぐとフットサルコートへと出ていきます。
 
「え、お前。ああいうのが好みだっけ? もっとこう気軽なタイプが好きだったろう。旦那が戻らなきゃいいと思ってる?」
「そういうんじゃありませんよ」
「多田、裁判所に保釈請求が来てるらしいぞ」
 
 
翌日、事務所では朝飛に呼び出されて蓮見が駆けつけていました。
 
「すいません。聞き込みの途中に」
「本当ですか? 電話で言ってたこと」
「はい。アリバイで嘘をついていた生徒がいたんです。確認したとき、事件の夜は家にいたと言っていたのに、その生徒を外で目撃したという証言が出て」
「誰ですか?」
「宇佐美友也っていう生徒です。知り合いの子でしたよね? この生徒が真犯人だった可能性がありますよね。検察にかけあってきます」
 
 
その頃、多田は蓮見の夫である壮一郎に面会していました。
 
「弁護士の多田といいます。杏子さんと同じ事務所で働いています」
「そうですか。妻がお世話になっています」
 
壮一郎は笑顔でお辞儀をします。
多田の表情はいつになく固く、怒っているようでした。
 
「保釈の請求を取り下げてもらえませんか」
 
多田のお願いに壮一郎の笑顔は一瞬で消えました。
 
「非常識なことを言っているのはわかっています。でも、あなたは自分のために彼女を利用しましたよね。彼女が気づいてないとでも思っているんですか? こんな状況で帰っても彼女が辛いだけです。請求を取り下げないなら、納得の行く説明をしてやってください」
「あなたは職業上の秘密を妻や恋人に話しますか?」
「相手が苦しんでいれば、話しますね」
 
壮一郎は声を上げて笑いました。
 
「私の妻は強い人間です」
「泣いてましたよ。僕の前で」
 
また壮一郎の顔から笑いは消え去りました。
 
「あなたはどういう立場でここにいるんです?」
「彼女の上司であり、友人です」
「それだけですか?」
「あなた次第ですね。彼女の苦しみを取り除いてるつもりがないなら、あなたは家族のもとに帰ってはいけない」
 
そういうと多田は去っていきました。
 
 
検察にかけあった朝飛は、日が暮れてから事務所に帰ってきました。
外は雪が降っています。
 
「検察はやっぱりだめでした。事件に直接つながる証拠がなければとなんとも。こっちの依頼人には指紋も足跡もありますからね」
 
朝飛は蓮見と円香に向かって言いました
そして、円香も苦しそうにいいます。
 
「こっちも何も出ません。厳しいですね。アリバイが崩れただけじゃ、彼が犯人だとは証明できませんから」
 
二人の残念そうな会話を聞いている蓮見の携帯が鳴ります。
電話の相手は隼人でした。事務所の入り口で息子は待っていました。彼は蓮見のために晩御飯として彼女が好きなアボカドと鮭を混ぜたおにぎりを持ってきてあげたのです。
 
「わざわざありがとう!」
「母さん、人が良すぎるよ。そんな頑張って」
「ん?」
「翔平のお母さんになんかしてもらった? 困ったときだけいい顔されてさ。お父さんのことも。綾香のことは気にしないで、お母さんが思うようにしていいんだよ」
「そんなこと言ってくれるようになっちゃってえ」
 
と蓮見は息子の頭を撫でようとしました。
「やめてよ」と隼人は逃げます。
 
「ありがとう。裁判のことは、お母さんを頼りにしてくれた翔平くんが依頼人だと思ってやってるから。なんだろ。最近思うんだけど、人に優しくなるには自分が強くなくちゃいけないのかもしれないね。お母さんは今、強くなるために頑張りたいと思う。強い弁護士になって、強い人間になって、依頼人と隼人と綾香を守るために。それ以外は今はどうでもいいかな」
 
蓮見は息子に向かって笑いました。
 
「これ、ありがとうね。早く帰んな!」
「わかった。あ、崩れてるかもしれないけどね。さっき転んだから。雪降ってるじゃん。駅にチャリ停めるときにさ、滑っちゃって」
「危ないなあ。気をつけて帰ってよ。前の家だったら、自治体がしっかりーー」
「自治体が何?」
 
 
そこで、蓮見はふと気づいたのです。
慌てて事務所のデスクに戻ると書類を探し始めました。
 
「何を探してるんですか?」と尋ねる朝飛。
 
「検察が提出していない証拠の中に、翔平くんの靴の裏のーー」
「ああ、付着物の成分表ですか」
 
円香はデスクの資料の山の中から引っ張り出しました。
 
「これです」
「ありがとう」
 
資料を眺めて、蓮見は「やっぱり」とつぶやきます。
 
 
翌日、宇佐美友也の自宅を朝飛とともに蓮見は訪問していました。
朝飛は友也を問い詰めます。
 
「友也くん。これは野球部全員で揃えている靴だよね。どういうときに履くの?」
「練習がある日の行き帰りに」
「なんなの? そんなこと確認してどうするのよ?」
 
母親の宇佐美沙織は、玄関を閉めようとしました。しかし、蓮見と朝飛は閉まる前に玄関の中へと強引に入ります。
 
「すみません。翔平くんが事件の現場に落としていた靴についていろいろと調べているんです」
 
蓮見は説明しました。
 
「練習がある日に履くとしたら、皆が最後に履いたのは?」と朝飛は、引き続き友也へ質問します。
 
「事件があった日です。その次の日は練習が休みで。でも、そのまま停部になっちゃって」
「ああ、そっか。じゃあ、君も事件の日が最後。これかっこいいよね。手入れとかどうしてるの?」」
「別に何もしてません」
「洗ってもいない?」
「はい」
 
蓮見は雪について尋ねます。
 
「事件の夜、遅い時間に雪が降ったの覚えてる? 翌日までまだ残ってたよね。ここの自治体のルールで雪の予報が出た日には転倒防止で融雪剤として塩化カルシウムをまくことが決まってるでしょ。だから、事件のあった日も夜間に降るはずの雪に備えて18時に道路に塩化カルシウムがまかれていた」
「それがこの子に何の関係があるのよ」
「現場に残された犯人のものと思われる足跡から塩化カルシウムが検出されているの」
「そんなの当然でしょ。翔平くんはこの地域に住んでるんだから」
「でも、現場に落としていた翔平くんの靴の裏からは塩化カルシウムは検出されていないの」
「え、どうして」
「翔平くんは事件の夜、学校を出てから家には戻らず、そのまま事件現場のマンションに行ったの。だから、道路にまかれた塩化カルシウムを踏んでいなかったの。犯人は27センチのこの靴を履いて、18時以降にこの自治体を歩いてマンションに向かった人間。友也くん、事件当日のアリバイを聞いたときに17時すぎに家に帰ったって言ってたよね。でも、事件のあった日の21時に外で友也くんを見たという人がいるの」
「ちょっと何の話。友也はずっと家にいたわよ」
「もしかしたら、家を抜け出してあのマンションに行ったんじゃないかな。この靴を履いて」
「やめてよ。うちの子を疑ってるの?」
「他の野球部員の生徒全員にはアリバイがあります」
「この子にもあるわよ。誰かが見間違えたのよ」
「それを証明するためにも友也くんの靴を見せていただけませんか? 18時以降に家を出ていなければ、塩化カルシウムが靴につくはずがないんです」
「いいわよ。見せてあげなさい。調べればわかるんだから」
 
しかし、友也は動きません。
 
「どうしたの? 靴を持ってきなさい」
 
彼は黙ったままでした。
 
「ここから先は、警察で話をしてください。連絡をしておきますから」
 
 
後日、弁護士事務所には荻原奈津子が来ていました。
朝飛が説明をしています。
 
「友也くんは最近成績が下がっていて、母親にプレッシャーを駆けられていたそうです。事件の日、翔平くんたちがタバコを吸いに行く相談をしているのを聞いて、自分も行ってストレスを発散したくなった。ところが、ついたとき翔平くんたちはもう逃げたあとで、管理人に共犯だと思われたので逃げたら、もみ合いになり、突き飛ばしてしまったそうです」
 
そこへ多田がやってきました。
 
「今、検察から連絡がありました。翔平くん、控訴の取り消しになると思います」
 
それを聞いて、荻原奈津子はほっとした表情で頭を下げました
 
「ありがとうございます!」
「今後ともお困りの際はお役に立ちますので」と神山は頭を下げました。
 
 
屋上で多田と朝飛はコーヒーを飲みます。
 
「手こずりましたけど、いい結果を出せてよかったです」
「おつかれさん」
「蓮見先生もけっこう頑張ってましたよ」
「珍しいな。ライバルを褒めるなんて」
「多田先生が蓮見先生を好きな気持ちがちょっとわかったって話です」
「な、親父さんに認められる人生よりもお前の人生だからな!」
「おつかれーっす!」
 
朝飛は少しおどけていうのでした。
 
 
その頃、蓮見は事務所で荻原奈津子から感謝を告げられていました。
 
「杏子さん。本当にありがとう」
「よかった。沙織さんにはお気の毒だけど」
「しょうがないわよ。自分が子どもを追い詰めていたんだから。ねえ、今度ランチしない? また昔みたいに。電話するから」
 
彼女は笑顔でそういいました。
しかし、蓮見は「口だけでしょう」と辛辣な一言を放ちました。
荻原奈津子から笑顔は消え、固まりました。
 
「きっと電話なんかくれない。でも、いいのよ。世の中なんてそういうものだって私も気づいたから。引っ越すときに言えなかったけど、10年間いろいろとありがとう。お元気で。幸せになってね」
 
蓮見の表情は晴れやかですっきりとしていました。しかし、過去の友だちに背を向けて歩き出した彼女の目には涙があるのです。それでも、しっかりとした足取りで去っていくのでした。
 
そんな蓮見を円香が飲みに誘います。
 
「このあと一杯飲みに行きますか」
「え!?」
「六時半に下で待ってます」
 
喜ぶ蓮見をみて、多田は「なんかあった?」と尋ねます。
 
「過去を失っても、本当にあるのかもしれないね。別の未来が」
 
そのとき、蓮見の携帯に林弁護士から電話が入ります。壮一郎の保釈請求が検察からの強い反対で却下されたという連絡でした。それを蓮見は多田に言います。
 
「夫の保釈が却下された」
第4話の感想はここをクリック
自分を裏切った友人の息子を弁護することになった蓮見杏子でしたが、彼女はそれでも私情に流されるようなことはせずに親身に彼を助け、不利な状況であっても諦めずに勝利しました。
 
彼女が弁護士として強くなることで自分自身も強くなろうする姿勢は、とても力強く、勇ましいです。見ている私も元気づけられるときがあります。そんな姿を見て、彼女の息子もがんばれているのだろうと思うと胸が締め付けられるようです。
 
また、そんな彼女の努力や苦しみを理解している多田が、恐れもせずに夫である壮一郎のもとへ忠告しに行く姿はとてもかっこよかったです。次回、壮一郎の事件が進展していること、蓮見と多田の関係に変化が起きていることを期待しています。
<見逃し動画>第3話 「隠された罠」
 
TVerでの無料配信は終了しました
 
第3話の公式あらすじ

回送列車の脱線事故が発生。死亡した運転士の遺族代理人として、杏子(常盤貴子)、多田(小泉孝太郎)、朝飛(北村匠海)が担当することになった。相手の東神鉄道の代理人を務めるのは河合映美(江口のりこ)。杏子たちは過重労働による事故で1億円の賠償金を提案するが、映美たちは運転士の居眠りだとして50万円の見舞金を提案。真っ向から主張が対立する。しかも、妊婦である映美は形勢が悪くなると打ち合わせ中でも体調不良を理由に交渉を中断する始末。そんな映美に翻弄され、杏子たちは窮地に追い込まれていく。
 
一方、杏子は拘置所にいる壮一郎(唐沢寿明)と面会し、過去の幸せだったころの話をする。壮一郎の逮捕後、初めて笑顔になった杏子は、もう一度前向きな気持ちになっていく。そんな杏子を見て多田ははがゆい思いだが、気持ちを抑えながら過重労働を証明すべく、勤務実態を調べていく。その過程で、杏子はある違和感に気づき…
 
<出典>グッドワイフ(日本ドラマ)公式

第3話のネタバレはここをクリック
前回、神山多田弁護士事務所の名誉顧問である神山大輔の公判を担当し、初勝利を得た蓮見杏子。大輔のおかげで過去の勘や弁護士としての意義、公判の面白さを思い出した彼女はとても輝いていました。
 
そんな中、東京地検の特捜部長である脇坂博道が蓮見に接触したり、トミオカ精工が倒産し贈収賄容疑の新たな証拠があがったりと夫の壮一郎は窮地に立たされているのでした。彼は秘密裏に担当弁護士の林幹夫にトミオカ精工の倒産や脇坂について調べさせます。
 
蓮見は脇坂の接触によって、夫の贈収賄に関わる宝飾品のことを知ってしまいました。彼女はこの1年の間に自分に贈られた結婚記念日のプレゼントがその宝飾品だったことを自ら調べ、涙したのでした。
 
 
鉄道会社と地道な攻防戦
蓮見杏子たちは、鉄道会社を相手に過重労働によって起きた死亡事故の案件にとりかかっていました。この事故によって列車の運転手である井口達雄が亡くなり、遺族である妻の井口晴乃が今回の依頼人です。
 
蓮見、朝飛、多田の3人は、鉄道会社との話し合いに及んでいました。
鉄道会社側は過重労働を受け入れる気はなく、こちらの条件の賠償金1億円を呑むつもりはないのでした。
 
「回送列車がカーブを曲がりきれずに脱線。この事故で巻き込まれた被害者はなし。ただ運転していた井口達雄さんだけが無念にも亡くなりました」
 
多田は皆の前で事件の顛末について説明しました。
 
「まだ続くんですか? そのわざとらしい演説」
「今一度、みなさんとこの悲劇を共有したかったんです」
「事故調査委員会の調査結果をお忘れですか? ブレーキ痕がなかったんですよ。つまり、事故の原因は運転手の居眠りなんです。訴えたいのはこっちのほうですよ」
「その居眠りの原因はーー」
 
多田が話を続けようとすると、朝飛が凄まじい剣幕で口を挟みます。
 
「そもそも原因は、過重労働ですよ。井口さんは居眠りするほど疲れ果てていたんです。井口さんは生前、この手帳に勤務時間をメモしていたのはご存知ですよね。
今年に入ってから時間外労働は月平均85時間」
 
朝飛はテーブルを平手で叩きながら「これは明らかな過重労働ですよ」と訴えます。そんな彼を多田はなだめました。
 
「ええ、それなら見ましたよ。労災も降りてすべて終わってから突然出てきた手帳ですよね。まるで会社にもっと金を出せと言わんばかりに」
 
「その言い方はないんじゃないですか」と三人がワイワイ言い出すと同時に彼女は「ちょっといいですか」とビスケットの箱を取り出し、一口食べだします。鉄道会社側の担当弁護士である河合映美は、もうすぐ臨月ではないかというお腹を抱えていました。
 
「もうこの時期、少しずつしか食べられなくて」
 
「出た」と多田。
 
「井口さんの勤務表と賃金台帳です。こちらの正式な記録では、直近半年間の時間外労働は月平均44時間です。これで過重労働を主張するのは無理があるでしょう」
 
「サービス残業をさせていたんじゃないですか」
 
蓮見は勤務表を確認しながらいいました。
それに鉄道会社側の依頼人である労務担当員の安西博嗣は答えます。
 
「ありえませんね。時間外労働は徹底的な指導を行っているくらいでーー」
 
そのとき、朝飛の携帯に着信が入ります。多田は彼を「おい、失礼だろう。切っておけよ」と注意します。それは「知り合いの報道記者からの連絡だ」と朝飛は言います。
 
「もう嗅ぎつけたのか。マスコミはこの手の事件には飛びつくからなあ」
 
そんな多田の言葉に「大丈夫ですよ。小芝居ですから」と川合は笑いました。
蓮見は、もう一人の労務担当員である小川洋子に質問します。
 
「小川さん。事故の前、井口さんの奥様から何度か過重労働に関して相談を受けていますね」
「いえ、記憶にありません」
「上に報告はなさらなかったんですか?」
「記憶にありません」
「改善の提案もしなかった」
「記憶にありません」
「お住いはどちらですか?」
「記憶にありまーー」
 
小川が言いかけた顔を見て、蓮見は笑顔です。
 
「すみません。小川さん自身が東神鉄道をお使いなのか知りたくて聞きました」
「つまり、御社は利益追求のために改善要求の声を無視してーー」
 
「おああ!」と川合弁護士はお腹を押さえました。
 
「あまりに攻撃的なやりとりに子どもが驚いてしまって」
「とにかく、うちの依頼人である井口さんの奥様は東人鉄道さんに対して1億円の賠償金を請求しています」
「50万ですね」
「は!?」
「賠償金ではなく、見舞金として」
「1億が50万ってーー」
「では、裁判にしますか? その場合、車両の損害賠償を請求する訴えを起こしますよ」
「皆さんでどうぞ」
 
そうして、川合弁護士はカルシウム、タンパク質、鉄、ビタミンの入ったビスケットを差し入れとしてたくさん置いていきました。
 
 
その頃、東京地検では脇坂が壮一郎の贈収賄についてのマスコミからの取材を受けていました。そして、壮一郎は拘置所で林弁護士からトミオカ精工の倒産に関する情報を得ていたのです。
 
 
後日、弁護士事務所では、蓮見たちが鉄道会社からの資料にあった井口の勤務表の確認や他に何か指摘できる点がないかと調べていました。
 
「なんか出た? 井口さんの勤務表」
 
多田からの指摘で蓮見と朝飛が答えました。
 
「ううん。向こうの言うとおり時間外労働は月44.5時間」
「キレイに収まりすぎてて逆に不自然ですけどね」
「会社の指示だろうな。残業は45時間以内でつけとけって」
 
多田はガラスボードに貼られた列車の写真を見ます。
 
「しっかし、古そうな列車だなあ。東神鉄道って経営状態どうなの?」
 
その指摘には円香が答えました。
 
「悪くはないです。一時は落ち込んでいましたけど、ここ数年でV字回復しています」
 
そのとき、朝飛がもらったビスケットを食べて「これ美味しい!」と喜んでいました。そんな彼をみて多田は「気に入ってんじゃないよ」と言いましたが、円香に「食べ物には罪はありませんから」と言われて彼はうなずくのでした。
 
「あの、ずっと考えているんですけど、このORってなんだと思いますか?」
 
蓮見は、井口の手帳を見て尋ねました。そこには「OR北原」と記されています。
そこへ川合弁護士が取次もまたずに強引に入ってきてしまいました。
多田はテーブルの上にある資料を皆に隠すように慌てて伝えます。
 
「先日はどうも」
「どうしました。川合先生。1億払う気になったんですか?」
「同業者として忠告に来たんです。事故の3日前に東人鉄道で一斉検査が実施されたのはご存知ですか?」
「一斉検査?」
「年に一度、会社が乗務員に対して抜き打ちでやってる薬物検査。その結果が出たんです」
 
彼女が出した検査結果の用紙には、井口の検査結果にアンフェタミンの検出があったことが記載されていました。
 
「井口さんは、違法薬物を使用していた可能性があります」
 
 
依頼人のマンションに行く途中で、蓮見と円香は列車事故の場所に花を手向けました。そこには毎日新しい花が飾ってあることに気が付きます。
 
 
「まさか、違法薬物なんてやっていません」
「事故の際の刑事報告書を確認すれば、結果はすぐにわかりますから少しだけお待ち下さい」
「でも、本当に主人は薬なんか」
「他の薬の成分が検出された可能性もあります。念の為、家にある薬をすべてお借りできますか? 漢方薬やサプリも」
「わかりました」
「主人が勤務時間を手帳にメモしてたのはいつかなんとかしなきゃいけないって思っていたからだと思うんです。運転手の皆が疲れているって言っていました。長時間の過密労働でこのままじゃ大変なことになるんじゃないかって。もと早く会社を辞めろって言ってあげればよかった。味方は家族だけなのに」
 
そういうと彼女は涙を流していました。
 
 
その夜、蓮見がマンションに帰ると子どもたちが玄関まで慌ててやってきました。
 
「お母さん、お母さん」
「なに?」
「突然来たんだよ。すげえ荷物で」
「あれは絶対泊まっていく気だよ」
 
台所では壮一郎の母が夕飯の準備をしていました。
子どもたちはおばあちゃんのことを歓迎していません。
 
「あたしね、しばらくお手伝いさせてもらおうと思って」
「え?」
「杏子さん大変でしょう。お仕事と家のこと」
「お義母さん。本当にご心配なく、お気持ちだけで」
「そうようね。ごめんなさい。主人も死んじゃって、あのだだっ広い寂しい家に毎日一人でしょう。庭に遊びに来てた猫もなんだか来なくなっちゃってね。ずーっと一人なもんだから、あれこれ考えちゃって」
「あの、本当にお手伝いは大丈夫なんですけど、宜しければ、たまに遊びにいらしてください」
「そうお? じゃあ、そうしようかしら」
 
蓮見の後ろでは早くおばあちゃんに帰ってもらいたい子どもたちが彼女を陰ながら応援していました。しかし、蓮見が壮一郎の母の孤独をかわいそうに思って遊びに来ることを許可したことで、子どもたちはがっかりして部屋へと退散していきました。
 
「お茶を入れますね」
「杏子さん。本当にごめんなさいね。私も落ち着いて考えたんだけど、壮一郎を許してくれなんて言わない。杏子さんは自分と隼人と綾香のことだけ考えて」
「あ、でも一つだけお願いしていいかしら?」
 
翌日、蓮見はお義母さんの頼みのために壮一郎と面会していました。
 
「頼まれた差し入れ届けておいたから」
「ごめん。今度は自分で来るように伝えてもらうよ」
「お義母さんはあなたのこんな姿見たくないのよ」
「親不孝な息子で最低な夫だよ。こないだは、悪かった」
 
壮一郎は静かに頭を下げました。
 
「お義母さんに私と子どものことだけ考えてって言われたの」
「うん、それでいいよ」
「違うの。私、最初からそうだったかもしれない。あなたがここで辛いだろうとか、あんなふうに怒るほど追い詰められてるとか頭ではわかってても、実際には考えてなかった」
「当然だよ」
 
二人の間に沈黙が流れました。すぐに壮一郎は口を開きます。
 
「子どもたちは大丈夫か?」
「綾香は塾で新しい友だちができたって。隼人は相変わらず数学が苦手みたい」
「隼人の自転車のこと覚えてるか?」
「え?」
「隼人が初めて自転車に乗った時、いくら練習しても下手くそで何度も転んで泣いてたろう。でも、調べたら隼人が悪いんじゃないくて、自転車が壊れてた。根本が違ってたんだ。上手く行かないときは、勉強法を見直してみてくれっていってやってくれないか」
 
蓮見はその話で笑います。
壮一郎は彼女の顔を見て微笑んでいました。
それを不思議に思う蓮見。
 
「なに?」
「いや、久しぶりに見たから。君の笑った顔」
 
蓮見はそう言われてまた微笑みました。
 
「じゃあ、仕事戻るね」
「がんばれよ」
「うん、ありがとう」
 
そのとき、二人の間にはどこか優しい空気が流れているようでした。
 
 
事務所に戻ると多田が例の薬物検査の結果を教えてくれました。違法薬物ではなく、井口家にあったサプリメントにアンフェタミンに似た成分があったことがわかったのです。
 
「検死報告書にも違法薬物が検出された結果はなかったし、薬物に関しては白だよ」
「でも変だよね。調べればすぐに違うってわかるのに、どうして川合先生はわざわざ言いに来たんだろう」
「あいつのことだから、何か魂胆があるはずだーー実はさ。この案件、蓮見は依頼人の指名だったんだよ」
「指名?」
「どっかの弁護士に相談したら、うちを紹介されて蓮見のことを聞いたんだって。16年間主婦だったのが子どものために復帰して活躍してるって。で、勇気が出たと」
 
蓮見はそのことに喜びました。そこへ、朝飛が二人を呼びに来ます。
 
「東神鉄道、ここ数年同じような事故がなかったか調べてみたんです」
「同じような事故?」
「もし恒常的に過重労働があるなら、他にも過労が原因で事故が起きているかもしれない」
 
その指摘に蓮見は感心しました。円香は「あったんですか?」と尋ねます。
 
「ありませんでした」
「ないのかよ」
「でも、オーバーランならありました。今年に入って3件」
「オーバーランーー」
 
蓮見は彼のオーバーランの指摘でなにかに気づきました。
 
「はい。決められた停止位置を行きすぎちゃうあれです。あれも過労が原因で起きてるかもしれませんよね」
「でも、どうしてわかったんだ? 国交省への報告義務はないだろ」
「大きいものならネットニュースにもなりますし、SNSでも調べられます」
「これ見てください。同じ日付です」
 
蓮見が井口の手帳からメモったORに関する日付と名前は、朝飛が調べたオーバーランのあった日と同じでした。
 
「ORってオーバーランじゃないですか。遠藤、小林、北原は運転手で、これは3人がそれぞれ起こしたオーバーランの記録」
「あり得るな」
「3人に話を聞いてきます。オーバーランの過重労働だったと証言があればーー」
 
「過重労働を証明できる」という朝飛。蓮見は彼をにらみました。
 
「そうすれば取れますね。賠償金1億円」
 
 
誰かの努力と思惑
こうして円香と蓮見は、鉄道会社に出向いてオーバーランの件の運転手たちに話を聞きに行きました。しかし、どの運転手もはっきりとしたことを話してはくれず、逃げるように去っていってしまいます。
 
おかしいと思った円香は、川合の配っていたクッキーが置いてあることに気づきました。
 
「これ、口止めされていますね。あの弁護士に」
「ああ、わかった。あの違法薬物。あれ調べさせてる間に口止めしたんですよ。あれ時間稼ぎだったんですよ。悔しい!」
 
と蓮見は悔しがりました。そんな二人の様子を鉄道会社の労務担当である小川が覗いているのでした。
 
その頃、事務所では神山と多田が昼食を屋上で食べながら、採用について相談していました。
 
「なるほどねえ。頼むよ。お父さんの独立でクライアントが減っちゃったんだから」
「あの女、絶対泣かせてやる」
「で、相談だけど、朝飛先生と蓮見先生どっちを採用するか。あと3ヶ月で決めない?」
「え? 半年って約束ですよ」
「多田先生がどうしてもって言うから、二人を見て決めることにしたけど、3ヶ月で十分でしょ。経費もかかるし」
「って、それもう朝飛先生に決めてますよね」
「あたしだってね。蓮見先生を支援したい気持ちもあるのよ。思ったより、気概もあるし、これからどうやって這い上がっていくか見てみたい。だけど、事務所のこと考えたら、16年もブランクがある44歳より、優秀で長く働ける26歳がいいに決まってるでしょう」
「じゃあ、いっそのこと二人とも採りましょうか」
「どうしても一緒にいたいんだね」
「違いますよ。約束ですからね。半年ですよ」
「半年たったら、蓮見先生は45よ。45ってあれよ、私なんて老眼が始まってたからね」
 
 
円香と蓮見は、外で二人ラーメンを食べていました。
 
「ご主人に検察庁を首にされた件ですけど、検察事務官ってお給料が安いんです。それで副業でバイトをしていて、それがバレてご主人に解雇されました。その腹いせであなたにご主人を信じないほうがいいって言ったんです」
「嘘ですよね。円香さんは夫の何かを知っていて、あえて嘘をついてくれているんじゃないですか。ありがとうございます。夫のことを信じるかどうかは、自分でこれから決めます」
「そうですね」
 
オーバーランの件は、円香の調査により運転手の一人である北原がすでに退社して社宅にいないことがわかりました。口止めされていないかもしれない北原に事情を聞きに行きたい二人ですが、住所がわからないことで行き詰りかけています。
 
「あ、芳名帳はどうでしょう? 北原さんの住所です。運転手仲間なら、井口さんのお葬式に来ているかもしれません。芳名帳に住所があれば、そこからたどれるかもしれません」
「たどれる!」
 
二人は見つけた住所で北原のマンションを見つけて訪ねましたが、玄関先で門前払いされてしまいました。
 
「部屋の中、高級な家具ばかりでしたよ」
「そうだった?」
「このマンションも高そうですよね」
 
そこは高層マンションの一室でした。
 
「調べてみましょう」
 
 
その後、事務所に川合弁護士が突然やって来ました。
 
「ああ、立ったままでごめんなさい。もう座るのもしんどくて」
「多田と朝飛は出ておりまして。お電話いただければお待ちしていたんですけど」
「蓮見先生、多田先生の新しい彼女なんですか?」
「新しいアソシエイトです」
「多田先生ってモテるんですよ。どうして独身なのかと思っていたら、こういうことだったんですねえ」
「動揺させて、主導権を握ろうとなさっているんですよね。そのお腹の作戦と同じ」
 
二人は会議室の席につきます。
 
「うちの依頼人の社員に許可なく接触してらっしゃるそうですね。会社を辞めた人間にまで」
「当時の同僚に事情を聞くのは別に問題ないでしょう」
「いいえ、必ず代理人の私を通してください」
「でしたら、あなたにお聞きしますね。東神鉄道を辞めた北原さんですけど、井口さんの事故の一週間前にオーバーランを起こしてますね」
「それがなにか?」
「井口さんの事故の後に会社を辞めて、再就職しています。さほど給料の高くない会社なのに、高級マンションに住んで高級家具に囲まれている。なんかの口止め料でも入ったんですかね」
「宝くじでも当たったんじゃないですか」
「河合先生。一応言ってみますけど、井口さんにも遺されたお子さんがいらっしゃるんですよ」
「だから、会社が温情を示しているうちに和解して、少しでもお金を手にすることですね」
 
蓮見は、あまりの言い方に彼女のお腹に「お母さんに似ないと良いですねー」と語りかけたのでした。
 
「会社が過重労働を認めるまで、徹底的に調べますよ。もちろん、そのときは労基署に通報しますから」
 
 
そうして蓮見は多田も連れて、もう一度北原のマンションを訪れましたが北原は不在のようでした。二人は張り込んで北原が帰ってくるのを待つことにしました。
 
 
その頃、拘置所では脇坂が佐々木に多田のことについて話していました。
 
「多田とかいったな。あの蓮見の女房に貼りついてる二枚目の弁護士」
「はい」
「その男の話をしたら、蓮見のやつ怒り狂ってたぞ」
 
脇坂はインタビューのネット記事の内容の確認をしていました。
それが終わると、彼は佐々木に蓮見壮一郎のことを尋ねます。
 
「なあ、佐々木。蓮見は何を隠してるんだ」
「何をっておっしゃりますと?」
「単なる贈収賄でつまづくような男じゃないだろう。裏になにかーーなあ、何を隠してるんだと思う?」
 
佐々木を見つめる脇坂ですが、佐々木は黙ったままです。
 
「まあ、何を企んでいるにせよ。俺がここで終わらせてやる。3日だけやる。蓮見を落として起訴に持ち込め。じゃないと、お前も生き残れなくなるぞ」
「承知しております」
 
その日、壮一郎と佐々木はトイレの中で落ち合いました。
 
「脇坂にあと3日と言われました。強引に起訴をするつもりかもしれません」
「もう少しだけ引き延ばせ。手は打ってある」
「手?」
「それとトミオカ精工の倒産だが、どうやら計画倒産だったらしい」
「計画倒産。誰の情報ですか?」
「林先生だ。引き続き詳細を調べてもらってる」
「危険です。外部の人間に余計なことを。さっきの手を打ってあるっていうのも林ですか?」
「それがなんだ?」
「どうして私じゃないんですか?」
「お前はいま脇坂に疑われている可能性がある」
「そうですよ。だから、こうやって。私がどんな危険をおかしてこうしてると思ってるんですか」
 
壮一郎は、トイレの水を流しました。
 
「俺は今すぐここから出たいんだ。俺が動けりゃ、誰にも頼まない。この手で脇坂を引きずり落としてやる」
「申し訳ありません。ですが、計画倒産は私に調べさせてください」
 
凄まじい剣幕で彼は出ていきました。
佐々木は、そんな壮一郎を見てうなだれます。
 
 
 
まだ、蓮見と多田は、マンションに張り込んでいました。辺りはもう日が落ちています。
 
「冷えるなあ。あ、俺が待つから蓮見帰っていいよ」
「大丈夫。多田くんこそ帰っていいよ」
「張り込みはりきるなあ。なんかあった?」
「こないだね。夫の面会で私初めて笑ったの。子どもが小さかった頃の話をして」
「そうなんだ」
「あの頃は未来がなくなるなんて思ってもいなかった。もっと夫を見ていたら違ったのかも。事件の前からなんかおかしいなって思うことはあったの。もしかしたら、その頃、仕事とか女性とか問題を抱えていたのかもしれない。でも、見ないふりしてた。家庭が壊れるのが嫌だったから。どうなるかわからないけど、今一度夫と向き合ってみようと思ってる」
 
蓮見の意思を聞いて、多田は少し黙りました。
そして、少し苦しげな顔でうなずきます。
 
「応援するよ」
「ありがとう」
「今日は、出直すか」
 
そういったとき、ちょうど北原が帰ってきたのでした。
彼は慌てて部屋へと走っていきます。
 
「なんで逃げるんですか?!」
「ああ?」
「北原さん。何かご存知なんですよね? もし会社に過重労働があるのなら、井口さんと同じような事故がまた起こるかもしれません。井口さんはそれを防ぎたくて北原さんのオーバーランをメモしていたと思うんです! 北原さん!」
 
しかし、北原は二人の制止を振り切って部屋に入ってしまいました。そんな二人のことを小川が覗いていましたが、慌てて逃げていくのでした。
 
その夜、多田はバーで一人お酒を飲んでいます。そこへ着物姿のキレイな女性が現れました。
 
 
利用された勝利
過重労働の証拠が上がらない中、北原の証言が必要だと蓮見と多田は、また彼のマンションに行こうとしているとそこに電話が入ります。二人はその人との約束でカフェにやってきました。
 
「来ないなあ」
「19時って約束したんだけどーー」
 
そのとき、カフェの入り口でウロウロしている女性を見つけて、蓮見は追いかけました。それは、労務担当員の小川でした。
 
 
後日、事務所に川合弁護士と鉄道会社の二人も来てもらい話し合いが始まりました。
 
「ご連絡を頂いてよかったですよ。こちらも提案がありまして、2000万お見舞金としてお支払いします。これで手を打ちませんか?」
「安西さん、もうやめにませんか?」
 
多田は鉄道会社の安西に語りかけました。
 
「勝手に依頼人と話さないでください」
「あったんですよね。過重労働」
「ちょっと」
「ある方がすべてをお話してくださいました」
「誰です?」
「今の時点ではお答えできません」
 
 
告発してくれたのは、労務担当の小川でした。北原のオーバーランの原因が過重労働だったことや高額な退職金での口止めなどを教えてくれたのです。
 
「過重労働のせいでオーバーランをした北原さん会社に訴えても改善はされず、その一週間後に井口さんも事故を起こしてしまった。その方はそうおっしゃっています」 
「そんな。いるのかいないのかわからない証人の言うことで私たちのーー」
「じゃあ、裁判しますか。そしたら会えますから」
 
川合弁護士は皆の顔を見回すと、証言したのが小川であると気づきます。
 
「その方は本当に裁判に来ますかね? その方にも将来があるでしょう。いっときの感傷で妙なことを口走って今頃後悔なさってるんじゃないですか。だって他に証拠はないんですよ。その方の勘違いで東神鉄道さんが迷惑をこうむったら大変なことになるでしょう。今ならまだ間に合うと思いますけど」
「勘違いかどうかは、裁判になれば明らかになりますよ。他の運転手だって声を上げるかもしれないし。集団訴訟になれば、賠償金も桁違いですからね」
「いや、それどころか。この件が過労死だと認定されれば刑事事件になって確実に起訴になるんですよ。そしたら、経営者の首なんて簡単に飛んじゃいますよね」
「安西さん、裁判で裁かれる前に自主的に社会的責任を果たしたほうが会社が受けるダメージは少なくて済みます」
「井口さんは、会社の指示で日常的に過重労働させられていた。認めて頂けますね?」
 
そのとき、川合弁護士はお腹を押さえました。
 
「え!? ここで?」
「代理人、体調不良のため今日は中止にしてください。代替日は後日おって連絡します」
 
と川合が帰ろうとすると安西が音を上げました。
 
「もういいです!」
 
「え? もういいんですか?」と驚く朝飛。
 
「安西さん? ここは一旦ーー」
 
川合は彼の発言に慌てました。
 
「裁判は困るんだよ。要求は呑む。もうここで終わりにしてほしい」
「では、そちらの請求に応じます。ただし、しかるべきところへはこちらから報告しますので、それまでは一切口外しないでください。それが条件です」
「こちらの条件は、賠償金1億円。井口さんへの正式な謝罪。それから、もう二度とこのようなことが起きないように労務管理の改善を図ること」
「わかってる」
 
そうして鉄道会社の人たちは帰っていきました。
 
依頼人の井口さんの奥様は泣いて喜んでいます。正式な謝罪と賠償金のことは追って連絡することになり、蓮見たちは勝利したのです。しかし、多田も蓮見も浮かない顔をしていました。
 
「で、あなたたちはどうしてそういう顔してる?」
 
神山が不思議そうに尋ねました。
 
「どう思う?」
「案外、あっさりでしたよね」
 
蓮見も多田も腑に落ちない様子なのです。
 
 
後日、円香と蓮見が事故現場に花を手向けに向かうとホームレスの人が花を手向けていました。それは毎日新しく手向けてあった例の花だったのです。
 
「あ、あの人だったんですね。あの花供えてたの」
「失礼ですが、関係者の方ですか?」
「亡くなった方のお知り合いの方ですか?」
 
円香と蓮見は、口々に尋ねて彼を追いかけます。
 
「そうじゃないとだめなの?」
「あの、もしよろしければ理由を教えていただけますか?」
 
彼は怯えて逃げていってしまいますが、線路の近くにあるくぼみに入ったのでした。
 
「怖いんだよ。怖いの」
「え!?」
「俺、俺聞いちゃったんだよ。事故の音。ファーンって音が聞こえてさ」
「音って汽笛ですか?」
「それが悲鳴だったみたいに聞こえて怖くて夢に出てくるんだよ。だから花供えてるの。早く成仏してくれ」
 
フォームレスである彼の話に蓮見は引っかかりました。
 
「汽笛?!」
「どうかしましたか?」
 
そして、蓮見は夫が言っていた息子の自転車が壊れていた話を思い出しました。
 
「終わりじゃない。終わりにしてはだめだったんですよ」
 
 
最終的な話し合いで鉄道会社を訪れると蓮見たちは、改めて話をします。
「そちらの依頼人は遅れてるんですか?」と川合弁護士は尋ねました。
 
「お呼びしませんでした。依頼人との話し合いで和解はしないことにしたので」
「何を言っているです?」
 
蓮見の話に川合弁護士は戸惑います。
 
「私たちは根本的に争点を間違っていたからです。そうですよね、安西さん」
「何の話ですか? ここまで来て」
「そちらが隠していたのは過重労働ではなかったということです。危うく騙されるところでした。昨日、事故現場に行ってきたんです。事故の時に音を聞いたという人の話をお聞きしました。汽笛の音です」
「それがなにか?」
「事故調査委員会の報告書にはブレーキ痕はなかったとありました。常日頃の過重労働があったため、依頼人も私どもも井口さんが居眠り運転をしたためだと思い込んでいました。でも、寝てたら、汽笛はならせませんよね」
 
「目が覚めて慌てて鳴らしたんでしょう」と川合弁護士。
それに朝飛が答えます。
 
「脱線しそうなのにブレーキをかけずに汽笛を鳴らします? 起きていてブレーキをかけたのにきかなかった。そう考えるのが自然でしょう」
「安西さん、隠したかったのは過重労働ではなく、ブレーキの破損ではないですか? 事故の影響で破損したと思われていたブレーキは、事故の前から破損していた。井口さんの過失ではなく、車両のほうが壊れていたんです」
「またずいぶん突飛なことをおっしゃいますねえ。証拠はあるんですか?」
 
「お願いします」と多田は呼びました。
そうして円香とともに現れたのは、元東神鉄道の運転手である北原でした。
 
「北原さん。3ヶ月前のオーバーランは、ブレーキがきかたなかったことが原因なんですよね?」
「そうです」
 
「おい!」と安西は取り乱します。
 
「本当は1年に一度、交換しなくちゃいけないブレーキシューを経費の節約で二年一度しか交換してなかったんです。だから、ブレーキに不具合が出てきた」
「お前、嘘を言うな」
「ちょっと休憩にしましょうか」
 
川合弁護士も話を止めようとしますが、北原はやめませんでした。
 
「いやいや、バレちゃったらもうしょうがないでしょう。これ以上隠して共犯になんのはごめんですよ。だから、あのときに言ったんすよ。該当する車両を全部止めてくれって。なのに、外にバレたら困るから少しずつこっそり整備しようとして。だから、井口さんは死んだんじゃないすか!」
 
北原は安西に向かって怒鳴りつけました。
 
「こちらが北原さんに近づいたので、ブレーキの件がバレる前にさっさと示談にしてしまいたかったんですね。かといってあっさり過重労働を認めてしまっては、かえって怪しまれるかもしれない。だから、わざと小川さんにリークさせた」
「内部告発に食いつかせて、あたかも真実にたどり着いたように思わせ、過重労働だけですべてを終わらせようとしたんですよね」
 
蓮見と多田の説明に相手側はどんどん顔色が変わりました。
「いやあ、肉を切らせて骨を断つ。勉強になります」と朝飛。
 
すると、小川は今までのおどおどした態度からふてぶてしくテーブルに肘をついて言います。
 
「私は、会社に指示された通りにやっただけでーす」
「わかった。いくら欲しい?」
 
安西はなんとか収めようとします。
 
「もうそういう段階の話じゃないんですよ。国交省に報告して、しかるべき処置を依頼しないとこちらが怒られてしまいますから。もちろん、こちらとしては集団訴訟も視野に入れて、改めて訴訟を起こさせていただきます」
「わかりました。では、私はこれで」
 
川合弁護士はさっそうと帰ろうとしました。それに慌てる安西。
 
「おい、うちの弁護士だろう」
「私がお受けしたのは過重労働の弁護です。何か問題をお抱えになっているようでしたので、アドバイスはいたしましたが、まさかこんな重大な犯罪をお隠しになっているとは思いませんでした。道義的責任がありますので、この件は辞任させていただきます」
 
「見捨てましたよ」と朝飛は笑います。
 
「あんたらはいつもそうだ。正義人みたいな顔して、組織のことは何一つわかっていない。確かにうちのバカな部署が浅はかなことをして事故は起きた。だから、金は払うと言っているだろう。事が公になれば、何千という社員が路頭に迷う。会社には彼らを守る責任がーー」
「わかりました。裁判でそう主張するんですね。はたして、その何千人の社員があなたに感謝してくれるかどうか」
「安西さん。公の場で責任を果たして、本当の意味で社員を守りましょうよ」
 
 
 
そうして、裁判が決まり神山は大喜びです。
 
「やったじゃない。過重労働に加え、列車の不備なら1億5千万は堅いねえ」
「蓮見先生が汽笛に気づいたおかげです」
「本当ねえ。あ、でも、採用を決めるのは半年じゃなくて3ヶ月」
「なんで!?」
「やだもう。すきあらば交渉してくるんだから」
「いや、早慶に切り捨てるのは惜しい人材です」
「朝飛先生だってオーバーランに気づいたでしょう。今回は引き分け」
 
 
その後、東神鉄道脱線事故のニュースが流れました。蓮見はこのニュースを自宅で見ています。キャスターの会話がテレビから流れていました。
 
「なお、東神鉄道には半年前に横浜地検の捜査が入っていたことがわかりました。これは、事故の前に横浜地検が事態を把握していたということでしょうか」
「そうなんです。定期的に部品交換をしていないのに部品代を架空計上しているという内部告発があったようなんです」
 
映像は東京地検前の中継に変わりました。
そこでは当時、横浜地検の責任者であった現東京地検特捜部長の脇坂がたくさんのマスコミに囲まれている状態でした。
 
マスコミは「当時の横浜地検の責任者はあなたですよね?」「事故は未然に防げたのではありませんか?」「当時、ちゃんと捜査をしていれば運転手の方もなくならずに済んだのではありませんか」と脇坂を問い詰めていました。
 
そのニュースを多田は事務所で、佐々木は東京地検で見ています。
 
脇坂は検事正である御手洗直人に呼び出され、謝罪していました。
 
「申し訳ありません」
「どうするのよ。脇坂くん。お答えできませんじゃ済まないよ」
「はっ。重々承知しております」
 
 
その後、蓮見が井口の奥様に確認をとったところ、蓮見を彼女に紹介したのは夫の担当弁護士である林幹雄だったことがわかったのでした。蓮見の脳裏には、夫が彼女に笑顔で話した子どもの話がよぎりました。
 
「びっくりする。私を利用して自分の敵を窮地に追い込んだんだよ。あの人が全部仕組んでた。わざわざ私を指名させて、子どもへのアドバイスのふりしてヒント与えてーー」
 
蓮見は多田のオフィスで彼に話をしていました。そして、涙を流しました。
そんな彼女を多田は抱きしめます。
 
「もうやめろよ。もう、別の未来を行けばいい」
第3話の感想はここをクリック
今回、鉄道事故での遺族による訴えが蓮見杏子の案件でしたが、事件の内情が二転三転と変わっていく様がとてもおもしろかったです。どこか怪しい動きのある案件だったので、最後に壮一郎が絡んでいることがわかったときは鳥肌が立ちました。
 
壮一郎が自分の目的のために妻でさえも利用するようになったことで、彼がもう妻のことを守るべき家族ではなく、社会に出た一人の人として他人になってしまったのだと感じました。利用されたことに気づいた蓮見の気持ちがどれほど辛かったでしょう。その痛みを想像すると私の胸も苦しくなりました。
 
次回は、蓮見と多田の関係がどのように変化しているのか楽しみです。
<見逃し動画>第2話 「その男、黒か白か」
 
TVerでの無料配信は終了しました
 
第2話の公式あらすじ

事務所の名誉顧問であり神山佳恵(賀来千香子)の父、神山大輔(橋爪功)が事務所を尋ねてくる。大輔は、酒酔い運転を起こし、さらに警官に抵抗し公務執行妨害を起こした罪で起訴されたのだ。
大輔は無罪を主張するが、状況証拠からは、どうみてもクロ(有罪)。
その弁護を杏子(常盤貴子)は大輔から依頼される。多田(小泉孝太郎)は、新人には無理だと反対するが、杏子は自ら担当することを決意する。しかし、大輔から、新人で自分の言うとおりになるから指名されたと聞かされて愕然とする杏子。自由奔放な大輔に翻弄される。しかも、神山から大輔が妻を殺したという衝撃の告白を聞かされる。
 
そんな中、特捜部長の脇坂(吉田鋼太郎)が杏子に接触してくる。脇坂から聞かされる話から、壮一郎(唐沢寿明)の疑惑がますます深まっていく。杏子は疑いを持ちながら壮一郎と接見して、壮一郎に核心の部分を問う。そこで衝撃の告白をされる。杏子は壮一郎とのことも、そして担当する大輔の弁護でも窮地に立たされる。絶体絶命な状況の中、杏子は大輔の事件での些細な異変に気づき…
 
<出典>グッドワイフ(日本ドラマ)公式

第2話のネタバレはここをクリック
前回、夫の贈収賄容疑と不貞行為による事件によって生活が脅かされてしまった蓮見杏子は、16年ぶりに弁護士として職場復帰しました。司法修習時代に同期だった多田征大の紹介のおかげで神山多田弁護士事務所に仮採用されたのでした。
 
しかし、本採用は一人だけ。仮採用された人は蓮見だけでなく、新人弁護士の朝飛光太郎もいたのです。生活のためにも子どものためにも蓮見は、本採用を得るために困難の待ち受ける依頼へと立ち向かうのでした。
 
 
嘘か真か、立ちはだかる困難
蓮見杏子は、弁護士業を頑張る中、子どもたちの面倒も笑顔を絶やさずに一生懸命にしていました。そんな蓮見ですが、夫である壮一郎の不倫問題の心労は重くのしかかっているのでした。
 
子どもたちの弁当を作っている際にも不倫のことを思い出しては、苦しい表情をなんども振り払って子どもたちに笑いかけているのです。
 
 
その日、多田と神山は神山のオフィスで打ち合わせをしていました。
 
「どうしたんですか。神山先生がそういう顔で甘いもの食べるときは何かあるときですよね」
「思い出していたのよ。こないだのこと」
 
神山は以前、彼に「忘れられない女性がいるって言ってたけど、蓮見先生じゃないわよね?」と尋ねていました。
 
「あのときも、違うって言ったじゃないですか。15年以上も前のことですよ。そんなに僕が純情に見えますか?」
「そうね。相手は人妻だし、不倫スキャンダルでキャリアを棒に振るバカには見えないわね。とにかく、事務所の採用問題に私情は挟まないでね」
「僕だって事務所の経営が第一ですから」
 
 
その頃、拘置所では蓮見壮一郎が、顧問弁護士の林幹夫に多田について聞いていました。壮一郎は、妻の傍にいる多田のことをとても気にしているのです。
 
多田が妻と司法修習時代の同期だったことや独身で彼女がいないこと、神山の事務所に引き抜かれて二年前に共同経営者となったことなどを彼は知ります。
 
 
そんな中、神山事務所に電話が入りました。
電話を受けて、神山は大きな声で「ええ!? なんだとお!」と叫んだのでした。
 
その後、神山と多田は会議室にずっとこもりっぱなしです。その様子に朝飛はすぐに気づきます。それについて、彼は蓮見に話します。
 
「なんか変じゃないですか。神山先生も多田先生もずっとこもっちゃってるし。何か難しい案件ですかね」
「さあ」
 
蓮見は彼の話に興味を示しません。
 
「蓮見先生って本当に賢い奥さんだったんですね。人のことには首突っ込まない癖がついちゃってるんでしょう。駄目ですよ。弁護士は目と耳で情報を稼がないと。社員の枠譲りませんから」
 
そう言われてやっと蓮見は彼を睨みつけたのでした。そのとき、事務所に一人の初老の男がやってきました。
 
「大輔先生!」
「おお、凛子元気か? なんだお前、キレイになったな。男でもできたのか?」
「セクハラですよお」
「大輔先生、いらっしゃいましたー」
「大輔先生! え、ご旅行だったんですか?」
「豪華客船で世界一周クルーズだ! ま、顧客の開拓ってやつだな」
 
彼の周りには社員の皆が集まってくるのでした。
 
「お土産たくさんあるぞー。いろいろあるぞー」
 
皆が歓声をあげました。この騒ぎを見て、朝飛は気づきました。
 
「なるほど。このせいか」
「どなた?」
「知らないんですか? この事務所の名誉顧問、神山大輔。神山先生のお父さん」
 
そこへ神山と多田も合流しました。
 
「ちょっとお。待ってたんですけど」
「あ、お前もなんかいるか? 更年期障害に良いって」
「いりません!」
 
神山と大輔は親子の仲が悪いのでした。そんな皆をおいて、朝飛は彼に挨拶しました。それに引き続いて、蓮見も挨拶します。
 
「ご挨拶よろしいですか。朝飛です。1989年に行われた最高裁での知的財産侵害事件の弁護、大変感動いたしました。ベスト・オブ弁護士です。日本代表」
「あんたは、もうひとりの新人か?」
 
朝飛の挨拶はそこそこに、彼は蓮見に声をかけました。
 
「蓮見と申します。よろしくお願いします」
「あ、えーとね。君には中国の香水。民時代の詩人の魂が宿ってるから」
「信じるなよ。そんなのアメ横でも買えるんだから」
 
神山は彼女に耳打ちするのでした。
 
「それで誰が弁護するんだい?」
 
大輔はソファに腰を下ろすと皆に尋ねるのでした。
 
「弁護?」
「その話は、向こうでーー」
「別に隠す必要ないだろう。どうせ、すぐわかるんだ」
 
大輔は、二ヶ月前に酒によって事故を起こしたのです。掲示板に衝突したので器物損壊罪と酒酔い運転。逮捕の際に抵抗したので公務執行妨害の容疑もかかっていました。しかし、彼の雇った弁護士が使えなかったので首にしてしまったのです。そこで彼は神山多田弁護士事務所に依頼したのでした。
 
「裁判は明日です」
 
円香の説明に朝飛は驚きます。
 
「裁判?! いや普通、略式起訴で済みますよね?」
「罪を認めていないので」
 
大輔は、迷いもなくいいます。
 
「器物損壊罪は認める。だが、ほかは冤罪だな」
「冤罪って。だって飲んだんですよね?」
「日本酒を4杯な。でも、それは事故の後だ」
 
そんな彼に多田は困惑するばかりです。
あまりの話に神山は呆れました。
 
「そんな屁理屈、裁判で通用するわけない。弁護士のくせにそんな言い訳恥ずかしくないの?」
「依頼人が白といえば、白で弁護するのが弁護士だろ」
「はいはい。じゃあ、もう勝手にして」
 
途方に暮れた神山は、彼と周りをおいて去っていきました。
それでも多田はなんとか取り繕うとします。
 
「まあ、とにかく、うちで弁護しますから」
 
が、そんな多田をおいて、彼は自ら蓮見を担当弁護士に指名するのでした。
 
「えーと、あんただ。あんたに私の弁護を頼むから」
「は?! 無理ですよ。新人にこんな無茶なーー」
 
慌てて止めようとする多田ですが、大輔は聞きません。
 
「素人の方がいいんだよ。君は何も考えずに私の言われたとおり弁護すればいいんだからな」
 
蓮見はそのまま彼の担当になりました。
大輔を含めた多田と蓮見の3人で状況の確認を始めます。彼の証言では、事故は手元が狂っただけのものでお酒は飲んでいなかったとのこと。
 
「そのあとでどうしてお酒を飲んだんですか?」
「動揺していたからな。酒で落ち着こうと思ったんだ」
「わかりました。じゃあ、弁護方針を確認しようかーー」
 
多田はそう蓮見にいい立ち上がりました。
 
「いらん。法定で俺が教えてやる」
「ちょ、大輔先生ーー」
 
蓮見は念を押して確認します。
 
「確認だけさせてください。事故を起こす前は、本当にお酒を飲んでいなかったんですね?」
「飲んでいようと、いまいと。俺が飲んでいないと言ったら、飲んでないんだよ。そう弁護しろ」
 
 
翌日、裁判のために法定を訪れた蓮見と多田、円香の3人。
多田は蓮見に弁護方針について念を押していました。
 
「とにかく、俺との打ち合わせ通りにやればいいんだ」
「はいーー」
 
そのとき円香は、以前の職場で同僚だった検事である戸梶涼太に「おい!」と声をかけられました。「先に行ってください」と円香は戸梶のもとへと行きます。
 
「こんなところで声かけないで」と円香は彼に注意しました。
 
「ああ、悪い。また、頼みたい情報があってさ」
 
 
そんな二人を見て、多田は言いました。
 
「元の同僚の検事かな。円香、検察庁にいたから」
 
多田と蓮見は一足先に法定へと向かいますが、その途中で東京地検、特捜部長の脇坂に呼び止められるのでした。
 
「あの、蓮見さんじゃあありませんか?」
「そうですが」
「ああ、やっぱり。あの、東京地検の脇坂と言います。ご主人の後任で特捜部長をやっております。大変でしょう。いろいろと。あの、私もね、言ってるんですよ。ご主人に。罪を認めさえすれば、すぐにでも拘留は解かれる。家族のもとに帰れるんだぞって」
「夫のことは夫の弁護士に任せてますので」
「すいません。そろそろ公判なんで」
 
多田も話を終わらせようと助け舟を出しましたが、脇坂の話は終わりません。
 
「その公判ね。うちの吉村がお相手するんですけどもーー」
 
脇坂の後ろには目付きの悪い吉村検事が立っていました。
 
「なだめるのに苦労しましてね。実は彼、蓮見さんが特捜から追い出した男なんですよ」
 
吉村は彼女を睨みつけます。
 
「あなたのご主人は、恐ろしい人ですよ。自分の目的のためなら、部下だって平気で虫けら同然に切り捨てる」
「まあまあ。蓮見くんも家族のこと思えば更生してくれるだろう。お子さんを巻き添えにするのはかわいそうだからな」
 
そんな二人に多田は釘を差します。
 
「それ以上言うなら、弁護士会を通じて抗議しますよ」
 
しかし、子どもを話に出されて蓮見は黙っていません。
 
「夫を警戒しているようですけど、女を本気で怒らせたことがないんですね。夫に罪があるなら起訴してくださって結構です。子どもだけは駆け引きに使わせません」
「行こう」
 
二人は立ち去ろうとしましたが、脇坂は違う質問をします。
 
「ところで、この1年の間にご主人からネックレスや指輪をもらったことはありませんか? トミオカ精工が賄賂としてご主人に高価な宝飾品を贈ったって言っているんですよ」
「そこまでですよ。事件について話を聞きたいなら、正式な手続きをとってください」
 
あまりの言動に多田は怒ります。
 
「公判、がんばってください」
 
脇坂は笑顔で去っていきました。蓮見壮一郎を起訴でないと責任をとらされるのは脇坂なので彼も必死なのです。そんな脇坂と蓮見たちのやり取りは、佐々木達也も見ていました。
 
そして公判。
検察側が提出した証拠の映像では、大輔の状態は泥酔に近いような言動が映っていました。証人である警察官の証言もあります。
 
反対尋問に入り、蓮見は争点を酒酔い運転に絞ろうとしますが、大輔は「公務執行妨害を認めるつもりはない」と勝手に主張してしまいます。それに驚く蓮見。
 
「え!?」
「あの店で俺に何をしたか、あの小僧に聞いてみろ」
「どういうことですか?」
 
大輔の勝手な発言に裁判長は激怒しました。
 
「申し訳ありません。あの、店の中で証人は被告人に何をしましたか?」
「飲んでいて立とうとしなかったので外に出るように注意しました」
 
「それだけか?」とまた大輔は勝手に発言してしまいます。
 
「裁判長! よろしいですか? なんですか、これ」
 
相手側の検事である吉村は、蓮見と大輔の惨状を指しました。
 
「もう黙ってください」
「あの映像に証拠が残ってる」
「証拠?」
 
しかし、大輔は蓮見に対してコソコソとヒントを話します。
裁判長はとうとう大声をあげました。
 
「いい加減にしなさい。今度、発言したら退廷を命じます」
「あとは弁護人に任せます」
 
困惑する蓮見に「自分で考えろ」と彼は言うのでした。
その後、蓮見は裁判長に確認をとった上で相手側の証拠の映像を何度も確認しますがなかなか糸口に気づけません。あまりの長さに相手側の検事も裁判長もしびれを切らしてしまいました。
 
「弁護人もういいでしょう。質問をしてください」
「もう一度、見せてくれませんか」
「裁判長、いつまで素人の茶番に付き合えばいいんですかね」
 
証人である警察官は、鼻に吸入器で薬を注入しました。「ほら、彼。風邪が長引いていて辛いんですよ」と吉村検事は発言します。そのとき、蓮見は証拠映像の会話内容についての資料で「抵抗するならまた手錠をかけますよ」という警察の発言に気づくのでした。
 
「弁護人、目的を明確にしてください。質問がないならーー」
「続けます。 裁判長、この映像には証拠能力がありません」
 
「は? 何を言ってるんですか」と吉村検事。
 
「証人は映像の中で『また手錠をかけますよ』と言っています。またということは前にも手錠をかけたのではないですか?」
「かけました。警察官、職務執行法により酔っ払ったものが抵抗するなどして危険な際、保護のために手錠をかけることは認められています」
「しかし、さきほど証人は『被告人が飲んでいて立とうとしなかった』と証言しました。ただ立たなかっただけの被告人に保護が必要でしょうか? 質問に答えてください。被告人は店の中であなたや第三者に危害を加えたり、暴れたりして器物を破損したんですか?」
「いいえ」
 
「違法逮捕のあとのやりとりについてはーー」と大輔が勝手に発言しようとしますが、蓮見は「座ってください。これ以上言うなら、私は弁護をおります」と止めます。 
 
「これは物損事故を起こしただけの被告人に対する明らかな違法逮捕の連行であり、違法逮捕に引き続き撮影されたこの映像は違法収集証拠排除法則の適用により証拠として廃城されるべきです。したがって、警察の主張する公務執行妨害は立証不十分です」
 
こうして検察側は公務執行妨害罪に関する控訴を取り消すこととなったのでした。しかし、警察署での飲酒検査で基準値の二倍の飲酒量が出たことは確かであり、酒酔い運転に関する控訴は維持され、追加の人証取り調べを検察側は申し出ます。
 
「被告人は事故の後に飲んだと主張していますが、あなたはその前に商工会のパーティで被告人と会っていたということですね。では、そこで見たことを教えてください」
 
証言に立ったのは、ミウラフーズの社長である三浦秀夫です。
 
「被告人は日本酒を飲んでいました。六杯は飲んでいたと思います」
 
彼の発言に大輔は笑うのでした。
 
事務所に戻ってから多田は、日本酒を飲んていたという相手側の証言について大輔を問い詰めます。
 
「日本酒を飲んでいたってどういうことですか」
「飲んでいない。あの証人の偽証だ」
「なんで偽証なんかされるんですか」
「逆恨みだろう。何年前かにあいつの会社を人権侵害で訴えて賠償金をたんまりぶんどってやったからな」
「ちょっと待って下さい。事前の認証申請ではあの証人のことは知らないって言ってましたよね。名前も見ましたよね」
「顔を見て思い出したんだよ。俺は小僧の何十倍もの案件を扱ってきたんだよ。名前なんか一々覚えてられるか」
 
あまりのことに多田はトイレへと行きました。
 
「これも裁判を盛り上げるための作戦ですか」
「確かにおもしろかったなあ」
「面白くなくていいんです。負けたらどうするんですか」
「そうなったら佳恵が喜んで俺を追い出すだろう。あいつは俺のこと憎んでるからならな」
「え!?」
「まあ、それはともかくとしてーー」
 
突然、彼は吐き気を感じてトイレに向かおうとしましたが多田が立ちはだかったためにそのまま多田に向かって吐いてしまったのでした。
 
その後の確認で、ミウラフーズの社長が大輔によって裁判に負けて賠償金を支払っていたのは本当でした。よって、逆恨みによる偽証の可能性も捨てきれなくなってきたのです。
 
多田と蓮見、円香は神山のオフィスで情報の確認をしています。しかし、神山は大輔の案件に消極的なままです。
 
「お好きにどうそ。勝手にやってって言ったでしょう。偽証されたとしたって自業自得。どうせまた強引な手を使って勝ったんだろうし」
 
 
円香は、朝飛の案件についても手伝っていました。彼女はさまざまな案件の情報収集の手伝いをしているのです。大輔の案件の手伝いの合間に朝飛を手伝っているので、彼にもう1件手伝ってくれないかと言われても承諾しませんでした。
 
「ああ、大輔先生のどうなってます?」
「どうしてですか?」
「いや、蓮見先生と僕は勝負してるんで。どっちか結果を出したほうしか採用されないんです。いや、大輔先生の担当をされたときはやばいって思ったけど、あんな無茶なの勝てっこないし」
 
 
大輔が事務所から帰宅する際、神山は彼に声をかけていました。
 
「負けたら、事務所を辞めてもらうわよ」
「俺じゃなきゃだめだっていう顧客もまだたくさんいるんだ」
「そりゃそうでしょうよ。人を殺してでも顧客を守るんだから」
 
 
その頃、蓮見がマンションに帰ると息子の隼人は夕飯を作っていました。
 
「あれ、作ってくれてるの」
「あ、おかえり」
 
キッチンに立つ息子を見て、蓮見は驚きました。
 
「ありがとう。美味しそう。あとスープでも作る」
「昨日の豚汁の残りでいいんじゃない」
「そうだね」
 
できあがった料理をテーブルに運びながら彼は言います。
 
「俺、ご飯作るからお母さんもっと残業していいよ」
「いいよ、そんなの。部活だってあるでしょう」
「ああ、辞めたから」
「え!?」
「弱いんだよ、うちのサッカー部。つまんないし。お母さん離婚しないの?」
「え!?」
「仕事も決まったしさ、俺もバイトするし」
「したほうがいいと思ってるの?」
「壊したのはあっちなんだし。俺たちのこと気にしなくていいよ。離婚なんて珍しくないし」
 
そこへ娘の綾香が元気いっぱいに帰ってきました。新しい友だちができたと大喜びしていました。隼人は、そんな妹と母を見て微笑むのでした。
その夜、蓮見は結婚15年目にもらったネックレスについて思い出していました。それはこの1年以内で夫からもらった高価な宝飾品だったのです。
 
 
疑惑の宝飾品と信頼
翌日、蓮見は夫への面会のために拘置所を訪れていました。
現れた夫に彼女は、食い気味に尋ねます。
 
「聞きたいことがあるの。あなたが逮捕されたのはトミオカ精工からの贈収賄の証拠があったからよね?」
「でっちあげだよ」
「宝飾品は?」
「え!?」
「賄賂の代わりに高価な宝飾品を受け取ったりしてない?」
「受け取ったよーーおふくろの誕生日にトミオカ精工が真珠のブローチを送りつけてきた。でも、すぐに返した。おふくろが責任を感じると気の毒だから、このことは君にも言わなかったんだ」
「それだけ?」
「え!?」
「他には宝飾品は受け取ってないの?」
「ないよ」
 
壮一郎は首を振りました。
 
「本当に?」
「どうしてそんなことを聞くんだ」
「別に」
 
そのまま、蓮見は帰ろうとします。
蓮見の後ろ姿に彼は尋ねました。
 
「新しい事務所はどうだ」
「良くしてもらってる」
「あまり簡単に信用しないほうがいいぞ。誰がどんな思惑で動いているのかわからないうちは警戒したほうがいい」
「大丈夫。今はあなたのおかげで人を信じられなくなってるから」
「真面目に聞いてくれ」
「もう聞きたくない! 誰の思惑とか警戒とかあなたの基準で物を言わないで」
「心配してるだけだ。君は16年間社会に出てなかったんだから」
「そうね。出てみたら、わかった。あなたが外でどういう人だったのか」
「何の話だ?」
「あなたを信用しないほうがいいって言った人がいる」
 
蓮見はもう一度椅子に座り直しました。
 
「俺が賄賂を受け取ったと思ってるのか?」
 
蓮見は何も言わずに彼を見つめます。
 
「そんな人間じゃないことは君が一番知ってるだろう」
「浮気するような人でもないと思ってたから」
 
壮一郎は目をつぶり、うなだれました。
 
「逆ならまだマシだった。魔が差して賄賂は受け取っちゃったけど、浮気はしてない。そう言われたほうがまだ、私が見てきたあなたを信じられた。今、隼人に大好きなサッカーより家のことを優先させちゃってる。綾香にだってお父さんは無実だから家族で乗り越えようって言ってあげたいけど、言ってあげられない」
「俺はもう君に嘘はついていない。それでも信じられないなら、もうしょうがない」
 
そうして彼は自ら話を終了して拘置所へと戻っていったのでした。
その後、昼食の時間にも関わらず、壮一郎は取り調べだと拘置所から呼び出されてしまいます。
 
取り調べ室にいたのは、元部下の佐々木でした。取り調べのカメラを回す前に記録員の男に頼んで飲み物を買いに行かせました。取調室には佐々木と壮一郎しかいません。
 
「大丈夫か?」
 
壮一郎は彼のことを心配しました。
 
「カメラを回す前に二人になって被疑者を落とす。蓮見さんが教えてくれた戦法ですよ。けっこう使ってます」
 
二人は笑い合います。
 
「すいません。食事の時間なのに、脇坂の嫌がらせで」
「気にするな。それより、富岡の証言は潰せそうか?」
「もう少し、時間をください」
「どうした?」
「トミオカ精工が倒産したんです」
「倒産? なんでこのタイミングに」
「それを今調べています」
「急げ、時間がない」
「はい。それともう一つ。脇坂が奥様に会って蓮見さんについていろいろ吹き込んでいるんです」
 
そのとき、脇坂が取調室に入ってきました。
 
「はい、おまたせー。喉渇いたろう」
「申し訳ありません」
 
脇坂の突然の搭乗に佐々木は驚きました。
 
「いや、いいよいいよ。俺もよく使う手だからさ。被疑者との間に信頼関係を築く、美しいじゃないか。今は信頼していた部下にも簡単に裏切られる時代だからな」
 
飲み物のカップを二人の前にそれぞれ置くと、脇坂は佐々木のことを見つめました。
 
「なあ、蓮見。吉村くんを覚えてるか? 君に散々お世話になったのに、奥さんやっつけてるよ」
「よくご存知ですね」
「あんまり奥さんに苦労かけるなよ。君が意地を張ればはるほど奥さんの立場も悪くなるんだぞ。さ、続けてーー」
 
脇坂はそうして佐々木に取り調べを続けさせるのでした。
 
 
さまざまな思惑
蓮見と円香は、商工会のパーティの主催に話を聞きに出ていました。そして、円香のおかげでパーティの入退場の記録に面白い情報が見つかったのです。事務所に戻るとそのことについて蓮見は大輔に報告しました。
 
「パーティの入退場の記録です。19:16に入場。19:26に退場。大輔先生、パーティには10分しかいなかったんですね。その10分でお酒を6杯飲んだというのは不自然なので、あの証人は嘘をついている可能性が高いです」
「だから、そう言っただろう。検察はあの証人に飛びついて、ろくな裏取りもしてないに決まってるんだ」
「パーティを10分で切り上げたとすると、事故を起こすまでの1時間半は何をされていたんですか? 一時間半の間にお酒を飲んでいないことを証明する必要があるので教えて下さい。もし誰かに会っていたら、証人になってもらえますから」
「誰とも会っていない。車でその辺を走り回っていただけだから」
「どうしてごまかすんですか」
「しつこいなあ」
「覚えてないだけだと言っているだろうが」
 
薬膳茶とともにトナカイの角という漢方を飲もうとした大輔は、突然咳き込み始めました。「大丈夫ですか」と蓮見は彼の背をさすってあげます。彼は突然怒り始めました。
 
「こうやって俺をここから追い出すつもりか」
「え!?」
「どうせ今頃、あの佳恵と多田の坊主はどっかで二人でこそこそ相談してるんだろうが」
「違います。多田先生はクライアントの打ち合わせでーー」
「ミウラフーズを調べてみろってんだ」
「え!?」
「あいつの顔見て思い出したんだ。証人の逆恨みだ。何年か前に人権侵害で訴えて賠償金をたんまり、せしめたことがあるんだ。あいつ。ファイルを調べればすぐにわかるから。いいな!」
 
蓮見は彼の口から同じ話を数日前に聞いていたのを思い出していました。そして、彼が机に忘れていったものを拾い上げて、ある点に思い当たるのでした。
 
 
翌日、蓮見は大輔の自宅を訪れていました。
彼は一軒家に一人で住んでいます。
 
「おお。ああ、昨日は悪かったね。腹減ってたからちょっとイライラしてた」
「いえ」
「ああ、上がってよ」
 
彼の部屋には今まで扱った案件のたくさんの資料が溢れていました。
蓮見は彼のデスクにある甘味についてまとめられたスクラップブックを見ました。
 
「今日はなんだ。話があるのか?」
「忘れ物です」
 
そうして、蓮見は一粒の錠剤を差し出しました。
 
「これはトナカイの角ではなくて、ドルコミンですよね。夫の父が同じ薬を飲んでいたんです。脳血管性の認知症の薬でした」
「くだらん。何をいってんだ」
「この薬には、意識がもうろうとしたり、吐き気をもよおす副作用があります。この薬を飲んで事故を起こして、認知症を隠すためにわざとお酒を飲んだんじゃないんですか。ところが、お酒と薬が思いの外、強く反応してしまって、酷く酔っ払ったようになってしまった」
「もういい」
「この薬には、お酒の回りを早くする作用もあります。だから、警察での検査でも高い数値が出た」
「もういいと言っているだろう」
「薬の影響だといえば弁護できます。でも、隠したままでは無理です」
「公表して無罪になったところで、弁護士としては死刑宣告だ。弁護士ってのはときには人の人生を狂わせる商売だ。犠牲にしてる人もたくさんある。そいつらがな、何クソと恨みをぶつける相手として俺は立ち続けなくちゃならないんだよ。てめえの幕引きはてめえで決める。同情なんかされてたまるか。俺はあんたの依頼人だ。弁護士には守秘義務がある。法定ではもちろん、誰にもしゃべるな。佳恵にもだ」
 
事務所に戻り、蓮見は神妙な面持ちで神山を見ました。そして、蓮見と多田、円香の3人は事務所で再度、大輔についての情報を整理をします。すると多田は彼女の言動の変化に気づきます。
 
「問題はパーティ会場を出てから事故を起こすまでの1時間半の空白の時間なの。その間の大輔先生の行動を調べてる。飲んでないと証言してくれる人が見つかれば勝てる可能性が出てくるから」
「わかったわかった。でも、ちょっと待って。本当、法定の外では動揺を隠すのが下手だよね」
「何?」
「神山先生はなにかあると甘いものを食べる。蓮見先生は、妙に早口になって人の顔を見ない。今のように。何があった? 大輔先生に何か言われた?」
 
蓮見は彼の目を見ません。
 
「ごめんなさい。守秘義務があるから」
「もしかして、何か口止めされたの? それは、裁判の勝ち負けに関係してくる? 勝敗を左右する事実を隠されたままでは相談に乗れないでしょう」
「勝たなくていいんですか? 大輔先生はうちの名誉顧問です。この裁判の結果は、事務所の経営に関わってきます。あなたは今、結果を出したほうがいいんじゃないですか」
 
円香の話に多田も賛同します。
 
「俺もそう思う」
「すいません。私の依頼人なので」
「じゃあ、勝てる方法が見つかったら呼んでください」
 
円香は去っていきました。
そのまま、彼女は朝飛のもとへといきます。
 
「手伝いますよ。もう1件」
「え!? いや、大輔先生のがあるから無理ってーー」
「そちらは当分動きませんから。守秘義務があるとかで勝つための情報を使わないそうなので」
 
蓮見は多田に相談を続けていますが、大輔の空白の1時間半を調べるには今の状況では公判まで間に合わないことがわかっていました。でも、何か手を考えようと彼女は頑張るのです。
 
「強いなあ。蓮見は」
「私も思い出しただけ、弁護士の仕事は依頼人の誇りを守ること。じゃあ、この件はまた報告するから」
「うんーーあのさ、あれからなにかあった? 例の脇坂って検事」
「ううん、別にあれからなんにも」
「いまどうなってる? ご主人とは。いや、もし何かあったら相談乗るよ」
「別に聞いても楽しい話じゃないから。じゃあ、戻るね。お疲れ様」
「お疲れ」
 
朝飛は蓮見の状況を知り、苛立ちを覚えました。そして、神山に蓮見が守秘義務で勝敗に関する大きな事実を隠していることを伝えてしまうのでした。
 
そんなとき、蓮見には非通知で電話が入っていました。
彼女はその後、カフェで佐々木と落ち合いました。
 
「ご無沙汰しています。佐々木です。もっと早くご挨拶に伺おうと思ったんですが」
「蓮見がご迷惑をおかけして、申し訳ありませんでした」
「迷惑じゃないですよ。私はご主人の味方ですから」
「味方?」
 
彼は蓮見に座るよう促します。
 
「立場上、脇坂の下で取り調べをしていますが、私は蓮見さんの意向をくんで動いています。今日、奥様にお会いしたことはご内密によろしくお願いします。ご主人は奥様を心配していらっしゃいますよ。何かあったら、何でも私におっしゃってください」
「主人は、賄賂を受け取ったんですか?」
 
佐々木は少し口をつぐみます。
 
「それは私の口からはーー脇坂からなにかあれば、必ず私に連絡してください」
 
そして、佐々木は彼女に携帯番号の書かれた紙を手渡しました。
 
 
その頃、壮一郎は顧問弁護士にトミオカ精工の倒産が何の理由で起きたのかを調べるように頼んでいました。
 
「トミオカ精工が倒産」
「詳細を調べて頂けますか?」
「わかりました。まあ、倒産もするでしょうねえ。社長が自らあなたに賄賂を贈ったと告発したんですから。しかしですね、そうまでしてあなたに無実の罪を着せようとするものですかね? 蓮見さん、今回の件わからないことが多すぎる。私の経験上、こういう場合は裏で政治が絡んでるんですがねえ」
「考えすぎですよ」
「まあ、白と言うなら、白で弁護をしますが」
 
 
佐々木との密会後、事務所へと戻る中で蓮見にはメッセージで息子たちからの夕飯のメニューが送られていました。彼女はそれに少し心が緩みます。事務所へ入ると神山に呼び止められました。
 
「蓮見先生。ちょっといい?」
「はい」
 
神山のオフィスに行くと、彼女から守秘義務について尋ねられます。
 
「守秘義務ってなに? 父に何を言われたか知らないけど、その情報を使って弁護して」
「でも、弁護士の義務なので」
「裁判に負けるつもり? うちの信用に関わるのよ」
「勝つ方法を考えます」
「一体何を隠してるのよ」
「すいません。言えません」
「あの人のことだから、どうせ何か上手いこと言ったんだろうけど、そんなの気にしなくていいの」
「できません」
「いいから教えて。判断は私がするから!」
 
神山は大きな声で言いました。
 
「すいません」
「あなたはね、騙されてんのよ。人殺しなんだから、あの人は。私の母はあの人に殺された。我慢のしどうしで楽しいことなんて何もなくてその挙げ句に殺されたの。あの人の犠牲になって。とにかく、勝つことを最優先に考えて。負ければ、あなたの採用のほうにも影響するわよ」
 
そんな彼女を見ていた多田は、神山のオフィスから出てきた蓮見を呼んで一緒にあんみつを食べます。
 
「神山先生ってさ、もともと大輔先生の影響で弁護士を目指したんだ。でも、同業になって大輔先生のやり方が受け入れられなくなってきた」
「やり方って?」
「依頼人が本当は有罪だと知っていても、無罪にするために弁護する。どんな犯罪でも。昔さ、ある大学病院の医療ミスで患者が死亡した医療裁判があった。大輔先生の弁護でその執刀した医師に責任はないって判決がくだされた。けど、世間は納得しないよ。大輔先生の自宅にまで嫌がらせがたくさんあってひどい状態だったらしい。でも、大輔先生は仕事優先で家には帰らずほったらかしでさ。奥さん一人が矢面に立たされた。奥さんはその心労から体壊しちゃったんだ。それで、亡くなった。もう20年前くらいかな。まあ、難しいよ。性格が全然違うから」
「甘いものが好きなのは同じ」
「ええ? 大輔先生は甘いもの嫌いだよ」
「ええ、でもーーじゃあ、あれは」
 
蓮見の脳裏には、大輔先生のデスクにあった甘味に関するスクラップブックが浮かびました。
 
 
妻の思いと夫の背負うもの
蓮見は多田と共に再度、大輔の家を訪問していました。
 
「公判が近いんで、弁護方針の確認です」
「うんーー」
「まず、パーティで酒を飲んでいたという証言の信用性を弾劾するためにミウラフーズの訴訟を証拠として提出します。確認してください」
 
多田は彼に過去のミウラフーズの訴訟についての資料を渡しました。そして、蓮見を見るとうなずいて合図します。
 
「すいません。お手洗いを借りてもいいですか?」
「うん、あ、そこでて右」
「失礼します」
 
すると彼女はお手洗いに行くふりをして大輔の書斎を物色し始めました。しかし、居間から彼女は丸見えでした。
 
「おい、何やってんだ右って言っただろう」
 
大輔に見つかってしまいましたが、彼に気づかれることなく例のスクラップブックの写真をとることができました。
 
 
後日、蓮見は円香と朝飛にも協力してもらって皆で空白の1時間半に、商工会のパーティから事故現場までの間にある甘味処で大輔が訪れていたところがないか調べたのでした。
 
そして、蓮見はその甘味を持って大輔の家に行きました。
 
「今日はなんだ?」
 
蓮見はプリントアウトしたスクラップブックの写真を彼に見せます。
 
「勝手にすみません。これは奥様のものですよね。最初は奥様がご自分で行きたいお店をスクラップしているのかと思っていました。でも、少し違いました。ここから先のページにあるのは、奥様が大輔先生と一緒に行きたかったお店ですね。甘い物が苦手な大輔先生でも大丈夫なお店ばかり。事故のあった日は、亡くなられた奥様の月命日ですよね。もしかしら、奥様の月命日にこのお店を回っていらしたんじゃないですか」
「違うと言ってももう調べたんだろう」
「事故のあった日、大輔先生が通った可能性があるルート上にあるお店をこの中から探しました。該当したお店に聞いて回って、事故の日に大輔先生がいらしたというお店を見つけました。お店の方が証人になってくださるそうです。そこで何が起こったのか、円香さんが警察に裏もとってくださりました。大切にしていらした思いを暴くようなことをして、無神経にすみませんでした」
「弁護士なんてのはそういう連中だ。勝つためには何だってやる。俺もそうやってきた」
「ミウラフーズの訴訟の件とパーティには10分しかいなかった件を証拠として提出してあります。それに加えて、あのお店で起こったことを話せば、認知症だってことを公表しなくても無実を証明できます。でも、もし大輔先生がお嫌なら辞めます。神山先生にも言いません。ただ、私は大輔先生の弁護士として大輔先生の無実を証明したいと思っています。すみません。結論は大輔先生におまかせします」
 
 
そうして公判当日。
蓮見は新たな証拠として証人の人証取り調べを請求しました。
 
「いや、そんなの聞いていません。勘弁してくださいよ。 また? 素人の茶番につきあわされるんですかね」
 
検察側は断固反対します。
 
「立証主旨は、それぞれ今しがた渡した取り調べ請求書の通りで被告人の無罪を証明するために必要な証人です。仕事で本日しか都合がつかず、どうか採用していたーー」
「反対です。せめて必要性の有無について検討する時間が必要です」
 
しかし、裁判長はこれを必要だと受け入れ、採用されます。
 
「検察官、反対尋問の機会については必要に応じて次回以降設けるよう調整しますので、よろしいですね」
「裁判所の判断におまかせします」
 
吉村検事は蓮見を睨みつけました。
そして、証人として立ったのはたい焼き屋の店主です。
 
「被告人があなたの店に来たのはいつですか」
「9月21日の午後8時ごろです」
「被告人が事故を起こした日ですね。少し前のことですが、どうして覚えているんですか?」
「大口の注文が入ったり、行列だったり、大変だった日にどうしてもチーズをって粘られて。待ってもらってたら閉店近くになってしまったんで覚えているんです」
「お酒を飲んでいる様子でしたか?」
「いいえ、お酒の匂いはしませんでした」
「被告人はお店でたい焼きを買った後、何をしていましたか?」
「車の中で食べていました。なんとなく見ていたら、具合悪くなりだしたので、行こうと思ったら警察が来て」
「警察が来たんですね。警察は何をしていましたか?」
「この人に職務質問していました」
 
これを受けて、蓮見は検察側証人である警察への反対尋問を行います。
 
「被告人に職務質問したのはあなたですね?」
 
検察側の吉村検事は大慌てです。
 
「ちょっと待ってくれ。酒酔い運転に関してもう一度話を聞きたいというから承認申請したんだ。これは話が違う」
「裁判長。私は事件当日のことについて聞きたいと言っただけです。事故の前の話を聞いて何の問題があるんでしょう」
「裁判所も特に問題ないと考えます。証人は質問に答えてください」
 
検事は頭を抱えました。
 
「はい。私が職務質問をしました。車の中で様子がおかしかったので職務質問しました」
「そのときの検査結果が証拠として提出されていないのはなぜですか?」
「検査の機械が壊れていたからです。被告人は意識がもうろうとしていて明らかに酒を飲んだ様子だったのに反応しなかったんです」
「反応しなかったというのは具体的にはどういうことですか」
「計測数値が0でした」
「飲酒をしていなかったから数値が0だったのではありませんか」
「でも、新しい機械を車に取りに行っている間に逃げたんですよ。酒を飲んでいないならなんで拒否する必要があるんですか」
 
その発言に蓮見はすこし思案しました。そして、裁判長に向かって手をあげます。
「裁判長。数値が0だったからといって機械が壊れていると決めつけて正式な検査の結果を証拠としてあげないのはおかしくありませんか? 酒酔い運転だということにしたくてわざと提出しなかったのではありませんか」
 
「異議あり、証人を侮辱する発言です」と検事は発言しますが、証人はあまりのことに取り乱して立ち上がり発言します。
 
「私は証拠として送検の際に提出しました!」
「では、検察が証拠から外したということですね」
 
裁判長は吉村検事を見つめて問い詰めます。
 
「ちょっと良いですか? 確認ですが、それは事実ですか?」
「いえーーええ、それは」
 
検事が発言しようとする中、証人は勝手に発言します。
 
「本当に飲んでいたんです。あれはーー」
「ところで、花粉症は大丈夫ですか?」
「え?」
「前回、鼻炎スプレーをしてらっしゃいましたよね。調べたところ、あなたは風邪ではなく夏の終りから秋にかけて発症する花粉症だそうですね。鼻がきかず、酒の匂いがしたかどうかもわからず、ただ被告人の様子だけで判断したのではありませんか」
 
大輔は証人をみて笑っていました。
そうして公判は無事に勝利することができたのでした。
終わった後、大輔と蓮見は公判を振り返って話をしています。
 
「ありがとうございました。鼻炎スプレーのこと、自分では気づけませんでした」
「盛り上がったなあ。楽しかったろう」
「はい。昔の感覚を少し思い出しました」
「実際のとこ、あんたがあの鯛焼き屋にたどり着いたら観念しようと思ってた」
「本当に?」
「最高の弁護は他の何よりも優先する」
「もう、運転免許証は返納してくださいね」
「ああ、わかってるよ」
「それと、いつか病気のことも大輔先生から神山先生に伝えてあげてくれませんか。違っていたらすみません。認知症のことを隠していたのは神山先生に心配駆けたくないからじゃないかと思って」
 
神山はその夜、大輔の家を訪れていました。
神山は父と子の二人きりで夕飯を食べます。神山自身も母のことをかえりみずに自分の仕事ばかりに向き合っていたことを後悔していました。だから、父である大輔のことを責めて自分をごまかしていたのでした。
 
「お父さんを責めていれば楽。自分の後悔をごまかせる。お母さんの人生に楽しいことなんてなんにもなかった。そう思うのがずっと辛かったけど、楽しい時間もちゃんとあったのよね」
 
神山は母のスクラップブックを見てそういうのでした。
大輔はそんな娘の話を聞きながら、自分自身も話をしようします。
 
「佳恵。お前に話がある」
 
その後、大輔先生は引退することになりました。
しかし、大輔先生のことをしたってついてくるクライアントがいたために彼は引退せずに自分の新しい事務所を立ち上げると神山に電話で言うのでした。彼はまだ人生の階段を駆け上がっているのです。
 
 
事務所では、蓮見のデスクに円香がやって来て聞きます。
 
「どうするつもりだったんですか。大輔先生が鯛焼き屋のことも言うなっていったら」
「他の方法を考えます」
「案外、根性あるんですね」
 
そういうと円香はさっそうと去っていきました。
そこへ多田がやってきます。
 
「初勝利おめでとう。どう? 感想は」
「弁護士に復帰できてよかった」
 
蓮見は満面の笑みで輝いていました。
 
 
検察では、壮一郎の取り調べが続いていました。
そして、新たに壮一郎の口座にトミオカ精工からの入金があった記録が証拠として上がっていました。
 
「受け取ったよな。トミオカ精工からの賄賂。お前の口座にトミオカ精工からの振り込み記録あったよ。もう言い逃れできんよな」
「どうしても私を検察から追い出したいんですね。申し訳ないとは思っていたんですよ。後輩の私が、いつもあなたの先を越してしまう」
「良いこと教えてやろうか。お前が悪あがきしている間にお前の奥さんにはもう守ってくれる男ができたようだぞ。ナイト気取りでベッタリ貼りついて、俺を睨んでた。早く帰らないと取られるよ」
 
 
蓮見は、夫にもらったネックレスを店で購入した人について確認しにいっていました。購入した人は個人情報なので教えてもらえませんでしたが、購入したのはトミオカ精工かと彼女は尋ねました。すると、店員はパソコンを確認します。
 
家に帰ってから蓮見はネックレスを床に投げつけ、涙を流しました。
第2話の感想はここをクリック
蓮見杏子の息子、隼人の言葉が優しくて感動しました。父に代わり、母を守ろうとする彼の姿はとても素晴らしかったです。
 
今回の裁判は、依頼人が重要な情報を弁護に利用させないことがありましたが、それでも勝利を優先せずに依頼人の威厳や誇りを守りつつ戦おうとする蓮見の姿はとてもかっこよく、人として好感が持てました。
 
そして、少しずつ夫である壮一郎の事件について詳細が明らかになってきました。しかし、誰が真実を言っているのか、疑惑は真実であるのかはまだまだわかりません。どんどん彼の行動が怪しくなっていくばかりです。
 
蓮見のことを多田が気にかけているので、この二人の行く末も気になってきました。
次回、もっと皆の関係性が進展することを祈っています。
<見逃し動画>第1話 「家族の裏切り」
 
TVerでの無料配信は終了しました
 
第1話の公式あらすじ

蓮見杏子 (常盤貴子) は、かつて優秀な若手弁護士として活躍していたが、出産を機に引退。
専業主婦として、2人の子供と夫である東京地方検察庁・特捜部長の壮一郎 (唐沢寿明) と共に、幸せな日々を送っていた。
 
だが、その幸せな生活は一瞬にして崩れたのだった。壮一郎の汚職疑惑、さらに女性スキャンダルまで発覚。
法曹界を揺るがす大スキャンダルにマスコミ報道は過熱していく。記者会見で壮一郎は、汚職は否定したが、女性との関係については認めて謝罪する。しかし、壮一郎は逮捕されてしまうのだった。杏子は夫の裏切りに深いショックを受けるが、家族のために16年振りの弁護士復帰を決意する。
そんな杏子に手を差し延べたのが神山多田法律事務所の代表・多田征大 (小泉孝太郎) だった。二人は司法修習生時代の同期で、かつて多田は杏子に好意を持っていたが、その気持ちとは別に杏子の弁護士としての能力を高く評価し、杏子の採用を反対する事務所の共同経営者・神山佳恵 (賀来千香子) を何とか説き伏せた。ただ、それはあくまでも仮採用。杏子は、半年後までにたった一席の本採用を賭けて、若手弁護士の朝飛光太郎 (北村匠海) と競うことになる。
 
<出典>グッドワイフ(日本ドラマ)公式

第1話のネタバレはここをクリック
立ち上がる妻は弁護士
夫の蓮見壮一郎にかかった収賄容疑と不貞行為とによって、妻の蓮見杏子と子どもたちの生活は大きく変わってしまいました。連日、壮一郎の謝罪会見は報道され、彼女の心労は計り知れません。
 
自宅で杏子は、ひたすら家事をこなしていました。テレビでは壮一郎の謝罪会見が流れています。
 
「この度は、多大なるご迷惑をおかけしたことを深くお詫びいたします。しかしながら、私は検事という立場を利用して金銭を受け取ったことは一度もなく、また、その見返りとして特別な便宜を図ったことはーー」
 
記者たちの怒号と質問が飛び交いました。
 
「今回の告発につきましては、全面的に否定します。ですが、それとは別に特定の女性と不適切な関係を結んだことは認めます。この騒動に関しては、私の不徳の致すところであり、妻子を持つ身でありながら恥ずべき行為であったと自覚しています。しかしそれは、私生活に関することであり、家族と私の問題です。いわれのない告発については、事実関係を調査中ですので明らかになり次第、ご報告させていただきます」
 
そうして、テレビの記者会見の報道は終了しました。
香子のもとにはすぐに夫から電話が入りましたが、彼女はとりません。
 
 
数カ月後、香子は神山多田弁護士事務所の会議室に一人でいました。
予定の時間である10時になっても誰も現れません。近くにいたパラリーガル(弁護士補助)の円香みちるに声をかけました。
 
「すいません。10時から会議だと聞いてるんですが」
「上の階ですよ」
 
香子は慌てて荷物をとりあげ、上の階へと急ぎます。
 
会議室にはすでにたくさんの人が集合し、会議を始めていました。議題は、ここ最近にあった川崎市での4歳女児の行方不明事件に関するものでした。問題となっている日下部直哉が司会をするネットニュースが流れています。
 
「2週間前、4歳の浜口玲奈ちゃんが行方不明になりました。現場となりましたのは、神奈川県の川崎市にある大型スーパー。ご両親にさっそく話を聞きました」
 
玲奈ちゃんの母親が「買ったものを車に移していて、ほんの一瞬目を話した隙に誰かが連れて行ったんです」と答えるVTRが流れました。
 
「警察は、必死になって玲奈ちゃんと、そして謎の人物の行方を追っていますが、いまだ見つかっておりません。見つかるわけがありません。犯人はすぐそばにいたのです。そうです。母親が犯人であるという可能性が高くなってきたんです。育児ノイローゼであった母親は、玲奈ちゃんを殺し、そして遺体を遺棄し、誘拐を装うためにスーパーにかけつけた。そして、女優のような名演技で泣き叫び、警察に助けを求めた」
 
言いたい放題な日下部のニュースの発言に会議室はざわめきました。
 
「警察が被疑者として発表したわけでもないのに、言いたい放題ですね」
 
新人弁護士の朝飛光太郎の主張に、弁護士事務所の代表である弁護士の神山佳恵は言います。
 
「でも、表現の自由は主張できる。インターネットテレビには放送法や放送ガイドラインみたいな10種ルールの規制もかからないからね。名誉毀損で訴えたら泥沼になるのは目に見えてる。この依頼は断ろう」
「ああ、ごめん。それもう引き受けちゃった」
 
同じく共同経営者として事務所の代表である弁護士の多田征大は、少しとぼけたような笑顔で答えました。
 
「出た! この人。名誉毀損に表現の自由が絡んだらどう転ぶか難しいってわかってるわよね。勝ったって大した賠償金もとれないし」
「その代わり、宣伝効果はでかいですよお。日下部直哉はもともと地上波の売れっ子キャスターなんだから」
「つまり、負けたときも大々的に宣伝されるってことでしょう。多田先生はなんでそう危ない橋を渡りたがるの? なに、刺激がほしいの? 退屈なの?」
「結果は出してきたでしょう」
「そうだけどお」
「他所が手を出さない案件でウチが勝ってきたからーー」
 
そんな会議室に香子はやっとたどり着いたのでした。
 
「すいません。遅れました。部屋を間違えまして」
 
「今日から仮採用で来てもらう蓮見杏子先生」と多田は皆に紹介しました。
 
「蓮見杏子です。よろしくおねがいします」
「あとで、私の部屋に来て」
 
神山はそういうと会議の議題に戻り、次の案件の話が始まるのでした。
 
 
神山のオフィスに行くと彼女は香子の16年のブランクについて聞きました。香子は、結婚して子どもが出来てからの16年間を専業主婦として過ごしました。弁護士として優秀でしたが、働いていたのは3年間のみです。
 
「どうして辞めたの?」
「息子が病弱だったのでーーあの、16年もブランクがあって簡単に弁護士に復帰できるとは思っていません。実際、何か所も断られました」
「そうでしょうね。いくら資格があっても、中堅弁護士としての経験を積まずにもう44でしょう。多田先生の推薦がなかったらウチもとらなかった」
「チャンスをくださってありがとうございます。精一杯がんばります」
「ご主人とはどうするの? 離婚するつもり?」
「あの、離婚はーー」
 
そこへ多田が突然現れました。
 
「神山先生! 日下部の件ですけど、示談にしたいそうです。ま、想定どおりですけど。これどうぞ、チョコットレイトです」
「もうしょうがないなあ。じゃあ、朝飛先生をサブにつけて」
「いや、だったら蓮見先生のほうが適任じゃないですかね。依頼人のケアを考えたら、子どもがいる弁護士のほうがいいんじゃないですか。勘を取り戻すなら、実践が一番ですよ」
「やります!」
「多田先生が責任を持つなら」
 
神山は二人のことを見つめました。
 
「十三時に相手方の弁護士くるから、その前に依頼人に会いに行こう。あ、そうだ。デスクを教えてなかった」
 
香子は多田についてデスクに向かうのでした。周りの他の社員たちは、蓮見家の噂で持ちきりです。デスクにつくと、同じく新人で仮採用の朝飛に「僕たちはライバルですけど、正々堂々と戦いましょうね」と言われるのですが、香子はいまいち要領を得ませんでした。
 
「準備できた?」
 
香子のところに多田は迎えに来ました。
 
「資料をつくまでに読んで、依頼人の事情を把握してて」
「事情?」
「うん。ちょっとね」
 
 
依頼人の妻である浜口美里は、娘の玲奈が行方不明になってからインターネットニュースでの日下部の発言を苦にして、自死で亡くなっていました。
 
香子と多田は、依頼人宅につくと位牌に線香をあげます。依頼人の浜口直哉は、無念の心の内を吐き散らしました。
 
「日下部の嘘のせいで、美里は自殺したんすよ。あいつは絶対にやってない。玲奈だってきっとどこかで生きてんだよ」
 
彼はこぶしでテーブルを叩き、立ち上がりました。
 
「だから、示談とかなんとかじゃなくて裁判ではっきりさせたいんすよ。金の問題じゃねえ」
「浜口さん。名誉毀損というのは発言の内容が事実じゃなかったとしても、裁判には勝てないことがあるんです。表現の自由と個人の名誉の対立は、判断も難しくて奥様の名誉が守られる保証がありません。でも、先方からの和解の申し出であれば、謝罪や訂正についても有利に交渉をする余地があります」
 
浜口は、彼の隣に立つ香子を見ました。
 
「あんたもそう思うんすか?」
「すいません。彼女はまだ担当になったばかりでーー」
「他の人の意見を聞きたいんす」
 
香子はゆっくりと話し出しました。
 
「あ、あのう。訴訟をどんな形で進めるのか、浜口さんには決める権利があります。でも、もし私が母親だったら、自分の名誉より確実にもらえる和解金で娘の捜索を望みます。娘さんが見つかれば、奥様の名誉も晴らせます」
 
 
「さすがだねえ。一発で説得できた」
「うー、緊張したあ」
 
二人は依頼人のマンションを出て説得の成功を喜びました。
 
「そう? 昔の三沢のままだったよ。ごめん、今は三沢じゃなくて蓮見さんだったわ」
「蓮見でいいよ。呼び捨てで。多田くん、本当に助かったよ。多田くんが事務所に誘ってくれなかったら、どこにも雇ってもらえなかった」
 
「ウィッス!」と多田は軽く手を上げただけでした。二人は車に乗り込みます。
 
「でも、すごいねえ。共同経営者なんて。しかも、東京の一等地。あんな立派な事務所」
「パフォーマンス、パフォーマンス。顧客にハッタリかましとかないと、顧客に信用してもらえないじゃん」
「なるほどお」
「だから、蓮見もそうやって笑ってたほうがいい」
「へ?」
「いろいろ不安だろうけど、皆の前では余裕の顔で」
「うん、わかった」
「行こうか」
 
そのとき、多田の携帯がなりました。
なんと先方の日下部が思ったより早く事務所に到着してしまったのです。
慌てて戻ると日下部は、来客室でハンバーガーを食べ散らかしていました。
 
「日下部さん」
「いやあ、すみませんね。昼飯、食いっぱぐれたもんだからさ」
 
と彼は机の上のハンバーガーの包み紙の惨状を指しました。
多田と蓮見は彼に名刺を差し出します。
 
「多田と申します」
「蓮見です」
「はいはい、どうも」
 
多田は番組のステッカーを名刺代わりに出しました。
 
「弁護士の方がお見えになると聞いていたんですが」
「あとで来ますよ。それよりもウェットティッシュあるかな? ウェットティッシュ」
 
少し苛立ちのある表情で多田は部屋の外のスタッフに「おーい、ウェッティとよだれかけ持ってきて」と呼びかけました。その言葉に日下部は怖い顔をしました。
 
多田と蓮見が席につくと、多田は話し始めます。
 
「弁護士がやってくる前に私がやってきたんですよ。ほら、弁護士同士で和解なんか勝手にされると困るから。いいですか?」
 
そして、ボイスレコーダーのボタンを押しました。
 
「私、和解なんか絶対しませんから。番組での発言はすべて確固たる情報源から得た事実ですから」
「情報源ってのは警察ですか?」
「そうですな」
「でも、警察は母親が被疑者だという公式発表はしていません」
「私には特別の裏ルートがありますからね」
 
日下部は朝飛が持ってきたウェットティッシュで丁寧に手を拭きます。
 
「わかりました。では、もう一度依頼人と話をしてみます」
「ああ、それとこう伝えといてください。あんたがたの依頼人である浜口直樹氏は、私がこうデタラメを言いふらす嘘つきであるとマスコミに言っておられます。で、私を名誉毀損で訴えられた。だから、私も浜口直樹氏を名誉毀損で訴えます。請求額は一億円」
「ボールを投げ返しに来たんですね」
「ああ、楽しいキャッチボールになりそうですなあ」
 
冗談めいた言い方に香子は不快感を示します。
 
「人が亡くなってるのにそんな言い方」
「私、あなたのこと知っていますよ。東京地検元特捜部長、蓮見さんの奥さんだ。旦那様が有罪となれば失職するわけですから、代わりにあなたが働きに出たとそういうわけですな。妻の鏡ですな。お美しいのに」
 
 
依頼人と先方のどちらも名誉毀損で戦うことになったことで、今回の依頼は複雑になってしまいました。日下部によって汚された来客室の後片付けを朝飛と円香が行います。神山と多田と蓮見は、現在の状況の整理をプロジェクターでしていました。
 
「日下部さんってもともとテレビに出ていましたよね」
 
プロジェクターを見つつ、杏子は尋ねます。
片付けを済ませると皆は来客室から事務所の階へと移動しました。
 
「地上波でフリーのキャスターとして活躍してました。歯に衣着せぬ発言を連発。局とトラブルになっても姿勢を変えず、テレビを飛び出してネットの世界へ。政治家でも大企業でもかまわず切るので、コアなファンが多く、彼は絶大な支持を得ています」
 
円香は情報に長けており、スラスラと日下部について説明するのでした。
 
「過去もファンも関係ないだろう。警察が情報源だと言うなら徹底的に裏をとるだけだ」
「多田先生って意外とムキになる人なんですね」
「なに?」
 
朝飛の言葉に多田は食い気味に反応しました。
 
「警察の当時の捜査状況を調べて」
「捜査状況ってどうやって調べるんですか?」
「うちではこういうのは円香さんの得意分野なの」
 
エレベーターの中で神山は言います。
 
「情報をくれる友だちがいっぱいいるので」
「友だち?」
 
事務所に戻ると、円香はクラウドに日下部の番組のデータがあることを杏子に伝えます。
 
「クラウドってどこに?」
「そこです。パスワードはお送りしています」
 
円香は彼女のパソコンデスクを指差すのでした。
そんな彼女のもとに夫の母から電話が入ります。夫の面会に行くように頼む壮一郎の母ですが、香子はあまり気が進みません。
 
 
強制される自白
「まさか君とこうやって向かい合う日がやって来るとはなあ。蓮見壮一郎といえば、政治家や大企業の不正を次々と暴き、検事総長への最短距離にいると言われた男が。それが今では、贈収賄容疑で取り調べだあ」
 
東京地検、特捜部長の脇坂博道は壮一郎を前にして笑っていました。
 
「笑いが止まらないって顔ですね。棚ぼたで私の後釜に座ったのがそんなに嬉しいですか?」
「ああ、嬉しいね。清廉潔白を気取っていた君にも人間らしい私利私欲があるとわかったからねえ。罪は認めなければ、長引くだけだぞ。早く家に帰って、奥さんと不倫問題を解決したほうがいいんじゃないか」
「自白に頼らなきゃ、起訴できない。正直にそう言ったらどうですか?」
 
脇坂は誰かを呼びつけました。
現れたのは、壮一郎の直属の部下だった佐々木達也でした。
 
「なあ、蓮見くん。この佐々木くんが君が可愛がってた子飼いの部下だろう。気の毒に。信頼していた上司に裏切られて、それでも真相究明のために取り調べを買って出てくれた。最後くらい潔く検事としての姿勢を見せたらどうだ?」
 
佐々木は、壮一郎の前に座るとさっそく取り調べに入りました。
 
「改めて経緯をお聞きします。あなたは特捜部長時代、トミオカ精工に対する粉飾決算を捜査していました。ところが、突然に捜査の中止を命じ、事件は不起訴となった。トミオカ精工からの賄賂の見返りに便宜を図ったんじゃないんですか?」
「否認する」
「トミオカ精工の社長の富岡は、すでに自白しています」
「否認だ」
 
佐々木は、富岡と蓮見の会話の録音をテープレコーダーで流します。
 
『富岡社長「蓮見さん、ご配慮頂きありがとうございます。謝礼金は足りているでしょうか?」
蓮見壮一郎「そうだな、もう一つもらおうか」』
 
「これは、富岡とあなたの会話ですよね?」
「詰めが甘いよ。どうやって言い逃れするつもりだ?」
 
 
その夜、香子が仕事を終え、マンションに入ろうというところで子どもたちから「友だちの家に行くから夜ご飯はいらない」というメッセージが来ていました。
 
がっかりして部屋に入り、真っ暗なリビングの電気をつけるとそこにはケーキと夕飯がならんでいました。キッチンを覗くと子どもたちが駆けて出てきます。
 
「「弁護士復帰おめでとう!」」
 
息子の隼人と娘の綾香は、クラッカーを鳴らしました。
 
「うわあ、嬉しい。ありがとう」
 
子どもたちは父親の事件のせいで学校も生活も変わってしまいましたが、暗い顔一つせずに母の仕事復帰を応援しているのです。
子どもたちとのお祝いの夕食を終え、香子は裁判に向けて日下部の番組について調べるのでした。
 
 
翌日、香子は夫の面会に訪れていました。
しかし、彼女の表情は暗いままです。
面会室に現れた壮一郎は、香子を見ると笑顔になりました。
 
「仕事はどう?」
「順調」
「君はもともと俺より優秀だったからな」
「家が売れそうなの。必要な書類を差し入れておいたから、サインしておいて」
 
彼女は立ち上がりました。
 
「もう行くの?」
「それを言いに来ただけだから」
「子どもたちはどうしてる?」
「一生懸命、笑ってる」
「香子。俺は賄賂なんか受け取ってないし、見返りで便宜も図ってもない」
「でも、女性のことは本当だよね。そっちの罪は賄賂より重くないとでも思ってる? あなたの弁護士に聞いた。彼女は毎朝新聞の記者であなたとは仕事上の付き合い。たった一度酔った上での間違い。あなたは深く後悔してる。でも、どうしてその人と会う前に子どものこと考えてくれなかったの? 家庭を壊すのも心の犯した罪だよ」 
 
香子は彼を見つめました。
最初はうつむいていた壮一郎でしたが、彼女を真っ直ぐに見つめました。
 
「償わせてくれないか。そのためにも疑いを晴らして、家に帰る」
「悪いけど、あなたはあなたで頑張って。子どもたちのことは私が守るから」
 
 
その頃、特別捜査部の部長室で脇坂と佐々木は話し合っていました。
 
「うーん、お前でも駄目とはな。しぶとい奴だ」
「申し訳ありません。近日中には必ず自白させます」
「うん、それがお前のためだな。かつての上司に情けをかけて共犯と思われたら困るだろう。この件は、上も重く受け止めてる。必ず起訴して、有罪に持ち込め」
「承知しております」
 
脇坂は彼の背中を叩きました。そのまま、背中に手を添え言います。
 
「忘れるなよ。お前の今の上司は蓮見じゃない。この脇坂だ」
 
 
東京地検の中を歩く佐々木は、同じく検事の戸梶涼太とすれちがいます。彼は佐々木に挨拶するのでした。戸梶は東京地検を出ると、バスターミナルのベンチに座り、ベンチに書類袋を置きました。その隣には、パラリーガルの円香が座っていました。彼女は戸梶の書類袋を持ってバスへと乗車するのでした。
 
 
翌日、杏子と円香は事件現場となった大型スーパーに聞き込み調査へ訪れました。警察も同じように聞き込み調査を当時していたようですが、誘拐に関する目撃者はやはりいませんでした。
 
事務所に戻ると多田と杏子と円香は、検察に提出された防犯カメラの映像を確認します。
 
「こんな映像、どんな友だちからもらえるんですか?」
 
杏子の質問には誰も触れません。
防犯カメラの映像を見て、円香は説明します。
 
「店内のカメラには親子の姿は映っていますが、どの映像にも子供の顔は映っていませんし、ずっと動いていないんです。母親は寝ていたと言っていましたがーー」
「これでは本当に子どもかわからないってことか」
 
カメラに映る母親はベビーカーを引いていますが、ベビーカーの中がわかる映像はなかったのです。そのとき、朝飛は日下部側の証拠となる書類を持ってきました。
 
「失礼します。日下部から証拠が届きましたよ」
 
多田は書類を彼から受け取りました。
 
「備忘録か」
「日下部がいつどこで誰と会ったかの記録ですね」
 
しかし、人の名前は黒く塗りつぶされてしまっています。
 
「情報源の秘匿だな。このKが警察ってこと」
「あのう。もう一つ。ついさっき、日下部が番組を臨時放送しました」
 
 
番組の内容は、日下部が表現の自由を守るために裁判で戦うこととなった件と神山多田弁護士事務所に蓮見壮一郎の妻である蓮見杏子が雇われていたことについての報道です。
 
スキャンダルにまみれた検事の妻を雇ったと、番組では杏子を攻撃材料にした話を日下部はしていました。この事態に、杏子は担当を降りようとします。しかし、神山はそれを止めました。
 
「こういうことはまた起きる。そのために弁護を降りるの? 私なら逆手に取るけど」
「え?」
「普通の主婦が、夫のスキャンダルに苦しみながらも子どものために弁護士に復帰して、弱者の代弁者として必死で戦う。その姿をアピールして売りにするの」
「でも、そんなやり方はーー」
「いまのあなたに他に価値がある? 誰でも自分が持ってるカードで戦うしかないの。あたしだってそう。今のあなたのカードの中で私がほしいのはそれだけ」
 
杏子が去った後、多田は神山に抗議していました。
 
「長い目で見てほしいって頼みましたよねえ」
「だったら、16年前を知らない私に彼女の能力を見せて。結果を出せなかったら、うちでは雇えない。それよりあなた、彼女には言ってあるの? あのこと」
 
昼休みに入って、杏子はお弁当をもって屋上へと行きます。そこには昼休憩をとっている朝飛がいました。
 
「もしかして聞きました?」
「え?」
「あれ違う? まあいっか。俺だけ先に知ってるのどうも不公平で嫌だったんですよね」
「何が?」
「いや、僕も仮採用だって言ったじゃないですか。僕たちどっちか一人しか採用されないって決まってるんですよ。がんばりましょう」
 
 
午後、杏子は多田のオフィスに行きました。
 
「まだいたの? お子さんのご飯とかは?」
「作り置きしてあるから大丈夫。今いい?」
「いいよ。ちょっと待って、すぐに終わらせるから」
 
杏子は彼のデスクにあるシーサーの置物に目が行きます。
 
「それ覚えてる? 同期で行った沖縄の」
「やっぱりそうだよねえ。皆でおんなじの買ったやつ! まだ持ってたんだあ」
「いや、逆に捨てるのが怖いだろう。魔除けだぞ」
「捨ててないけど、どっか行っちゃったよ」
「それ捨ててるよな。確実に」
「多田くんぽーい。そういうところ繊細で。だから、私には言わなかったんでしょ。私に余計なプレッシャーかけると思って」
「え?」
「あたしと朝飛先生、ゴーサインはどっちか一人だって」
「あいつーーごめん。俺からもっと早く伝えるべきだった」
「いいの。逆にスッキリした。無理に採用してもらって多田くんに迷惑かけるのが怖かった。でも、競争なら自分で背負える。大丈夫。16年間、弁護士としてはブランクだけど、私なりに家事も育児も精一杯やって来たから。それが何の力にもなってないとは思わない」
「蓮見さん。本当に変わってませんな」
 
二人は笑い合いました。
 
「あ、それでね。ちょっと気づいたんだけど、日下部さんの番組って扱うニュースの種類がだんだん変わってきてるの」
「扱うニュース?」
「うん。念の為、事件より前の放送もさかのぼって見てみたの」
 
杏子はその資料を彼に見せました。
 
「これ、面白いな。これで尋問方針まとめてみてよ」
「え?」
「次の口頭弁論、一緒にやってもらうから」
「法廷に立つの?」
「うん」
「無理だよ! それに私が表に立ったら、また日下部さんがーー」
「世間はそんなに単純じゃないよ。ご主人の件で日下部が蓮見を攻撃しても皆が同調するわけじゃない。蓮見は、今やるべきことをやらないと」
 
彼女はそんな多田に微笑みました。
それを見ていた円香は、多田が帰宅する際に呼び止めました。
 
「蓮見先生、法定に立たせるんですか?」
「さっき彼女が面白いことに気づいてさ」
「こちらの検察の初動捜査についても興味深い情報を入手しました」
「ほう」
 
分厚い資料を渡され、多田はそれを確認します。
 
「よく調べたなあ」
「蓮見先生の仮採用中の給料は、新人弁護士の7割分けだそうですね」
「よく知ってるな」
「私はいくらだかご存知ですか? その、半分です」
「それはあんまりだな」
 
円香は、多田が乗ったエレベータのドアに割り込み止めました。
 
「はい、あんまりですよね」
「二割アップで検討してみるよ」
「ありがとうございます」
 
 
その後、杏子は日下部の番組について熱心に研究と勉強を重ね、自宅でも口頭弁論の練習を行って法定に挑んだのでした。
 
 
傷つける情報と揺らぐ信頼
16年ぶりの法定に圧倒されてしまった杏子は、口頭弁論が始まってもおどおどとしたまま弁論をしてしまいます。声は小さく、日下部のちょっとした威圧にすら驚いてしまうのでした。
 
「あなたの番組ではどういうニュースを扱っていますか?」
「政治や社会問題。あなたのご主人の蓮見検事の贈収賄疑惑についても扱っております」
 
法定はざわめきます。
多田は動揺する彼女に「気にするな動揺させようとしている」と声をかけました。
裁判官は続けるように促しますが、杏子は少し言葉に詰まってしまいました。
 
「ん? 代理人どうしたんですか?」
 
日下部川の弁護士である市原賢吾は、そんな裁判長に含み笑いで発言します。
 
「裁判長、こっちはゆっくりでかまいませんよ。何しろ、あちらの代理人はご主人が逮捕されて16年ぶりに弁護士に復帰したんだから」
「ご静かに!」
 
それでも彼女は頑張って話し始めました。
 
「日下部さん。あなたが番組で扱ったニュースについて調べてみました。番組が始まった当初は先ほどおっしゃられたとおり、政治や社会問題をとりあげておりました」 
「残念、異議ありです。本件との関連性が不明瞭です」
 
前置きが長かったためか、その隙をつかれて市原弁護士に口を挟まれてしまいます。
 
「代理人、ご意見は?」
 
法定の空気と相手方のペースに呑まれてしまったことで、彼女はおどおどしたまま、口を開くことができません。
 
「特になければ、異議を認めます。質問の主旨を明確にしてください」
「最近の番組では扱っているニュースの種類が変わってきています」
「またまた残念。ですから、関連性がわかりません」
 
また市原が鋭く切り込んできました。
弁論のテンポが悪いことで、聴取している人たちの中では蓮見検事に関する不貞行為の話まで持ち上がり始めてしまいます。裁判官は、法廷を進めていきます。
 
「本訴、原告代理人! 質問がなければ終了してください」
 
そこで見ていられなくなった多田は、弁論を代わりました。
 
「裁判長、代理人の多田です。先ほどの質問の主旨は、被告人の番組はネタぎれだったのではないかということです。番組では当初、被告お得意の政治や社会問題について鋭く切り込むスタイルでしたが、最近では芸能ゴシップやワイドショー的なものが多くなっています。それがネタ切れの根拠です」
「だから、それが本件とどう関係するんですか?」
「これから説明します。ーー日下部さん、7月にサイトの運営会社から番組の終了を打診されていますよね。アクセス数の低下を理由に。番組を続けるためには、どうしても大きなネタを流す必要があった。それでこの事件に目をつけ、見切り発車で根拠のない発言をしたのではないですか」
「異議あり! 明らかな侮辱的質問です」
 
市原弁護士は弁論に異議を唱えましたが、日下部は受け入れました。
 
「いやいや、いいでしょう。いいでしょう。確かに、おっしゃるとおりです。終了を打診されたことは事実です。毎週、週刊誌が爆弾と称してドッカンドッカンスキャンダル暴いとるんですよ。しかしねえ、私はね、ガセネタで凌ごうなんて、そんなさもしい根性の持ち主ではありませんよ。私にはね、ジャーナリストとしてのプライドと誇りがありますから」
「そうですか。では、あなたの取材方法を教えて下さい」
「新年のあるすべてのジャーナリストと同じですよ。確固たる情報源からネタを拾い、裏を取り、精査検証。それを自分の発言に、あるいは文章にしていく。こういう地道な作業があればこその報道なんです」
「今回の情報源は警察であり、この備忘録にあるKさんというのは警察官ということですよね」
「そうです。然るべき地位にあり、信頼に足る人物です」
「そのKさんから原告の妻、浜口美里さんが被疑者であると聞いたのはいつですか?」
「メモにあるとおりですよ。8月の5日です」
「8月5日ーー裁判長、モニターを使用して被告に甲17号証を示したいのですが、よろしいでしょうか」
「どうぞ」
 
モニターには、警察の捜査の流れと初動捜査がいつ頃にあったのかを明確に示しました。
 
「事件があったのは、8月2日ですから8月5日は初動捜査に近いと言えますね」
「まあ、そういうことだね」
「しかし、こちらで調べたところ、初動捜査では警察は被疑者を過去に子どもを狙った犯罪歴のある人間に絞って聞き込みをしていたことがわかったのです」
「いえ、誰から聞いた」
「日下部さんと同じ、確固たる情報源を元に警察の聞き込みを受けた方々に直接あって話を聞き、丁寧に裏を取って検討を重ねた上での情報です。裁判長、証言をリストにしてありますので、追加の証拠として提出します」
「いいですよ。わかりました」
「地道な調査を続けたところ、警察が美里さんについても聞き込みをしていたことがわかりました。初動捜査では成果が出せず、方針を変えたんでしょう。ただし、問題はその時期が9月に入ってからということです。つまり、あなたが番組で美里さんが被疑者だと発言をした8月16日には、美里さんはまだ捜査線上には上がっていなかったんです。これはどう説明されますか?」
「ああ、私には内部情報が入りますからね。確かに8月5日、被疑者に上がっていると聞きました。ただし、この1件に関しましては社会全体への影響も考えてあたしもどうしようかためらったんですよ。しかし、子どものことを考えて公表に踏み切った。と申しますのはですね、この子は以前にも母親に殺されかけてるんです」
「以前に?」
「母親、妊娠後期。この子を中絶しようとしております。育児ノイローゼみたいなものがねーー」
 
そのとき、美里の夫である浜口直樹は彼の発言に驚き、逆上してしまいます。
 
「おい、ふざけんなよ! そんなことするわけねえだろう。誰に聞いたんだよ! デタラメ言うなよ!」
 
こうして、最初の口頭弁論は終了したのでした。
 
 
多田と杏子は、依頼人のマンションに来ています。
 
「日下部が今日の放送で裁判について発言し、奥様のことについても触れました。奥様があなたに隠していた可能性はありませんか?」
 
浜口はただ宙を見つめるだけで、黙ったままでした。
そこで多田には事務所から電話が入り、席を外します。
 
「奥様の通われていた産婦人科を教えて頂けませんか?」
「あいつが子育てに苦しんでいたのを知っていました。でも、俺も仕事が忙しくて。辛かったと思います」
 
彼は位牌に飾ってある花瓶を洗い出しました。
 
「あんた、旦那の無実を信じてますか?」
「え?」
「俺はときどき、美里を信じられなくなるんす。でも、それじゃ生きていけない」
「まずは、カーテンを開けませんか? ゴミを捨てて、掃除機をかけて、洗濯をして、美味しいものを食べて、テレビもネットも見ないで日常を大切にして過ごすんです」
「それで楽になるんすか」
「いいえ。でも、強くなれます」
 
杏子がカーテンを開けたことによって窓から光が指しました。浜口には子どもと妻の声とが聞こえた気がしたのでした。
 
 
デマが失わせた命
杏子と円香は、浜口が教えてくれた産婦人科に聞き取り調査に入っていました。
 
「弁護士の方ですね。ご主人から連絡いただきました」
 
杏子は最初に口を開きます。
 
「あの、奥様の美里さんが妊娠後期にお子さんを堕ろそうとしていたというのは事実でしょうか」
「いいえ。深夜にご自宅で不正出血して、急遽タクシーで来院されただけです」
「ご主人はどうして知らなかったんですか」
「出張中だったんです。異常はありませんでしたし、ご主人が心配されるからと口止めされたんです」
 
医師は立ち上がり、手のひらを念入りに拭いました。
 
「その夜のことを知ってるのは、この病院の方しかいません。デマを流しそうなスタッフはいませんか?」
 
円香は鋭く追及しました。
 
「いるわけないでしょ」
 
動揺した姿を彼女は見逃しません。
 
「お心当たりが、あるんですね」
 
 
日下部直哉の放送の後に、中絶疑惑の話はネットで拡散され、看護師の間では「病院に出入りをしている外部のスタッフが情報を流したのではないか」と噂になっていたのでした。円香はその事実を神山と多田に報告しました。
 
「外部?!」
「清掃スタッフです。美里さんが不正出血で来院した夜、産婦人科の清掃に入っていたのはこの3人でした」
 
疑惑のある人物をボードに貼り付け、杏子は情報を整理します。
その清掃スタッフの三人は、安田陽子、大江芳樹、伊達安奈です。
 
「深夜だったので、他の業者の出入りはありません。3人の誰かが、日下部に情報を流した可能性が高いです」
 
それに関して神山は、過去の情報に戻り、指摘しました。
 
「でも、ちょっと待って。日下部の情報源は警察じゃなかった?」
 
警察に関しては円香が説明します。
 
「私の調査の結果、警察は美里さんの中絶に関して情報を持っていませんでした」
「じゃあ、日下部の情報源は警察以外にもあったのかもしれないな。最近のワイドショー的な怪しげなネタはそっちからの情報かもしれない。今回のデマみたいに」
「じゃあ、その情報源を見つければ、日下部の発言に根拠がなかったことを証明できるかもしれないわね」
「3人に会って、誰が情報だか探ってみます」
 
皆の話を聞いていて、杏子は自ら提案します。
 
「あの、私が会ってみてもいいですか?」
「君じゃ警戒されるだろう。日下部の情報源なら蓮見という名を知っているはずだ」
「知られているから会ってみます」
 
そうして、杏子は一人一人に会い、自分が蓮見杏子であることを普通に話して3人にそれぞれ違うネタを話したのでした。それによって誰が日下部に杏子の情報を流すのかを待ち続ける作戦なのです。
 
日下部に動きが出るまでの間に、杏子は夫の弁護士である林幹夫と会っていました。
 
 
「いやあ、検察も必死なんです。嫌疑がかかった人間が出た以上、組織は自浄能力を世間にアピールしなきゃならない」
「嫌疑がかかったっていうことは、夫の行動にも問題があったんじゃないですか」
「いえいえ、ご主人はトミオカ精工を不起訴にしたのは、捜査の結果、疑いが晴れたからだと主張されています。金銭の要求も一切していないと」
 
 
数日後、弁護士事務所のいつものメンバーは、日下部のネット番組をチェックして動きが出ることを待ち続けていました。
 
「正直、賭けだよなあ。もし今回、誰が情報を出したとしても中絶のデマを流した人物と一致するとは限らない」
「そもそも、この三人ではないかもしれないしねえ」
「でも、私の予想が当たっていれば可能性はあります」
 
その時、番組の放送最後に日下部は話しだしたのです。
 
「例の裁判でお馴染みの蓮見杏子先生でありますが、なんとですね。気の毒なことに私どもの裁判に負けたら、事務所をクビになるということが決まっているそうでありまして。そうなりましたら、当番組でぜひアシスタントにーー」
 
円香はニヤリとしながら、杏子に尋ねます。
 
「この餌をまいた相手は誰ですか?」
 
 
引っかかったのは、清掃スタッフの伊達安奈でした。
「デマなんて流してません」
「でも、伊達さんは日下部さんのファンですよね」
 
杏子は彼女の持つ手帳を指して言います。
 
「その手帳、この間も持っていましたから」
 
手帳には日下部の番組ステッカーが貼られているのでした。
 
「日下部さんのファン。美里さんが来院したときに病院にいた。私の情報を日下部さんに流した。偶然が3つも重なれば、必然だと考えるのが自然ですよね」
 
 
とうとう、第三回の口頭弁論へと進みました。
 
「本訴、原告代理人。質問を」
「日下部さんの熱心なファン同士でたまにオフ会があるそうですね。そこではどういう話をするんですか?」
 
証言台には、清掃スタッフの伊達安奈がいました。
 
「日下部さんの裏アドレスの話とかです。コアなファンしか知らない裏アドレスがあって、そこに送ったメールが面白ければ番組で使ってもらえるんです」
「コアなファンたちが日下部さんの情報源だったということですね。あなたも送りましたか?」
「何通か」
「どういう内容のメールですか?」
「浜口美里さんが妊娠後期に入って中絶しようとしたことを」
「それは事実ですか?」
「いいえ」
「事実かどうか、日下部さんから確認されましたか?」
「いいえ」
「どうして日下部さんに嘘の情報を送ったんですか?」
「周りのお友だちは皆採用されてるんです。なのに私は一回も。なので、ちょっと過激なことを書けば使ってもらえるのかなって」
「では、番組で使われて嬉しかったですか?」
「いやいやいや、驚きました」
「どうしてですか?」
「あれは嘘だったっていうメールを、あの後に一通送ってるんです。嘘ついたことを後悔しまして」
「日下部さんは、あなたの嘘を十分に調べることなく根拠のない発言した。もしくは、あとで嘘だと知ったがそのまま放置したのだと思いますか?」
 
日下部は我慢できずに立ち上がり、発言してしまいます。
 
「冗談じゃあないよ。毎日、朝に何百通とメールがやってくるんですから。一々目を通してる暇はありませんよ。それに嘘だったなんていうメール読んではいませんから」
「では、一通目は読んだんですか?」
 
裁判官は「被告は勝手に発言をしないように」と注意しました。
 
そして、反対尋問へと進みました。
 
「日下部さん。あなたは先ほどの証人、伊達さんのメールを鵜呑みにし、裏取りもせず発言したことを認めますか?」
「認めます」
「それではーー」
「ただし、認めるのは中絶発言に関してだけです。蓮見弁護士、一を証明したからといって、十を証明したことにはなりませんよ。母親が被疑者であったというのは確固たる証拠があることなんですから」
「それでは裁判長、尋問を続ける前に追加の証拠として、日下部さんの情報源に関するメールを提出させてください。そのうえで、メールと映像を示しながら尋問いたします」
 
杏子は証拠を裁判長へと提出しました。
 
「日下部さん。先ほどの証人がコアなファンがあなたの情報源だったと証言しましたが、間違いありませんか?」
「そういうことはありますよ」
「証人は、友だちが皆採用されているから、つい嘘のメールを送ってしまったと証言しました」
「それが何だというんですか」
「その採用された友だちから『”美里さんが子どもが殺害した”という情報をあなたに送った』という証言を入手しました。その情報に根拠がなかったことも裏が取れています。競争が加熱しすぎたようですね」
 
杏子が提出した証拠のメール内容は、日下部が番組で発言した内容と丸っと一緒でした。
 
「あなたの発言は、警察ではなく、この情報メールを元にしたのーー」
「異議あり。本訴被告を侮辱する尋問です」
「裁判長。今の尋問は本訴の確信を問う部分です」
「異議を棄却します。証人は答えてください」
「確かにメールは見ました。しかし、その証言を借りただけでありましてね。内容については、十分な裏をとっております」
「メールの送信時間を見てください。放送の5分前です。たったの5分で十分な裏をとったということですか? ネタに詰まり始めていたあなたは、ファンからの情報を積極的に使うようになった。最初はきちんと裏をとっていたのかもしれませんが、誰も知らない真実なんてそうそう転がっているものでもない」
「異議あり。憶測に基づく、明らかな誘導です」
「追い詰められたあなたは、ついに放送開始5分前に届いたメールをそのまま使ってしまった。それから後づけで警察から裏を取り、結果的に母親が捜査線上に乗ったという情報が一致したため、安心して発言を続けた」
「異議あり! 裁判長!」
「私の取材だ!」
 
とうとう日下部は耐えきれなくなり、発言してしまいます。
 
「被告は発言を慎みなさい!」
「いや、言わしてください! 弁護士の記者ごっことは訳が違う。私は長い間、隠された真実に光を当ててきたんだ!」
 
そのとき、傍聴席にいた浜口は立ち上がり叫びました。
 
「ふざけんな! あんたの身勝手なプライドのために美里は犠牲になったんだよ。あいつが娘をどんだけ大事にしていたか。俺の分まで全部背負って一人で必死に。あんたの報道はなんのために。人が生きるためにあんじゃねえのか」
 
 
そうして、後日に判決が出ました。
双方ともに名誉毀損に基づく損害賠償は棄却となったのです。
閉廷後、円香のもとに警視庁から連絡が入りました。
 
子どものいない夫婦がスーパーから玲奈ちゃんを連れ去ったことを近所の人が裁判の報道で事件を知り、通報したのです。
 
浜口を連れて現場にたどり着くと元気な玲奈ちゃんの姿がありました。
彼は娘を抱きしめます。多田はすぐに日下部へ控訴の連絡を入れるのでした。
 
「娘さんが保護されたんです。今までのデマ発言を徹底的に調べ上げて警察に持っていくこともできるんですよ。まあ、和解を望むなら、請求金額は1億円です」
 
その後、無事に和解が成立して、賠償金を得たのでした。
弁護士事務所の皆で焼肉パーティです。
 
そんな中、杏子は円香にお礼を伝えていました。
 
「ありがとうございました。円香さんの調査のおかげです」
「仕事ですからーーどうして、すぐに離婚しないんですか? 汚職に浮気までされて」
 
円香から突然の問いに少し戸惑う杏子。
 
「子どももいるし、まだ答えが出なくて」
「駄目な親ならいないほうがマシです。あなた自身が怖いんじゃないですか。踏み出すのが」
「そうかもしれないですね。母親が3回結婚してるんです。二回目のときに私が家を出て、今はほとんど会いません。だからかな。家庭ってものへの執着が強いっていうか」
「それで弁護士辞めたんですか?」
「子どもが生まれて怖くなりました。この子を最優先で育ててあげられるかって」
「私、パラリーガルになる前、検察庁に居たんです。検察事務官でした。3年間ご主人の元で働いて首になりました。あまりご主人を信じないほうがいいです」
 
 
 
その頃、東京地検では佐々木が蓮見壮一郎のことを取り調べるふりをして、彼に情報を渡していました。監視カメラはは脇坂が見ているために佐々木はその死角になるよう上手く、壮一郎の顔を隠して会話します。
 
「二人になったところで腹を割って話しませんか。トミオカ精工から金品を受け取ったんですよね? いい加減、観念したらどうですか。蓮見さん!」
(脇坂は例の件に気づいているのか?)
 
壮一郎は小さな声で佐々木に耳打ちします。彼は小さく首を横に振りました。
 
(用心しろよ。知られたらーー)
「トミオカ精工の社長の証言もあると言ったでしょう」
 
佐々木は激しい取り調べのフリをして、壮一郎の指示を聞きます。
 
(その証言も潰せ。不起訴に持ち込め)
 
また佐々木は小さくうなずくのでした。
それだけではなく、壮一郎は自分の顧問弁護士に妻を弁護士事務所に誘った多田のことも調べさせていました。
第1話の感想はここをクリック
夫の贈収賄容疑と浮気に負けず、子どもたちを支えながら弁護士として働きに出る蓮見杏子の姿はとてもかっこよかったです。しかし、そんな彼女はどこかおっとりとしていて、時には少しおどおどするような姿も見られます。かっこいい姿がありつつも、可愛らしい面のある女性であることに好感がもてました。
 
弁護士のドラマは、正しさで戦いつつも、人間の情や状況をしっかり考慮して判決を出そうと頑張る姿があるので、心に響いてとても面白いです。
 
今回の裁判で争点になっていた表現の自由と、情報の虚偽で起きた名誉毀損の話は、SNSといった簡単に発言のできる場では誰にでも起きる可能性のある問題でしょう。一人の発言が容易く誰かの命を失わせる可能性があるということはとても恐ろしいものでした。
 
社会の問題が浮き彫りになる裁判は、見ていて考えさせられるものがあります。
まだ蓮見壮一郎の容疑がはっきりしていないので、次回に少しでも事件について何かわかることを期待しています。

グッドワイフ(日本ドラマ)の内容

公式サイト

。杏子は出産を機に弁護士の仕事を辞め、専業主婦としてエリート検事である夫を支え、子どもを育て、家庭を守ってきた。ところがある日、東京地検特捜部長である夫が汚職の容疑で逮捕される。さらに女性スキャンダルまで明らかになり、“よき妻” として家族に尽くしてきた杏子の人生は一変する。
 
夫のスキャンダルの真相も明らかにならない中、子どもたちを守るために杏子は復職を決意。そして司法修習生時代の同期・多田の助けで、多田が経営する法律事務所に仮採用され、16年ぶりに弁護士として復帰する。しかしスキャンダルの渦中の妻として世間から向けられる好奇の目、さらに、弁護士としての16年のブランクははかり知れず、悪戦苦闘する日々。それでも杏子は強い信念を持ち、“自分をあきらめずに”、自分の弱みも逆手にとって強く生き抜いていく中で、弁護士として、人として成長していく。
 
<出典>TBS公式

<出演者>

蓮見杏子:常盤貴子
多田征大:小泉孝太郎
円香みちる:水原希子
朝飛光太郎:北村匠海
佐竹凛子:末永みゆ
井上弘昌:本間剛
早坂那津子:枝元萌
郡山肇:松澤傑
神山佳恵:賀来千香子

<各話の視聴率>

#1 家族の裏切り 10.0%
#2 その男、黒か白か 11.5%
#3 隠された罠 9.6%
#4 過去との決別 9.0%
#5 夫婦の条件 8.5%
#6 崖っぷちの選択 9.5%
#7 消された真実 8.9%
#8 裏切り者 8.7%
#9 堕ちた正義 9.7%
#10 最後の審判 11.5%

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グッドワイフ(日本ドラマ)の感想

30代男性

作品を通して一貫して芯の強い母親像を描いていてプライベートも仕事もしっかりとこなそうとする姿が賢明でつらいことがあってもひきづらないようにしようと戦っている姿がとても印象的でした。最終的な結末については個人的にはよりを戻してほしい部分は若干ありましたがあれはあれで女性らしいというかふっきれた感じもあってスッキリした形で終われたので良かったと思います。小泉孝太郎さん演じる男性との社内恋愛がありそうでなかったのも観ていてそわそわする雰囲気もありましたが思わせ振りなところが作品としては楽しめたところなんじゃないかと思いました。その小泉孝太郎さんの弁護士が終盤で裏切りそうな空気を出しながらも最後まで味方でいたのはとてもかっこよくいつも仕事に忠実で仲間や後輩思いなところやスポーツにたしなんでいるシーンなんかは特に印象的でスマートなキャラクターが彼にぴったりでナイスなキャスティングに感じられました。常盤貴子さん演じる女性の元旦那の唐沢寿明さんも夫としてはなんともいえない感じはありましたが、終盤にかけての仕事ぶりや元妻に対するふるまいなんかには大人な感じがあって最後に男を見せたような勇ましさがあってかっこよかったです。

50代男性

専業主婦だった人が仕事することになると、勤まらないことが多数です。なぜ仕事することになったのは、旦那のスキャンダルが問題でした。離婚してしまえば、自分の力で生きるしかないからです。16年もブランクがあるので、どこも雇ってはくれませんでした。かつても同僚の紹介で、弁護士事務所に仮弁護士という形で入ることができました。旦那は検事なので、本当に敵同士になりました。仕事から離れていると、使う神経や体力が主婦とは全然違うので、悪戦苦闘していました。壮一郎は遠山亜紀とスキャンダルが発覚していましたが、実は何もなかったことが判明しました。誤解が解けた感じがしましたが、壮一郎は円香との浮気がありました。たった一度の間違いでも、一度失った信用は二度と取り戻すことはできません。今度こそは離婚届を提出しました。人の模範になるべき者が、こういった始末になると人の事は言えなくなります。夫婦での悩みは誰にでもあると思います。乗り越えられない状況をつくってしまったのは、壮一郎です。スキャンダルの噂になった遠山亜紀は重症になってしまい天罰が下った感じにも見えます。男好きな円香もいつまでも続くことがありません。年は必ずとってしまいますから。

30代女性

蓮見杏子と正社員の座を争っていた朝飛光太郎が個人的には好きです。とはいっても、最初は主人公のライバル的存在でしたし、途中ではとても嫌な人物になってしまったので、当初はどちらかというと嫌いでした。しかし、最終的には人間味のある自分に正直な人物といった一面から実は信頼できる良い人だったのだと思えます。このドラマの中心テーマである東京地検特捜部の汚職に関してかかわっているわけでもなく、どちらかというと周りに振り回されることになった被害者といった立場です。ですから、腹が立つ時もありましたが、実は朝飛光太郎がドラマ内で一番無害な人物だったのではないかと今は思えます。彼が最後に法廷で争う時の爽やかで全て吹っ切れたような顔が好きですね。その時顔を見た時から、あまり好きではないと思っていた朝飛光太郎に好感を持ちました。演じているのが若手で勢いのある北村匠海さんという点も良いですね。ドラマ自体は、誰が味方で誰が敵か全くわからない手に汗握る展開でした。最後の最後に良い意味で「やられたぁ」という感じです。演技派の俳優陣が騙し合う訳ですから、迫力がすごいですよ。全く予想できない展開と結末が待っているので多くの人に見てもらいたいと思います。

20代女性

夫がスキャンダルで逮捕され、16年ぶりに弁護士に復帰して働く常盤貴子さんが演じる蓮見杏子が本当にかっこいいです。弁護士という難しい職業で復帰はなかなか大変そうであるうえに16年間専業主婦として現場から離れていたにも関わらず、子供たちのためにもバリバリ働いていて素敵なお母さんだなと思いました。夫の壮一郎が何があったのかなどあまり話さないしなかなか真実が見えてこなかったのではじめはとてもモヤモヤしました。人間関係がとても入り乱れていて誰を信じていいのかわからずハラハラしたり、多田先生が壮一郎から杏子への留守電を消してしまったときなどは今後どうなるのかととても気になりました。杏子にとって久々にできた信頼できる女性友達である円香と夫の壮一郎のことで関係が悪化した時はとても切なかったです。杏子にとってだけでなく、円香にとっても杏子は大切な人になっていたので余計に、何とか良好な関係を築き直してほしい!という気持ちになりました。子供たちや夫、法律事務所のことなど色々と考えることが多く、難しい決断を迫られる中、必死に働き、覚悟を決めていく杏子には同じ女性として憧れの感情を抱きました。始めは慣れなくて大変そうでしたが、どんどん弁護士としてのやりがいを感じ、輝いていく姿が良かったなと思います。

40代男性

検察を強くするための正義、そこに正義はあったのでしょうか?こういった疑問を投げつけたくなるほどのストーリーであり、どこかの衰退していくアジアの小国のような感じがしました。波風を立てようとするとそれはそれで鉾彫りが生じてしまう検察を改善しようと私利私欲で組織を動かしてしまう。そのように邁進するのは大いに結構なことですが、その過程における子どもたちの立場となればそれはそれで不幸を感じざるを得ない。こういったように人は二つのこと一挙に成し遂げられないのです。両立させるということは困難であり二兎を追う者は一兎をも得ずなのであります。スピーディーな展開はとにかく面白いということがありましたし、スピーディー展開でたいへん最終回まで駆け抜けるような疾走感があるドラマでありました。以上のことからそこそこに面白いということは分かるのですが、題材としてとにかく語り尽くされた感が否めない検察、そればかりではなく常盤貴子は歳よりも美しいのは分かるのですがその演技力だけで一人立ちしたとは思えないのです。そのうえ歯に絹着せぬと、小泉孝太郎さんはとにかく親の力で芸能界に入ったというだけで、彼を見ているだけで虫唾が走りあまり面白くないドラマと評価を下したくなります。それぐらい常盤よりも小泉孝太郎の悪目立ちがしてしまうドラマであり、いっそのこと引退すれば良いのにといつも思ってしまいます。

20代女性

常盤貴子さん演じた、蓮見杏子の弁護士姿がとてもかっこよかったのが印象的です。女性だから、弁護士に復帰仕立てだからと言って小ばかにされていたけど、ぎゃふんと言わせるほど見事に弁護する姿がとてもかっこよくて素敵でした。同じ事務所にいる多田は、昔から杏子に思いを寄せていて、今でも杏子のことが気になっているのがバレバレだったので、どうなるのか、恋愛面も気になるポイントでした。多田が想いを抑えることができず、杏子に思いを伝えたときは、旦那の不正で苦しめられている杏子が多田の元に行ってしまうのではないかとよぎるシーンもあり、ドキドキしながら見てしまいました。多田は杏子を手に入れるためなら、どんな手段も使うような人間だったらどうしようかとヒヤヒヤしながら見ていたのですが、そこまで悪人ではなく、正々堂々と戦うような人物だったので良かったところでした。杏子が弁護士に復帰したことを、息子や娘たちは応援してくれていたので、杏子も頑張りがいがあるなと感じました。父親の壮一郎が悪者だと思っている息子は、冷たい態度を取っていたのですが、全て仕掛けられた罠だと分かったとき、杏子たち家族が再び笑えるようになったのが本当に嬉しく思いました。

30代女性

主演の常磐貴子さんがとてもキレイでかっこよくてこんな40代素晴らしいと思ってみていました。女性としてとても憧れます!専業主婦から弁護士として再就職して、ブランクがありながらも仕事で活躍する姿は勇気をもらえました。私自身も今は専業主婦なのでまた働けるようになりたいなと思いました。それぞれの事件もとても見ごたえがありました。印象的だったのは車椅子に乗った弁護士との対決です。春風亭昇太さんが嫌みたっぷりに演じていて最高でした。正直、障害者は善人だというイメージがありましたが、それを見事に覆した感じでした。企業とのつながりがわかり、逆転したところはドキドキしました。また、杏子が夫の弁護をやります、と引き受けるところがすごいなと思いました。今までちょっと控えめだった杏子さんが強気になり、戦おうとするところはとてもしびれました!夫の事件は結果的に無実がわかり、良かったなと思った通りのですが、なんと不貞行為は行われていたとはびっくりでした。しかも同じ事務所で仲良くなったみちるさんなんて。。夫婦が元通りになるのかと思いきや、裏切りは行われていたと思うととても腹が立ちました。小泉孝太郎さんえんじる同僚との片想いも気になるところでしたが、結果的に晴々しく離婚を選んで良かったのかなと感じました。

50代女性

常盤貴子さんのお顔は私の好みでは無くて、どちらかと言うと悪女顔だと思っていました。でも、その悪女顔が笑うととても可愛くて好きになったのは『真昼の月』からでした。若い頃は、笑顔で何とかなるお役もそこそこの年齢になったら誤魔化しがききません。『グッドワイフ』は海外ドラマで少しだけ見ました。『ER』のジュリアナ・マクグリースが演じていた役を常盤貴子さんが演じると言うのに興味津々でした。常盤さんは結婚していて思春期ノ子供が2人いる元弁護士の杏子さん。夫の贈収賄事件に加えて浮気もされると言う2つの悲劇に見舞われます。杏子さんは普通の奥さんでは無く、元弁護士なので、離婚を視野に入れるのであればスーパーでパートでは無く、弁護士に戻るのがベストです。でも、結婚して専業主婦だった期間が長いので、まずはお試しみたいに友人の伝で弁護士事務所に入社します。若手と競ってどちらか優秀な方を正式に入社させると言うキビしいものでした。友人は小泉孝太郎さん、若手は今大人気の北村匠海さんでした。杏子は改めて経験を積み、自分の夫が「無実だ」と言うのを信じて弁護することにします。前代未聞の夫婦で挑む裁判でした。杏子の背景も裁判もドラマチックで両方の成り行きが平行して流れて行きました。確固たる仕事を持っている女は強いと思ったドラマでした。ついでに子猫も。杏子は離婚を選びますが、それも仕事があってのことですね。

50代女性

主人公の杏子は長年専業主でしたが、夫の不倫と不正疑惑により、弁護士の仕事に復帰しました。そんな彼女がすぐに仕事に就けたのは、もと同期の多田でした。単なる同期というよしみだけでは、ここまで尽力してくれなかったでしょう。多田はずっと杏子のことが好きだったようです。杏子もそんな彼の気持ちを薄々感じていました。ですが、杏子は今家庭内が大変な状況です。自分だけで全てをやって行かなければなりません。ですが、彼女はもともと優秀な人だと思いますし、非常に気丈です。その背景にはやはり自分が子供たちを守らなければならないという強い意志があったのだと思います。結局、この夫婦は離婚することになりましたが、定期的に子供たちと会っているようです。新しい関係になった夫婦ですが、子供たちにとってはずっと父親です。グッドワイフというのは良妻賢母の事をいうのかもしれません。ですが、このドラマでは最終的にはそうなりませんでした。経済的に自立できる女性だからこそ、我慢せずに自分の意志で離婚を選択できたのだと思います。子育てだけが夫婦でいる目的ならば、子供たちが大きくなったらその役目は終わってしまうのかもしれません。この夫婦はもしかしたら、そういう家族の形だったのではないかと改めて思いました。 

50代女性

誰が嘘つきなのか?誰を信頼していいのか?ひやひやドキドキしながら、最後まで目が離せませんでした。実際に、官僚の思惑による罠とか、マスコミの印象操作とかありそうな感じで、すごく怖くなりました。物事をしっかり冷静に考える力がなければ、すぐに騙されてしまいそう!結婚してずっと主婦だった杏子が、弁護士として復帰してもがく姿は、リアリティーありました。いくら元が弁護士で、仕事のできる人だったかもしれないけれど、あの状況で仕事を勝ち取るために立ち向かっていくって、ものすごいエネルギーが必要になる。第四話のママ友関連の事件の時もすごく怖かったです。人間不信になりそう。仲良しだったはずなのに、夫の事件後は関係を切られたママ友。でも、自分が窮地に陥ったので、杏子に平然と助けを求める。堂々と手の平返しが怖かった~。そして、結果助けてあげたけれど、ただやられてるだけじゃなかった杏子にスッキリ!仕事の事とか、子供の事とか、夫の女性関係とか、戸惑う姿に共感しました。同じ苦境でも、夫を全面的に信頼できるのなら、気持ち的に随分とラクなのでしょうが、ほぼ真っ黒そうに見えてたし。何度も何度も傷つきながらも、たくましく立ち向かっていく杏子が清々しかった!常盤貴子さんがステキだった!脚本も良いのでしょうね。微妙な怪しい夫を演じた唐沢寿明さんの演技もすごく上手かったと思います。小泉孝太郎さんの存在も良かったです。最近にない凝った作りの見ごたえのあるドラマでした。