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<見逃し動画>最終回(第10話) 「生まれ直しても今の相手を選びますか夫婦2組の決断」
 
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最終回(第10話)の公式あらすじ

美都(波瑠)は、涼太(東出昌大)に妊娠していなかったことを報告するが、涼太からあっさりとした返事を返され拍子抜けしていた。
一方、麗華(仲里依紗)が子どもと実家へ戻り、狼狽する有島(鈴木伸之)は、麗華を追って電話をかけるものの、冷たく突き放され一方的に切られてしまう。
そんな茫然自失の有島の元に、涼太から電話がかかってくる。今までの行いを悔い、謝罪するが、弱っている有島に対し、真顔で冷静に詰め寄る涼太。さらに麗華との現状に、心底楽しそうに笑われる始末。
 
涼太は、香子(大政絢)に離婚届の証人として署名捺印を頼んでいた。離婚届に捺印する香子は、とあることに気付き、涼太の狂気に初めて触れる。
そして、ついに離婚届を役所に送るという涼太からのメッセージを受け取った美都。「最後に一度だけ」と、久しぶりに涼太と夫婦最後の晩餐を楽しむが…。
 
<出典>あなたのことはそれほど公式

最終回(第10話)のネタバレはここをクリック
前回、渡辺美都はやっと二人のマンションを出て一人暮らしを始めました。夫の涼太も自分の望みとは違うものの新しい生活をするようになります。そして、妊娠検査薬を使った渡辺美都は、妊娠していないことがわかったのでした。
 
一方、ビラ事件の犯人は有島家の隣人である横山でした。迷惑行為の謝罪に武蔵野眼科を訪れた有島麗華は、さまざまな心労が積み重なって限界に達してしまいます。そして、とうとう麗華は実家へと戻ってしまったのです。
 
 
新たな道へと
妊娠していなかったことを美都は、夫の涼太へ連絡しました。夕飯を焼肉屋で一人済ませる美都。彼が離婚届を提出しておいてくれるのか信じきれない彼女ですが、ひとまず信じてみることにしたのでした。
 
その頃、マンションに帰宅して麗華がいないことに気づいた有島光輝は、慌てて彼女を迎えに行こうと飛び出しました。しかし、お酒を飲んでいたために運転はできません。ひとまず、麗華に電話をかけました。
 
「今からタクシーで駅に向かって、迎えに行くから」
「焦りすぎでしょ。せっかく出てきたのに」
「せっかくって、なんだよ」
「私、真剣に考えたんです。なのに、今のあなたに勢いだけで迎えに来られてもとても帰る気にはなれません」
「じゃあ、どうすんの?」
「実家に居ます」
「あのさあ、敬語やめてくんない? 怖いから」
「昔から怒ると敬語になってしまうんです」
「そうですか」
「私が怖い?」
「怖いです。居なくなってしまうことが怖いです」
「おやすみ」
 
実家で麗華は母に「ちょっと厳しすぎじゃない?」と諭されます。「あんたはいつも冷静で正しいねえ。光輝さんも大変だね」と麗華の母は、男の浮気を許容する考えです。しかし、何回浮気されても離婚せず、家庭が大変だった自分の母のようになりたくないと思っている麗華には響きません。
 
 
翌朝、光輝のもとには涼太から電話が来ます。
二人はカフェで落ち合いました。二人の間にはピリピリとした空気が漂います。
話し始めたのは涼太からです。
 
「みっちゃんから聞きました?」
「何をですか?」
「ならいいです。これからどうするつもりですか? たとえば、僕らが別れたら、奥さんを騙し続ければ関係を続けることは可能ですよね」
「いえ、それはもうありません。嘘じゃないです。正直、今はそれどころじゃなくて。妻に出ていかれて」
 
涼太は笑いました。
 
「それは大変だ。奥さん、芯の強そうな方でしたもんね。でも、それどころじゃないってことは、最初から奥さんが1番で、みっちゃんが2番だったってことですよね。ひっどい話だな」
「すいませんでした」
 
光輝は頭を下げますが、涼太は見向きもしません。
改めて立ち上がると光輝は再度、深く頭を下げます。
 
「本当に申し訳ありませんでした」
 
涼太は無言で見もしません。
 
「すみません。勝手なお願いですが、もし少しでも可能性があるなら、美都さんと元にーー」
 
涼太は立ち上がります。そして、怒りに顔を震わせました。
 
「あなたは悪い人だ。極悪人だ」
 
彼の顔から光輝は目を離せませんでした。
涼太は立ち上がったまま上着を羽織ります。
 
「でも、普通に良い人なんでしょう。あの奥さんが結婚する程度には。奥さんのこともお子さんのこともそれなりに大事にして。みっちゃんのこともまあまあ大事にしてたのかもしれない。きっと昔から人気者で要領よくそこそこ努力して、そこそこ幸せに上手く生きてきたのでしょう。でも、もうそうはいきません。僕は、一生懸命努力して、みっちゃんと結婚しました。結婚してからも。それでもこれですよ」
 
涼太は自分の体を指しました。
光輝はうつむいたままです。
 
「これから、有島さんは大変ですね」
 
カフェ代をテーブルに置くと、涼太は彼を置いて去っていきました。
 
 
翌朝、光輝は妻の実家まで向かいました。
麗華は出てきてくれますが、表情は相変わらず暗いまま。
 
「仕事は?」
「休み」
 
光輝は笑顔で言います。
 
「私が言ったこと聞いてなかった?」
「俺が言ったことは聞いた?」
「外でーー」
 
麗華は外に出ました。出先で少しつまずいてしまいます。それを助けようと手を伸ばした光輝でしたが、彼女はそれを少し避けました。
 
「なあ、俺はバイ菌か? 汚らわしいか?」
「そう見えた?」
「自分でもちょっと思った」
「そう、ならそうなんでしょうね。わざわざ来てくれたのに、悪いけどそれじゃあ」
 
彼女は玄関へと戻ろうとしますが、その背中に光輝は言葉を投げかけました。
 
「ごめん。悪かった! 反省してる。二度としない。どうしたら許してもらえる?」
 
しかし、麗華は彼を見ずに黙ったままです。
 
「言ってくれよ! 土下座でも何でもするから!」
「やめて! そんなことしたら、一生許さない。帰ってください。今は離れていたいんです。さよなら」
 
一人でマンションに帰宅した光輝は、彼女の香台にお香を焚くのでした。
 
 
その夜、涼太は美都の友だちである香子とレストランで会っていました。
二人は乾杯します。
 
「それでお話ってーー」
 
涼太はテーブルに離婚届を取り出しました。
 
「離婚、するんですか?」
「みっちゃんの要望ですから」
「それでいいんですか?」
「みっちゃんの要望ですからーーそれで、ここに証人の署名と捺印がほしいんです」
「私、ですか」
「僕らの終わりは僕とみっちゃんを知っている人に見てもらいたい。ちゃんと二人のことを夫婦のことを知っている人に」
 
香子は少し思案して、離婚届に署名しました。
 
「ありがとうございます」
「いえ」
「あっけないですねえ。こんなので終わりか、僕らは」
 
涼太の持ち上げたビールから水滴が離婚届に落ちるのを見て、とっさに香子は離婚届をとりあげました。
 
「あの、汚れるとあれなんでしまいましょう」
 
ふと見た離婚届の誕生日に香子は気づきます。
 
「あれ、渡辺さん明日誕生日じゃないですか」
「これが、彼女から僕への誕生日プレゼントですよ。酷い女でしょう」
 
 
離れてわかった真実
翌日の職場で、美都は同僚の森に離婚したことを話しました。
 
「え!? いつ?」
「いつ? 今日でーー」
 
カレンダーを見て固まる美都。そのとき、携帯に涼太からメッセージが来ました。
 
「離婚届、役所に郵送しておきます。これで本当にさよならですね。今までどうもありがとう」
 
美都は休憩室から出ると彼に「誕生日おめでとうございます」と返信しました。すると涼太から電話がかかってきます。
 
「もしもしーー」
「ありがとう。覚えていてくれて。あのさ、がっかりしたでしょ。子ども出来ていなくて」
「がっかりなんて、別に。何いってんの?」
「そうなの? みっちゃんヘコんでるんじゃないかなって思って」
「私は元気です」
「ならよかった。みっちゃんらしい」
「じゃあ、よろしくおねがいします」
「ねえ、みっちゃん! 最後に一回だけ一緒にご飯食べない?」
 
その夜、美都と涼太はおでんの屋台で夕飯を一緒にしました。
美都は未だに離婚届を彼がちゃんと出してくれるのかを疑っています。
 
「離婚届ってさ、証人がいるんだよね。それで、香子さんに書いてもらった」
「香子に?」
「『私の友だちが申し訳ない』って。君はバカだね。そして、君を手放すハメになった僕もバカ。やり直したいなあ。病院のあの待合室から。初めてのあのカフェから。プロポーズした公園から。でも、わかってるよ。無理だってことは。いっそのこと、産まれなおしたい。あれより楽しいことあんのかな。人生長いな」
 
そんな中、美都に香子からメッセージが入ります。
 
「昨日、涼太さんと会った。だいぶ疲れてるみたいだったけど、あんたが前に言ってた事、なんとなくわかった。あの人少し、怖いね」
 
 
正しさと愛情
その頃、有島家では光輝が妻の実家に通っていました。朝、出勤する前に我が子の顔を見て「いってきます」を伝えます。そして、仕事が終わると妻の実家に真っ直ぐ帰宅して、我が子に「ただいま」を伝えに行くのでした。
 
それは毎日続きました。たとえ仕事で疲れていても、妻に素っ気ない態度をされてもやめません。光輝の目にはクマが出ていました。
 
 
一方、美都は離婚の報告のために母のスナックに行っていました。
 
「ま、そうなるだろうとは思ってたけどね。涼太さん、お給料運んでくる旦那としては良かったのに、もったいない。しれっと続けりゃいいのに」
「無理、そのほうが涼ちゃんに悪いし」
「今更、ピュアなふりして!」
「お母さんってなんで今まで誰とも結婚できなかったの?」
「そういう言い方よしてくれる? 結婚ぐらい簡単だよ。誰とでもよければ」
「私ずっとお母さんみたいにはなりたくないって思ってた」
「なってもらっても困るけど」
「けど、お母さんみたいにはなれなかったのかも」
「え?」
「もしかしたら、お母さんが一番ピュアかもしれない。本当は今でも運命の人待ってるんでしょ」
「はあ?! バカ言ってんじゃないよお」
「こんな親選んで生まれてきたバカですからあ」
「で、涼太さんは大丈夫なの?」
「この前、涼ちゃんの誕生日に会ってご飯食べて」
「ん?」
「あ、涼ちゃんが最後にもう一度って」
「最後?」
「最後」
「面倒くさい夫婦だねえ」
 
美都の母は、涼太の言った「最後」という言葉に引っかかります。
翌日、美都の母は涼太に会いに行きました。
 
「いきなりごめんねえ。近くまで来たから。最後にさ」
「いえ、嬉しいです」
「模様替え? へえ、違う部屋みたい」
 
リビングにはまだ美都と涼太の結婚式の写真が飾ってありました。
美都の母は、写真をみて固まりました。
 
「まだいろいろやり始めたばっかりで。壁も塗って、みっちゃん来たら驚かそうと思ってるんです」
「ええ、美都がここに来ることなんてあるわけないでしょ。離婚したんだから」
 
リビングのソファに美都の母が座ると、涼太は彼女の前にお茶を置きました。
 
「本当にあの子もバカよねえ。浮気されても夫婦でいたいって涼太さん言ってくれたのに。離婚しなくてもねえ。ここにいれば一生安泰だったのにーー美都が悪い子としたね。いっそ、涼太さんも浮気しかえしてやればよかったのに」
「僕はそんなことーー」
「できないか。お天道様に怒られちゃうもんね。亡くなったお母さんがよく言ってたんだって。いい大人になってもママの言いつけ守っていい子ちゃんだね」
 
涼太は少し不満げな顔でキッチンテーブルに座りました。
 
「あ、ごめん。怒った?」
「いいえ」
「ついね。今までは感じよくしてたの。気遣って。義理の息子だからね」
「それ、逆じゃないですか?」
「なんで? 自分の娘を大事にしてほしいから涼太さんに媚びるんでしょ。じゃなきゃね。あんな、バカ娘でもねえ。正しいかどうか、ご立派な理由で判断するのは他人事。自分の子は間違ってても許せちゃう。こんな親でもそうなんだから、涼太さんのお母さんならなおさらなんじゃないの」
「僕の母ーー」
「うん」
「そうでしょうか」
「だって、そういう情の深い親に育てられたからお天道様に見せられないようなことした美都を今でも愛せるんでしょ」
 
真っ直ぐに見つめる美都の母の目から涼太は目をそらしました。
 
「でもさ、辛いなら美都の手なんて離したっていいんだよ。お天道様だって怒りゃしないでしょ」
「僕は、間違ってたんでしょうか」
「そういうのに正解なんかないよ。ただ、二人とも苦しそう。子どもには笑っててほしい」
「お義母さん」
「はい」
 
美都の母は、涼太の手をそっと握ると立ち上がりました。
 
「お元気で。美都が今までお世話になりました」
 
深くお辞儀をすると美都の母は静かに帰るのでした。
その後、美都へ母から電話が来ます。
 
「もしもーし」
「最近、涼太さんから電話あった?」
「ないけど、なんで?」
「ちょっと様子がね」
「え、会ったの?」
「近くに行ったから。結婚式の写真まだ飾ってあった。指輪もしてた。最後にって涼太さんどういうつもりで言ったのかちょっとね。ああ、変な意味じゃなくて。一応、報告」
 
 
有島家では、一日往復3時間の妻の実家通いを一日2回もいまだに光輝は続けていました。我が子を抱きかかえて、光輝は「ただいま」を伝えます
 
「まだ続けるの?」
「続きます。続けますよ」
「疲れ切って仕事にならないんじゃないですか。一日六時間もムダにしてるなんてバカみたいなんですけど」
「いいんだ。あっこちゃんに会えるし、麗華の顔も見れる」
「なんか、こういうのってあれみたいね。とにかく、自分が頑張って努力する姿を見せつけてプロボーズを受けてもらおうとする人たちの心理。本人が本人のことをどれほど頑張ろうと、トライアスロンを完走しようと、円周率を10万桁覚えようと、プロボーズを受ける側にとってほぼ関係ないこと。そういう努力の方向ってどうなんだろって疑問と今似たような気持ちです」
「だから、いいんだって。あこちゃんに会えて、麗華の顔が見れれば。許してもらおうとかじゃなくて、俺が一番したいことをしてるんだから。それだけだから」
「それだけでいいなら、なぜ私はこんな思いをしてるの?」
「じゃあ、どうしたらーーはあ、だめだ。ループしてる」
「だから、会わないって」
「嫌なの! 会わない時間でお互いの大切さがわかるとか。そういうの俺にはわかんないの」
「あの人は、あなたのことを癒やしてくれた? 楽しかった? あの人といるときのあなたは私が見たことのないあなたなのかしらね? でもね、光輝。私もこんな自分見たことがない。あの顔、一生忘れない。私をこんなふうにさせたあなたのことが憎いです」
「愛してるよ、麗華」
 
麗華は光輝の頬を叩きます。彼女は涙を流していました。しかし、それでも光輝は彼女に愛を伝え続けます。赤ちゃんが泣き出して、麗華はそっと我が子のもとへいき、抱き上げるのでした。
 
光輝が帰ったあと、麗華の母は娘に問いました。
 
「お前は光輝さんが正しいから好きになったの? じゃあ、なんで?」
 
 
それぞれの変化
離婚したことを美都は光輝にメッセージで伝えます。彼はそれに「もう会いません。連絡もしません。ブロック削除していいですか? それとうちは絶対わかれません。ごめんなさい」と返信していました。
 
どこか寂しそうですが、美都の一人暮らしは充実していました。そんな彼女に香子から連絡が来ます。
 
「あんたの新居、どこ?」
 
その夜、彼女は美都の部屋を訪れていました。
夕飯は美都の手作りです。
 
「へえ、美味しそうじゃん。前は全然できなかったのに。いただきます」
「今は料理したり、家のことするのが楽しくてさ」
「美都らしくない」
「涼ちゃんみたい」
「夫婦だったんだね」
 
美都は微笑みました。部屋を見渡した香子は言います。
 
「それにしてもすっごい部屋だね。罰が当たっていい気味」
「その節はご迷惑をおかけしました」
「本当。でも、今は私幸せだからどうでもいいんだけどね」
「え?! もしかして彼氏?」
「3年4ヶ月ぶり。いやあ、長かった」
「え、えええ、ねえ、どんな人? 結婚前提?」
「あんたなんかには言わない」
「えええ、なんでよ。じゃあさ、その人歴代1位?」
「ん? それ比べてもしかたなくない? いや、あの頃好きだった人は、あの頃の自分が好きだった人。冷凍保存でもしとかない限り、今は自分も相手も変わって、あの頃好きだった人はもうこの世にはいない亡霊。妖精。幻?」
 
そのとき、美都は過去に言われた占いの言葉を思い出すのでした。
 
「ねえ、やっぱり占いばかにできないよ。香子。その彼、絶対占ってもらったほうがいいよ」
 
 
その頃、光輝はマンションで横山からビラ事件の真相を伝えられていました。
 
「あいつ、そんなこと一言もーー」
「すいません。幸せそうなところが悔しくて」
「俺はいいけど、麗華はキツかっただろうなあ」
「うちは、引っ越すことにしたと奥さんにお伝え下さい。本当にすみませんでした」
 
部屋に入ると、光輝はいつものように香台にお香を焚きます。そして、泣きそうな表情をするのでした
 
翌日、妻の実家に行くと麗華は起きてゴミ出しをしていました。
 
「麗華」
 
光輝は名前を呼ぶと、彼女にキスをしました。
唇を離すと光輝は言います。
 
「気持ちいいねえ」
 
その言葉は、麗華が初めて光輝にキスしたときと同じ言葉でした。そのまま彼女を抱きしめます。彼の体からはお香の匂いがします。
 
「この匂い」
「お香って癒されるなあ」
「優しくて、ずるい人」
 
そして、二人は体を離すと久しぶりに笑顔になりました。光輝が一人でゴミのかごを持っていくと麗華はつぶやきます。
 
「でも、もうあのときほど、気持ちよくはないかな」
 
しかし、彼女は穏やかな微笑みをしていました。
 
 
美都は住民票の異動をしに市役所に行っていましたが、まだ離婚届が受理されておりませんでした。不安に思った美都は、小田原と会います。
 
「離婚届、出しておいてくれるって言ってたのに出してないし。携帯もずっと留守電のままで。涼ちゃん、いつもなら絶対すぐ連絡くるのに」
「心配なのか」
「そりゃあ、一応」
「まだ夫婦か。いいのか。涼太がそれで救われるなら。あんなボロアパートに引っ越して、君みたいに損得計算できないバカ正直な女、嫌いじゃない。でも、打算で男を選ぶ女よりはマシって程度だけど。実は、ここ一週間あいつ休んでる。一応、病欠の連絡はあったみたいだけど。俺も心配で」
「電話は?」
「出ない。まあ、涼太にしてみたら奥さんと友だちいっぺんになくしたようなもんだからね。俺じゃだめだからさ。あいつのこと、頼みます」
 
翌日、美都は元の二人のマンションを訪ねました。しかし、涼太は出てきませんでした。合鍵で中に入ると部屋は綺麗でしたが、キッチンテーブルには二人の結婚式の写真だけがあるのでした。
 
別れたときからの涼太のことを思い出し、母の忠告が頭に浮かんだ美都は慌てて涼太を探しに出ます。
 
ずっと涼太のことがわからず、涼太のことが怖くて一緒にいることが苦しかった美都ですが、もともと涼太は綺麗に笑う人だったことを思い出したのでした。
 
涼太はプロポーズした公園にいました。
 
「涼ちゃん! 待って! 涼ちゃん!」
「みっちゃん! どうしたの?」
「涼ちゃんがもし死んじゃったら、私は耐えられない。涼ちゃんもし、もしだけど、今更こんなこという資格ないけど、涼ちゃんがそんなに望んでくれるなら私はもう一度ーー」
「みっちゃんらしい。あはは、それは同情でしょ。好きとは違う。罪悪感。しかも、自分のせいで僕が死んだら、自分の気分が悪いから。全部、自分のためだ。これ以上ないくらいみっちゃんらしい。君は自分を肯定することにかけては天才的だね。君が誰かに恋をしてたように。僕も君に恋をしていたことに、気づかなかった? 君と同じように僕にも気持ちがあるんだよ。そして、今、僕の気持ちはみっちゃんのことはそれほど。みっちゃんもそうでしょう。最初から。みっちゃんはまだ本当に人を好きになったことがないんじゃない。2番どころか、1番も」
「そうかも」
「はは、本当に正直で酷い人だ」
「ごめん」
「かわいそうにね。僕でも一番好きな人と結婚できたのに」
「ありがとう。でも、涼ちゃんの愛は優しい暴力だった。あたし、これからあなたのことを傷つけたことを忘れずに生きていこうと思います。本当にごめんなさい」
 
涼太は怖い顔をしつつも、美都の側まで歩み寄りました。
そして、手を差し出します。
恐る恐る顔をあげた美都は、彼と握手しました。二人は微笑み合います。
 
そうして二人は別れたのでした。
涼太は結婚指輪を海へと投げました。
 
 
皆はそれぞれの道へと進んでいきます。
あれから美都の生活は変わりました。旬の野菜で料理を行い、お気に入りのカーテンや家具で部屋を飾り、輪ゴムは再利用します。
 
花山先生と美都の母の友情は続いています。そして、有島家では麗華が卵巣の手術を無事に終え、子どもも大きくなり、夫婦仲は落ち着いて円満になっていました。そして、横山家も夫婦仲良くなり、二人目を妊娠しているのでした。
 
 
美都はレストランでキレイな女性と歩く涼太と再会します。
 
「久しぶり」
「元気そうだね」
「うん、それじゃ」
「それじゃ」
 
そのレストランには香子とその彼氏である花山先生との食事できたのでした。
 
「おまたせしました。ここ、結婚式もできるんですって」
 
美都は、二人がいる席にパンフレットを置きました。
 
「へえ、いいね」
「うーん、今日ここにきたのも運命かも」
「あ、ごめん。あたし、ちょっと急用を思い出しちゃって。失礼します」
「三好ちゃん?!」
 
美都は、涼太が再婚するのかと勘違いしていましたが、涼太はデザインの仕事でそのレストランに来ていただけでした。小田原は彼女の存在に気づき、涼太に声をかけます。
 
「涼太。いいのか、ほっといて」
「それほど」
 
涼太は彼に微笑みました。二人は笑い合います。
そんな美都のそばに柴犬が駆け寄るのでした。
最終回(第10話)の感想はここをクリック
どの家庭もそれぞれ相応しい解決に至ったように感じました。欲をいえば、涼太の辛さや優しさに美都が気づいてくれたらよかったです。ずっと涼太がただの狂人のようになっていましたが、もともとはとても彼女のことを愛していたのだと思います。だからこそ、途中からはただの執着だけのように見えましたが、それも一つの人間らしさ。愛していたからこそ、手放すことができなくなっていたのかもしれません。
 
このドラマで一番素晴らしいと思ったのは、美都の母の対応でした。常に娘たちの幸せを願っていて、しかし、はっきりと誰かの味方をして誰かを傷つけるのではない彼女の行動はとても素敵でした。
 
なんだかんだ、有島家も横山家も、美都の友人である香子や同僚の人も含めたすべての人が幸せになったので本当によかったです。
<見逃し動画>第9話 「ずっと好きだった…切なすぎる結末」
 
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第9話の公式あらすじ

美都(波瑠)を中傷するビラが、涼太(東出昌大)と暮らすマンションにばら撒かれた。中傷は美都の勤め先にもネットにも拡散され、誰の仕業かまったく分からない…。 
住人から好奇の目に晒される美都を、裏切られても守ろうとする涼太の行動に、気持ちが溢れそうになる美都。その気持ちを振り払うように手を離すと、涼太に気付かれないよう、足早にマンションへ引き返す。
そして、アパートの保証人になってもらった小田原(山崎育三郎)に手伝ってもらい、涼太がいない間に出て行くことを決意したのだ。小田原の親切心に感謝する美都は、その過剰な優しさの理由を尋ねる…。
 
一方、麗華(仲里依紗)と有島(鈴木伸之)の間には重苦しい空気が漂っていた。明るく努める有島だが、麗華は冷ややかな態度を崩さない。
そんな中、麗華のもとに再び涼太が現れる。美都の現状を知った麗華は、それとなく有島にそのことを伝えると、有島は「会わない」の一点張りだったが…。
 
相変わらず麗華を待ち伏せて強引に引き留める皆美(中川翔子)。 ひょんなことで彼女の心の内がついに露呈する——
 
<出典>あなたのことはそれほど公式

第9話のネタバレはここをクリック
前回、渡辺美都が離婚に向けて新居を探していました。そんな中、彼女は生理が来ていないことに気づいてしまいます。妊娠の可能性を夫の涼太に告げると彼は自分の子どもとして育てられると言うのでした。
 
有島家では麗華がどんどん夫の光輝を信じられずに疑心暗鬼に苦しんでいます。光輝が自ら話したことを彼女は責め、夫婦仲は悪化するばかりです。
 
そして、渡辺家のマンションには怪しい人影が現れました。不倫女への悪意はさらなる問題を呼び込んだのです。
 
 
他人の悪意と夫の優しさ
涼太に妊娠の可能性を告げた翌朝。
美都が家を出る準備をしつつ、出勤の準備をしていると夫の涼太は慌てて寝室にやって来ました。
 
「みっちゃん。これーー」
 
涼太が手渡したのは一枚のビラです。
茶色のチラシには「301号室の渡辺美都はW不倫の最低女。バカ女に制裁を」と印字されていました。
 
「マンション中に貼られてるみたい」
 
出勤しようといつものようにマンションを出た美都でしたが、マンションの他の住人たちは彼女を見るとヒソヒソと話をします。誰がこんなことをしたのかと思案する彼女でしたが、一番に心配したのは有島のことでした。
 
皆の目を避けるようにうつむいて歩く彼女を後ろから追って出てきた涼太は、彼女の手を握ると他の住人に挨拶しながら笑顔で歩きます。
 
「みっちゃんは今まで通りにしてて。いま出ていったら認めたことになるから。それは僕もキツい」
 
美都は彼の手を握り返しました。彼女は自分が他の人を傷つけ、憎まれていることを実感したのです。
 
 
出勤した矢先、武蔵野眼科の受付にはマンションに貼られたのと同じようなビラがたくさん積まれており、花山先生と森が受付で待っていました。
 
「これーー」
 
美都はビラを見て驚きます。
 
「朝、入り口に貼られてた。ネットにも書かれてる」
 
森が自分の携帯を差し出します。武蔵野眼科の口コミに美都の不倫に関する苦情が書き込まれていました。
 
「削除要請したから消えると思うけど、他にも色々書き込まれてるかもしれないから確認したほうがいいよ」
 
花山先生はそういうと午前の業務を森一人に任せる指示をします。
 
「本当、ご迷惑をおかけて申し訳ありません」
 
美都が頭を下げると花山先生は彼女の肩に優しく手を添え、診察室へと去りました。
 
「あの、ごめんね」
「ううん。ああ、あたしの結婚式はそれどころじゃないだろうから、出席しなくていいよ」
「いや、でもーー」
「家のこと優先して」
「ああ、うん。ありがとう」
 
森はそういうとビラを持って受付の奥へと消えました。
その後、美都には小田原から連絡があり、アパートの賃貸契約の保証人の署名のために彼と会うことになります。
 
 
その頃、涼太は会社を休んで公園にいました。そこへ有島の妻である麗華が現れます。涼太は彼女を見るとベンチから立ち上がり、静かにお辞儀をしました。
 
「渡辺です。覚えてますか? あの、妻のことを」
「全部、知っています」
 
涼太は険しい顔でビラを取り出し、彼女に見せました。
 
「これをやった人に心当たりってありますか?」
 
ビラを受け取り、麗華は首を振ります。
 
「卑怯ですね。こんなことしても、なんにもならないのに」
「失礼しました。僕の方は心当たりがなかったものですから。お宅は大丈夫ですか?」
「今の所、なにも」
「それならよかった」
「よかったですか?」
「うーん、正直なところ、ご主人のことは許せませんけど、妻のことも許せません。でもーー」
 
涼太の表情は怒りと笑顔とさまざまなもので入り混じっています。
 
「でも?ーー」
 
「別れる気は」といいながら涼太は首を振りました。
 
「そちらは?」
「わかりません」
「妻には私がついてますから。勝手ですけど、そちらのご家庭も円満な解決をお祈りしています。お子さんもいることですし。うちも子どもほしいんですけどね。ほしかったんですけどね」
 
涼太は麗華を見つめました。
 
「本当に失礼しました。それでは」
 
 
カフェでは美都が小田原と賃貸契約のことで落ち合っていました。
 
「本当にすみません」
「いえいえ、これくらい。それじゃあ、契約書を。印鑑も持ってきました」
「あ、じゃあ、お願いします」
「で、トラブルってどうしたんですか?」
 
美都は写真を撮っておいたビラを携帯で見せました。
 
「ああ、これは酷いですね」
「まあ、事実なんですけど」
「犯人は?」
「さあ。でも、誰かにこれだけのパワーで憎まれてるんだなあって」
「そうですね」
 
小田原は彼女を見て薄く笑います。
 
「で、引っ越しはいつですか?」
「あ、こういう状況だから逆にしばらく普段どおりにって涼ちゃんが」
「引き伸ばしても同じことですよ。かえってお互い辛くなる」
「そうですよね」
「いろいろって他には何か?」
「ああ、いやーー」
「何でも言ってくださいっていいましたよね?」
 
その日のうちに美都は不動産で賃貸契約を済ませました。
 
 
その夜、有島家では麗華が夫に今日の出来事を報告しています。
渡辺家であったビラの話と公園で会った涼太とのことです。
 
「渡辺さんのマンション中に配られてたって。ご主人、私がやったんじゃないかって思ったみたいね」
「麗華がこんなことするわけーー」
「ずいぶん、私信用されてるのね。でも、それ酷いわね。光輝は心配よね。優しいから」
「いや、でも俺はもう会う気ないから」
「うん、嫌」
「わかってる」
「でも、あの人を心配しないあなたも嫌。優しいってなんなのかしらね」
 
美都は、自宅で妊娠について悩んでいました。検査薬を未だに使えないでいるのです。
 
 
妻と親友を失って
翌朝、美都と涼太は昨日と同じように手をつないで出勤します。
 
「みっちゃん、今晩は何食べたい?」
「んーじゃあ、久しぶりにタイカレーにしようか」
「涼ちゃんの作るご飯は、本当なんでも美味しくていつも感謝してる。ありがとう。あ、そういえば、私コンビニ寄ってお金下ろさなきゃならないんだった」
 
美都は彼の手を離しました。
 
「それじゃあ、いってきます」
 
涼太は彼女から離れた手に違和感を覚え、自分の手のひらを見つめます。しかし、いつものように会社に向かいました。美都はすぐにコンビニから出ると、涼太がいないことを確認してマンションへと一人戻っていきました。
 
美都は家を出る準備を始めました。すると、そんなマンションに小田原が現れたのです。美都は夫のいない間にアパートから出るつもりで、小田原に協力をお願いしていたのでした。
 
「小田原さん。どうしてそんなに親切にしてくれるんですか?」
「親切?」
「親切ですよ。だって小田原さんは涼ちゃんの友だちだし、普通は涼ちゃんの味方するじゃないですか」
「別に俺は美都さんの味方してるわけじゃないですよ」
 
そこへ涼太がこっそりマンションへと戻ってきました。玄関には美都の靴と男物の靴が並んでいます。
 
「私、妊娠してるかもしれないんです。たぶん、涼ちゃんの子じゃないです」
「うぬぼれないでくださいよ」
「え?」
 
美都と小田原が寝室で話ている中、涼太は入り口の前でその話を聞いていました。
 
「俺は二人が幸せならそれでよかったんです。花だの、料理だの。幸せアピールのインスタだって笑って見れた。だけど、あなたが裏切ったから。俺が考えてんのは、涼太の幸せだけですよ。美都さんみたいに強欲で、女の駄目なとこが煮詰まったような女には興味ないから。俺は、涼太が好きなんです。あなたよりもずっと、ずっと前から」
「それってーー」
「あいつは全然気づいてません。言うつもりもないです。潔癖なくらい真面目で自分も周りも苦しくしちゃう不器用な涼太の理想の女なんて現れないと思ってたけど。どうしてこんな女と結婚したかなあ。上手くいくはずないって思ってたんだよ」
 
そのとき、動揺した涼太は鍵を落としてしまいました。鳴り響いた鍵の落ちる音に美都は寝室のドアを開けました。
 
「涼ちゃんーー」
「あ、ええーー」
 
涼太は今までにないほど動揺し、口を開けていました。
小田原は思わず黙ってしまいます。
3人の間に流れた一瞬の沈黙。
 
「そうなるよな。でも、なんかスッキリした。お天道様が見てても見て無くても、俺なんかどんだけ正しく生きてても報われない。結婚なんて贅沢。望みもしない。人の気持ちを一生欲しがるなんてどんだけ欲張りなんだよ。ほんと、ほんと二人とも欲張りすぎて腹が立つんだよ」
「小田原ーー」
 
小田原の瞳には涙がありました。
 
「涼太。美都さんは家を出る。もういいだろう」
「涼ちゃんーー」
 
美都はキャリーバッグをとると涼太の目の前を通り過ぎて、マンションを出ていきました。
 
「涼太。ごめんな」
 
 
そうして小田原のおかげで美都は引っ越しを終えることができました。
 
「何から何まで、本当にありがとうございます」
「言ったでしょ。俺は涼太を悪い女と別れさせたかっただけ」
「優しいですね」
「おめでたい人だなあ。でも、そういうところを涼太は好きなのかもね。じゃあ、あとは一人で不倫の代償を噛みしめて。体は大切にね」
 
小田原は彼女の新居を後にしました。
 
 
ビラの犯人と正しさの行方
有島家のマンションでは麗華が散歩から帰ってきたとこでした。そんな麗華を横山は玄関前で待ち伏せしていました。
 
「どうも」
「ああ、どうも」
「あの、よかったらちょっとうちに寄っていきませんか?」
「え?」
「ですよね。すいません。じゃあ」
「少しだけなら」
「本当?!」
 
横山の部屋に行くと彼女は美都について話し出しました。
 
「そういえば、この前、朝。ご主人の同級生の女の人、眼科で受付してるんだって。浮気されてるんでしょ。あの人とご主人が一緒にいるところ見ちゃった。間違いない。夫婦デートをドタキャンされた日に見たから覚えてる」
 
麗華は絶句したまま、何も話すことができません。
それでも横山は勝手に話を続けます。
 
「気づいてるんでしょ。かわいそうに。有島さんも有島さんで大変だったんだね。辛いことあったらなんでも言って」
 
やっと絞り出した小さな声で麗華は拒否しました。
 
「夫婦のことですので」
「ご主人、モテそうだもんね。有島さん良い人だから何にもできないでしょ。あの女家まで来てーー」
「その話はーー」
 
そういうと麗華は帰ろうと立ち上がりました。
すると横山は立ち上がって例のビラを取り出します。
 
「あ、これ。あの女のマンションに配ってきた。病院にも。ああいう悪い女にはこれくらいしてやらないと。ああ、住所はね、名刺もらって病院いって家までつけて。あの子連れてコンビニ行ってFAXするの大変だったけど、有島さんのためなら全然」
「私のため?」
「だって友だちだもん。私は有島さんの味方だから」
 
横山は満面の笑みでいいますが、麗華はただ困惑するだけです。
 
「そうだ。ネットにもいろいろーー」
「私たち夫婦のことは、私たちで話し合うので。もうやめてください」
「天罰よ。天罰」
「あの人への天罰を横山さんが下すんですか?」
「そういう意味じゃなくて」
「気づいてます? あなたさっきからずっと笑ってるの。人を罰するのは爽快ですよね。私のためじゃない」
「正しい。そう、ストレスの解消。でもいいじゃない。それであの女が痛い目にあうなら。浮気されてるくせに正論吐いてバカみたい。有島さんといると苦しくなっちゃうの。優しくて子煩悩な旦那さんがいて、私が愚痴ると学級委員みたいに当たり前のことを偉そうに」
「そういうつもりじゃ」
 
横山が麗華に喚いている中、横山の旦那は帰宅したところでした。現状に気づいた旦那は玄関で立ち止まってしまいます。
 
「旦那と話し合えなんてわかってる。でも、自分とイヤイヤ結婚した人と話し合うのが怖いの。有島さんにはこんな気持ちわからないでしょ。わからないだろうね」
「横山さんを傷つけていたなら、ごめんなさい。今日は失礼します」
 
横山は一人泣きじゃくるだけでした。麗華がそっと玄関に向かうと横山の旦那がいました。二人は静かにお辞儀し合います。
 
一人になってしまった涼太と美都は、それぞれの思いを抱えつつ一日を過ごしていました。美都が一人で住むアパートに携帯の着信音が鳴り響きます。それは香子からでしたが、その後に有島からのメッセージが届きます。
 
美都と有島は、久しぶりにいつものバーで落ち合ったのです。
 
「大変みたいだな」
「ああ、ネット見た?」
「旦那さんがビラを持ってうちのに聞きに来た」
「嘘。ごめん」
「もうバレてたし」
「有島くんのほうは平気? ネットには私の名前しか載ってないけど」
「俺の方は今のところ何も。でも、うちのはそういうことするようなやつじゃないから」
「そっか。そういうことしないのか。きっと強い人なんだね」
 
有島は今日美都に会うことを麗華に報告した上で来ていました。
 
「今日、会うことも言ってある」
「そうなんだ」
「誰がやったんだろうな。心当たりが全然ないんだよな」
「あたしも」
 
少しの沈黙の後、美都はたずねます。
 
「あのさ。亜胡ちゃんだっけ、どっちがつけたの?」
「うちの」
「うーん。あ、じゃあ、有島くんの名前は? 誰がつけたの? 姓名判断とか?」
「俺? ああ、それがどうも、母ちゃんの元カレの名前だったらしい」
「えええ」
「最悪だろ。叔母さんがこっそり教えてくれたんだ。うちの親、超仲良いのにびっくり」
「へえ、じゃあ、赤ちゃんさ。有島くんが名前つけるなら、どんなのがいい?」
「いろいろ考えたんだけど、難しくてさ」
「たとえば、どういう字がいいかとかさ」
「ああ、けっきょく、これってのがなかったんだよな。それに俺がつけた名前じゃあ、ろくな子にならないから麗華につけてもらった」
「それもそうだ。奥さん、麗華っていうんだね」
「あ、うん」
「そんな感じ」
「そう?」
「うん。似合ってる。そんな感じがした」
「美都。お前いいやつだな」
「何いってんの」
「本当に大丈夫か?」
「まあ、いろいろ。いろいろあるけど、私は大丈夫」
「そうか」
 
有島はチャーガティーを飲み干しました。
 
「あ、先帰っていいよ。私はもう少し飲んでいく」
「悪いな。じゃあな」
「うん。じゃあね」
 
そうして二人の関係は終了したのです。
 
 
翌日、武蔵野眼科では美都が受付の業務に戻っています。そこへ麗華がやってきました。病院にあった迷惑行為への謝罪にやってきたのです。
 
花山先生を交えて、美都と麗華の三人はカフェで話し合いになりました。
 
「本当に申し訳ありませんでした」
 
美都は彼女を前にして不倫の謝罪をしますが、断られてしまいます。
 
「結構です。それはまた別の話ですからーー今日は、あのような迷惑行為を私の知人がしてしまったことで渡辺さんだけでなく、病院にもご迷惑をかけてしまったことを一言お詫びしたかったので。すみませんでした」
 
麗華は深々と頭を下げました。
花山先生はそんな麗華に言います。
 
「頭を上げてください。奥さんが悪いわけではありませんから。ご丁寧にすみません」
 
麗華の謝罪を聞いて、美都は彼女の凄さに動揺しました。コーヒーカップを持ち上げようとして手が震えてしまいます。そんな美都を見て、花山先生は麗華に確認をとった上で彼女に席を外させたのでした。
 
「当院の従業員が奥様に多大なご心痛を与えたことを改めてお詫びさせてください」
「本当に謝って頂きたいわけではないので」
「承知しております。ただ、あのビラは奥様の心を傷つけたのではないかと」
「え?」
「侵害ですよね。疑われるのは。あんなことをするような方には見えないので」
「そう見えますか?」
「はい」
「学級委員みたいですか?」
「え?」
「本当に学級委員だったんです。ま、押し付けられてですけど」
「僕、バツ3なんですよ。そう見えますか? 恥ずかしながら、どちらの立場も経験があります。なぜ人を好きになって、なんで懲りずにまた結婚したくなるのか。この目がね。一度この人って決めたら他の人は目に入らないように出来てたらいいんですけどね。でも、それじゃ人間してないことになるのかな、なんて」
 
 
美都は仕事をあがるとその足で母親のスナックに行きました。彼女は母に「なぜ結婚しなかったのか、なぜ自分を産んだのか」を問うのでした。母は答えます。
 
「結婚するほど好きな男じゃなかったから。でも、どんなやつが私なんかを選んで産まれてくるのか見てやってもいいかなって。ほら、子どもは親を選んでやってくるって都市伝説」
「都市伝説? それだけ?」
「うん。今んところ、あんただけか。私のこと選んだ間抜けは。ほんと、ろくでもない人生だわ」
 
 
その夜、美都は妊娠検査薬を使います。しかし、妊娠はしていないのでした。
彼女を選んでやってきた子どもはいなかったのです。
そんな彼女に涼太は自分の夕飯がなんであるかを連絡します。
 
「今日はタイカレーラーメンにしました。この部屋は一人にはちょっと広いからペットでも飼おうかな。猫がいいなって思って。犬はちょっとね。みっちゃんの体のことが心配です。病院には行きましたか? 離婚届、記入して郵送してくれたら出しておきます。送ってください」
 
その頃、有島家ではとうとう麗華が実家へと戻ってしまっていました。
有島は慌てて彼女を迎えに行こうと走り出すのです。
第9話の感想はここをクリック
やっと渡辺家では美都が家を出ることができました。しかし、美都の行いによって周りの人々にまで悪意のある行為が及んでしまったのでした。まったく関係のない人にまで他人の悪意が伝染してしまうのは恐ろしかったです。
 
右往左往しつつも、新たな道へと踏み出していく渡辺家を応援しています。次は間違いなくお互いに良い結果へと向かっていただきたい。
 
不安なのは有島家の行方です。麗華の心を傷つけたのは不倫した夫の行動ですが、隣人の横山の行動も十分に酷かったです。他人の行き過ぎた正義感がいとも簡単に人を傷つけようとする事実に衝撃を受けました。
 
とうとう限界に達してしまった麗華の心を、夫の光輝がどのように挽回、または改善するのか、次回が楽しみです。
<見逃し動画>第8話 「私、妊娠しました…炎上するW不倫」
 
TVerでの無料配信は終了しました
 
第8話の公式あらすじ

離婚を決意した美都(波瑠)は、2人の家から出るため物件を探し始める。だが、相変わらず涼太(東出昌大)は、とぼけた様子で離婚届をまともに書かない。
 
一方、麗華(仲里依紗)に美都との出来事を告白した有島(鈴木伸之)は、罪の意識から、愛しいわが子に手を伸ばすものの、その手が汚れているようで触れられない憂鬱な日々を過ごしていた。
そんな中、意外にも麗華から一緒に出かけようと誘われたことで、気分を良くしていた。しかし、家を出たところでいつものように待ち伏せしていた皆美(中川翔子)と鉢合わせてしまう。
皆美の計算にも気付かず、一緒に出かけることを提案してしまう有島。その社交辞令に食いついた皆美は、二つ返事で旦那と子どもを引き連れ、有島家と休日を共に過ごすことに。
楽しく過ごす有島家と対照的に、横柄で皆美を馬鹿にした態度をとる夫に苛立ってしまった有島は、麗華と子どもを連れて先に帰るとその場を立ち去る…。
 
そんな中、街で何気ないポスターに目が留まった美都。そのポスターの日付を見てハッとする。
有島と会った日を確認すると、自分が妊娠している可能性に気付く。このことを有島に告げるべきか迷う美都だが…。
 
<出典>あなたのことはそれほど公式

第8話のネタバレはここをクリック
前回、渡辺家では家出から戻った美都がとうとう記入済みの離婚届を涼太に渡しました。しかし、彼は署名を間違えると破り捨てたのです。
 
一方、有島家では光輝が浮気の事実を自ら妻の麗華に話してしまいました。そのせいで幸せな生活は一変、麗華に距離をとられ、子どもに触れることさえためらわれる事態になってしまいました。
 
 
離婚届の攻防戦
美都は離婚に向けて新しく住むアパートを探し始めました。早く今の家から出てしまいたい美都は、少し古い物件を選ぶことすらためらいません。
 
その傍ら、涼太に離婚届を書いてくれるように美都はなんども声をかけるのですが、気が進まない彼はのらりくらりと署名を書くことを回避しようとしていました。二枚目の離婚届は渡辺の”さんずい”を書いたところで止まっています。
 
仕事を早退して物件探しをした夜、美都は珍しく夕飯の準備をしていました。帰ってきた涼太は驚きます。
 
「ただいまあ。え、みっちゃん夕飯作ってくれたの?」
「早退して物件見てきたから。ねえ、離婚届ーー」
 
涼太はハイテンションで彼女の手元を覗き込みました。
 
「いい匂いだなあ。え、煮物? あ、残ってた油揚げ入れたら? 油揚げ、ほら! これ、今日賞味期限」
 
楽しげに冷蔵庫を開けて、涼太は油揚げを取り出しました。あっけにとられてしまった美都ですが、負けずに離婚届の話を持ち出します。
 
「離婚届さ、”さんずい”しか書いてなかったんだけど」
「”さんずい”書いたとこで手がつっちゃって」
「は!?」
「後で書くよ。はあ、お腹すいたなあ」
 
彼はずっと笑顔なのでした。
夕飯はいつもより豪華です。美都が作った煮物と涼太が買ってきたお惣菜とが食卓にならんでいます。
 
「まさか、みっちゃんが夕飯作ってくれるとは思わなかったからお惣菜いろいろ買ってきちゃってーー」
「お箸はちゃんと持てるのね」
「うん、ちゃんと美味しく出来てるよ」
 
煮物を食べると涼太は微笑みました。
 
「決まったの?」
「え?」
「住むとこ」
「ああ、まだ」
「ゆっくり決めたらいいよ」
「この際、古い昭和の物件もレトロでいいかなって」
「安いからって訳あり物件つかまされないでよ」
「おばけとか?」
「そうそう」
「そんなの本当にあるの?」
「あるよ。人の情念っていろいろなものに染み付いてくんだよ」
 
涼太はワインをグラスに注ぎながら美都を見つめたのでした。
 
その夜、怖くて眠れない美都は水を飲みにキッチンに行くと涼太はまだ起きていました。涼太は美都を心配します。
 
「どうしたの?」
「喉乾いちゃって」
 
二人はもう一緒には寝ておらず、涼太はリビングの汚れたソファーで寝ています。
 
「ねえ、やっぱり私がソファーで寝るよ」
「だめだよ。こんな汚れたとこでみっちゃんを寝かせられないよ。あ、これ後で書いておくね」
 
離婚届を取り出して彼は言うのでした。
 
「うん、おやすみ」
「おやすみ」
 
翌日、目が覚めると涼太はもう仕事に行ったあとでした。
離婚届を確認するとまだ署名は終わっておらず、渡辺の”しんにょう”が書かれていません。
 
もし二人の離婚が成立したとしても、もう有島との関係は終わっています。今後、美都は一人で暮らしていくことになるのです。
 
そんな中、美都の同僚である森が結婚することを報告します。
昼休みの武蔵野眼科。森は最近の美都の家庭状況を心配しました。
 
「あれから旦那さん、本当に大丈夫なの?」
「まあ、うん。変わんない」
「なんだあ。私、この前来た人と浮気でもして修羅場なのかと思った」
「いや、ないない」
「じゃあ、なに? あの人」
「わざわざ、よその夫婦に首を突っ込んでくる怪しくて親切な人」
「じゃあ、気兼ねなく言っちゃおう。私、既婚者になります」
「え!? 嘘?! おめでとう。相手、誰?」
「学生時代から付き合ってた彼氏。もう7年になるかなあ」
「え、そんな人いたの? だってあの、合コンとか婚活とか。陶芸の先生はなんだったの?」
「あれはさらなる可能性の追求っていうか」
「でも、7年その人と付き合ってたんだよね?」
「うん。で、結局一番はこの人だなって」
「一番好きな人?」
「一番長く好きでいられそうな人。だって、一生一緒にいなきゃいけないんだよ。万が一、不倫なんてことになったら、絶対不幸になるに決まってるし。バカみたいだから。陶芸の先生は優しくてイケメンだったんだけど、結婚してるの隠してたんだよね。運命だと思ったんだけどね」
「運命か」
「うん。血迷って占いに行ったら『運命は自分の選択で決まるもの。どうなるかじゃなくて、どうするか』って言われちゃって」
「ねえ、その占いどこ?」
 
美都は食い気味に聞きました。
 
「え!?」
「ううん、なんでもない」
 
その夜、夕飯は涼太が作っていました。
 
「ただいまあ」
「おかえり。今日は頑張っちゃった。パエリア。前、みっちゃん友だちと食べに行って美味しかったって言ってたから」
 
パエリアを見せながら彼は言いました。
 
「ありがとう、涼ちゃん」
「スープは買ってきたブイヨンでーー」
「涼ちゃん」
「あ、ワインは白でいいよね?」
「書いた? 名前、書いた?」
 
楽しげだった涼太の顔は一瞬で表情を失いました。そして、リビングのテーブルから離婚届を持ってきて、名前の”涼太”を”涼犬”と間違ったと告げます。
 
「点を打つとこ間違えた」
「そんなこともあろうかと。こちらにもう一枚用意しました」
「だと思った」
「ここ、置いておくからね」
 
美都は食卓に離婚届を置きます。
 
「さ、みっちゃんも手伝って。みっちゃんの好きなポテサラも作ったよ。一口食べる? ほら」
 
涼太は美都の口にスプーンを差し出しました。それを恐る恐る食べる彼女ですが、ポテサラは美味しいのでした。
 
「美味しい」
「でしょ。生胡椒入れてみたんだ。口の中でプチっと弾けるでしょ」
 
美都は離婚する相手となぜこんなことしているのかと内心で困惑します。
 
「これ、サラダという名のカロリーだから。バターもたっぷり入れたから」
「えー!?」
 
自分たちは本当に離婚するのかと彼の態度から美都は不安になるのでした。
 
 
崩壊する家庭と動物公園
有島家では、麗華と夫の光輝との心の距離が離れていっていました。出勤するときも妻から冷たく見送られる光輝は、アパートを出てから深くため息をついています。
 
その日の麗華は、公園に我が子と散歩に来ていました。
そして、たまたま居合わせた横山に夫婦の馴れ初めを聞かれたのです。
 
夜、帰宅した光輝はベッドで眠る我が子の顔を眺めていました。頬に触れようと手を伸ばしますが、妻に拒絶された自分の手のひらを見てためらうのでした。
 
ソファーでうたた寝していた麗華は目を覚まし、光輝に気づきました。
 
「おかえりなさい。何してるの?」
「(我が子の)寝顔見てた」
「ごめん、ちょっと寝ちゃってた。ご飯は?」
「食べた」
「起こさないでね」
 
麗華は食卓に座るとその日にあった出来事を報告します。
 
「ねえ、今日ね。公園で横山さんに会ってね。光輝との馴れ初めをしつこく聞かれたから適当に答えちゃった。それから一人で考えたんだけど、どうして光輝は私を選んでくれたのかしらね。今度教えて」
 
光輝は静かにうなずくのでした。
 
 
翌日、休日の朝。麗華は我が子のおしめを交換していて、すでに起きていました。とても良く晴れた日だったので、家族で動物公園へ出かけることに。
 
しかし、出かける際に玄関の前で隣人の横山に会ってしまうのでした。朝から元気いっぱいの横山に二人は少し戸惑っています。
 
「あ、おはようございます」
「おはようございます」
「おでかけですか?」
「はい、ちょっと遠出の散歩で動物公園に行こうかと」
「動物公園。ええ、いいなあ。うちの子も一度連れて行きたいんだよなあ。いいなあ」
 
横山はとても羨ましそうに言います。
 
「一緒にどうですか?」
「いいんですか?! 主人に言って車出してもらいます! ちょっとまっててください。すぐに戻ります」
 
光輝が言ってしまった社交辞令で有島家と横山家は一緒に出かけることになってしまいました。
 
「光輝は優しいね」
「いや、ほんの社交辞令のつもりだったんだけど」
「いいんじゃない。嬉しそうだったし」
「でも、麗華が嬉しそうじゃないし」
「人の旦那って面倒なのよね」
 
横山家もいますが、動物公園での散歩に光輝は大喜びです。動物と一緒に我が子の写真をたくさんとります。しかし、横山の旦那は退屈そうにベンチに座っているだけでした。
 
「横山さん、撮らないんですか?」
「ああ、だってまだ本人なんにもわかってないし。それに覚えていませんよ」
「あ、なんか玩具とかいろいろ頂いたみたいですいません」
「はあ、なにかあげれば仲良くできると思ってるんですよね。あいつ、頭悪いからなあ。その点、お宅の奥さんは落ち着いてて賢そうで。嫁から聞きました。奥さんの話。自分とはまったく違う遠いグループにいた人なのに、なぜか自分を選んでくれたって。いいですねえ、お宅は」
 
お昼になると麗華の手作り弁当で昼食になりました。
お弁当を見て、横山夫婦は褒めました。横山家はコンビニ弁当なので横山の旦那は不機嫌そうです。
 
「よかったらどうぞ」
「すみません。全部手作りなんだ!」
「でも、適当に冷凍食品もあります」
「うちなんて、コンビニ弁当だもんな」
「だってそれは急だったから」
 
横山は旦那の言葉に悲しい表情をしました。
 
「うちが急に誘っちゃったから。コンビニのお惣菜、うちも使うこともありますし」
「ね、コンビニのも美味しいよね」
「バカ、気遣ってくれてるんだろうが」
 
麗華に笑いかける横山ですが、旦那の言葉で皆が苦笑い。
 
「あ、やっぱり外は気持ちいいですね。うちだとなかなか離乳食とか食べてくれなくて苦労してるけど、今日は食べてくれそう」
 
どうにか話題を変えようとする横山。しかし、すべてを旦那が台無しにするのでした。
 
「だってこいつ、最初っから味噌汁だのラーメンだの味の濃いもの与えて、それじゃバカ舌になるってんで慌ててお粥だのかぼちゃだのやりだして。バカだから」
「だって何もわからなくて」
「調べりゃわかるだろう。ね、バカでしょう」
 
それでも麗華は根気強くフォローしようとしました。
 
「母親1年生ですから。私も知らないことばかりですよ」
「奥さんとは違いますよ。奥さんみたいな良い人と仲良くしてもらって、本当に感謝ですよ。それに引き換え、無知な母親に育てられる我が子はかわいそうだわ」
 
とうとう我慢できなくなった光輝は怒ってしまいます。
 
「僕は、母親をバカ呼ばわりする父親見て育つのも、けっこうかわいそうだと思いますけどね」
「あれ、なんか地雷踏んじゃった?」
「麗華、帰るぞ」
 
そうして光輝と麗華は帰ることになりました。
車の中で麗華は夫の軽率な言動に文句を言います。
 
「本当に優しいのね。あなたはこの場から去ればいいけど、私はこれからもお付き合いがあるんですけど」
「悪かった。勝手に誘って勝手にキレてーー悪かったです。あんな父親でも俺よりはいいのかな」
「あれで浮気してたら、完璧なダメな奴ね」
「俺がお前を選んだ理由、今言っていい?」
「どうぞ」
「麗華って呼んだときのお前。冷静でクールな優等生の真実を知っているのは俺だけ。自分のかっこ悪いところを見せれる唯一の人。辛いときもどんなときもきっとずっと一緒にいられるとそう思ったから」
「ふふ、あははは。結婚式の誓いの言葉みたいね」
 
麗華はただただ笑いました。
運転席から麗華を振り返った光輝はうなだれます。
 
「ねえ、光輝。私、今辛いよ。辛い私と一緒にいて、息苦しくない? 辛い私とこのまま一緒に居られる? どうして、ずっと嘘を突き通してくれなかったの?」
「だって、お前責めるだろう」
「責めてない。本当のことを言ってるだけ」
「それが俺には無理なんだよ」
「無理? どうして」
「どうしてってーー」
「つまり、光輝は私とは無理っていうーー」
「違う! それは絶対に違う!」
 
否定した光輝の大きな声で赤ちゃんは泣いてしまうのでした。
 
 
子はかすがい?
そんな中、美都は物件探しをしている際に、自分に生理が来ていないことに気づきます。彼女は念のために妊娠検査薬を購入しました。そんなこととは知らず、涼太は同僚の小田原から焼き肉に誘われて出かけていました。
 
「悪いな。一人焼肉はハードル高くてさ」
「ううん、美味い」
 
二人は一つの七輪で焼き肉をつついています。
 
「で、離婚話は決着ついた?」
「え?」
 
突然の話に涼太は笑ったまま。
しかし、小田原の話が具体的になると笑顔は消えました。
 
「別れろ。そのほうがお前のためだよ。この前、バッタリ会って軽く話聞いた」
「みっちゃんとバッタリ?」
「バッタリ」
「なんで僕はなんも悪いことしてないのに別れなきゃいけないの? 僕はなにも間違ってないのに、一番嫌な選択をするの? おかしいでしょ」
「愛されてないのに?」
「僕は愛してる」
「初めて会ったときに『お天道様は見てる』って言った美都さんがいいと思ったんだろう。そういうルールみたいなものを持ってる人だって。でも、美都さんはそんなルールを簡単に破る女だったんだよ」
「母さんはよく言ってたんだ。お天道様は見てるって」
「なら、なおさら」
「母さんは何もできない人でさ。料理はクソまずいし、掃除すれば物はなくなるし。おかげで子どものころから家事が得意になっちゃって。子どもの頃ね、僕がキャンプに行ってる間に飼ってたインコを母さん殺しちゃったんだ。そのとき、父さんが言ったんだ。母さんを責めるなって。可愛くて、良い人で愚かな人で。だけど、そんな母さんを父さんはずっと愛してたんだ。死んで15年経った今でも。死んだ人は愛してくれないのにね」
「でも、美都さんは生きているのにお前をーー」
 
涼太は飲んでいたビールジョッキを音を立てて置きます。
 
「なんで別れさせたいの?」
 
 
その夜、美都は自宅で手帳を確認していました。もうだいぶ長い間、生理は来ていませんでした。突然の発覚に戸惑いを隠せず、動揺した美都は有島に連絡するか悩みます。しかし、連絡することはできません。
 
焼き肉から帰ってきた涼太が心配して寝室に来ました。
 
「具合でも悪いの?」
「うん、ちょっと」
「夕飯は食べた?」
「ううん、いらない」
「ええ、本当に大丈夫? お腹痛いの?」
 
涼太がお腹を触ろうとして美都はのけぞりました。
 
「いいから、書いて」
「ああ、そうだった。そうだった。じゃあ何かあったら呼んでね」
 
翌日の朝、美都は有島家のアパートの前までやって来ました。
ちょうど有島が出勤する後ろ姿を見ます。しかし、美都は「ないない。なにやってるのあたし」と自分を静止して帰ろうとします。
 
すると、たまたまゴミ出しに出てきた横山が美都に声をかけました。
 
「あれ。あの、有島さんのお友だちですよね?」
「えーと」
「有島さんからお話伺ってます。ご主人の中学の同級生だったとか」
「ええ、まあ」
「寄ってかれないんですか?」
「あ、今は仕事のーー」
「仕事って病院にお勤めなんですよね? どこの病院ですか?」
「吉祥寺の眼科です」
「名刺もらえますか?」
「え?」
「私、レーシックに興味があって良い眼科探してるんですけど。持ってますよね? あ、有島さんに聞けばわかるか。じゃあ、有島さんにお会いしたって伝えてーー」
「あ、私名刺は持ってないですけど、これなら」
 
美都は慌てて病院の住所が書かれた診察カードを渡し、逃げるように帰ったのでした。
 
夜、美都が帰宅すると涼太は蕎麦の準備をしていました。
 
「ただいま」
「おかえり。遅かったね。もしかして、部屋決まった?」
「ううん」
「いつまで一緒にいられるかわかんないから、これ使おうと思って。いいよね」
 
涼太は彼女が作ってくれたそば猪口とビアマグを出していました。
 
「書いた?」
 
取り合わずに美都は離婚届のことを確認します。
何も言わずに黙る涼太。
すると、美都はカバンからたくさんの離婚届を取り出しました。
 
「何回間違ってもいいように」
「わかった。書くよ」
 
眉間にシワを寄せながら涼太は離婚届の束を受け取ります。
 
「離婚して、また1からやり直すことも可能だよね」
 
 
その頃、美都の母のスナックには小田原がやって来ていました。
二人はカラオケでデュエットして盛り上がっています。
 
「上手! 小田原さんいい声してる! もう一曲歌ってよお」
「もう飲ませてくださいよ」
「お酒なら他にいいお店があるでしょう。なんでこんなところまで来たのよ」
「会いに来たに決まってるでしょ」
「友だちの姑を口説きに?」
「そんなことしたら罰当たりますよ。お天道様の」
「色恋にお天道様はなし。清く正しい人が愛されるなら、私とっくに幸せになってる。なーんてね」
「さすが、親子ですね」
「なーんだ。やっぱり知ってるんだ美都のこと。で?」
 
小田原は涼太が別れようとしないので、どうにか別れるように美都の母に協力を仰ぎに来たのでした。
 
「『お天道様は見てる』ってあいつの死んだ母親がよく言ってたみたいです」
「呪いだね」
「渡辺は別れる気ないみたいです。もしかしたら、それでも美都さんを受け入れることが正しいと思っているみたいです」
「一応、あいつの母親でもありますよね? だったらーー」
「え、私に別れさせろっての? 私のいうことなんか涼太さん聞きゃしないよ。私のことなんか母親とも思ってないだろうから無理無理」
「もう他人事みたいに。だいたい美都さんがーー」
「下品な親子ですみませんねえ。でも、よその夫婦にあーだこーだ言う清く正しい人ってもっと下品じゃない? ま、他人事って楽しいけどね」
「本当だ。俺もたいがいゲスですね」
「それとも、好きとか」
 
美都の母の追及に小田原は動揺しました。
 
「何言ってんですか」
「ああ、それなら他人事じゃないか。愛を求めて引っ掻き回したくなるのもわかる」
「俺は誰かに愛されたいと思うほど欲深くありませんから」
 
その時、小田原の携帯に美都からメッセージが来ます。それは賃貸契約の保証人のお願いでした。それを小田原は快く承諾するのでした。
 
その後、美都は涼太に妊娠している可能性を報告しました。
涼太はまだ蕎麦の準備中をしています。
 
「涼ちゃん、私妊娠してるかもしれない」
「え?」
「忘れてたんだけど、来てないの」
「忘れるもんなの? いつから?」
「言っていいの?」
「そ、そっかーー」
 
これで涼太が離婚を決意してくれると思った美都でしたが、涼太は離婚届をガスコンロで焼いただけでした。
 
「ちょ、何してんの?」
「あの男にはもう頼れないんでしょ? 頼れるわけないよね。大丈夫だよ。僕がみっちゃんを守るから」
 
涼太は「みっちゃん、それは僕の子だよ。僕の子として育てるよ。きっと愛情を思って育てられるから」と言うのです。あまりの発言に美都はしゃがみこんでしまいます。
 
「無理。本当にそんなこと考えてるなら、頭おかしいよ」
「そうなの? でも、お蕎麦は食べるでしょ」
 
涼太は何事もなかったかのように蕎麦の準備に戻っていきました。
 
「あと一分でできるから待ってて」
 
 
そうして、二人は同じテーブルで蕎麦を食べ始めます。
 
「確定なの? 妊娠。検査したんでしょ?」
 
黙り込む美都。
 
「え、まだしてないの? しようよ。検査薬買ってきてあげようか? 病院も付き合うよ。一人で心細いでしょ。不安でしょ、みっちゃん」
 
美都は不安すぎて検査薬を使えずにいたのです。
 
「食べなよ。美味しいよ」
 
なんとか蕎麦を食べようと美都が手を伸ばしたとき、涼太は蕎麦を食べながら涙を流していたのでした。
 
「やっと使えたね、一緒に」
「ごめんなさいーー」
 
深夜、美都は結婚指輪を外してしまいました。そして、そば猪口とビアマグを捨てたのです。そんな中、渡辺家が住んでいるアパートのすべてのポストに怪しいチラシを入れる人の姿がありました。
第8話の感想はここをクリック
2つの家庭がまったく違う方向で解決に向かおうと努力している様子はとても興味深いものでした。離婚するにしても、結婚を続けるにしても、その夫婦にとって最適な結末に向かってほしいです。
 
また、浮気された人が相手のことを受け入れることはとても不思議でした。一緒にいることが苦痛でもなぜその人を愛そうと思えるのでしょうか。涼太の行動が本当に愛であるのかわかりません。
 
次回は、渡辺家にせまる怪しい人影はいったい誰であるのか、どんな事件が起きるのかを楽しみにしています。
<見逃し動画>第7話 「遂に覚醒!誰よりも恐いうちの妻」
 
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第7話の公式あらすじ

家出した美都(波瑠)にすがられる有島(鈴木伸之)は、友達に戻ろうと提案するが、首を縦に振らない美都。その様子に踏ん切りがつかない有島だったが、妻・麗華(仲里依紗)の言葉が脳内にリフレインし、意を決する。
その後、涼太が待つ家に帰りたくない美都は、悦子(麻生祐未)に泊めてもらおうと、スナックを手伝い始める。しかし、美都を連れ戻そうとする涼太(東出昌大)にあっけなく見つかってしまうのだった。
どうしても一緒に帰りたい涼太に対して、どうしても帰りたくない美都。こうして、とうとう「離婚」の言葉を口にする―
 
一方、実家から戻った麗華は、麗華の助言で夫に「一日だけ夫婦でデートがしたい」とワガママを言ったのにドタキャンされて落ち込む皆美(中川翔子)と出くわす。会話の中で美都を詮索され強気で言い返すが、麗華も心に引っかかっていた。
そんな麗華自身も「ワガママを言うとしたら何?」と聞いてきた有島に「夫婦でデートがしたい」と提案。久々のデートで見せた麗華の表情に、良心が痛む有島は…?
 
その頃、美都の勤め先に小田原(山崎育三郎)がやって来る。果たしてその目的は…?!
 
<出典>あなたのことはそれほど公式

第7話のネタバレはここをクリック
渡辺美都は夫の涼太がいつでも笑顔でいる振る舞いや何があっても愛してくれる優しさに我慢ができなくなり、とうとう家出をしてしまいました。親友である香子の家に一時的においてもらっていた美都でしたが、有島からの連絡で二人は会うことになります。涼太は美都が逃げたことで一人発狂するのでした。
 
 
終わりの始まり
バーで落ち合った二人。有島は二人の関係の今後について話そうとしますが、美都はなかなか真剣に取り合ってくれません。彼はもう関係を終わりにしようとしているのです。しかし、美都は「逃げよっか、二人で」と提案するのでした。
 
バーを出た後、有島は彼女に「家に帰るんだよな」と聞きますが、美都は家に帰るつもりはまったくありません。
 
「だって、どの面下げて家に帰れるんでしょうか。この浮気妻が」
「開き直ってんじゃん」
 
それでも「俺たち友だちに戻ろう」と提案する有島に、彼女は呆れ気味です。道端でする話し合いはなかなか進みません。しかも、有島家の隣人である横山らしき人が歩いてきます。
 
とっさに顔を隠した有島ですが、もう一度確認すると通りに横山はいませんでした。そんなこととは知らずに美都は「二人きりになりたい」と有島の手を握ります。
 
 
ホテルに移動した二人。
ホテルの部屋に入ってすぐに「今日はそういうのは無しで」と有島は彼女に釘を差しました。
 
「じゃあ、なんでこんなとこに来たんでしょうか」
「落ち着いて話せるから」
 
ベッドに腰を掛けた有島は、話を始めます。
 
「今日、うちのの実家から先に一人で戻ってきて」
「じゃあ、今日は羽伸ばせるんでしょ」
「羽? 羽か」
 
有島は苦笑いしました。
実家から戻ってくる際に妻の麗華から「私、好きなことしていいって言われたら、ひとまず、あなたを一人にしない」と真顔で言われたことを彼は思い出します。
 
手で顔を押さえて有島は、苦悩しました。
 
「怖い? 今更、怖くなった? 私も思い知った。だから、責めないよ」
 
美都は彼に優しく語りかけ、肩に手を添えます。有島はもう彼女と関係を持つつもりはありません。彼の態度に美都はイライラするのでした。
 
「わかりました。じゃあ、お話しましょ。ちゃんと話し合ってお互いスッキリ結論出して、お茶でも飲んで、ホテルを出たところでバッタリ知り合いに会っても『いや、僕たちは話し合いをしていただけなので』。うん、きっと皆信じてくれる。ああ、素晴らしい」
「やっぱり責めてるよね」
「違うよ。事実を言ってるだけ。だから、有島くんも本当の気持ち言ってみて」
「本当の気持ち?ーーやっべ。俺、失敗した? 道間違えた? 怖え。あっこちゃん可愛い」
「逃げたい?」
「逃げられるものなら」
「追うよ」
「でしょうね」
 
二人のさまざまな仮定を問う美都。もし最初のカフェでの出会いからやり直せた場合、美都とは関係をもたないと有島は言うのでした。
 
「美都。お前、普通に付き合ったらすごく可愛い女だと思う。ごめん。ごめんな、俺が悪い。家に帰れ、な。まだ間に合うから」
「じゃあ、最後にーー」
 
そういった美都は、彼にキスをしました。有島はそれに応えて二人はベッドへとなだれ込んでしまいます。
 
 
翌朝、美都は一人東京の街を歩いていました。職場の武蔵野眼科には欠勤の電話を入れます。
 
方や、アパートに帰宅した有島は、食べれなかった妻手作りの弁当をゴミ箱へと捨ててしまいました。
 
その日の昼、涼太は小田原から心配されていました。
 
「奥さん、出て行っちゃって」
「そっかーー」
「嬉しい?」
「どういう意味だよ」
「いや、ごめん」
 
 
三者三様に苦悩して落ち込む中、麗華はアパートに帰ってきました。
不自然にキレイな自宅のベッドに違和感を覚えていると横山が尋ねてきます。
 
「亜胡と一緒に実家に戻っていたんです」
「そう、大変だったんだ。あ、これ貰い物だけど、うちの子には小さいから。どうぞ」
「すみません」
 
横山はそのまま旦那の愚痴を話します。昨晩、横山は旦那にデートをドタキャンされてしまったのです。その帰り道、美都と一緒にいる有島の姿を見かけていたのでした。
 
「あの、この前来ていた女の人。ピンクのスカートの。あの人、友だちじゃないってご主人の同僚か何か?」
「夫の中学の同級生とか」
「そこそこキレイな人だったけど、何してる人?」
「病院に勤めてるって」
「気にならないの? 嫉妬とかしないの?」
「そんなこと気にするのムダだから」
「強いなあ。有島さんは。きっとどんなことがあっても冷静でいられるんだろうね」
 
 
その日の夕方、武蔵野眼科には涼太が来ていました。受付の森に美都が休みであることを告げられるとぼんやりとした表情で出ていったのでした。
 
そんなこととは知らずに、美都は母親のスナックにいました。
母の若い頃のワンピースに身を包み、化粧をする彼女を見て、美都の母は褒めます。
 
「結構きれいじゃん」
 
自分の姿を美都は安っぽいと思います。
 
「私、スナックって大ッ嫌いだったなあ」
「私だって好きじゃないよ。お仕事。タダで泊まろうったってそうはいかないよ。あんた、その服着ると私の若い頃ーー」
「似てません!」
「そうだね。浮気を許してくれる旦那がいるのに。出戻って、スナックでバイトするような真似、私はしないわ。嫌なら、逃げ回ってないで本音で話せば? 夫婦なんだから」
「夫婦だから、涼ちゃんだから話せないんだよーー」
 
スナックのカウンターで働く美都でしたが、全てにやる気がなくなっていました。もうすべてがどうでもいいと言う気持ちになり、接客も適当にしています。そこへ涼太が訪ねてきました。
 
 
出戻り娘と占い
スナックの外で話を始める二人。
 
「すごい。似合わないね」
 
美都の姿を見て、涼太は顔を歪めて微笑みました。
小さくため息を付いて、美都は目をそらします。
 
「どうして香子さんちから出て行っちゃったの? あそこにいてくれれば、僕も安心だったのに」
「有島くんに会ったから、その後でのうのうとあの部屋に帰れない」
 
彼の顔を見て、美都は涼太がやつれたことに気づきます。
今度は涼太が彼女から目をそらしました。
 
「それで、有島くんはなんて?」
 
何も答えずに美都は黙りました。
 
「かわいそうに遊ばれたんだね」
「違う」
「みっちゃん帰ろう。だめだよ、ここは。ここはだめだよ。ねえ、みっちゃん」
 
今になっても、涼太は彼女を連れて帰れると思っているようでした。美都はそれが信じられませんでした。そこで美都は彼を占いに誘いました。
 
最初は占いに行くのを拒んでいた涼太でしたが、最終的に二人はさまざまな占いをしてみます。しかし、都合の良い結果が出ないことで涼太は怒ってお店を出てしまうのでした。そんな涼太の姿を見て美都は笑いました。
 
「もっと当たるところで見てもらおうよ。それとも霊感占いってどう? スピリチュアルってやつ。あっちにさっき前世占いってのあったよね。戻ろう」
 
外に出てから涼太は狂ったように話します。美都は涼太につかまれていた腕を振りほどきました。そんな彼女を涼太は抱きしめます。久しぶりに彼の匂いをかいだことで美都は呆然としました。そっと彼から離れる美都。
 
「離婚、してください」
 
戸惑いつつも涼太は必死に話します。
 
「とりあえず、家に帰って話し合おう」
「私、もうあの家には帰りたくないーー」
 
そこに美都の母が現れました。
 
「涼太さん! 良かった間に合って。これ、よかったら持ってって」
 
お酒の入った袋を手渡します。
 
「あ、いえ、そんな」
「もうごめんなさいね。ケンカくらいで出戻って。情けない。とっとと連れて帰ってやって」
「こちらこそ、すいません。こんなことでご心配をかけて、お義母さん」
「ふつつかな娘だけど、よろしくお願いね」
「あ、このお洋服ってお義母さんからお借りしたんですか?」
 
美都のワンピースを指ました。
 
「あたしの若いとき来てたやつなんだけど、いいよ持ってっちゃって」
「ああ、彼女には似合わないのでお返しします」
「あはは、そうねえ」
 
そうして美都と涼太はアパートへと帰っていきました。
アパートの惨状を見た美都は、ワインの匂いに顔をしかめます。
 
ソファーやカーテンはワインレッドに染まっていました。寝室も涼太の生活で乱れており、美都はすべて洗濯しようとベッドシーツをとりあげました。
 
「今から洗う」
「この時間から?」
「じゃあ、明日洗う」
「明日もいてくれるんだ」
 
美都のキャリーバッグを片付けてあげようと涼太は勝手に開けていました。彼は、陶芸教室で美都が作り上げたそば猪口とビアマグに気づいてしまいます。それは結婚記念日に涼太にあげるはずだったプレゼントでした。
 
「みっちゃん。これーー」
「ちょっと。教室にずっと置いておけないからとってきただけ。捨てる」
「なんで! だめだよ」
「捨てるんだってば!」
 
二人で引っ張り合いになり、そば猪口は床に落ちてしまいました。しかし、割れることはありませんでした。
 
「ほら、落としても割れない」
 
呆れてリビングへと戻っていく美都に彼はしつこく声をかけます。
 
「ねえ、コーヒーでも入れようか?」
 
まとわりつく涼太に彼女は強く言いました。
 
「何もしなくていいから、ソファに座ってて!」
 
ワインにまみれたリビングで涼太はそば猪口をみて楽しげなのでした。明らかに変な雰囲気のアパートに美都はただただ困惑していました。
 
 
翌日、美都は武蔵野眼科にいつものように出勤していました。
森は美都のことを心配しています。
 
「ちょっと変な気を使わないでよ」
「だっていつもと違うーー」
「おつかれー」
 
花山先生は昼食をどうするか受付の二人に確認に来ました。
 
「昼どうする?」
「ねえ先生。妻の職場に夫がくるってどんな修羅場かと思いましたよね」
「いや、旦那ならねえ。知らない男が来たら驚くけどさ」
 
そういったとき、ちょうど小田原が来院したのでした。
 
 
近くのファミレスで二人は食事します。
 
「え、涼ちゃんになんか言われてきたんですか?」
「いえ、アイツからは何も」
「え、じゃあ」
「見ちゃったんです。奥さんが浮気してるところ。でも、僕からは何も言ってないです。責める気もないです。どっちかっていうと奥さんが心配になっちゃって。で、どっちと別れるんですか?」
「彼とはもうーー」
「じゃあ、渡辺とは?」
「うーん、よくわかんなくって。涼ちゃんが」
「いや、分かり合えてたらこんなことなってないですよね」
 
小田原の言葉に彼女は少し表情を変えました。
とっさに謝る小田原。
 
「ごめんなさい」
「いえーーあの、涼ちゃんってどんな人だと思います?」
「俺はあいつに救われたんです。昔ね、悩んでたときに夢とか希望とか愛とか諦めるなっていうよく言うけど、全部が上手くいくことってないじゃないですか。追いつづけるのもキツいし、でも、追い求めることが正しいことではない。そういうので苦しいときに渡辺が言ったんです。『足るを知る』。これだけで十分だって」
 
美都はそれは無理だと思います。美都は幸せが、好きな人が、ほしくてしかたがなかったのです。
 
「冗談じゃないって顔してる。本当に嘘つくのが下手な人ですよね。でも、渡辺が奥さんみたいな欲深い人と結婚するのって意外で。あいつらしくないなって」
「涼ちゃんらしくないんですね」
「失礼ですけど、渡辺とは別れたほうがいいと思います。お互いのために」
「お互いの」
「ていうより、奥さんの。美都さんには幸せになってほしいから」
「そうですよね」
「やっぱり面白い人だなあ」
「すみません。私、思ってたより欲深い人間だったみたいです」
「何か困ったことあったら連絡ください。あいつのこと愚痴れるのは俺だけでしょ」
 
そうして、小田原は彼女に名刺を渡したのでした。
 
 
崩壊した家庭
その日、有島家では麗華のリクエストで夫婦だけで外食デートに行くことになりました。有島が実家に連絡して義理母と妹が赤ちゃんの面倒を見に訪れています。そこへ隣人の横山が訪ねてきました。
 
「突然すみません。あれ? お客さん?」
 
麗華がオシャレしている姿に横山は気づきました。そして、部屋の中からいつもとは違う人の声がします。
 
「夫の母と妹が来ていて」
「うわ、大変」
「いえ、今から出かけるから子どもを見ててくれるんです」
「もしかして旦那さんとデート?」
「はい」
「これよかったらクッキー焼いたんで、おすそ分け」
「可愛い。ありがとうございます。せっかく来てもらったのにごめんなさい」
「ううん、じゃあ」
 
横田は玄関の扉の前で険しい顔をしました。
頂いたクッキーを義理母と妹に渡すとそれが有名なクッキー屋のクッキーであることを妹から伝えられます。
 
夜、有島と麗華はちょっと高い焼肉屋で食事をしました。
 
「やっぱり俺たちは焼き肉だね」
「うまい!」
「うまいね。でも、うちのお店と変わりないかな」
「だめじゃん。値段倍だよ!」
「うちの店も美味しかったよね」
「懐かしいな」
 
七年前の有島は麗華のアルバイト先だった焼き肉屋で再会し、麗華からのキスをきっかけに彼女を意識したのでした。その後、麗華の連絡先を聞くために一生懸命に焼肉屋に通った有島でしたが、なかなかタイミングが上手く行かず、最後は「電話教えろや」と彼女に強く頼んだのです。
 
「あれは上から目線でカチンときたわ」
「あのな、あの歳の男子にはあれはキツいぞ」
「なんか興味がわいたのかな」
「俺に?」
「自分に。麗華って大嫌いな名前を呼ばれたときの自分の気持ちに。あのときに限ってなんであんなにね」
 
麗華はキレイな表情で笑いました。
釘付けになる有島。
 
「ん?」
「ううん。なあ、あっこちゃん大丈夫かな? 電話してみる?」
「二人もいるから大丈夫だよ。うちの親と違って安心」
「肉食ってるだけなのに、なんかすっごい悪いことしてる気になるな」
 
麗華の表情は少し固まりました。
 
「男の人は悪いことが好きだからね」
 
 
焼肉屋の後、麗華と有島が行ったのは夜景のきれいな展望レストランでした。
 
「ここ高いんじゃない?」
「さあ、初めてだし。見栄張った」
「バカねえ。いつも行ってるところって言ったのに」
「麗華には似合わないから」
「ここだって似合わないでしょ」
「そんなことないよ」
「ううん、こんなキラキラしたところ、光輝と結婚してなかったらたぶん来てなかった」
「何いってんの」
「本当ありがとう」
「やめろって」
「ううん。今言いたい。自分がこんなふうに結婚して、子どもも産んで、明るい家庭を築けるなんて思ってなかったから」
「そんなことないって」
「うちが酷かったから。母さんが私のこと『自分みたいにならなくて本当によかった」って光輝に感謝してた」
「だから、もういいって」
「母さんとは正反対の綺麗で可愛くてわがままな女が大好きで、母さんをいつも泣かせてた父さんとは違うって。亜胡がいて幸せ。亜胡を私にくれて本当にありがとう」 
「ああーー」
 
有島は彼女の話に耐えきれなくなり、顔を歪めました。
 
「なんでそんな話ばかりするの?」
「幸せだから。なんで、あなたはそんな泣きそうな顔してるの? 何が辛いの?」
 
とうとう有島は涙を流します。
 
「バカだった。軽いノリと昔の思い出と。でもな、お前が俺に干渉するたびにいつも違和感があった。ありがとう。いてくれて幸せ。助かった。違和感の原因は、俺は何も頑張ってないからだ。いつも昔っからお前に対してだけは自然なんだよ。だからな、俺は馬鹿だったけども、何があってもお前以外はーー」
「光輝? 何の話?」
「だって、知ってんだろう」
「何が? 私が知ってるのは、渡辺という女が訪ねてきた。日をおいて2度現れた男も渡辺と言った。あなたは私に聞かれて困ることがあるとちょっとフリーズする。それだけよ」
 
麗華は真顔でそう言いました。
 
アパートに戻ってきた二人を義理母と妹が迎えました。呆然としたままの有島に妹は心配して声をかけました。慌てて赤ちゃんのベッドを準備しようとした彼は足を玩具にひっかけてしまいます。
 
泣き出す赤ちゃんを有島は抱き上げました。しかし、麗華はそれを脇からとりあげてしまいます。
 
「手、洗ってください」
 
麗華に冷たく言い放たれ、有島は目を見開いたのでした。
 
 
渡辺家ではとうとう美都が自分の名前が記入された離婚届を涼太に渡していました。離婚届を見て、口を閉ざしてしまう涼太。香子に彼女が帰ってきたことを報告した矢先でした。
 
二人の今後のためと涼太は署名をしようとしますが、署名を平仮名で間違って書いてしまいました。そして、笑顔で離婚届を破り捨てたのです。
第7話の感想はここをクリック
逃げ回った美都が最終的に実家であるスナックへ出戻ってからの美都の母の娘への接し方が優しくてよかったです。アパートに夫と二人で戻って、やっと離婚届をもってきた美都。しかし、狂気に飲まれている涼太なので簡単に離婚することはできなさそうです。
 
笑顔で離婚届を破り捨てる姿は今までで一番不気味でした。涼太がどんな手で離婚を阻止しようとするのか今後が気になります。
 
そして、有島家では真実にたどり着いてしまった麗華。有島が何も言わず、麗華の揺さぶりにも負けずに隠し通していたらずっと幸せのままだったかもしれません。できれば、麗華があまり傷つかない結末になってくれたらと願います。
<見逃し動画>第6話 「変身夫と家出妻!決別の赤ワイン」
 
TVerでの無料配信は終了しました
 
第6話の公式あらすじ

美都(波瑠)の不安が的中し、麗華(仲里依紗)と有島(鈴木伸之)に接触した涼太(東出昌大)は、何食わぬ顔で家に帰ってきた。
まるで有島を意識したような服や小物に身を包み、明るく笑いかける様子に呆然とする美都。不自然な夫婦関係に疑問を呈してみるが、まるで話が通じない。
美都はそんな現状から逃げるように有島を呼び出し、夫の了承があるからと別れないことを告げる。それに対し有島は麗華の勘の良さが怖いと言い別れを切り出そうとするが、美都の勢いに押され未だ出来ないでいた。
 
そんな中、涼太は“二人で楽しく暮らすため”と、美都に窮屈なルールを押し付け、息苦しい日々が続いていた。
涼太の逸脱した行動の連続から、とうとう口論になってしまった美都と涼太。笑みを称えながら挑発してくる涼太に息が詰まった美都は…。
 
<出典>あなたのことはそれほど公式

第6話のネタバレはここをクリック
前回、渡辺美都は有島光輝の妻である麗華に接触してしまいました。それによって有島家の幸せは少しずつ揺らぎ始めます。麗華は夫の言動に不信感を募らせ、詮索はどんどん具体的になっていました。
 
そんな中、とうとう我慢できなくなった涼太は、有島と接触してしまったのでした。これをきっかけに有島と美都の関係にヒビが入るのです。
 
 
変わってしまった夫
涼太が公園で有島と接触した夜、帰ってきた彼は髪型もファッションもまったく違う人になって帰ってきました。彼は有島を意識して、すべてを変えてしまったのです。 
美都は有島に別れを告げられて、リビングで座り込んだままでした。部屋は真っ暗です。
 
「ただいまあ。あれ、みっちゃん?」
 
リビングの明かりをつけた涼太の姿を見て、美都は驚愕しました。
 
「ただいま」
「何、それ」
「あ、変? やっぱだめかあ」
「変ではないーー」
 
しかし、美都の表情は固まったままです。
 
「本当? よかった。いや、中目黒で買い物なんてしたことないからさ。結局、上から下まで店員さんに選んでもらっちゃって」
 
でも、その姿は美都にとっての涼太ではないので、彼女はそんな彼を好きだとは思いませんでした。
 
「みっちゃん、こういうシュッとしたほうが好みかなって。あ、部屋の雰囲気も変えようと思ってカーテンもオーダーしたんだ。楽しみにしてて。それと、みっちゃんの好きなお惣菜も買ってきたよ。ワイン、開けようか。そうだ。あとでファッションショーするから、見てね」
 
楽しげに話す涼太についていけない美都は、ただ立ち尽くしたまま。
 
「どうしたの? 何かあった?」
「なんか? え、あったでしょ、私たち。あったよね? あった。ねえ、チョーあったよ!」
 
取り乱す美都の傍ら、キッチンで彼はワインを開けようとします。
 
「ねえ、涼ちゃん。どうしてずっと笑ってんの。どうしてそんな楽しそうなの。どうして私に何も言わないの?」
「言ったでしょ。あの日に」
 
涼太は結婚記念日に「今の君がどうあろうと、ずっと君を愛する。大丈夫なんだ。ずっと変わらず君を愛することができるよ」と彼女に告げていました。
 
「おかしい。ねえ、おかしいよ。涼ちゃん。普通、こういうことあったら、詰ったり、話し合いとかするべきじゃないの?」
「別れるために?」
「有島くんを見てみたかったの? それとも、有島くんに自分を見せにーー」
「僕は別れないよ。僕にはみっちゃん以上の人はいないし、みっちゃんも僕以上の人はいないよ。詰るのも話し合いもムダだ。それよりも、これからをどう楽しくやっていくのか。そういう話し合いなら、大いにしたいけどね」
 
開いたワインボトルから涼太はワインを注ぐとグラスを美都に差し出すのでした。
 
 
美都はひとまず有島に「とりあえず一度会ってください。私も報告があります。別れ話はその後にでも」とメッセージしました。
 
その後、美都はいつものバーで有島と会います。
美都は別れ話をしませんでした。代わりに告げたのは、このまま関係を続けようということでした。しかし、有島はもう彼女と関係を続ける気持ちはありません。なぜなら、彼の妻である麗華は薄々浮気に感づいているからです。有島は早くこの関係を終わらせたいと思っていました。
 
「有島くんの別れる事情って何?」
「ウチの、ウチののさ」
「奥さん?」
「勘の良さがチョー怖い」
「ふーん、チョーか」
 
美都はクスっと笑いました。
 
「笑い事じゃないから」
「わかってる。じゃ、そうゆうことで」
 
有島は美都のペースに飲まれ、関係は終わりませんでした。
 
 
休日、美都と夫は二人一緒に過ごしています。しかし、美都は携帯を片手にひたすら誰かと連絡をとっていました。彼女を見て、涼太は不審そうな顔をします。
 
美都に来たメッセージは、陶芸教室の佐藤さんのものでした。最近、美都は陶芸教室に行っていなかったので、佐藤さんは彼女を心配しているのです。
 
「みっちゃん。二人で楽しく暮らす提案その一。二人でいるときは、他の人と連絡しないってのはどう?」
「じゃあ、一人のときに隠れてこっそりやるのはいいのね?」
「えー、ああ。そっかあ。そうだよね」
「わかった」
「ふふ、ありがとう」
 
今の自分に対して、なぜ涼太が感謝することができるのか美都は疑問でした。そんな涼太の変化が美都は好きになれません。
 
夜、二人で夕飯のカルボナーラを食べていると涼太はまた提案します。
そのとき、二人に会話はありませんでした。
 
「楽しく暮らすためのルールその2。食事のときはなるべく会話をってのはどう?」
「じゃあ、話題ください」
「このピクルスどうしたの?」
 
涼太はピクルスをフォークで刺しました。
 
「ネットで買ったの。今人気らしいから」
「ふーん、ちょっと甘くてイマイチだね」
「ちょっと甘くて私は好き」
 
二人の間にまた沈黙が流れます。
 
「ああ、そうだ。あのね」
「うん! 何?!」
 
涼太は彼女の話題に食い気味に飛びつきました。それにちょっと引いてしまう美都でしたが、話をそのまま続けました。
 
「変なおばさんがいて」
「教室に?」
「まあ、変ていうか、いつも食べ物持ってくるの教室に。で、なぜか韓国海苔のときがあって、で、そんな食べたくないんだけど、皆食べるから食べるじゃない。で、韓国海苔ってしょっぱいじゃない」
「で? 終わり?」
「そうだよ。韓国海苔がしょっぱかったって話」
「ああ、そっか。なるほどね」
 
涼太は笑いました。しかし、美都は何が楽しいのか理解できません。
 
「あ、そうだ。あたし明日、夜ご飯外で食べてくるから。教室の友だちと約束して」
「そう、どこで?」
「まだ決めてない。前話した佐藤さんって人、お酒の飲める人だから遅くなると思う」
「あまり飲みすぎないようにね」
 
涼太の顔は曇りました。
 
(ほら、不安でしょ。私の言うことなんか何一つ信用できないでしょ。だって私浮気してるんだもん。楽しく過ごせるフリなんかしたって辛いだけでしょ。ほら、ほら、不安でしょ)
 
 
翌日。職場での美都は、昼休みに診察室の掃除をしていました。花山先生の真面目さに気づいた彼女は、花山のことを褒めます。
 
「先生のこと、真面目な人だって母が言ってた意味がわかりました」
「俺が?」
「バツ3なんて真面目ですよ。大真面目。いちいち律儀に結婚して、いちいち律儀に離婚して。冷めた関係でも表向き楽しく暮らしてる夫婦なんていっぱいいるじゃないですか。そのほうが楽だし」
「なるほど。でも、そんな関係のまま暮らすのってしんどくない?」
「はい」
「楽しくはないよね」
 
身をもって実感している彼女にとってその生活は楽しくはないのでした。
 
(楽しいわけがない。針のむしろ。そう、針のむしろだ。あの笑顔、本当のわけがない)
 
その頃、涼太は昼休み。カフェで昼食をとっていました。
そこへ小田原がやってきました。
 
「涼太」
「おお」
「お前、雰囲気変わったな。お前の奥さんが好きなタイプそういう男だったんだ」
「いや、ただのイメチェンだよ」
 
小田原は昼食にエクレア2つを取り出しました。
 
「それだけ?」
「夜、会食二件入ってるからさ。ここのエクレア、本当にうまいんだよ」
 
小田原は涼太に一つ差し出しました。
 
「いいの? ありがとう」
「雷。エクレアってフランス語で雷が語源らしいよ」
「さすがスイーツ男子」
「お前さ、お天道様の罰は雷って言ってたけど、俺にはご褒美だな」
 
小田原は彼の横顔を見つめます。
 
「奥さんとーー」
「うん?」
「ああ、奥さんの陶芸出来たの? この前言ってたなんだっけーー」
「そば猪口とビアマグ? まだだけど」
「素人がつくっても使えるの?」
「うーん、カレー皿はガタガタだったけど、味があってよかった」
「楽しそうだな」
 
突然、涼太は頬を押さえて呻きます。
 
「歯が痛くなってきた。歯医者行かないと」
「え!?」
「早退するよ」
 
 
早退した後、涼太は公園にいました。
その涼太を見つけた麗華は、声をかけに行きます。
 
「こんにちは」
 
声をかけられた涼太は一瞬、困惑しました。
 
「ああ、この前のーー」
「ええ」
「すみません。ぼーっとしてて。あれ、今日はご主人は?」
「仕事です」
「そうですよね。平日だった」
「お近くにお住まいですか?」
「ええ、まあ。妻の勤め先が近くで」
 
涼太はベンチから立ち上げるとベビーカーの赤ちゃんに挨拶しました。しかし、赤ちゃんは泣き出してしまいます。赤ちゃんを抱き上げる麗華を涼太は眺めます。
 
「何か?」
「いえ、幸せそうだなって思いまして」
「失礼します」
「さようなら」
 
麗華はお辞儀して去ろうとしますが、最後に問いました。
 
「あの、お名前伺ってもよろしいですか?」
 
少し思案して、涼太は答えました。
 
「渡辺です」
 
 
耐えきれない妻の家出
その夜、美都はレストランで陶芸教室の佐藤さんと食事していました。
それを涼太は少し覗き見て、美都の食事の相手が女性であることにホッとしました。
 
「そば猪口とビアマグ、せっかく出来たのにさ。最近来ないから」
「あ、この頃、立て込んじゃって」
「ふーん、旦那さんと仲良くて羨ましいな」
「ええ、佐藤さんだって。あの、旦那さん以外の人と付き合いたいって思ったことってありました?」
「それって浮気ってこと?」
「はい」
「一度ね。出会い系。で、こりた。出会い系とか興味あんの?」
「え、えええ。全然」
「だよね」
 
(全然違う。出会い系なんかとは。あたしにとって有島くんは、針のむしろで暮らしても、唯一叱ってくれる友だちを失ってもいいくらい。有島くんはなにか一つでも私のために失ったりできるんだろうか)
 
 
その頃の有島は、夕食にその日の出来事を妻から報告されていました。それを理由に彼から美都へ「柴犬くんを放し飼いにしないでください」とメッセージが届きます。美都は自宅であるアパートにつくところでした。
 
慌ただしく部屋に入った美都。涼太はリビングでワインを飲んでいました。
 
「おかえり。楽しかった? 僕も一人で飲んじゃった。チーズもあるよ。みっちゃんの好きな臭いやつ。どんなお店だったの? イタリアン? 居酒屋?」
 
美都の顔は怒りでいっぱいです。
 
「有島くんの奥さんに会ってどうするつもり? ねえ、どうしてそんなことするの?」「歯が痛くて早退して、すぐ見てもらえる歯医者探してたら偶然ーー」
「そんなわけないじゃん」
「どうして僕が怒られるの? みっちゃん、よく考えて。誰が悪いの?」
「でも、だからって何もわざわざ奥さんのとこに行かなくたって」
「どうして? バレると関係が続けられなくなるから? それとも、何も知らない奥さんが知ったらかわいそう? それはないよね。真面目そうな人だよね。頭も良さそうだ。取り乱したりするのかな。どういうふうに有島くんを責めるのかちょっと見てみたいよね」
「何、楽しんでんの? ねえ、ちょっと楽しんでない?」
「二人でさんざん楽しんだくせに、とぼけたことを。でも、今日は本当に陶芸の佐藤さんだったね。安心したよ」
 
涼太の言動に我慢できなくなった美都は、寝室に駆け込むと自分の荷物をキャリーケースに詰めだしました。
 
「みっちゃん、どこいくの?」
「無理。もう涼ちゃんとは無理」
「そんなこと言わないでよ。僕はみっちゃんが世界で一番ーー」
「だから、わかんない。涼ちゃんがわかんないの。おかしいよね、今の私たち」
「おかしくないよ、好きだよ!」
「もうやめて! 私、さっきまで、有島くんに会いたいって連絡してた。あなたの笑顔は、息が詰まる」
 
涼太は涙を流しました。
 
「うん、そういう君も好きだよ」
「無理。チョー無理」
 
支度を終えた美都はアパートを出たのでした。
その頃、有島は家族を失う悪夢を見てうなされていました。
 
翌日、美都はカプセルホテルで目を覚まします。有島にたくさんのメッセージを送りましたが、一つも返信はないのでした。すると、香子から電話が入ります。
 
カフェで落ち合った二人。
 
「久しぶり、でもないか」
「ばっかじゃないの?!」
 
香子の声はカフェに響き渡るほどでした。
 
「で、これからどうすんの? 今日仕事どうしたの? またカプセル泊まるの? もう一生家に帰らないの? 涼太さん電話で泣いてた。美都の力になってやってくれって」
 
涼太は美都が出ていった当日、すぐに香子に電話して「ちょっと喧嘩して出て行っちゃったんだ。あの子の一番親しい人って言ったら、やっぱり香子さんじゃない。お母さんのところにはたぶんーーだから、香子さんのとこにいったら、力になってほしいんだ。たぶん今は、素直に頼ったりできないかもしれないから。ごめんね。みっちゃんはね、いい子なんだよ。本当は」と言ったのでした。
 
「ねえ、そんな事言わなきゃならない旦那の気持ち、考えたことある?」
 
しかし、美都は心の中で(やられた。先手を打たれた)と思っただけでした。
ぐっと感情をこらえ、美都はうつむいていた顔を上げます。
 
「香子、今日は来てくれてありがとう。これからどうするからは、まだ決めてない。今日は仕事休んだ。とりあえず、またカプセル泊まる。涼ちゃんと使おうと思って作ったビアマグとそば猪口をとってきたけど、もうそんな資格ないね。捨てる」
「いや、そんなのいいから。有島とどうなりたいの?」
「どう?」
「未来のないものにすがって何が楽しいの?」
 
美都は黙ったままです。しかし、心の中では悲鳴があがっていました。
 
(どうなんて考えてない。なれる未来があるとも思ってない。いくらなんでもそこまでハッピーにできてない)
香子は黙ったままの彼女を容赦なく問いただします。
 
「あっちの家族を壊して奪う気?」
「ただ好きで、会いたくて」
「で、わざわざ不幸の道に全力疾走? バカ? バカすぎる。有島に大事にされてるとでも思ってるの?」
 
美都はうつむいて、顔を両手で押さえるだけでした。
 
(知らないくせに。知らないくせに。知らないくせに。動物で何が悪い。バカで、未来がなくて、何がーー)
 
「一応、頼まれちゃったから聞くけど、うちにくる? じゃあ、家に戻る? じゃあ、実家?」
 
美都は首を振りました。
 
「いい子なのに?」
 
美都は目にいっぱいの涙をためた赤い顔を上げました。
 
「香子。私、悪い大人になっちゃった」
「少し立ち止まって、真剣に考えても良い頃なんじゃない。みっちゃん」
 
美都は唇を噛みしめるのでした。
 
 
逃げ出す妻と逃げられない夫
有島家では祖母が危篤だという連絡で麗華の実家に来ていました。しかし、容態が安定したので事なきを得たのです。
 
香子の母が赤ちゃんの面倒を見てくれるということで、二人はショッピングモールに買い出しに行くことに。久しぶりに二人だけで食事をするので有島は喜びます。
 
「もうちょっとちゃんとしたとこにすればよかったな。オシャレなカフェとかさ。せっかく二人で来たのに」
「そうだね」
「でもさ、久しぶりにゆっくりできるんじゃない。二三日、こっちで好きなことしたら良いよ。な」
 
麗華は彼を見つめました。
 
「ん?」
「ありがとう。でも、あたし嫌いなことしてるわけじゃないから大丈夫よ。今、好きなことしていいって言われたら、光輝は何したい?」
「え?」
 
夜、麗華は母に「お前はいい旦那を見つけたね。私みたいにならなくて本当によかった」と言われます。なぜ離婚しないのかと麗華は母に尋ねます。麗華の父は浮気したまま出て行ってしまったのです。しかし、麗華の母はそんな父でも愛しているのでした。
 
 
床についてから、有島の携帯には何度もメッセージの着信がありました。それを麗華は不審に思いつつ眠りにつきます。
 
 
東京では相変わらず、美都が有島にメッセージを送信していました。逐一、自分の状況や心情を報告しているのです。しかし、有島から返信はありません。
 
今は香子の家に置いてもらっている美都。
香子を起こさずに出勤しようとした彼女でしたが、香子は目を覚ましてしまいました。
 
「ごめん。起こしちゃった?」
「いやあ」
「あ、あの朝ごはん適当に作ってみたから良かったら食べて」
 
そのまま玄関へと向かおうとします。
 
「ちょっと待てい! あんた、今日もうち泊まんの?」
 
美都は慌てて香子のそばまで駆け寄り、正座しました。
 
「本当は泊まりたい。でも、香子が嫌ならすぐ出ていく。でも、家には帰らない。帰らないけど、それでまた香子が心配して迷惑だけどしょうがないって我慢して泊めてくれるんだったらやっぱり出ていこうと思う」
「何堂々としてんだよ! この家出妻が!」
「すいません」
「迷惑じゃないわけないでしょ。『ああ、嬉しい。いらっしゃい』って泊めてくれるんじゃなきゃ出てくってんなら、どうぞ出てってください。でも、泣きながら『力になってやってくれ」って電話してきた涼太さんのことを思うと、私が変な後悔するのも嫌。よって、涼太さんのためにガスメーターの裏に鍵を貼って出勤しようと思ってる。思ってるけども、正直私の気持ちもどう揺れるかわかりません。なので、そのへんは鍵のあるなしでお察しください。以上」
「ありがとうございます」
「うん」
 
麗華の実家で、有島は美都への返信を悩んでいました。しかし、麗華に驚いて、メッセージを途中で送信してしまったのでした。
 
「今、奥さんの実家、今日の夜一人でーー」
 
その日、有島は妻の実家から一人で東京に変える予定なのでした。
帰る際に妻から夕飯のお弁当を渡されます。
 
「これ夕飯」
「おう、ありがとう」
「あっちに行ったら、すぐに冷蔵庫に入れてね。でも、真っ直ぐ職場に行くのか。急な仕事で呼び出されたんだもんね」
「んーでも、車置いてから仕事に行くつもり。それじゃ、お義母さん、失礼します」
「いろいろありがとう。すいませんねえ」
 
我が子に別れの挨拶をすると、突然麗華が「私も一緒に帰ろうかな」と言い出します。そのまま、車に乗る麗華。
 
「は? え? どうしたんだよ。急に」
「という、わがままを私、いままで言ってこなかったなあって思って。私、好きなことしていいって言われたら、とりあえず、今あなたを一人にしないーー」
 
妻の言葉に有島は固まりました。
 
「いってらっしゃい。気をつけて」
 
麗華は静かに車を降りました。
 
 
夜、仕事から帰宅した美都は、香子のアパートのガスメーターの裏を探りました。そこには鍵が貼り付けてあり、美都は喜びます。
 
「ありがとう」
 
しかし、そのとき有島から「今から会える?」とメッセージが来てしまうのでした。
 
笑顔で駆け出す美都は、キャリーケースを引っ張りつつ彼のもとへと急ぎました。
いつものバーでは有島が先に待っていました。彼はチャーガティーではなく、お酒を頼んでいます。
 
「チャーガ-ティー?」
 
美都が尋ねると有島は首を振ります。
そして、美都は有島と同じ酒を頼むのでした。
 
「これ強いぞ?」
 
笑顔でうなずく美都は、有島の腕に抱きつきます。
 
「話するか」
「いいよ。でも、お酒飲んでした話は、後でリセットしても誰も責められないんだよ」
 
強い酒を飲んで美都は笑いました。
 
「困ったなあ」
「うん?」
「うまい」
「うん」
「本当は今頃、家で弁当食ってたはずだったんだ」
「うん」
「あのさーー」
 
有島がいいかけた時、美都は逃避行に誘いました。
 
「逃げよっか。二人で」
 
 
その頃、涼太は香子に電話していました。
 
「もしもし。渡辺です。先日はありがとうございました」
「ああ、どうも」
「そろそろ、迎えに行こうかなと。本当、夫婦ケンカなんかで迷惑かけてすいませんでした」
「ああ、いいえ、それは」
「それで、僕が迎えに行くことは彼女には内緒にしてもらおうかなと思いまして。あの、また逃げられたら困りますから」
「涼太さん、ちょっと遅かったかもです」
「はい?」
「逃げました」
「逃げた? どこへ?」
 
少し怒気を含んだ言葉の後に涼太の表情は固まっていました。
香子との電話が終わった後、涼太は独り言をつぶやきます。
 
「逃げたーー馬鹿だねえ、みっちゃん」
 
そして、彼は奇声をあげながらワインのボトルの中身を部屋中にぶちまけ、壁にボトルを叩きつけたのでした。
第6話の感想はここをクリック
夫の涼太がどんどん違う人のように変わっていく姿は凄まじいものでした。行動のすべてに狂気を感じます。しかし、それは美都を好きだという愛情が変化してしまったものなので、見ていて痛ましかったです。ひたすら、かわいそうな涼太。しかし、おそらくもう渡辺家には愛というものはないように思えます。
 
渡辺家の崩壊とともに有島家の幸せにもヒビが入ってきました。少しずつ感づいて夫の心に迫っていく麗華の言動には感服しました。
 
次回、有島と美都の関係がどのようになっていくのか楽しみです。
<見逃し動画>第5話 「夫VS愛人!地獄の公園デビュー」
 
TVerでの無料配信は終了しました
 
第5話の公式あらすじ

美都(波瑠)は、有無を言わせぬ笑顔で手元に自分を留めようとする涼太(東出昌大)に恐怖心を抱いていた。
眠れぬ夜を過ごした美都は、医師の花山(橋本じゅん)にすべてを見透かされ、自分は嘘が下手なのだと改めて思い知る。だが、仲違いしていた香子(大政絢)が諭しても、有島(鈴木伸之)と別れる決心がつかない。けれど、美都の誕生日を祝う予定だったレストランで予定をすっぽかされてから、有島から連絡はなかった。
涼太が待つ家に帰りたくない美都は陶芸教室へ避難し、夫の歪んだ愛情を感じる反面、有島への想いをさらに募らせていく。すると、麗華(仲里依紗)が教室に置いていったままの本があることを知り、本を届けることを口実に有島家を訪れることに…。
 
一方、小田原(山崎育三郎)は、鬱積した涼太の話を聞くために酒を酌み交わしていた。美都は、このおかしな夫婦生活にちゃんと向き合い、話し合おうと家で涼太を待っていた。そこに泥酔した涼太が帰宅する。仕方なく「明日ちゃんと話す」と告げる美都だが、翌朝、涼太はとんでもない行動を起こす!
 
<出典>あなたのことはそれほど公式

第5話のネタバレはここをクリック
前回、渡辺美都は夫の涼太に浮気がバレてしまっているとは気づかないまま、結婚記念日を迎えてしまいました。涼太は素敵なレストランですべてを知っていると彼女に伝え、それでも愛し続けることを笑顔で宣言したのです。彼の不気味なほどの笑顔と愛に美都は恐怖を覚えるのでした。
 
 
笑顔の仮面と暴走する妻
結婚記念日の夜、美都は夫との態度が怖くて眠れずにいます。
キッチンでミネラルウォーターを飲んでいると、そっと涼太が現れたことに驚きました。
 
「みっちゃん! シャンパン飲みすぎちゃった?」
「あ、うんーー」
 
ミネラルウォーターのボトルをしまう際、冷蔵庫から取り出したアスパラを「このアスパラ、もうだめだね」とゴミ箱に捨てる美都でしたが、涼太はゴミ箱からアスパラを取り出して輪ゴムだけをストックしました。
 
「まだ寝ないの?」
「あ、うん」
 
涼太が先に床についてから美都はベッドに入りましたが、涼太に後ろから抱きしめられてしまいます。
 
「涼ちゃん?! ちょっと」
「このまま、ただこのまま僕の奥さんと眠るだけーー」
「涼ちゃん私ーー」
「もう眠いから」
 
涼太は強引に眠りにつきました。彼の行動があまりにもおかしいことで美都は眠りにつくことができません。心の中で彼に語りかけました。
 
(眠れない。眠れるわけない。これで眠れたらおかしいか。おかしいよ、涼ちゃん)
 
 
翌日の職場でのこと。眠れなかった美都は、赤い目をして働いていました。あくびをする美都を見て、花山先生は心配します。
 
「寝不足? 目が赤いね」
「ちょっと」
 
美都は苦笑いします。
 
「昨日、結婚記念日だよね」
「え、覚えてるんですか?!」
「そりゃ、ヴァージンロードを一緒に歩いた父親代わりだもん。健やかなるときも病めるときもって永遠の愛を使った娘が赤い目して暗い顔してたらちょっと心配」
「永遠の、愛ーー」
「なんかあった?」
「私、嘘下手だったんですね」
「知らなかったの?」
「昨日、思い知りました」
 
美都の携帯にメッセージが入りました。確認するとそれは「今日、会えない?」と香子からでした。
 
その夜、美都はレストランで香子と食事をしました。
 
「温泉、つまんなかったって私の気持ちは言ったけど、本当のことは涼太さんには言ってない」
「ありがとう」
「もう、面倒なことに巻き込まないでよ」
「もう、面倒なことになってーーないのかな。わかんない。全部、バレてた」
「なってんじゃん」
「なってるんだけどーー」
「言わせてもらうけど、初恋とか運命とか綺麗な言葉でコーティングしてるけど、傍から見るとただのよくありがちなそこらへんに転がってる、浮気だよ? 結婚って安定を手に入れて、気楽に遊んでただけじゃん」
「有島くんは私にとって特別なの! もっとよく考えてから結婚をーー」
「その特別は、他の女と結婚してたんだよ? 美都の夢は叶わなかったんだよ」
 
美都は黙りました。
(反論の余地なし。でも、認めたくない)
 
「どうすんの? 涼太さんなんて? なんて謝ったの?」
「それが、謝らせてもらえる感じじゃなくて」
「それでも謝るもんじゃないの?」
 
美都はあの貼りついた笑顔を思い出しました。どうやっても謝れるような雰囲気のない涼太を考えて、美都は伝えられる気がしないのでした。
 
「有島とは別れるんだよね? 答えによっては友だちやめるけど?」
「わからない」
「もしかして、涼太さん離婚だって? だから、この際乗り換えてって?」
「ううん、涼ちゃんは今まで通り、笑って『おはよう』って。笑って『おやすみ』って。気持ち悪いくらい」
「気持ち悪い? あんたどの立場で言ってるの? 涼太さんがどんな気持ちでーー最低」
 
親友にどうこう言われても、美都にとって夫の貼りついた笑顔が恐怖の対象であることは変わりませんでした。そして、涼太は帰宅した美都をその笑顔で迎えます。
 
「遅かったね」
「ごめん、香子と会ってて」
「そう、香子さんなら安心だ」
 
涼太と二人でベッドにつくと、美都は有島について考えました。ドタキャンの誕生日があってから一度も彼から連絡は来ていません。
 
 
仕事後、家に帰宅しづらくなった美都は陶芸教室に避難するようになってしまいました。ビアマグを作りながら、美都は今後について考えを巡らせ続けています。
 
(あれから夫には笑顔が貼りついたまま、私は少しも笑えない。これはどういう仕組み? 厚くても、薄くてもあの人は私の作ったビアマグが嬉しいんだ。浮気してたって、してなくたって、あの人は私と一緒にいれることが嬉しいんだ。それなら私は、私はこの先どうする? どうしよう、有島くんーー)
 
そのとき、佐藤さんが言いました。
 
「有島さんに借りてた本なんだけどね」
「え?」
「この前に赤ちゃん連れてきてた。見て、この本いろんな模様が載ってるよ。あ、先生! 有島さんの住所ってーー」
 
慌てて美都は声をかけました。
 
「あ、友だちの奥さんなんです。あの人、有島さん? よかったら、私から返しておきましょうか?」
「本当? 助かる」
 
後日、美都はわざわざ有島のアパートまで本を返しに行きました。
美都がオートロックのマンションに入る際、有島家の隣人である横山さんは彼女のことを見かけて、こっそり覗き見ています。
 
「おはようございます。突然すみません」
 
玄関をあけた麗華は、美都を見て陶芸教室でのできごとを思い出しました。
 
「あ、あの、なにか?」
「これ、佐藤さんからお預かりしました」
「ああ、佐藤さん」
「ずっと借りっぱなしになってたのを気にしてらして」
「それはわざわざ、ありがとうございます」
「いえ」
 
美都はそっと家の中を視線だけで探りました。
 
「あの、わざわざこのためにここに?」 
「あ、私、実はご主人。有島くんと中学の同級生なんです。この前に、偶然お会いして、ご自宅が私の通勤圏内ってうかがってものですから。すいません、懐かしくってつい」
「そうですか」
 
突然、赤ちゃんが泣き出しました。
 
「お忙しいのにすみません」
「いえ、こちらこそ。わざわざありがとうございました。佐藤さんにも宜しくお伝えください」
「はい。ご主人にもよろしく。失礼します」
 
美都が去ったあと、麗華は夫の有島に電話していました。
 
「ええ、何かあったので電話しました。いま、あなたの中学の同級生の渡辺さんって女の方がみえて」
「渡辺?」
「うん。陶芸教室が一緒だったみたいなの。友だちに貸したままの本をわざわざ返しにいらして」
「陶芸教室ーー」
「懐かしいっていいながら、あなたのいない時間に来るなんて変わった人ね」
 
そんな中、美都は有島の妻について考えながら、そのまま職場に向かっているのでした。
 
 
始まる、すべての崩壊
仕事が一段落ついた昼休み。美都は受付の森に言います。
 
「ねえ、私ちょっと出てきてもいい?」
 
外のベンチで携帯を眺めていると有島から電話が入りました。
 
「ルール違反だろ。お前なあ、俺が陰でお前の旦那と親交結んでちゃったらどうよ。こういうのってお互い暗黙の了解があるだろう。つうか、なんで同じ陶芸教室って黙ってたんだよーー美都?」
「お昼は奥さんのお弁当?」
「それが何か?」
 
有島は妻の弁当を今まさに食べるところでした。
(当たり。お弁当つくりそうな人だったもん。輪ゴムも再利用して、忘れ物もしなそう。嘘もうまーー嘘つかなそう)
 
「美都?」
「うん、ごめんなさい。私、ちょっとヤケになってたのかも」
「ヤケ? なんで?」
「なんでって。有島くんが誕生日のお祝いしてくれるって言ったのがすごい嬉しかったから、本当に楽しみだったから、だから、だめって言われたときに本当に酷いこと言っちゃってーーあたし本当にだめだなって」
「いやーー」
「でも、大丈夫。今は冷静だし、後悔してる。二度としません。本当にごめんなさい」
「俺も悪かったし、何かあった?」
「ううん」
「じゃあ、会えそうなとき、また連絡する」
 
美都はどうしても有島の妻である麗華に自分の姿を見せたかったのでした。彼女は有島がなぜ麗華を選んだのかと思案しつづけます。
 
 
その夜、有島家は出産祝いでもらったお肉ですき焼きをしようとしていました。
 
「うわー美味そう!」
「ご飯これくらいでいい? ビール飲むよね」
「あ、俺出すよ」
 
冷蔵庫からビールを取り出す有島の横、麗華はふと話を変えました。
 
「可愛らしい感じの人ね、渡辺さんって。女子力高いって、ああいう人のことをいうのかしらね」
「ああ、三好? 小中って一緒だったんだよ。誰かと思ったよ。渡辺って。飲み会帰りに再会したんだよ。飲み会って向こうがね。俺は会社帰りよ。懐かしかったなあ」 
「ふーん、仲良かったんだ」
「まあ、普通に友だち」
「仕事は何しているの?」
「何か、どっかの病院とか言ってたな」
「家が通勤圏内だって」
「ああ、そうだっけ。陶芸教室ってあれだろ。こないだ取りに行ってたとこだろ」
「土のついた手で亜胡のこと触ろうとしたから、思わず抱き上げちゃった」
「なんだよそれ。変なやつだな。陶芸、流行ってんのかねえ」
「興味あるの?」
「いや、全然」
「だよね。こないだ、玄関の香台の写真撮ってたからさ。興味あるのかなって。光輝の趣味じゃないよね」
「うん? 全然」
「変ねーー」
 
麗華はそういうと夫のことを見つめました。
 
「出産祝いに牛肉って」
「だよな。普通、ベビー服とかだよな」
「あ、そうだ。これ、佳菜ちゃんからカード」
 
そこには「お姉さんへ、ふつつかな兄をパパにしてくれてありがとうございます」というメッセージがありました。
 
「ふ、昔から佳奈はお前に懐いてたからな」
「家族の中で、もしかしたら佳奈ちゃんが一番光輝のことをわかってるんじゃない」
 
突然、赤ちゃんが泣き出しました。
 
「あ、先食べてて」
 
有島は麗華が我が子をあやす姿を見て、二人の過去を思い出します。
麗華と有島は高校が一緒でした。大学生になってからも麗華とは交流のあった有島は、彼女の家庭が大変であることを知っていました。
 
麗華の父親は酒癖が悪く、母親に手を上げるような人でした。麗華が大変なときは有島が助けていたのです。
 
兄を慕う妹の佳奈は、麗華のことを見て「ああいう人がもし彼女だったらさ、少しは兄のことを見直すわ」と言っていたのでした。
 
美都との関係を後悔し始めた有島は、美都に「しばらく会わないでいよう。連絡する」とメッセージを送りました。
 
 
朝、美都は陶芸教室に寄って帰りが遅くなることを夫に告げ、出勤しました。
 
職場での涼太は、家庭でのストレスが理由で仕事でのミスが目立つようになっていました。それを静かに見守っている小田原。
 
 
その日は、美都の母が緑内障の診察に来ていました。
 
「今のところは、投薬治療で問題ないですね。どちらかといえば、今心配なのはーー」
 
診察室に入ってきた美都を母と花山先生は見つめます。
 
「なるほど」
「ランチ、お母さんと二人で先に言ってていいよ。僕も後から合流するから」
「はい」
 
美都と母の二人はいつものファミレスでメニューを選びます。
 
「こないだはチキン食べたからなー」
「どれ頼んでも外れないからここ」
「うーん、涼太さんにバレたんだ、浮気」
「は!?」
 
母の発言に驚いてしまった美都は、激しく振り返りすぎてコップの水を盛大にこぼしてしまいました。
 
「ちょっと、それじゃ夫どころか職場の上司にバレてもおかしくないね。で、涼太さんは?」
「それでも私のことを好きだって言ってくれて」
「あ、よかったじゃん。他の男と付き合っても、お前のこと好きだって言ってくれてんだろう。そんな良いことない」
「最低な母親」
「最低の親子。覚えてる? 子育てで大事なのは結婚相手を選ぶ目をもたせてやることだって母親からのありがたい言葉。あんた、そもそも誰も選んでなかったんだよ。選んだのは人じゃない。幸せ。自分の幸せを選んだ。で、浮気しても壊れない幸せな結婚生活が手に入った。何を悩むことがあるんだから」
「幸せなわけないでしょ。もうこのまま、あんな貼りついた笑顔の涼ちゃんといたら私ーー」
「あんた意外と真面目だったんだね。よ! 最低界の誠実娘」
「やめてよ」
「こういうときは罵ってもらったほうが楽だろう。涼太さんはやっぱり怖い人だね。あ、誠実な上司が来た!」
 
花山がファミレスにやって来ました。
 
「好きなの頼んだ?」
「これから」
「お母さんワインどうですか?」
「いいですね」
 
美都の目はうつろでした。
 
 
狂った夫の進撃
その夜、涼太は久しぶりに小田原と飲みに来ていました。
 
「陶芸教室?」
「うん、僕のリクエストでみっちゃんは今そば猪口作ってるんだ」
「手作りの食器に手料理か。ついでに家庭菜園でも作っちゃえば」
 
うなずく涼太。
 
「丁寧な暮らしっていうの? 空が綺麗だとか、花が咲きましたとか。日常生活大切にしていますっていうああいうの」
「ああ、いいねえ」
 
涼太が相違答えたのと同時に小田原はそれを否定するのでした。
 
「嘘くさいな。独身の僻みかな? なんか嘘みたいに幸せそうだからさ。お前んち行ったときも、幸せな夫と妻を演じる芝居を見てるみたいで、誰に見せたいんだって気になっちゃってさ」
 
涼太はビールを持ったまま、正面を向いて固まりました。
 
「悪い。でも、正直、お前があの奥さんと結婚するって知ったとき、可愛くて、がっかりした」
「なんだよそれ」
「お前も、けっきょくそこかって。しかも、運命って」
「最初に会ったときにみっちゃん言ったんだ。『お天道様は見てる』ってさらっと。そのとき、ああ、一緒だなって思ったんだ。心の中にそういうちゃんとしたものがあるんだなって」
 
小田原の脳裏には他の男と楽しげに歩いてる美都が浮かびました。
 
「お天道様は夜は見てないからなーーまあ、奥さんも意外だよな。お前と結婚するって。たいてい奥さんみたいな子って派手でわかりやすくモテそうな子が好きそうなのに」
「そうかな」
「今までどんな男と付き合ってきたとか、気になんなかった?」
「別に?」
「そうだよな。じゃなかったら、結婚しないよな。奥さんは男を見る目がある。お前みたいな男が一番だよ。結婚するならな」
「結婚するならか」
 
小田原は横から彼を見つめます。
 
「あれ、夫婦ケンカでもした? ここんとこ、惚気たインスタみてないな」
「してないよ、ケンカなんて」
「何しても許せるんだ」
「許せるとかじゃなくてーー」
「怒れないんだろ。お前は馬鹿みたいに優しいから」
「優しくはないよ」
「な、お天道様は見てるって昔から言うけど、あれって結局、お天道様が怒ったらどうなんの?」
「さあ、雷でも落とすんじゃない」
 
涼太はいつになくビールを一気飲みするのでした。
アパートに帰宅すると、珍しく美都が涼太を待っていました。今の状況を変だと思って、涼太と話し合いをしようと考えていたからでした。
 
「ただいまあ」
「おかえり」
「みっちゃん、待っててくれたんだ」
「珍しいね、けっこう飲んだんだ」
「小田原が明日休みなんだから飲め飲めってうるさくて」
「そっか」
「どうしたの? 元気ないね。なんかあった?」
 
そんな涼太を見て、彼女は困惑します。
 
「明日、ちゃんと話す。話そ」
「ああ、久しぶりに酔っちゃったなあ」
 
 
翌日は空が青く、きれいに晴れていました。
有島家では我が子を連れて公園へ散歩に行くところでした。しかし、隣人の横山と会ってしまいます。
 
「有島さん、おはようございます。今からお散歩ですか?」
「はい、ちょっと公園に」
「本当に優しいご主人ですね。うちの旦那なんてまだ一度も一緒に公園に来てくれたことなくて」
 
有島は「俺、ちょっと先に行ってるわ」と妻にささやき、先に公園に向かいました。
 
「子どもにあんまり関心ないんです。うちの子、人よりちょっと小さいみたいだって何度も言ってるのに、気にし過ぎだって全然」
「人と違うところがあると不安ですよね」
「そうそうなの。毎日いろいろ考えちゃって。検診では特に悪いところはないって言われたけど、だけどーー」
「きっとゆっくり大きくなるよね。肌が白くてお母さん似だね」
 
麗華は横山の赤ちゃんをあやすのでした。
 
「あのご主人と結婚できたのわかる気がする。有島さん、友だち多いでしょ。こないだも友だちが遊びに来てて。ほら、ピンクのスカートの可愛い人。お仕事してる人? オシャレで」
「ああ、あの人は友だちじゃありません。それに私友だち多いほうじゃ」
「あの、私とお友だちになってくれますか?」
 
苦笑いしつつ、麗華はうなずきます。
 
「ああ! よかったらこれどうぞ! お友達の印」
 
横山はたくさんのベビー玩具を麗華に手渡すのでした。
その頃、渡辺家では涼太が一人で外出しようとしていました。
寝室から出てきた涼太はすでに身支度を終えていて、美都はすこし驚いた顔で声をかけました。
 
「どっかいくーー」
「みっちゃん、今日予定ある?」
「ううん」
「あ、じゃあ、家でゆっくりしてて。僕ちょっと出かけるから」
「え、え、涼ちゃんどこいくの?」
「だめだよ。一人で行きたいから」
 
戸惑う美都をおいて、彼は玄関へと足を運んでいきます。
 
「え、ねえ、一人でってどこに?」
「夕飯は買ってくるから」
「え、ねえ、ちょっと待って涼ちゃん」
「いってきまーす」
 
玄関のドアは、立ち尽くす美都の前で虚しく閉まったのでした。
 
 
公園にたどり着いた有島家は、公園のベンチで談笑していました。
 
「ほら、こんなのも。何言ってもお友達の印だからって」
 
そのとき、有島の尻ポケットの携帯がなりました。
それは美都からの電話です。しかし、有島はとりません。
 
「で、おもちゃくれたんだ。ママ友か、なんか怖えな」
「でしょ。出なくていいの?」
 
麗華は着信を心配しました。
 
「いいよ。日曜まで仕事の電話は」
 
ベビーカーの我が子をあやす有島。
 
「でも、お友だちになってくださいって言うか、普通」
「そういうこともあるんじゃない」
「そう?」
「友だちって言ってもいろいろだけど」
 
一度止まった着信が、また鳴り出しました。
 
「大丈夫なの?」
「いいよ」
「そういえば、渡辺さんから連絡あった?」
 
麗華の発言に彼は一瞬、固まります。
 
「ううん」
「うちに来たこと、報告するかと思ったけど、友だちなら」
「別にしないでしょ」
「ほら、出なよ」
 
有島は少し離れたところで携帯を見ると、それは知らない番号でした。
電話はすぐに切れてしまいました。
 
「誰?」
「知らない番号だった」
 
公園の陰では有島家のことを誰かが覗いています。
 
 
帰る時間になり、二人は帰る支度をして歩き出しました。突然、有島に人がぶつかります。ぶつかった衝撃でその人は持っていた飲み物のカップを落としてしまいました。
 
「すみません!」
「大丈夫ですか?」
「僕の方こそよそ見していてすみません」
 
ぶつかったのは涼太でした。
彼は謝りつつ、赤ちゃんを見ます。
 
「ああ、可愛いですねえ。女の子ですか?」
「はい」
「可愛いなあ。うちも子作りがんばってまして」
「ああ、そうなんですか」
 
麗華は飲み物の弁償をしようと夫に言いました。
 
「光輝、そこのカフェでなにか飲み物買ってきて」
「ああ」
「あ、飲み物買ってくるんですけど、何が良いですか?」
「ええ、いやいやいや」
「僕も喉乾いたところなんでついでに」
「じゃあ、僕も行きます」
 
光輝と涼太は、麗華と子どもをおいて二人でカフェへと向かいました。
 
「本当にがんばってるんですけどねえ」
「え、ああ、子どもですか?」
「いろいろです」
「ですねえ」
「お米が上手く炊けたとか、空がきれいとか、日々の暮らしに幸せ見つけて。だめですかね、そういう男は」
「はあ、いいんじゃないですか」
「ですよねえ」
「しかし、幸せそうで羨ましいな」
「いやいや」
「ねえ、有島さん」
 
有島は驚いて目を見開き、立ち止まった涼太を振り返りました。
 
「妻は子ども嫌いで子作りは努力のしようもありません。子はかすがいとはいいますが、実際のところはどうなんでしょう。それだけではないと信じたい」
 
有島の目は恐怖に泳ぎます。そして、有島のポケットの携帯はまた鳴り出しました。
 
「あ、さっき電話したの僕です。どうぞ、出てください。じゃ、お幸せに」
 
涼太は彼を残して去っていきました。
電話は美都でした。
 
「有島くん? 話があるの。大事な話。涼ちゃん、うちの夫。今日一人で出ていったんだけど、もしかしたら有島くんちに行ってたりしないかなって」
「ああ」
「あの人、全部知ってるの私たちのこと。私の携帯から有島くんのデータ全部。それで、だから」
「だから、自分とこの旦那にもバレたから、俺んとこもバラそうと押しかけてきたのか」
「何いってんの?」
「美都、もうやばいはこれ。終わりにしよう。友だちに戻ろう」
「私たち、友だちだったことなんかあった?」
「ないな」
 
有島は飲み物を買って、麗華のもとへと戻りました。そこへ突然の雨。
 
突然降ってきた雨の中で涼太は雷の写真を撮ります。そして、それをSNSに「お天道様の罰が当たった」というコメントと共に投稿したのでした。
第5話の感想はここをクリック
涼太が狂ってしまったことですべては崖から落ちるように崩れていきました。美都は今まで安定していた自分の生活が壊れたことで暴走してしまい、それは有島家にまで影響を及ぼしてしまいました。
 
傷つかなくてもいいはずの麗華や涼太が苦しんでいくさまは見ていて大変苦しかったです。唯一、まだ救いであるのは有島が子どもを大切に思っていることなので、今後有島が家庭のために行動を改めてくれることを願います。
 
今でも凄まじい変化を見せている涼太ですが、彼はどこまで行ってしまうのでしょうか。次回も涼太の狂気に期待しています。
<見逃し動画>第4話 「最愛の妻への最凶のプレゼント」
 
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第4話の公式あらすじ

美都(波瑠)は、友達との飲み会だと涼太(東出昌大)に嘘をつき、有島(鈴木伸之)との時間を重ねていた。次の約束を有島と電話しながら帰宅してきた妻の姿を夫が窺っていることにも気付かず…。
同じ頃、美都の電話の相手である有島の会話もマンションの隣人・皆美(中川翔子)に聞き耳を立てられていた。隣人とも気付かず有島は気にせず話しながら通り過ぎる…。
ある日、美都は有島から「麗華(仲里依紗)が里帰りから戻ってくるから会う機会が減る」と牽制され、食い下がる。「趣味を持て」となだめられ、同僚の森瑠美(黒川智花)から陶芸の面白さを聞き、教室へ通い始めることに。
それなりに陶芸を楽しんでいたある時、元生徒だという女性が教室にやってくる。その女性は——まさかの麗華だった!
生まれたばかりの赤ちゃんを連れた姿を目の当たりにした美都の心に黒い嫉妬が芽生える。
 
そんな美都と涼太に結婚1周年記念日と美都の誕生日が近づいていた。
涼太に陶芸教室でつくった作品をプレゼントしようとする美都、美都に特別なプレゼントを用意しようと考える涼太。
いよいよ結婚1周年記念を迎える2人だが…
 
<出典>あなたのことはそれほど公式

第4話のネタバレはここをクリック
前回、渡辺美都は温泉旅行をきっかけに有島光輝が既婚者であることを知りました。もう会わずに忘れてしまおうと努力しようとした彼女でしたが、有島の「お詫びの食事」につられて会いに行ってしまいました。
 
その日は夫の涼太の同僚が家に食事に来る大事な日。食事は成功したのですが、涼太はとうとう不倫の証拠であるメッセージを美都の携帯で発見してしまったのです。
 
 
きれい事だけの夫婦
美都は相変わらず有島との逢瀬を続けていました。夫の涼太は、飲み会で夜遅くなっている彼女を美都の母と一緒に待っています。
 
「涼太さんありがとう。今日も美味しくって食べ過ぎちゃったわ」
「みっちゃん、あの煮物大好きなんですよ。明日の朝も食べるかなってちょっと多く作りすぎちゃって」
 
涼太が携帯の時間を確認するとすでに22時を過ぎていました。
 
「友だちと飲み会って娘気分が抜けない子でごめんなさいね。ま、でも女同士って喋りだすと止まらないのよね」
「ちょっとコンビニに行ってきますけど、何か買ってくるものありますか?」
「ううん、大丈夫。ありがとう」
 
美都はアパートに入らずに外で有島と電話しているところ。最近、有島は家族のことで忙しく、美都とはバーで飲むだけが多くなっていました。
有島は「今度はちゃんとご飯食べに行こう。何食べたい?」と電話で言います。
 
「じゃあ、この前言ってたパエリアのお店は?」
 
それを玄関のドアを開けて、涼太は覗き見ていました。
その姿を見て、美都の母が声をかけます。
 
「涼太さん何してるの?」
「ああ、いや、みっちゃんを驚かそうなとーー」
 
そこに美都が帰ってきて、二人は互いに驚くのでした。
 
「おお!」
「わあ! 涼ちゃん、ただいま」
「おかえり」
「なんかお腹空いちゃった。飲んでばかりで全然ご飯食べられなかったんだあ」
「飲み会盛り上がったんだ」
「うん」
「そう」
 
夫婦の姿を見て、美都の母は自身の家に戻ることを決めます。
 
「そろそろ、私うちに帰るよ」
「え?」
「これ以上、二人の邪魔してもね」
「今更?」
「そうですよ。まだ怪我も治ってないのに」
「大丈夫。来週にはギプスもとれるって先生言ってたし。店をいつまでも閉めてたら常連にも逃げられるからね」
「ねえ、眼科は? 行ったんでしょ? 先生なんて?」
「ああ、まあ、しばらく様子を見ましょうって」
 
後日、美都は母を自分の勤める眼科に連れていきました。
花山先生は診察で緑内障による視野狭窄が進んでいることを告げます。
 
「だいぶ前から自覚症状あったんじゃないですか?」
「さあ、仕事で年がら年中飲んでるもんだから酔ってんのかなあって」
「まずは、目薬で眼圧を調整しますが、目薬をいくつか使っても眼圧が下がらない場合は手術で眼圧を下げることになります」
「手術だなんて大げさだねえ」
 
後ろで見ていた美都は、母の言動に文句を言いました。
 
「お母さんが病院に行かずにほったらかしてたからでしょう。娘が眼科に勤めてるのに。あたしもう恥ずかしい」
「それが病人に言うことかい? 先生、この子ご迷惑かけてませんか?」
「先生、もういいからすぐ手術しちゃってください。どうせグズグズ言って逃げ回るんだから」
「冗談じゃない」
「だって!」
 
親子喧嘩を見て、花山先生は二人をランチに誘いました。
病院の近くのファミレスで3人は談笑します。
 
「その煮物がまた美味しくて。お店出てくるように上品な味で、あんな夫なら私もほしいくらい」
 
美都の母は、涼太のことを絶賛していました。
 
「三好ちゃんの旦那さん、そんなに良い人してたらどこかで反動出るんじゃない。真面目な男が弾けると面倒くさいよお」
 
涼太を心配する花山ですが、美都は取り合いません。
 
「うちの夫は普通の良い人ですから。先生みたいに遊んでる人とは違うんです」
「え、俺、真面目です」
 
美都の母はすかさず花山の離婚歴にふれます。
 
「でも、バツ三つ、ついてんですよね?」
「ですねえ」
 
美都の母と花山は笑いました。
 
「でも、羨ましい。私なんか一度も結婚できないのに3回も結婚てすごい才能ですよ」
「毎回、運命の人だって思えるんですか?」
 
まだ運命に執着する美都を母は見つめました。
 
「運命の人かはわからないけど、信じてるかな。この人だけだって」
「信じられなくなると別れちゃうんですか?」
 
興味津々に問う美都の母を見て花山は笑いました。
 
「えぐりますね」
「結婚って何がそんなにいいんですか?」
「悪口を言えるとこですかね。だって他人には人の悪ぐちは言えないでしょ。でも、夫婦なら言える。憎しみ、怒り、嫉妬。そういう心の黒いところを見せあえるのはいいとこですかね」
「私、初めて結婚してみたいと思えた」
 
花山の結婚観に美都は疑問を感じます。
 
「そんなことですか。結婚の良さ」
「まあ、俺普通じゃないからね」
 
食事を終え、お店を去るときに花山先生は「お母さん、ときどき僕とランチデートしませんか? ついでに診察もしますから」と美都の母を誘いました。去っていく先生を見つつ、美都の母はつぶやきます。
 
「真面目な先生だね」
「真面目? そういうわけじゃーー」
「まだまだ青いね、あんたは」
 
そのまま、美都の母は横浜の自宅に帰っていきました。美都の母はタクシーに乗る際、「涼太さんによろしく。涼太さんは本当に優しくて良い人で、怖い人かもしれないよ」と告げるのでした。
 
 
昼休みに涼太のSNSを眺めながら、美都は夫について考えていました。
 
(涼ちゃんは普通の人だ。普通のすごく良い人。だから、誰かを憎んだり、嫌ったり、怒ったりする姿を見せない。毎日、幸せを探す涼ちゃんは良い人だけど、本当の話ができない)
 
美都は自分の黒い姿を涼太に晒すことができないので、心から本音で話すことができません。しかし、美都は有島にはすべてをさらけ出すことができるのです。なぜなら、何を言っても有島は美都をただ抱きしめるからでした。
 
その夜、美都は涼太と二人でテレビを見ながら過ごしていました。
 
「なんだかお母さんいないと静かだね」
「ねえ、涼ちゃん」
「うーん?」
「私に怒って良いんだよ?」
 
涼太は一瞬固まりました。
 
「何のこと?」
「お母さんのこと」
「なんだーー」
「本当は嫌だったでしょ。あんな長いこと義理の母親と同居なんて。気を使うし、面倒だし。あたしだったら嫌だもん。あ、ごめん」
「全然。だって言い出したのは僕だし。なんで急に?」
「いや、涼ちゃんの怒ったとこ見たことないなって。私たちケンカらしいケンカもしたことないしさ」
「ケンカしなくて済むなら、そっちのほうがいいでしょ」
 
涼太は立ち上がり、キッチンに行きます。
 
「でも、涼ちゃんだって人間なんだから頭にくることくらいあるでしょ」
「あるよーー」
「じゃあ、なんで怒んないの? 夫婦なんだからもっと心の黒ーいところーー」
「黒ーいところって、みっちゃんは何?」
 
涼太は彼女を後ろから怖い顔で見つめ続けました。
 
「それはまあ、すぐにはわかんないけど、うーん。なんか悪口とか」
「そんなこと言っても何も解決しないし。人を憎むのは疲れるからいいよ」
 
(でも、きれい事ばかりでも疲れる。疲れるよね、普通)
 
涼太はリビングに彼女を残し、寝室に行きました。そして、カレンダーに結婚記念日と美都の誕生日を書き込んでいるのでした。
 
 
ある日の夜。美都は有島といつものバーで飲んでいます。
 
「もう結局ここだし」
「ごめんて」
「あのさ、すぐ近くに新しいイタリアンの美味しそうなお店できてたの見つけたの。今度そこにさーー」
「日曜に戻ってくるんだよね、うちのがーーだから、今までみたいなペースでは会えなくなるかも」
「でも、会えるんだよね?」
 
有島は笑顔でうなずきました。
 
「そっか。ならその前にもう一回くらい旅行とか行きたかったな。まあ、またそういうタイミングもあるか」
「しばらくは無理」
「だよね。でも、海とか水族館とか行きたかったなあ」
「うわあ、ベタだなあ」
「あのね、女の子はなんだかんだ言って結局ベタに弱ものなの。夜景とか花束とか、サプライズプレゼントとかーーねえ、バーテンさん」
 
「そうかもしれませんね」とバーテンは答えました。
 
「久しぶりに横浜の方とか行きたかったなあ。中華街とか港の見える丘公園とかーー」
「みっちゃん」
「あのね、中学の方もだいぶ変わったんだよ」
「みっちゃんよ」
「もう、やめてよ、その呼び方」
「美都、趣味を持て」
「え!?」
「俺に会えないときようにさ。なんかないの?」
「柴犬鑑賞? なに、有島くんはなんかあるの? 趣味」
「あるよ、美都。だから、美都。俺の趣味。いい趣味でしょ」
 
そういう有島のことを美都はもっと好きになるのでした。
 
日曜、有島家ではやっと我が子をつれて麗華がアパートに帰ってきました。帰ってきた日、隣人の横山さんは麗華に声をかけます。
 
「有島さん!」
「横山さん」
「里帰りから戻ったんですか! ご主人喜んでるでしょ。よく奥さんと電話しながら夜帰ってきてましたもんね。本当に仲いいんだなって。どっか美味しいお店食べに行くんですか? こないだ話してたの聞こえちゃって」
「ああ、まあ」
「いいなあ。あとで赤ちゃんのお顔見に行っていいですか?」
「いまちょっと寝そうなので、また明日」
「じゃあ、また明日のお昼過ぎにお邪魔しますね」
 
横山は有島が美都と電話しながらアパートに帰ってくる姿を見かけていたのです。
麗華は話を終えるとアパートに入りました。有島は麗華に聞きます。
 
「おかえり! さっきの人知り合い?」
「引っ越してきた横山さん。一回ちょっと立ち話しただけなんだけどね」
「ちょっと面倒そうだな」
「そんなことーーあるかな」
 
 
上の空の日々と陶芸教室
午後、会社から帰ろうとする涼太ですが、空はあいにくの雨でした。
深いため息をついて、とぼとぼと帰宅する涼太に傘はありません。
 
アパートでは先に帰宅した美都が嬉しそうに有島の「じゃ明日」というメッセージを見ていました。
 
「ただいまあ」
「おかえりい」
「あれ、降ってたの? 傘はなかった?」
「でも、小雨だったから。みっちゃん早かったんだね」
「うん。あ、ご飯、温めといたよ。っていても昨日作ってくれたスープなんだけど。ごめん、お腹空いて先食べちゃったの。これね、チーズ入れたらすっごく美味しくて。たぶん、チーズもっといっぱい入れて、ご飯もいれてリゾットにしたらチョー美味しいよ。絶対! しちゃう? しちゃうう? やってあげる」
「チーズか、カロリーオーバーだな」
「えーこれぐらい大丈夫だよ」
「楽しそうだね。なんかあった?」
 
涼太の顔は悲しみと怒りの入り混じったような複雑なものです。
 
「ううん、スープが激旨だったから!」
「そっかーー」
 
美都の最近の機嫌は、有島と会えるかどうかで決まっていました。彼と会えるだけで美都の気分は最高潮で、すべてが楽しいのです。しかし、有島から「いま小児救急病院。亜胡が高熱。明日微妙」とメッセージが来ると元気は最低まで落ちてしまうのでした。
 
「あっつ! 美味しい! 熱いけど美味しいね」
 
美都が仕上げたリゾットを食べて涼太は感想を言いますが、美都は上の空で宙を見つめていました。
 
「みっちゃん? 美味しいね」
「ああ、うん」
 
涼太と会話していても、彼女の心はそこにはありませんでした。
 
 
翌日の昼休み、美都は受付の同僚である森留美に趣味について聞いていました。
 
「なにかいい趣味ないかなあ」
「んー趣味?」
「うん、森ちゃんなんかやってる?」
「あー、陶芸」
「陶芸? あのクルクル回ってるやつ?」
「そう。面白いよ。難しいんだけどさ。なんか、無心になれるっていうか。自分のイメージが形になっていく感じで」
「へえ」
「もう、全然興味ないでしょ」
「あはは、うん。え、森ちゃんアート系得意なの?」
「それはないけどーー」
「先生がかっこいいんだ」
「それはある!」
「私はそういうの期待してないんだよね」
「出た、既婚者の余裕」
 
美都が趣味を持ちたい理由は不倫の合間の息抜きです。なので、森とは少し話がすれ違ってしまいました。その日の仕事帰り、美都は陶芸教室の体験に立ち寄ってみました。
 
帰宅後、夕食の席で美都は陶芸教室について涼太に報告します。
 
「陶芸教室にね、通おうと思ってて」
「陶芸? そういうの好きだったっけ?」
「うーん、森ちゃんが行ってて面白そうだなって思って」
「いいんじゃない。じゃあ、カレー皿作ってよ」
「ああ、もっとおっきいのが良いもんね。涼ちゃんそれだとちょっとちっちゃいんじゃない」
「みっちゃんは僕のこと太らせたいの? 柴犬がいいんでしょ?」
「うーん、涼ちゃんなら巨大化して秋田犬になっても可愛いかもって思い直したの」
「秋田犬ってもともと熊狩の犬だったんだよ」
「忠犬ハチ公も秋田犬だよ」
 
その後、美都はちゃんと陶芸教室に通い出しました。
無心で粘土を触り、ろくろを回して皿を作り上げていきます。
 
(運命、占い師、二番目に好きな人、普通の人、ウチの、カレー皿、秋田犬、巨大化、柴犬くんーー)
 
ろくろを回しつつ考えていた美都は、ふと「柴犬くん」という言葉に引っかかりました。
 
(ん? あたし、涼ちゃんに柴犬って言ったことあったっけ?)
 
「あったか」
 
そう独り言をつぶやいたとき、失敗して粘土は崩れてしまいました。それでも、できあがったカレー皿は夕食時に涼太によって使われていました。
 
「もう無理して使わなくていいってば」
「素朴でいいって言ってるんだよ。もっと作ってよ」
「じゃあ、何が良い?」
「そうだな。うちにないのがーーそば猪口!」
「そば猪口? うーん、じゃあ検討します」
「うん、あ、みっちゃん19日どうする?」
「あ、結婚記念日!」
「と、みっちゃんの誕生日。リクエストある?」
「じゃあ、素敵なお店と美味しいシャンパン」
「うん、プレゼントは?」
「じゃあ、涼ちゃんのおまかせで」
「了解しました」
「楽しみだなあ」
「悩むなあ」
 
涼太との日々も彼女にとってそれなりに幸せなのでした。
美都は趣味ができたことを有島に伝えましたが、何の趣味なのかはクイズにしていました。しかし、なかなか有島は彼女の趣味を当てられずにいます。
 
 
陶芸教室に通いだして数日。陶芸教室でそば猪口を作る美都は、陶芸教室で仲良くなった佐藤さんと話をします。
 
「それ、そば猪口?」
「はい、夫からのリクエストで」
「へえ、仲いいんだね」
「結婚記念日に渡そうかなって」
「へえ、うちはもうそういうのしなくなっちゃったな。結婚記念日なんて、ウチの旦那なんか覚えてないんじゃないかな」
「佐藤さん、結婚して何年目ですか?」
「14、5年とか? それくらいになっちゃうとね、そんなもんだよ、普通」
「普通?」
「愛とか恋とかさ、どっかいっちゃってもなんとなーく惰性で一緒にいる夫婦がほとんどじゃない。で、こうやって趣味で息抜きしてさ」
「息抜き。そっか、趣味が息抜き」
「そ、家庭の平和のため。お気楽な趣味で息抜き」
「家庭の平和のためーー」
 
そのとき、陶芸教室に有島麗華が作品をとりに来ました。
 
「お久しぶりだねえ、有島さん。産まれたんだ!」
「作品置きっぱなしのまま里帰りしたのが気になってて」
 
教室の先生と麗華の会話で美都は彼女に気づきました。
 
「いやいや、どれだっけ?」
「香台なんですけどーー」
 
美都は彼女を見つめたまま静止しました。
そして彼女にそっと近づき、赤ちゃんを見つめました。
 
「可愛いですね」
 
美都はそのまま泥のついた手で赤ちゃんに触れようとします。
慌てて抱き上げた麗華に美都は問いかけました。
 
「お父さん似ですか?」
「あ、はい」
「女の子はお父さんに似ると良いっていいますよね」
「あ、そうですね」
 
先生と麗華は教室の奥に入っていきました。美都は有島からの「趣味いい加減教えろよ。もしかして気功とかスピ系?」というメッセージに返答します。
「ブー!答えは陶芸。有島くんよかったね。私に趣味ができて」
 
 
ある日の夜、いつものバーで有島と美都は会っていました。
有島はチャーガティーを頼みます。チャーガティーは有島が早く帰りたいという意思表示で頼むお茶でした。
 
「今日はどれくらい?」
「ギリ二時間だな」
「えー」
「ごめん。子どもがまた熱で、ウチのにも感染っちゃったみたいで。だから、早く帰らせて」
「帰らせてって私だけが会いたいみたいに」
 
有島は微笑むと美都の二の腕を揉みます。
 
「気持ちい」
「やめてよお」
「趣味だからあ」
「ねえ、奥さんの趣味ってなあに?」
「えーと、子育て?」
「そんなわけないじゃん。趣味ってこう、もっと気楽な息抜きでしょ」
「陶芸もやってたみたいだな、前に」
「え、そうなんだ。なんで言ってくれなかったの?」
「もうやめたみたいだし。うちにもあるよ、作ったやつ」
「ふーん、じゃあ、今度それ写メして」
 
バーでは他のカップルがサプライズケーキでお祝いしていました。
 
「そういえば、美都の誕生日っていつだっけ?」
「19日」
「今度の? なんでいわないの?」
「だって、有島くんなんかいろいろ忙しそうじゃん」
 
その後、バーを出て二人で帰る美都と有島の姿を涼太の同僚である小田原は偶然見かけてしまいました。
 
 
忘れられない記念日
翌日、有島からの「19日お祝いしよっか」というメッセージで美都はニヤニヤしていました。「結婚記念日と一緒なんで前倒しで1つ」と美都は返答します。
 
夜、誕生日を前倒しで祝ってもらえることを美都は嘘の予定で涼太に報告していました。
 
「それでね、陶芸教室の人たちが18日に誕生日前祝いしてくれることになったんだあ」
「へー良かったね。二連チャンか。で、陶芸の誰々さん?」
「えーと、佐藤さんと中山さんと、あと小宮山さんも来るかな」
「ずいぶん仲良くなったね。珍しい。みんな主婦なの?」
「あーうん、たぶん。あのその佐藤さんって人と特に気があって前に話した30代の人」
「ああ、最近よく連絡してるのはその人かあ。子どもは? ずっと主婦なの? そういえば、香子さんは元気? 最近は話を聞かないけど」
 
止まることのない質問に美都は少し困惑します。
 
「涼ちゃんどうしたの?」
「え? なんだか楽しそうだなあと思って」
 
 
18日の朝、身支度をする美都の姿を涼太は悲しそうにただ見つめていました。そして夜、彼女は落ち着いたシックなお店で一人、有島を待っていました。しかし、彼は現れず、電話がきます。
 
「ごめん。行けなくなった。本当にごめん。子どもがすごい熱で」
「ちょっと待ってよ。私もうお店にいるんだよ」
「ああ、ごめん。だから、別な日にまた穴埋めするから」
「でも、だからって私こんな早く帰れないし、今更ーー危ないの?」
「え?」
「子ども」
「そんなんじゃないけど、たぶん」
「だったら、どうせ仕事とか飲み会とか嘘ついて抜け出すつもりだったんでしょ。重病じゃないなら、有島くんがついてたって変わらないよ、きっと」
「美都、もしいまそこに行けたとしても、今日お前のこと心から祝えない」
「ごめん。ごめんね、有島くん」
「じゃ、また」
 
そのまま美都は一人お店に取り残されたのでした。
その頃、涼太は仕事を終えて19日のために買い物に行こうとしていました。
ショッピングセンターで美都のためにプレゼントを選ぼうとカバンを見つめ続ける涼太ですが、買う素振りはありませんでした。
 
その帰り道、涼太は香子に会いました。
 
「香子さん」
「あ、こんばんは。お久しぶりです。今帰りですか?」
「ちょっと近くまで付き合いでね」
「そうですかーー」
「あ、香子さん体もういいの? しばらく調子悪かったって」
「ああ、まあ、一週間くらい前に良くなって」
「一週間前くらい大変だったんですね。随分前に美都から聞いたから」
「良くなったり、悪くなったりで働きすぎですかね」
「そっか。そういえば、温泉は楽しかったですか? あのチーズタルト、そんなに美味しかったんですか」
 
香子は美都の不倫旅行の口実にされていたことを思い出したのでした。
 
 
19日に美都と涼太は、素敵なお店で結婚記念日を祝っていました。
二人はシャンパンで乾杯します。
 
「僕たちの記念日に! おめでとう」
「おめでとう!」
「うーん、美味しい! 素敵なお店だね」
「みっちゃんこういうところ好きでしょ」
「さすが涼ちゃんよくわかってる。このグラスも薄いなあ。いまね、ビアマグ作ってるんだけど、縁を薄くするのすっごい難しいの」
「楽しみだなあ」
「今日、そば猪口とセットでプレゼントしようと思ってね。サプライズのつもりだったんだけど、間に合わなかった」
「みっちゃんらしい」
「ごめん。でも、頑張るからもうちょっと待って」
「ううん、ありがとう」
「涼ちゃんのプレゼントは何かなあ」
「うーん、まずは食べようか」
「そうだね」
 
二人は料理の美味しさに笑顔になりました。
 
「美味しい!」
「本当だ、美味しい。これソースなんだろう」
「わかんない。でも、美味しい」
 
美都は結婚してよかったのかもしれないと突然思いました。
 
(結婚して、やっぱりよかったのかも。悪口なんか言えなくても、有島くんと会えなくても、私が今笑ってられるのは、柴犬みたいに温かい涼ちゃんがいるからだ)
 
「今日、すごくきれいだね」
「え、何、どうしたの。急に」
「だって綺麗だから」
「そういうセリフは涼ちゃんには似合わないよ」
「なんで僕じゃだめなの?」
「そういうのはもっとキザな人が言うの」
「みっちゃんは最初から綺麗だったよ。僕にはとびっきり。ああ、運命の人だってーーありがとう、みっちゃん。僕と結婚してくれて。もしかしたら、ものすごく大好きな人じゃなかったかもしれないかもけど、No.1じゃなかったかもしれないけど」
「涼ちゃん何言ってるの?」
「二番目に好きな人と結婚するといいって言われたんだって。お母さんに聞いたんだ」
「涼ちゃん、それただの占い」
「知ってるよ。ただの占いだ」
 
そういうと、涼太はメガネを外して泣き出しました。
 
「大丈夫? 酔ってる?」
「大丈夫。ただ幸せなだけ。怖くてちゃんと確かめてないから。小心者の柴犬だからさ」
 
美都は涼太の言葉で固まりました。
 
「柴犬ーー」
「はい」
「て、あたし涼ちゃんに言ったことあった?」
「ないよ。携帯でしか。しかも、僕宛じゃない」
「携帯見たの? なんで?」
「君が名前を呼んだからだよ」
「名前?」
「僕の知らない名前をーー一応、履歴は消してみてるみたいだけど、だんだん油断するようになっちゃって。君は大胆でずさんで嘘が下手だ。知らなかった? でも、そうやって君の携帯を覗き見る自分の浅ましさにも君のズルさにも耐えられなくて、確かめるのはやめてたんだ。確かめなければ、僕は傷つかない」
「確かめるって何を?」
「いろいろあるよ。ときどき夜遅く帰るね。逆に早く帰ってぼんやりしたり。あ、そうだ。遅く帰る前の日は機嫌がいいし、次の日は優しい」
「昨日は陶芸教室の仲間と一緒だったんだよね。昨日のみっちゃんも綺麗だった。ネックレスがよく似合ってた。子どもなんかほしくないって怒ったこともあったよね。ずっといらないって」
「涼ちゃんーー」
「昨日、香子さんに会った。温泉に行ったときの話聞いたよ。いい友だちだね」
 
香子は涼太の詮索にちゃんと答えましたが、美都が不利になることやはっきりしたことは友だちとして何も言わなかったのでした。
 
「安心して。僕はまだ大丈夫だ。君が夜中に名前を呼んだ番号を僕の携帯に登録した。電話したら、どんな人間が出てくるんだろう。僕は確かめることができる。でも、かけない。聞いたら、知ったら、僕は自分がどうなるのか怖い」
 
涼太は目を赤くしてうつむきました。
 
「そ、そうだよね。怒るよね、普通。当然だよね」
「みっちゃん、僕はこのさきどうあろうと。今の君がどうあろうと、ずっと君を愛する。大丈夫なんだ。ずっと変わらず君を愛することができるよ。誓うよーーこれが僕のプレゼントです!」
 
涼太は満面の笑みでそう告げました。
第4話の感想はここをクリック
美都の浮気を知った涼太でしたが、変わらず美都のために料理をして仕事をして、ずっと美都のために生活していました。美都はそんなこととは知らずに禁断の恋へと邁進して何も見えていません。
 
美都の行動はあからさまで感情が丸わかりです。不倫でなければ、それが可愛らしいのかもしれません。しかし、途中からは涼太がひたすらにかわいそうで、美都の行動を見てるのが辛かったです。とうとう涼太は彼女にすべてを告げてしまいました。
 
これによって今後の二人の生活がどのように変化していくのか、次回が楽しみです。
<見逃し動画>第3話 「ヤバい夫の哀しみ全てがバレる夜」
 
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第3話の公式あらすじ

温泉旅行に行っていた美都(波瑠)と有島(鈴木伸之)。しかし、電話で子どもが生まれたことを知ると、有島は結婚していることを明かし、美都を残したまま帰ってしまう。
取り残された美都が、有島との再会は“運命”ではなかったことに落胆していると、母・悦子(麻生祐未)が階段から落ちて病院へ運ばれたと連絡が入る。
大慌てで母のもとへ向かう美都だったが、一足早く涼太(東出昌大)が病院にいる悦子を迎えに行っていた。そんな涼太は、体調を案じ、悦子の骨折が回復するまでマンションに一緒に住まないかと提案する。慌てる美都をよそに喜ぶ2人。しかし、母の体調が芳しくないことを知った美都は、いやいやながらも提案を受け入れる。
一方、有島は麗華(仲里依紗)と生まれたばかりの娘に付きっ切りで、美都からの着信を無視し続けていた。連絡がつかないことに苛立つ美都は、旅行土産をヤケ食いしていると、突然吐き気をもよおしトイレに駆け込んでしまう。その様子を見た涼太は美都が妊娠したのではないかと勘ぐる—
 
悦子と三人で暮らす日々の中で、涼太の優しさに罪悪感を感じ、涼太の同僚・小田原(山崎育三郎)を招き料理を振る舞うことを提案する美都。
これを機に有島との恋に終止符を打とうと、久々の有島からの誘いにも素っ気なく断り続けるが…。
 
<出典>あなたのことはそれほど公式

第3話のネタバレはここをクリック
前回、初恋の相手である有島光輝と一泊二日の温泉にいった渡辺美都。
しかし、有島に妻の実家から子どもが生まれたことを伝える連絡がきてしまい、二人の旅行は途中で終わってしまいます。しかも、有島が既婚者である事実を知り、美都も彼に自分が既婚者であることを伝えてしまったのです。それでも、二人の関係は終わりませんでした。
 
 
嘘の旅行とお天道様の罰
有島が妻の実家である所沢に帰った翌日。美都は旅館で一人朝食を食べていました。彼との再会が運命ではなかったことにショックを受けていると、美都に涼太から電話が来ます。
 
「もしもーし。涼ちゃんおはよう!」
 
共に旅行に来ていることになっている香子の存在を問われます。
 
「え、香子? ああ、うん、お風呂。そうまだね温泉入っててーーえ? お土産? 嘘、嬉しい」
 
帰る前に旅館で夫のためにお土産を選ぶ美都は、チーズタルトを買います。そんなとき、携帯に母から電話が入りました。しかし、出たのは母の近所の人でした。
 
「あ、みっちゃん? 隣の飯塚だけど、お母さんが意識不明なの」
 
美都の母は階段を踏み外して道で倒れていたのです。美都は慌てて病院に行くことになりました。しかし、一足遅く、美都の母は家族に付き添われて退院したあとでした。
 
 
美都が自宅につくと母と涼太がいました。
 
「ただいま!」 
「ああ、みっちゃん」
「おかえり」
「おかえりって!」
「良い部屋だねえ。日当たりもいいし」
「どういうこと?」
「大げさなんだよ。飯塚さん? コンビニの帰りに階段を踏み外して、ちょっと気絶してたみたいでさ」
「足は?」
「骨折。こればっかりは医者も養生するしかないってね。しくじったよ」
 
涼太が美都の母にお茶を持ってきながら言います。
 
「でも、運が良かったですよ。打ちどころ悪かったら危なかったって先生がーー」
「どうせ二日酔いでフラフラして踏み外したんでしょ。もういい加減に自分の歳を考えてよ。お母さんになんかあったらね、私の人生まで変わっちゃうんだから」
「ありがたいね。一応、あたしのこと面倒見る気があるんだ」
 
美都と涼太は寝室で母の病状について話をします。
 
「涼ちゃんごめんね。あの程度で済んでよかったよ」
「実はお義母さん、目が悪いみたい。緑内障?」
「緑内障?!」
「どうもそれで視野狭窄を起こしてて、階段を踏み外したんじゃないかって救急の先生が。でも、お義母さん平気だって言い張ってて。なんかわからないけど、隠したかったのかなって。眼科で一度ちゃんと見てもらったほうが良いって先生が言ってた。みっちゃんの病院に連れて行ってみたら?」
「うん、そうだね。本当にありがとう。ごめんね」
 
 
その夕方は夫婦で一緒に料理をしていました。
鍋の仕込みを手伝う美都に涼太は野菜の切り方を教えます。
 
「白菜は葉っぱと芯に分けてーー」
 
そんな二人を見ている美都の母。
 
「すいませんね。私が美都に料理を仕込まなかったから」
「いえ」
「仕込むような料理、お母さんだってできないでしょ」
「仕事して料理もしてくれる旦那なんて言うことなし。あんた本当に良い人捕まえたね」
「僕がみっちゃんを捕まえたんです。運命だって」
 
涼太の言葉に彼女は驚きました。美都は、今まで自分の存在が運命だとは思わなかったのです。
 
「あ、よかったらお義母さん、ここでしばらく一緒に暮らしませんか?」
「え!?」
「じゃあ、お言葉に甘えて。本当に優しい人だね、涼太さんは」
 
「ちょっと待ってよ」と慌てる美都。
涼太は温泉に一緒に行っていた香子を心配しました。
 
「あ、香子さんに連絡した? お義母さんのこと心配してるんじゃない?」
「ああ、うん」
「みっちゃん、香子さんと温泉に行ってたんです」
「ああ、そうだったの」
 
美都の母はうなずきました。
「写真は?」
「あ、撮ってない」
 
涼太に写真について問われると美都の目は泳ぎます。
 
「一枚も?」
「うん、香子がずっと温泉に入っててすっぴんだから嫌だって。で、帰りはお母さんのことでバタバタしたし」
「そっか」
「みっちゃん、心配して疲れたでしょ。あと僕がやっとくから、先お風呂入ってて」
「ありがとう。ごめんね」
 
その頃、有島は病院で家族と生まれたばかりの我が子を眺めていました。
 
「母親として娘に望むのは、『ありがとう』と『ごめんなさい』がちゃんと言える子に育ってくれることくらい。大それた願いを名前に背負わせたくないの」
「でもさ、亜胡ってちょっと地味じゃない? 麗華がつけたんでしょ。光輝くんはいいの?」
「亜胡って響き、可愛くて俺は好きです。ただ実感ないなあ」
 
新生児室から麗華の病室に子どもが移ったことで有島は我が子を初めて抱きました。
 
「怖いとか言って、一度も抱っこしてないでしょ。だから、実感できないの」
 
そっと我が子を抱いた有島は名前を呼び、笑顔です。その際も彼のポケットにある携帯は鳴り続けます。
 
 
後日、美都は親友の香子とカフェで会っていました。
温泉のお土産を香子に渡すためです。チーズケーキを差し出しても香子は受け取りません。
 
「香子、もしなんだけど、もし涼ちゃんに会ったらーー」
「受け取れない。このあと、どうすんの?」
「子どもがね」
「え?」
「子どもがいるみたいなの、有島くんに」
「有島、結婚してたの?」
「旅行の途中で子ども生まれるってなって帰っちゃって」
「なにそれ、最低。それってあれでしょ。奥さんの出産里帰り中にちょっと羽伸ばしてみましたってやつでしょ。よくあるパターンじゃん。でも、早くわかってよかったよ。最低な男だって。だって踏ん切りつけやすいし」
「最低なんだけど、まだ嫌いにはなれなくてーー」
「美都ーーあんた、それじゃ動物だよ?」
「動物か。優しいから良い人だから好きになる方が、心に餌もらってなついてるみたいで動物っぽくない?」
「いい? 現実は子どもが生まれる間のお手軽な浮気相手が美都だった、それだけ。これで終わりにしなよ」
「子どもかーー」
 
美都は家に帰ってからも有り島のことが気になり、子どもの名前について考え続けていました。有島の子どものことが頭から離れなくなり、チーズケーキを食べ過ぎたことで吐いてしまいます。
 
「みっちゃんーー吐いてたの?」
「ああ、ちょっとね」
「本当に? まさかーみっちゃん、もしかして子どもじゃ」
 
帰ってきた涼太に子どもではないかと心配され、美都は彼の手を振り払ってしまいます。
 
「子どもなんかじゃないから!」
 
そんな美都の態度に涼太も驚きます。
 
「ごめん。そういうことじゃなくて、食べ過ぎちゃっただけ」
「そっか。それならいいんだけど」
「なんか、お腹空いちゃってーーごめんね、変な心配かけちゃって」
「心配ってのとも違うけど」
 
その日の夕飯、美都は涼太の作るご飯にまったく手を付けられませんでした。
 
「みっちゃん、無理して食べなくていいからね」
「あ、うん、ごめんね」
「このスープだけでも飲んで。胃に優しいから」
 
いつも感謝と謝罪ばかりしている自分を考えて美都は彼への罪悪感に苛まれました。
 
「あ、そうだ。今日、小田原がこの前、出張付き合ったお礼にってワインくれたんだ」
「それすごく高いやつじゃない。私でも知ってるよ」
 
ワインを見た美都の母は驚きました。
 
「え、そうなの?」
「かえって悪いことしちゃったな。お返しするのも変だし。今度寿司でも奢るか」
「じゃあ、今度うちに招待したら? このワインに合う料理を私が作るよ」
「みっちゃんが本当に?」
「何?」
 
美都の母と涼太はそんな彼女の発言に声を揃えて驚きました。
 
「「できるの?」」
「ちょっとお」
「あ、いやいや、そういうんじゃなくて、そんなに無理しなくていいよ」
「そうだよ。下手したら、恥かくのは涼太さんだよ」
「私だってやるときはやります。涼ちゃんのためにやりたいの」
「みっちゃんーー」
 
いつになく涼太のために頑張ろうとする彼女の姿に涼太は感動しました。スイーツ好きな小田原のためにケーキを焼いて、水曜日に料理をふるまう予定になりました。
 
「じゃあ、できれば水曜日で聞いてみて」
「うん、わかった」
 
ベッドにつく頃、美都の携帯には有島からメッセージが来ていました。それは東京に戻ってきたことと来週いつ会えるかという内容でした。しかし、「来週は忙しくて無理そう」と美都は断ります。
 
深夜、いつものように美都の携帯をチェックしようと手にとった涼太ですが、彼女が自分のために料理をすることを思い、彼女を信じようとチェックを我慢します。
 
恋愛感情を忘れて、有島と会うことをやめようと考える美都のもとに有島は電話をかけてきてしまいます。
 
「久しぶり」
「本当に久しぶり。あそうですね、はい。その件に関しましては」
「あ、いまマズい感じ?」
「そうですね。ええ、はい。ですので、それは難しいですね。はい、結構です。失礼します」
 
母親もいる手前、美都は事務的な会話で電話を切り上げました。
 
 
仮面夫婦と妻の罪滅ぼし
水曜日。涼太を送り出し、美都は部屋の掃除をします。母に少しは手伝うように声をかけました。
 
「やだよ、娘の罪滅ぼしを手伝うなんて。ああ、病院遅れちゃう。下までお願い」
 
骨折の通院で母は病院に行きます。
マンションの下まで母を送る美都は心配して声をかけました。
 
「お母さん、今日ついでに眼科行ってちゃんと診てもらいな。目のこと隠したいのはわかるけど、私に迷惑かけたくないならちゃんと病院行って」
「腐っても親子だね。他人に世話になると居心地悪い性分。あ、でも涼太さんは家族だった」
「そうだけど」
「まあ、ああいう優しさはしんどいときもあるけど、今晩しっかり良い妻やることだね。涼太さんのためにも、あんたのためにも」
 
 
今夜の食事のために準備をしようとする美都でしたが、そんな彼女に有島から「今日、ランチで外出られない? 帝東ホテルのレストランでご馳走するから。この前のお詫びさせてください」とメッセージが来てしまいます。
 
(ランチだけなら、3時まで戻れば夕飯に間に合う。お詫びだからしょうがないもんね)
 
そんな小さな理由をつけて、美都は彼に会いに行ってしまうのでした。
レストランにつくと有島がいました。笑顔で手をふる彼に美都は笑顔です。
 
「うーん! 美味い! 焼き肉もいいけど、ローストビーフもたまにはいいな。昔から、このお店一度来てみたかったんだよね」
「自分が食べたかったからきたの? お詫びって言ってたくせに」
「両方。お詫びで贅沢。仕事が休みで良かったよ。ゆっくりできるんだろう?」
「少しはね。有島くんは?」
「俺は午後半休にした。平日の昼から酒って背徳感がまたーー」
「背徳感ーー」
 
二人はローストビーフの美味しさに微笑みました。
 
「でも、こんな高いところ嬉しい。ありがとう」
「ゴルフコンペの景品だから」
「へ?」
「仕事のゴルフがめちゃくちゃ調子よくて、食事券」
「なんだ、もう。がっかり」
 
しかし、有島は食事の会計時に出産祝いの入ったのし袋からお金を出すのでした。
 
 
これで有島との不倫関係は終わりと心に決める美都は、レストランのあるホテルを出ようと有島と二人でエレベーターを待っていました。
 
「子ども無事産まれたの?」
「うん、病院ついたらもう生まれてた。予定日より2週間早かったんだけど、超安産でさ」
「男の子? 女の子?」
「女の子」
 
有島は満面の笑みで赤ちゃんの写真を美都に見せました。
 
「ああ、軽く潰れそう」
「え?」
「ううん、どっち似? 奥さん何系?」
「見た目的には小動物系?」
「芸能人で言ったら何系? ってまあいいや」
「じゃあ、美都の旦那は何系?」
「キャラで言ったら柴犬系?」
 
美都は彼に携帯を返します。
 
「他人の子どもなんてちっとも可愛くない」
 
やって来たエレベーターに乗ったとたん、彼は美都を抱きしめました。
そして、そのままホテルの客室へのボタンを押します。
 
「お詫び」
 
彼の振る舞いに美都の恋愛感情は再加熱。
 
「好き」
 
状況に流された美都はそのまま昼間から彼と関係を持ってしまいます。
気づけば時刻はすでに4時半を過ぎていました。
 
「嘘、もうこんな時間」
「美都?」
「今日、夫の同僚が来るの。料理作らなきゃ」
「それはマズいな」
 
もう料理をする時間はありません。慌ててホテルを出て、デパートでたくさんの高級お惣菜を購入しました。
 
帰宅すると家にいないはずの母がいます。
 
「お母さん、今日出かけてるんじゃなかったの?」
「常連さんの奥さんが急病とかで飲み会が流れたの。それよりあんた、今晩ーー」
「黙ってて、お願い。それ以外何も言わないから」
「グラスだしな。食器並べるくらいしてあげるから」
「いい」
「間に合わないよ!」
 
母の叱咤に美都は慌てて食器を取り出しました。そのとき、涼太から最寄り駅についたと連絡が来てしまいます。
 
 
嘘のディナーと柴犬の痛み
ディナーの準備は形だけはなんとか整いました。しかし、ゴミ箱にはたくさんのお惣菜パックが。玄関にスリッパを並べ、あとは涼太たちが帰ってくるのを待つだけです。涼太と小田原は準備が終わったそのとき、ちょうど帰宅しました。
 
「ただいま!」
「お邪魔します!」
「いらっしゃいませ。どうぞ」
 
母も含め、四人で食事と談笑を楽しんでいます。
 
「じゃあ、小田原さんってちょっとした有名人じゃないですか」
「お母さん、ちょっとしたってやめて」
 
小田原はインテリアデザイナーとして有名な人物なのです。
 
「あ、二人はなんで仲良くなったんですか?」
 
美都は小田原と涼太の馴れ初めについてたずねました。
 
「なんか危うくてほっとけなかったんですよ、こいつ」
「え、涼ちゃんがですか? 逆じゃなくて?」
 
小田原は黙りました。涼太は少し笑います。
 
「あ、すいません」
 
失言に気づいた美都は慌てて謝りました。
 
「ううん」
「そうだよ。世話してるのは俺のほうだろ」
「そういうことじゃなくて」
 
オーブンレンジが鳴る音で涼太が立ち上がろうとしました。それを引き止める美都。
 
「あ、今日はいいの。座ってて」
 
鯛の塩釜焼きが成功し、皆が歓声をあげました。
 
「奥さんすごいですね。普段、料理は渡辺が作ってるって聞いてたからてっきり料理出来ないのかと思ってました」
「俺もびっくりした」
「私もびっくり」
「やればできるって言ったでしょ」
 
あまりに出来が良かったので、彼女自身も少し驚くのでした。
 
「二人はさ、結婚の決め手はなんだったの? 顔が好みとか、価値観の一致とか、お金とか。今後の参考に聞かせてよ」
 
小田原は聞きました。
美都の母も興味津々です
 
「私も聞きたい」
 
美都は占いで結婚を決心したのですが、それは言えないので理由に悩みます。
 
「みっちゃんといると自分が良い人に思えてくるんだよね。みっちゃんは素直にありがとうとか口に出してくれるから」
「それは涼ちゃんが本当に良い人だから。そう、良い人だから、だから結婚しました」
「ふーん、つまんない」
「本当。他にないの?」
「あとは、運命?」
「それも参考になんないな」
「奥さんは?」
「あ、私は手、手かな。涼ちゃん手がすっごくきれいなんですよ」
「そうかな」
「意外と結婚てそんなもんなんですかね」
 
食事は無事に終了したのですが、一番のメインだったスイーツを忘れていた美都。涼太にデザートを促されますが、何もないことに焦ります。しかし、すかさず美都の母はフォローしました。
 
「美都、冷蔵庫のそろそろ食べさせてよ。冷蔵庫、野菜室になんか作ってあったでしょ」
「え、ああ!」
 
冷蔵庫を見るとそこには見覚えのない乳白色のババロアがあるのでした。
 
「美味しい! もしかして、甘酒がベースですか?」
 
美味しさに驚き、小田原は美都に作り方を問います。
 
「甘酒のババロアってみっちゃんどうやって作ったの?」
「えっと、これは」
「だめ、三好家の秘伝の味だから」
「そうだったんですか」
「教えちゃったら涼太さん作っちゃうでしょ。これが食べたくなったら、あたしの出番。手料理が女には一つくらいないとね」
 
 
無事にすべての食事を終えて、小田原は帰宅します。
 
「今日は本当にお忙しいのにありがとうございました」
「いや、こちらこそどれも本当に美味しかったです」
「あ、ジャケット忘れた」
 
小田原は食卓にジャケットを忘れたのです。
涼太は忘れ物のジャケットを取りに戻っていきました。
 
「楽しかったです。また来てもいいですか?」
 
小田原の申し出に引きつった笑顔の美都。
 
「もちろん」
「本当に嘘が下手な人ですね」
「ふ、新婚家庭にそんなお邪魔しませんよ」
 
涼太からジャケットを受け取ると小田原はお辞儀をしました。
 
「それじゃあ、お邪魔しました」
「じゃあな、気をつけて」
 
小田原が帰ると、涼太は美都の手をとって感謝を伝えます。
 
「みっちゃん、ありがとう」
「私大丈夫だったかな?」
「うん、完璧。僕も楽しかった」
「うん、よかった」
 
やっと一息ついた美都は母にデザートのことでお礼を言いました。
 
「ああ、疲れた。あ、ありがとう。デザート、助かった」
「昔、出入りの酒屋の若旦那と付き合ってたことあったでしょ。あんたが高校のときくらい。そんとき教わったんだ。火を使わないからあたしにもできるだろって」
「覚えてないよ」
「あんたは、せめてバレないようにしなさいよ」
「お母さん何言ってんの」
 
そのとき、美都の携帯がなりました。母はため息をつきます。
メッセージは「大丈夫?」と美都を心配する有島からのものでした。
「大丈夫。なんとか間に合って柴犬くんも美味しそうに食べてくれた。今日はありがとう」
 
 
その頃の有島は、妻の実家で麗華と我が子と一緒でした。
 
「どうしたの? 平日なのにわざわざ所沢まで」
「早く仕事が終わったから」
「あっこしゃん、会いたかったよお」
 
娘を溺愛する有島は、我が子の寝顔をみて幸せそうです。
 
「そうだ。お母さんから出産祝いもらったでしょ。内祝いの準備そろそろ始めなきゃだし、どうしよっか内祝い」
「あれね、内3万飲んで使ってしまいました。ごめんなさい」
「生活費足りなかった?」
「そうじゃないけど、ちょっと浮かれちゃって」
「浮かれちゃって? はあ、まったくだめなお父さんですねえ」
「あっこしゃん、だめなお父さん許して」
 
麗華と有島は我が子に話しかけます。
 
「あ、そうだ。この前病院行ったときに卵巣腫瘍が見つかったの」
「え!?」
「良性だからとっちゃえば大丈夫なんだけどね」
「とるって卵巣を?」
「うん、妊娠中から大きくなってて疑いはあったんだけど、まあ、片方だけだし、今すぐ手術ってわけでもないからさ」
「お前、一人で病院行ったの? 一人で検査うけて、一人で結果聞いたの?」
「時々デリカシーなくて、単純ですぐに浮かれて調子乗るくせに、見えないそういうところに気づいてくれるところが好きよ」
「今褒められた? けなされた?」
 
 
渡辺家では疲れ果てた美都がソファーで眠り込んでいました。
お風呂から上がった涼太はそっと彼女にブランケットをかけます。そして、床に落ちてしまっている彼女の携帯を拾い上げると勝手に点灯した携帯画面には有島と美都の最後のメッセージが映っていたのです。
 
「大丈夫。なんとか間に合って柴犬くんも美味しそうに食べてくれた。今日はありがとう」
 
あまりのことに目を見開いたまま涼太は固まりました。
その夜、眠れない涼太はキッチンで一人、水を飲みます。冷蔵庫には残ったババロアがありました。それを涼太はゴミ箱に捨てるのでした。
 
 
後日、美都は有島から所沢名物のうどんを頂きました。
夜にそれを涼太と二人で食べる美都。
 
「みっちゃんの友だちのくれたうどん美味しいね」
「うん」
「所沢ってうどんが名物なんだね。知らなかった。お母さんにもとっといてあげようか」
「いいよ。常連さんと飲んでくるって言ってたし、全部食べちゃお」
「こんなに食べたら、柴犬から秋田犬になっちゃうよ」
「秋田犬ってうどん好きなの?」
「そんなわけ」
「あ、巨大化しちゃうってことね」
「そうそう」
「それはちょっと困るな」
 
涼太はテーブルの下で怒りに拳を握りしめました。
 
「みっちゃん、子どもほしくない?」
「今はいらないかな。まだ働きたいし」
「そっか。わかった。みっちゃんまだ若いしね」
 
美都は少し思案して答えました。
 
「あたし、子どもほしくない」
「うん、いいよ。だから、今はまだーー」
「今じゃなくて、ずっと。いらない」
 
美都の宣言に一瞬だけ涼太は真顔になりました。
 
「じゃあ、二人で楽しく暮らそうね」
 
美都は子どもよりまだ柴犬のほうがずっと可愛いと思うのでした。
第3話の感想はここをクリック
自分の初恋の人が既婚者であることを知り、美都の初不倫は終わりを迎えるのかと思われましたが、そんなことはまったくありませんでした。
 
関係を終わらせようと努力する彼女へ連絡をしてしまう有島の浅ましさに腸が煮えくり返ります。子どもが生まれたのにも関わらず、その出産祝いまで不倫の食事代にしてしまうところは本当に怒りを感じました。
 
このままではどちらの夫婦も幸せになれない未来しかないように思えます。不倫の事実を再認識して、美都が夫の大切さに気づいてくれることを願いましょう。どんどん狂っていく涼太の行動から目が離せません。
<見逃し動画>第2話 「暴走する春の恋!背徳の温泉旅行」
 
TVerでの無料配信は終了しました
 
第2話の公式あらすじ

幸せだが物足りない結婚生活を送っていた美都(波瑠)と、妊娠中の麗華(仲里依紗)を妻にもつ有島(鈴木伸之)。
ふたりは互いに結婚していることを隠したまま、一線を越えてしまう。有島との再会を“運命”だと強く感じた美都は、うっとり浮かれて上機嫌でいた。
恋にのめりこんでいく美都は、夫・涼太(東出昌大)に小さな嘘を積み重ね、自分の携帯電話を涼太が執拗にチェックしていることにも気付かない。
そんな美都に相変わらず優しい顔を崩さない涼太だが疑心は募り、美都の母・悦子(麻生祐未)が経営するスナック店を訪れる。
そこで、美都が占い師から「二番目に好きな人と結婚したほうがいい」と言われたことがあるという話を聞き出すと、笑い飛ばしながらも顔を曇らせるのだった。
 
一方、有島は里帰り出産の準備をする麗華を気遣い、はたから見れば仲睦まじい夫婦の優しい夫でいた。
里帰りの朝に居合わせた隣人・横山皆美(中川翔子)からも夫婦仲を羨ましがられる麗華。しかし、最近の有島に違和感を覚えていた麗華は意味深な言葉を呟く。
 
麗華を送り出した有島と温泉旅行に行くことになった美都は、親友の香子(大政絢)に有島との関係を話してアリバイ作りに協力してほしいと頼み込むが…。
 
<出典>あなたのことはそれほど公式

第2話のネタバレはここをクリック
前回、運命の出会いを夢見る26歳の三好美都は、職場の眼科で出会った渡辺涼太と1年の交際をへて結婚しました。絵に描いたような幸せで安定した日々を過ごす美都でしたが、結婚生活10ヶ月でその生活は一変してしまいます。偶然にも初恋の相手である有島光輝と再会してしまった美都は彼と関係を持ってしまったのです。
 
 
恋に盲目な26歳
美都はラブホテルで有島とベッドを共にしました。彼との再会を運命、または宿命の恋であると喜ぶ美都ですが、現実は有島にも彼女にも結婚相手がいるためずっと一緒にはいられません。
 
着替えを済ませ、ラブホテルで二人は帰宅の準備をしていました。
美都の携帯には「まだかかりそう?」という涼太からのメッセージが入ります。
 
「時間大丈夫?」
「あ、うん」
 
腕時計を見て、有島は帰ろうとします。
 
「ねえ、また会いたいな」
「うん、じゃあ、また連絡する。三好の番号教えて」
 
 
有島と別れたあと、美都は親友の香子に電話で報告しました。
 
「もしもし、香子! ねえ、会っちゃったの。私、有島くんに会ったの!」
「有島? え、あんたがずっとしつこく好きだった、あの有島?」
「もう本当にばったり偶然。たまたま飲み会抜け出したら、いたの! はあ、運命ってさ、あるんだねえ」
「ねえ、あんた酔ってる?」
 
美都は突然ふってきた恋に酔っていました。
ニヤけ顔が止まらない美都に香子は少し不安げに聞きます。
 
「今帰るとこ?」
「そうさっきまでずっと一緒にいてね」
「ねえ、あんたまさかヤッちゃってないよね?」
 
香子の言葉で美都の表情が少し固まりました。
 
「やだもう香子。何言ってんの? 楽しく飲んだだけだよ」
「そっか。有島は変わってた? ハゲておっさんになってたりして」
「変わってない。変わってないよ。いや、ちょっと変わってたかな。お互い、大人になってた」
 
 
自宅のアパートにつくと、家にはまだ電気がついていて夫の涼太はまだ起きていました。
 
「ただいまあ」
「おかえり」
 
寝室から出てきた彼に美都は少し驚きます。
 
「あ、なんだ涼ちゃん。寝ててって言ったのに」
「楽しかった? 飲み会」
「うん、楽しかった」
「そう、よかった。おやすみ」
 
美都のネックレスを見つめて、涼太は寝室に戻っていくのでした。
 
その夜、彼女が寝静まってから涼太は彼女の携帯を確認しています。彼女のアドレス帳には、昨夜はなかった有島光軌の名が登録されていて、涼太は驚愕しました。
 
 
翌日、いつものように朝食をとる二人。
美都は腕時計を見て慌てました。
 
「あ、まずい。もうこんな時間だ。行かなきゃ。ごちそうさまでした」
 
急いで家を出ようとする彼女の手を涼太はつかみました。
 
「ん?」
「指輪、今度に直しに行こうか。ゆるくなっちゃってたから」
 
美都の手には結婚指輪がついていませんでした。
 
「ああ、うん。そうだね。じゃ、いってきます」
「いってらっしゃい」
 
 
仕事の最中でも美都が恋していることは隠せなかったようで、勤め先の眼科の花山医師にも気づかれてしまいます。午前の診察が終わり、美都はいつものように診察室にカルテを持ってきました。
 
「目がキラッキラしてる。なんか良いことあった?」
 
美都の目を見て、花山はそうたずねました。
 
「え、うーん。まあ」
「三好ちゃんってほんと素直だね。言われたことない?」
「ああ、占い師とか」
「占い師じゃなくてもわかるよ。良いことはあった。でも人に話せることじゃないってことでしょ」
 
美都の目は泳ぎました。
 
「図星だ」
「そんなことないです」
「目は口ほどに物を言うってね。眼科医も賛成。だから、せめて携帯の履歴は豆に削除。嘘には事実を少し混ぜるとバレにくい。これが基本」
「先生、何言ってるんですか」
 
そのとき、美都の携帯にはメッセージが入ります。含み笑いをする花山。診察室を出てて、携帯を確認するとメッセージは夫の涼太からものでした。彼に返信はせず、美都は有島に「お疲れ様、昨日は楽しかった。会社遅刻しなかった?」とメッセージを送りました。
 
 
その頃、有島とその妻の麗華は二人でショッピングモールにいました。
麗華は出産が近く、二人は里帰り出産のための準備をしているのです。
ベビーショップで二人は子ども服を選んでいました。
 
「あ、ねえ、何かいい名前思いついた?」
「ネットで姓名判断すると皆いまいちなんだよな。そこは大事じゃん。運命決まっちゃうし」
「私は最初から運命決まってるとか思いたくないな。そんなの本人の努力次第だし。それより、似合ってる名前が一番いい」
「そう?」
「うん、地味で派手でもないのに派手な名前つけられたら辛いだけ。麗しく華があるってーー」
「麗華、俺は好きだけどな」
 
麗華は少し照れました。
 
「この子は、光輝に似てくれるといいな」
「麗華みたいにしっかりした子がいいじゃん。親孝行のいい子に育ってくれたら最高」
「それはどうかな。女の子は外も中も可愛いほうが得でしょ」
 
子ども服を買い終え、ショッピングモールを歩いている二人は声をかけられます。
 
「有島くん? やっぱ有島じゃん。久しぶり!」
 
現れたのは派手な格好の女性二人でした。
 
「あ、山下じゃん。あとーー」
「細川。忘れられてるし、ちょっとショックーー」
 
彼女たちは有島と麗華の高校の同級生でした。
 
「ああ、そうそう細川。ごめんね」
「有島、変わんないね」
「よく言われる」
 
二人は有島にそういうと隣りにいる麗華に話しかけます。
 
「あ、奥さんですか。すみません。私たち高校の同級生でーー」
「山下美穂さんだよね。三年のとき同じクラスの」
 
二人は麗華のことを忘れていたのです。
 
「戸川さん!」
「久しぶり」
「はあ!?」
 
山下は有島の妻が麗華であることに驚きました。
 
「嘘、信じらんないんだけど。有島、戸川さんと結婚してたの? てか、子ども?」
「結婚してたのは聞いてたけど、まさか戸川さんって」
「ねえ、チョー意外なんだけど」
 
麗華のことを有島は高校の同級生に教えていません。二人と別れたあと、麗華はそれについてそっとつぶやきました。
 
「私のことは内緒なのね」
 
そんなとき、有島の携帯に美都のメッセージが入ります。
携帯に気を取られた有島は彼女の言葉を聞き逃したのでした。
 
「ん?」
「なんでもない」
 
 
その夜、美都は有島からの返信を待っていますが、彼からの返信はなかなか来ません。その間に涼太のつくる夕飯は出来上がってしまいました。返信が来ないことに思い悩む美都は暗い表情で夕食につきました。
 
「美味しくない?」
 
食べても元気のない美都の表情で涼太は心配になりました。
 
「え? ああ、うん。このホワイトアスパラ美味しい」
「この時期しか食べられないからね。スーパーじゃなくて、商店街まで行って八百屋で買ったんだ」
 
そのとき、携帯に有島からのメッセージが入りました。それを見て笑顔になる美都。
 
「え、あ、何?」
「ううん」
「うーん、本当美味しい!」
「良かった」
 
夕食の後、美都は有島のメッセージを確認して一喜一憂します。そこへ涼太がきて、慌てた美都は近くにあったインテリアを落として割ってしまうのでした。
 
深夜、美都が寝静まったあと。涼太はまた彼女の携帯をチェックしましたがメッセージはどこにもありませんでした。
 
 
猪突猛進する妻と狂う夫
翌日、美都は有島に「木曜会えたりする?」というメッセージを送りました。その後、「木曜、カラオケできたりする。卓球できたりする。ご飯食べられたりする。どれがいい?」と返信が来たことで美都は喜びます。二人のメッセージは楽しげに繰り返されます。
 
「有島くんの好きなもの食べたりする」
 
有島のメッセージ一つでご機嫌な美都は、木曜日に向けてスキンケアもダイエットにも力が入ります。その様子を常に見ている涼太は、いくらチェックしてもメッセージがないことに険しい表情をしていました。
 
 
そして、木曜の前日の夜。
夕飯の洗い物をする美都は、明日の予定について涼太と話しています。
 
「鶏肉が賞味期限だ。明日、アンデスの塩でグリルにしようか」
「あ、明日は友だちと会うから帰り遅くなるかも」
「友だちって?」
「中学の時の同級生」
「へえ、じゃあ香子さんも一緒?」
「ああ、香子はね、なんか熱出して体調悪いみたい」
「本当? 一人で大丈夫なの?」
「じゃあ、横浜で会うの?」
 
美都は花山のアドバイスを思い出して、有島との思い出を嘘に少し混ぜて話します。
 
「あ、その子ね、途中で転校しちゃって今は東京に住んでるの」
「そうなんだ。転校してからもずっと仲良かったの?」
「最近、バッタリ会って、先月。化粧品の販売しててパックかわされちゃったんだ」
「へえ、すごいね」
 
嘘をついたことで自分の初恋の気持ちに影が指した気持ちになる美都。
 
 
翌日の晩、待ち合わせ場所で合流した有島と美都。二人でどこで食事をするか話します。ふと桜が目に入り、二人は川岸の桜並木の場所で屋台のたこ焼きを食べることにしました。
 
「うわあ、いいねえ」
「本当だ。綺麗だねえ。花を見て、心から綺麗だなって思うようになったのって大人になってからかも。中学校の頃はこんなに感動しなかったのに」
「あの頃は自分がピカピカ光ってたからじゃんーー今のポエムっぽい?」
「でも、桜がこんなに綺麗なら、大人になるのも悪くないね」
 
美都を見つめて、有島は「三好ってこんなに可愛かったっけ?」と微笑みました。
 
「ご飯食べよっか」
 
有島はたこ焼きを食べ、美都にも食べされてあげます。涼太が作る最高の夕飯よりも、美都は桜並木の下で食べるたこ焼きが一番美味しいのでした。
 
食事のあと、二人はバーでお酒を飲み、ラブホテルに行くとまたベッドを共にしました。ベッドで美都は自分の結婚を後悔します。
 
「あ、そうだ。今度一緒に温泉行きたいなあって」
「温泉かあ、うーん」
 
有島を温泉旅行に誘いつつ、自分が結婚していたことを再度思い出して落ち込む美都。
 
 
その頃、美都の母のスナックに涼太が訪れていました。仕事でたまたま近くを訪れたという彼に美都の母は驚きました。
 
「本当にみっちゃんは嘘が下手で。素直ないい子に育ててくれたお母さんに感謝ですよ」
「なあに、姑に惚気にきたの?」
「でも、どうせなら僕が知らないみっちゃんの話を聞きたいですね。子どもの頃はどんな子だったんですか?」
「子どもの頃?」
「香子さんともうひとり、中学で引っ越しちゃった子といまも仲が良かったみたいで。中学校楽しかったみたいですね」
「さあ、香子ちゃんは時々顔だしてくれたけど」
「そうなんですか」
「今と変わんないよ。あたしがこの店してんのが気に食わない」
 
占い師に泣かされたときの話を常連さんは彼に教えます。
 
「なんで泣いちゃったんですか?」
「占い師にね。二番目に好きな人と結婚したほうが上手くいくって。それがショックでね」
「二番目に好きな人? じゃあ、僕たち上手くいかないってことですか?」
「ああ、ほんとだ」
「もう、眠れなくなっちゃうじゃないですかあ」
「ただの占いよ、占い」
 
 
美都がアパートに帰宅すると涼太はまだ起きていました。美都のことを後ろから抱きしめた涼太は、彼女の肩に桜の花びらが乗っている事に気づいたのでした。
 
「ああ、もうね、満開だったよ」
「本当!? じゃあ、どっか今度お花見行こうよ。豪華なお弁当作ってさ。せっかくのお花見が露店のたこ焼きとか悲しくなってくるよね」
 
美都は彼が自分のことを嫌いになってくれればいいのにと思いを巡らしました。
 
 初恋の人はダブル不倫
有島家では妻の麗華が里帰りの最終準備をしていました。
とうとう彼女は今日、実家に帰るのです。朝食を食べる有島に自分がいない間について釘を差します。
 
「私がいない間に羽根を伸ばしちゃだめよ?」
「はあ?」
 
アパートの前まで麗華を送り出す有島は、彼女が一人で大丈夫なのかと心配しました。
 
「もうここでいいよ。会社に遅刻しちゃう」
「ああ」
 
有島は先にアパートへと帰っていきました。
そんな麗華に女性が声をかけます。
 
「あのう、おはようございます。今度、203号室に引っ越してきた横山といいます。よろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いします。201号室の有島です」
「同じ階ですね。いいですね、仲良くて。羨ましい」
「今度、しばらく里帰りなので」
「もうすぐですか。じゃあ、ご主人、私が見張っておきますね」
 
そこへ横山の夫が暴言を言いながら現れました。横山夫妻は少し仲が悪い様子です。二人は引っ越しの準備に戻っていくのでした。
 
「じゃあ、また。優しいご主人にもよろしくお伝えください」
 
有島は妻がいなくなった途端に、美都に「温泉いつでもいいよ」と連絡していました。
 
 
その頃、同僚であるデザイナーの小田原に大阪への出張に同行してくれないかと亮太は頼まれていました。その日の夜、亮太はそれを美都に伝えます。
 
「みっちゃん、土曜日、一泊で大阪出張になりそうなんだけど」
「あ、じゃあ、私もその日にしようかな。あのね、香子とね、温泉に行きたいねって言ってたの。いい?」
「良いけど、香子さん体調大丈夫?」
「ああ、全然元気元気」
 
そんな彼女の言葉に亮太は不信感を募らせるのでした。
後日、美都は香子と食事をしました。
 
「あれからまだ有島と会ってんの?」
「だってせっかく会えたし。こんなに人がいる東京で偶然バッタリ奇跡的に。ほら、やっぱり同級生ってさ、落ち着くんだよね」
「あんた、もしかしてーー」
 
彼女は感づきました。そして、美都を疑り深い目で見つめます。親友のそんな目に顔を両手でおおう美都は言葉を振り絞りました。
 
「あたしやっぱり早まっちゃったかもーー」
「美都、今ならまだーー」
「結婚ってさ。本当に運命の人としなきゃだめだね」
「そっち?」
「有島くんに悪くてさ」
「だから、なんでそっち? 涼太さんは? かわいそうじゃん」
「ああ、うん、そっちも。わかってる。わかってるけど、結婚するタイミングってさ、ほんと賭けだね。なんか世の中いろいろややこしいことが起こるのわかる気がするもん」
「バカじゃないなら、ややこしくなる前にやめなよ」
 
親友に言われても、美都はただ目をそらしただけでした。
 
「美都!」
「だって、ずっと好きでずっと会いたかったんだよ。それがたまたま結婚したあとに再会してさ。もし同じことになったら、バカでもいいってなるよ、香子だって」
「はあ? ねえ、結婚するってことは恋愛終了ってことでしょ。あんたはもう渡辺美都なの、バカ!」
「だけどーー」
「けどなに?」
「お願いがーー」
「何?」
 
美都のお願いを聞いた香子は彼女をおいてカフェを出ていきました。
 
 
とうとう、温泉旅行の当日。
美都はその日のために服を選んでいました。
 
「それが一番似合うよ。それに、この前つけてたネックレスが良いよ」
 
涼太は花柄のワンピースに四つ葉のクローバーのネックレスを選んだのでした。
 
「亮ちゃんよく覚えているね」
「忘れないよ」
 
なぜなら、その服装は彼女が有島と夜を共にした日の服だからです。涼太が忘れるわけはないのでした。
 
「そうだ。はい、これ。直してたやつ」
 
結婚指輪を取り出して、美都の指にはめてあげました。
 
「ありがとう」
 
そうして、涼太は家を出ます。
 
「じゃあ、気をつけてね」
「うん。温泉楽しんでね。香子さんにもよろしくね」
「はい」
「いってきます」
「いってらっしゃい」
 
美都は彼が家を出ると、そっと結婚指輪を外しました。突然ふってきた有島との再会という運命を彼女はどうしても逃したくないのです。
 
有島との温泉一泊デートで、美都は彼と温泉に入って風景を楽しみます。親友を失ってまで手に入れた光景を彼女は噛みしめました。温泉旅行の最中でも涼太からはメッセージが入っていました。美都も涼太に温泉旅行の何気ない写真と一緒にメッセージを送ります。
 
(本当になんで今こんな幸せが降ってきたんだろう。おかげで私、悪い人になっちゃったよ)
 
彼と客室で布団に入ると美都は幸せいっぱいでした。しかし、そのとき有島の携帯が鳴り響きました。それは赤ちゃんが生まれたという連絡でした。
 
「ごめん。俺、今から帰らなきゃ
「え」
「これから所沢に行かないと」
「ああ、実家? え、なんかあったの?」
「いや、今電話で、子どもが生まれた」
「は?!」
「奥さんが出産で里帰りしてて、所沢にいるんだ。行かないと。ほんとごめん。俺会計してくるから、三好は明日までーー」
「美都ーー」
「美都は明日までゆっくりしてって。それじゃ、な」
 
客室を出ようとする彼を慌てて止める美都。
 
「待って、大丈夫。私も結婚してるから」
「は?」
「夫がいるの。だから、有島くんに無茶なこと言わないから安心して」
 
美都は慌てて結婚指輪を取り出し、薬指にはめました。
 
「ほら」
「なんだ、よかった」
「え?」
「ほんと、変なやつ」
 
有島はほっとしたように笑いました。
二人の再会が運命ではなかったことに気づいた美都でしたが、それでも有島のことが大好きなのでした。
第2話の感想はここをクリック
初恋の思い出にすがり続ける美都は、壊れた列車のように走り続け有島との逢瀬を続けていきます。
 
幸せいっぱいで結婚した夫の亮太が一人家で待ち続けていることを考えると、見ていて心が苦しくなります。
 
美都のせいでどんどん自分の中の狂気があらわになっていく亮太は見ていて恐ろしく、またかわいそうでなりません。皆が幸せになれる結末を祈るばかりです。
 
有島の家庭状況を知ってしまった美都が今後どのような行動に出るのか。次回が楽しみです。
<見逃し動画>第1話 「春の恋、満開!優しすぎる夫×忘れられない運命の人」
 
TVerでの無料配信は終了しました
 
第1話の公式あらすじ

眼科クリニックで医療事務として働く美都(波瑠)は、患者として来ていた涼太(東出昌大)に交際を申し込まれる。
涼太は穏やかで優しい人。食事の趣味も合い、なにより美都を一番に考えてくれる。
これまで付き合ってきた明るく面白いいわゆるモテ系男子とは全く違うが、居心地のよさを感じる。
美都には実家でスナックを経営している母がいるが、涼太はその母のことも大切にしてくれる。仕事もまじめ。結婚相手≒生活をともにする人としては申し分ない。条件もいい。美都だって好きだ。
でも一番好きなのは…美都の脳裏に小・中学時代の頃好きだった有島光軌(鈴木伸之)が蘇る。自分に別れを告げることなく引っ越してしまった有島。今でも彼に似た人を見つけるとつい目で追ってしまっていた。
 
美都はあれから有島と似た男とばかり付き合ってきた。中学の時占い師に「二番目に好きな人と結婚するのがいい」と言われたことが今もずっと心に引っかかっていた。 
再び占いに行くと「二番目に好きな人と結婚したほうが幸せになれる」とまた言われてしまい…。
 
幸せになりたい美都は涼太との結婚を決意。多くの人たちから祝福を受ける美都と涼太。多くの女は皆どこか妥協して結婚するものだと、文字通り幸せな結婚をするが──。
 
ある日美都は、飲み会の帰り道に偶然運命の人だと信じていた有島に再会する…。
 
<出典>あなたのことはそれほど公式

第1話のネタバレはここをクリック
眼科に勤める三好美都は、運命の人との出会いを夢見る26歳。一番好きな人と結婚することが夢でずっと運命の人を追い求めていました。そのため、中学のときに転校してしまった初恋の相手である有島光軌のことがいつまでたっても忘れられずにいるのです。
 
 
運命の出会いと二番目に好きな人
美都と親友の飯田香子は、友人の結婚式が終わって二次会で婚活を頑張ろうと意気込んでいました。しかし、運命の出会いを探している美都はあまり乗り気ではありません。二人は結婚式会場であるホテルのトイレにいました。
 
「大丈夫、綺麗、綺麗。合コンも婚活もしないのがもったいないくらい綺麗」
「婚活で結婚、合コンで彼氏。全然羨ましくないの。私はーー」
「彼がほしいんじゃなくて、恋がしたいの! ドンマイ。ま、私もいないけどね」
 
二人は一緒にトイレを出ます。
 
「でもさ、本当にエリートだったね、アリサの旦那。こんなホテルで結婚式しちゃってさ。新郎側の友人も皆。私、今日初めて国家公務員と話したわ」
「あ、私も」
「元カレ、いい人だったのにね。結婚相手は生活力っていい切ってたからね。なんかもう清々しいわ。いっそ気持ちいい。私も金持ち探すぞお!」
 
大きな声で婚活の意気込みをいった香子をホテルのフロアで一人の男性が振り返りました。美都はそれを見て、少し恥ずかしくなります。
 
「ちょっと声が大きいよ、香子」
「二次会は全力で婚活だね」
「もっと自然に出会う運命というかーー」
「出た、運命。『六年二組、三好美都、将来の夢はお嫁さん』。卒業文集、あれ皆覚えてるよ。昭和かって」
「他に大それた夢がなかっただけです」
「でも、今はそれが一番大それた夢だったりしてーー」
 
 
先ほど香子を振り返った男性は、デザイナーの小田原 真吾。『内装のシンポジウム』で同じホテル内にいました。その彼の忘れ物を届けに来た同僚の渡辺涼太は、目をこすりつつシンポジウム会場の入口に立っているのでした。
 
その横を美都と香子は通り過ぎていきます。
 
「ねえ、一番好きな人と結婚できる人ってどれくらいいるのかな」
「え、普通は結婚って一番好きな人とするーーでもないか。皆どっかしら打算も入って、半分くらいはこの辺で手を打つかって感じで一番好きだった人のことをチラっとか思い出しながらウェディングドレス来てるのかも」
 
そんな会話をして二人が歩いていると、ホテル内の違う結婚会場前では結婚式の花嫁を若い男性がさらって行くところでした。その状況にときめいてしまう美都は、花嫁のドレスがひっかかって走れないのを助けてあげます。
 
「嘘! え!?」
 
そんな美都の行動に香子は驚きました。
逃げていく二人を輝く瞳で見届ける美都に香子は駆け寄ります。
 
「美都! 美都!」
 
取り残された新郎は、花嫁を追いかけようとして転んでいました。それを渡辺涼太が助け起こします。
 
美都と香子は慌ててそこから離れました。
 
「何してんの、恨まれるって」
「ああいうの憧れちゃってついーー」
「でも、新郎かわいそうじゃない」
 
二人が振り返ると新郎はトボトボと会場に戻っていくところでした。そこには先ほどの渡辺涼太もいました。
 
 
その頃、外ではホテルで食事をしようと考えている有島光軌と麗華の二人がいました。
 
「え、焼き肉?!」
「だめ?」
「最初からそういってたのに、私の誕生日はホテルで奮発って光軌がーー」
 
すると、ウェディングドレスの花嫁と若い男性とが走ってくるのです。驚く光軌と麗華。
 
「え!? 何? 駆け落ち?」
「どうぞ」
 
麗華は走ってきた花嫁にペットボトルの水を渡してあげるのでした。
花嫁たちから離れた麗華は食事を焼き肉に決めました。
 
「じゃあ、焼き肉にしようか」
「やった! な、すごいな、あいつ。花嫁さらっちゃったんだ」
「ダメ男だよ」
「なんで?」
「彼どうして今日まで決断できなかったんだろう? 彼女も彼女の相手も、自分もこれから大変だよ。かわいそうに」
「幸せになれるといいな」
 
うって変わって、結婚式の二次会でエリートたちと会食する美都と香子。しかし、美都はあまりやる気がありません。男性がただエリートなだけであることに彼女は不満でした。
 
中学の頃から長年、恋に明け暮れ、恋に恋を思い描き、恋について研究し続けてきたことが美都の運命の人に対する想いを強くしてきました。
 
(男子とは恋の研究量が違う。女子は恋のアスリート。だから、こんなお手軽にたまたま適齢期に出会っただけの人に決めちゃったら、あの頃、一生懸命に恋してた自分がかわいそうーー)
 
そう思う美都は二次会の二次会には参加せずに帰るのでした。
帰り道、美都が思い出すのは中学の時に母親のスナックでした手相占いの結果です。彼女は占い師に『二番目に好きな人と結婚すると幸せになれる』と言われたのでした。
 
 
翌日、いつものように美都は勤務先である武蔵野眼科の受付で働いていました。
 
「昨日の結婚式で何か収穫あった?」
「全然。それよりね、森ちゃんすごいことがあったの。花嫁を奪いに男の人が走ってきてーー」
 
お昼の時間になり、医師の花山は受付の二人にお弁当を買ってくるように頼みます。
 
「午前これで終り? で、お昼さ、裏の和食屋さんでお弁当買ってきてくれる? 君らの分も買ってきていいから」
「じゃあ、私行ってきます」
「特選幕の内、三好ちゃんちょっとずついろんな味食べれるの好きでしょ。僕もーー」
「ありがとうございます」
 
そのとき、美都は待合室にまだ患者がいることに気づいたのでした。慌てて診察室に促します。その男性は、昨日の結婚式会場にいた渡辺涼太でした。
 
亮太は診察を終え、病院を去っていきました。
 
「完璧。私男の人の手が気になるんだよね。今の患者さん手がすっごい綺麗じゃなかった?」
「え、そうだった?」
「しかも、すべすべ。でも、宝の持ち腐れだね。なんかぼーっとした普通の。ムダっていうかーー」
 
美都は診察室にある彼の上着に気づいて、追いかけました。
 
「あの! 忘れ物!」
「あ、わざわざすいません」
「よかった」
 
そのとき、亮太に自転車がぶつかり、彼は激しく転びました。
 
「ちょっと、待ってください。ぶつかりましたよ!」
「ああ、大丈夫ですからーー」
「なんなの、あれ。病人にぶつかっておいて、謝りもしない」
「きっとなんか嫌なことでもあったんですよ」
「卵買うたびに半分割れてる呪いにかかれ!」
「優しいですね」
「呪ってますけど、でもきっとお天道様は見てます」
「お天道様って子どもの頃以来です。聞いたの」
「私も久しぶりに言いました。でも、だめですよ、言いたいことはいわないと」
「なんか嬉しいです。僕よりも怒ってくれて。ありがとうございました」
「お大事にーーほんと、ムダ」
 
 
その夜、亮太は会社の人たちと居酒屋で飲んでいました。しかし、目にものもらいが出来た彼はお酒ではなく烏龍茶でご飯を食べていました。小田原も一緒です。
 
「渡辺さん、それものもらいですか?」
「ああ、うん、ごめんね。結局、半休になっちゃってーー」
「それで烏龍茶なんだ」
 
「酒飲むと結構腫れるんだよな」と小田原。
すると突然に亮太は彼のビールを取り上げ一気飲みし、ものもらいのある目をこすり始めるのでした。
 
「ちょちょちょ、だめだって。何やって、痛い痛い痛い。亮太! 何やってんの」
 
 
翌日も武蔵野眼科には亮太がいました。恥ずかしさからためらいつつも、診察と受付を終えた彼は美都を飲みに誘うのでした。
 
「よかったら今度、飲みにでも行きませんか?」
「アルコールは、しばらく控えて頂いたほうがーー」
 
 
後日、美都と亮太はカフェで食事をともにしていました。
二人は無言でテーブルに座り、お茶を飲んでいます。
 
(自分から誘っておいて無言ってーーアグレッシブなのか、大人しいのか。それとも、話題は私が提供せよと?)
 
美都は彼を品定めするように見て思案していました。
目があった亮太ははにかんだ笑顔でお辞儀するのでした。
 
(服の趣味は、今ひとつーーでも、不思議と似合ってる。ま、趣味はあとから変えられるっと。顔はーー)
 
:あ、両目! 初めてみました!
 
彼の顔を見て、美都は派手に驚きました。ずっと彼はものもらいの治療で眼帯をしていたので顔をはっきり見るのは初めてだったのです。それに驚いた亮太は深く息を吸い込みます。
 
「はあーー息止めてました」
「してください。息は!」
「あ、お仕事はどういった?」
「インテリア関係の会社です。というと、オシャレだと思われがちですが、僕は総務なんで全然まったくーー」
「へえ、そうなんですか」
 
口を真一文字に閉じている彼を見て、美都は呼吸を心配します。
 
「息してます?」
「死なない程度には」
「もっと健康的にしてください」
「はい」
 
(全然ときめかない。でも、嫌いじゃない)
やっと亮太は自分から美都に話しかけます。
 
「趣味は何か?」
「んー特には。渡辺さんは?」
「料理ですかね。あ、よかったら、僕、夕飯作りましょうか? ちょうど昨日、お土産に良いチーズを頂いたんですよ。イタリアンでよければ」
「じゃあ、せっかくなんで」
「よかった! 帰り、ちょっとスーパーよっていいですか?」
 
亮太の行動に積極性を感じた美都ですが、彼の家で美味しいカルボナーラをごちそうになっただけでそれ以外は何もなかったのでした。
 
帰宅後、亮太との時間が楽しかったことを美都は香子に電話で報告しました。
 
「そう、和風のカルボナーラっていうの? ちょっと出汁がきいててーー」
「で、どうだったの?」
「だから、すごく美味しかったの!」
「料理じゃねえよ。で、どうだったって話」
「いや、そっちはなんにも」
「なんにも?」
「でも、すごく楽しかった。話して、ご飯も美味しくて。あ、おかしいんだよ。帰り道、駅まで送ってくれて『本当にありがとうございました』って言うんだよ。あたしのほうがごちそうになってありがとうなのにーー」
「へえ、会ってみたい、その人」
 
後日、香子の『会ってみたい』というお願いから亮太と三人で食事をしようとなるのでした。
 
「もうついてるって連絡が入ってたんだけどーー仕事帰りだから、たぶんスーツで黒縁メガネ」
「黒縁メガネ、黒縁メガネ」
 
夜のオフィス街で待ち合わせしている美都たちと亮太。
香子と二人で亮太を探していましたが、美都のそばにすっと亮太が現れたのでした。
 
「こんばんわ!」
「わっ! ああ、渡辺さん! 遅くなってすみません」
「こんにちは」
 
香子は亮太にお辞儀しました。
他の女性がいることに戸惑う亮太。
 
「あ、小学校から親友の香子ちゃんです」
「はじめまして、飯田香子です」
「あ、え、あ、いや、どうも。はじめまして、渡辺といいます」
「急にすみません。今日、一緒でもいいですか?」
「ああ、もちろん! じゃあ、どこに行きましょうか」
 
三人は亮太の提案で静かな雰囲気のイタリアンのお店で食事をすることに。
 
「「美味しい!」」
 
と喜ぶ二人の顔を見て、亮太は笑顔になります。
 
「よかったあ。ここ、ボリュームあるから三人で丁度いいかなと思って。あ、ここチキンも美味しいんですけど、頼んでもいいですか?」
「はい!」
「香子さん、飲み物なにか?」
 
グラスが空いていることを気遣って亮太は声をかけます。
 
「じゃあ、同じのをーー」
 
亮太の気遣いや振る舞いに喜ぶ香子は、美都に笑顔を向けました。
楽しい食事はあっという間に終了して帰り道。
 
「じゃあ、このへんで」
「あ、あの、ごちそうさまでした」
「本当にごちそうさまでした」
「おやすみなさい」
 
そう行って亮太と別れる二人。美都が振り返ると亮太も振り返って手をふるのでした。
 
「良い人なんじゃん」
「うん、良い人」
「美都がああいう人に落ち着いたら、なんか安心する。好きなんでしょ?」
「うん」
「一番?」
「今は」
「ならいいじゃん。今までの美都のタイプとは全然違うけどね。頭の回転が早くて、モテる人気者でーー」
「有島くんみたいな?」
「言わないようにしてたのに!」
「まあ、こっちの路線もありかなあって」
「ま、有島と似た人と付き合ってるかぎり、けっきょく有島が優勝だからね、有島トーナメント。って、あんたいつの話してんの? 中学のときからずっと会ってないんでしょ?」
「ねえ、あの頃はおんなじ制服着た、似たような男子の中からどうして自分の好きな人だけ光って見えたんだろうね」
「10代限定の特殊能力だったんじゃない」
 
そんな二人の隣で麗華は有島に手を振っています。そして、美都たちの隣を有島は通り過ぎるのでした。
 
「もう見えないのかなあ」
 
 
絵に描いた幸せ
香子と別れた後、美都は家の近くの公園でブランコに座って自分の中学の頃を思い出していました。
 
中学の頃、美都はシングルマザーの母と二人で暮らしていました。美都の母は、スナックを経営していて、日中からお店のお客さんと出かけたりしていました。そんな母に「お金があればいいの? シングルマザーも大変だよね」と美都は言います。「子どもがわかったような口をきくんじゃない。大学行きたいでしょ」と母は言うのでした。
 
そんな家に嫌気がさした美都は、学校後に公園で時間をつぶすことが多くなり、夜に公園に一人でいるところを有島に見つかってしまったのです。
 
「なにしてんの?」
「有島くん」
「なにしてんの?」
「えっとーー探しもの」
「探しもの? 何?」
「ええ、四つ葉のクローバー探してて、疲れちゃって」
「はあ? 今?」
 
すると有島は四つ葉のクローバーを探してくれるのでした。
 
「有島くん、もういいよ。ないから」
 
そう声をかけても一生懸命に探す有島を美都は止めました。
 
「有島くん、もう本当に大丈夫だから。ありがとう」
「お前んち、どっちだっけ?」
 
互いを見つめると、美都は家の方角を指差しました。
黙って歩き出す有島に「大丈夫、一人で帰れるから」と美都は伝えますが、有島は「いいよ」と一緒に帰るのでした。
 
美都の家は夜の繁華街にあるスナックです。スナックから出てきた母に見つかって叱られる美都をかばって「一緒に勉強してて、僕が引き止めたんです。すみません」と有島が謝りました。
 
美都の部屋にあがった有島でしたが、彼女に触れようとして拒まれてしまいます。そのまま気まずくなり、学校でも会話ができないので、美都は四つ葉のクローバーを手紙と一緒に彼の机に入れておきました。しかし、何の変化もないまま、有島は夏に転校してしまったのでした。
 
 
そんな思い出を抱えたまま、4ヶ月後。美都は亮太と変わらずに仲睦まじく過ごしていました。青空の下、公園でのピクニックで亮太の手作り弁当を美味しく食べる美都。それを笑顔で見ている亮太がいました。
 
「んん! 美味しい、亮ちゃん本当に天才」
 
芝生の緑の中をきょろきょろと見回す美都に彼は聞きます。
 
「ねえ、さっきから何見てんの?」
「ああ、四つ葉のクローバーあるかなあってつい」
「みっちゃんは欲深いね」
「だって、探して見つかるんならほしいもん、幸せ」
 
その言葉を聞いて、亮太は思いつめたように思案すると姿勢を正しました。
 
「みっちゃん、みっちゃん」
 
苦しそうに言葉を口にする彼を心配する美都は笑っています。
 
「息してる?」
「もうそれは勘弁してよ」
「あれから3、4ヶ月たったか」
「みっちゃんーーあの、あのさ」
「うんーー」
「一緒に幸せ探そ。結婚してください」
 
声を振り絞って亮太は伝えたのでした。
 
その夜、二人はベッドを共にしました。しかし、眠る亮太に抱かれながら美都は思います。
 
(全然、ときめかない。プロポーズされたのに。この感覚、なんだろう。そうだ、犬! 香子んちで飼われてた柴犬に抱かれてるみたい。運命、奇跡、必然、宿命。どれか少しでもーー)
 
インターネットで初恋相手の名前を検索してしまうほど、美都は恋を追い求めていました。
 
 
それから7ヶ月後、美都と亮太の二人はとうとう結婚式をあげます。
控室で美都は母と一緒でした。
 
「そうきたか。あんたがああいう人を選ぶとはね」
「どういう意味?」
「そりゃお前が一番わかってんじゃない」
「私はお母さんみたいにならないから安心して。ちゃんと結婚して、子ども産んで、ちゃんとした家庭を作るから」
「そんな難しいことができる娘に育ってくれて嬉しいわ。大学は行かせてあげられなかったけどね」
「別に行きたくなかったし」
「それなら覚えておきな。子育てでいちばん大事なことはねーー」
「お母さんに言われたくない」
「お客さんに言われたの」
「一番大事なことは?」
「結婚相手を選ぶ目を持たせてあげることだーーせいぜい幸せになんな」
 
父親役になったのは眼科医の花山でした。
 
「綺麗だね。僕を選んでくれたのは光栄だよ」
 
花山とともにヴァージンロードを歩く美都。
それを新郎である亮太が迎えます。
二人は絵に書いたような幸せな結婚式を終えたのでした。
 
最後に皆で写真をとる時、香子は「夢叶ったじゃん」と涙ながらにお祝いを伝えます。
そこへ小田原が声をかけました。
 
「おめでとうございます。キレイな奥さんで」
「どうも」
「あ、会社の同期の小田原。うちで一番売れっ子のインテリアデザイナー」
 
亮太は小田原を紹介しました。
 
「小田原さん」
「渡辺のことは一番私がわかってますんで。困ったことがあったら聞いてください。男同士の秘密もありますけど」
 
そんな小田原にツッコむ亮太。
 
「なんだよそれ」
「よろしくお願いします」
 
美都は軽くお辞儀するのでした。
 
それから、写真を撮り終わって亮太はつぶやきました。
 
「ちゃんと生きてきてよかった」
「え?」
「小さい頃、母さんに言われたんだ。『お天道様は見てるよ』って。だから、きっとみっちゃんと結婚できたんだ。幸せだな」
「うん、幸せ」
 
 
大人になった二人の出会い
10ヶ月後。二人は広いキッチンとキレイなリビングの新居で幸せに暮らしていました。もちろん、家事は亮太が完璧にこなしていました。美味しいディナーを食べて喜ぶ美都。
 
「美味しい! 久々の炭水化物!」
 
喜びとともに腕を伸ばした美都の手から結婚指輪が飛びました。
 
「みっちゃんまた痩せた?」
「わかる? 指輪直してもらおうかな」
「直さなくていいよ。ダイエットもやめな。太っても僕はみっちゃんのこと好きだから」
「そういうわけにいかないの」
 
亮太はそういう美都を見て微笑むのでした。
夜、亮太は先にベッドで眠る彼女の隣に入ろうとしました。すると、美都は寝言をつぶやいたのです。
 
「有島くんーー」
 
亮太は目を見開きました。枕もとにある彼女の携帯をそっとチェックします。彼女の携帯内のアドレス帳に有島の名前はありません。携帯を戻し、乱雑にベッドについたことで美都は目を覚まします。
 
「なんだ、亮ちゃん。びっくりした。ごめん、先寝てた」
「いい夢見てた?」
「覚えてない」
「そっか、おやすみなさい」
 
 
翌日、朝の身支度をする美都はネックレスを選ぶので必死です。亮太も一緒に身支度していました。
 
「ねえ、みっちゃん」
「んー?」
「僕と結婚して良かった?」
「んー」
「その服いいね」
「昨日食べ過ぎちゃってお腹ちょっとキツいけど。ご飯が美味しくて」
「結婚してよかったでしょ?」
「ねえ亮ちゃん、これどっちがいいと思う?」
 
亮太の問いに上の空の美都は、ネックレスを亮太に選んでもらいます。
 
「こっちかな」
「だよね」
「今日は夕飯ーー」
「あ、今日は前の職場の子たちと飲み会だよ」
「前の職場の人、結婚式来てた?」
「あれ、言ってなかったっけ?」
「皆まだ独身だから帰り遅くなるかも」
「そっか」
「ちょっと面倒なんだけど久々だから」
「みっちゃんが一番早かったんだ、結婚。幸せだね」
「あ、もうこんな時間だ。ごめん」
「ねえ、みっちゃん! 幸せ?」
 
大きな声で亮太は彼女を呼びます。
しかし、美都は彼の変化にまったく気づきません。
 
「どうしたの? うん、じゃあ、行ってきます」
「いってらしゃい」
「はーい」
 
美都が家を出ると彼はそっとつぶやいたのでした
 
「独身の有島ーー」
 
 
武蔵野眼科での美都。午前の診察が終わり、彼女は午後の患者のカルテを花山に届けに来ました。
 
「先生、午後の患者さんのカルテです」
「ありがとう」
 
美都の携帯がずっとバイブレーションがなり続けていました。
 
「休み時間だから出たら?」
 
花山医師はそう告げます。
 
「たぶん夫なんで。なんか今日やたらメッセージが入ってて」
「疑われるようなことしたんだ」
「してません。ただこんないいことがあったよって報告です。幸せコレクターなんです、彼。ポジティブで」
「それはしんどい。どう新婚生活は?」
「結婚10ヶ月なんで新婚って感じでもーー仲良くはやってますけど」
「そんなあ」
「お昼、どうしますか?」
「どっかで買ってきてくれる? 何でもいいよ、三好ちゃんが好きなので」
「じゃあ、特選幕の内でもいいですか?」
「色んな味をちょっとずつはもうだめ。これが一番美味しいって信じて決めるのが結婚だからね」
「何の話ですか?」
「お弁当の話」
 
そういって花山はお金を渡すのでした。
美都は携帯を確認します。メッセージには彼からのさまざまな風景の写真とコメントがありました。それに美都は一言「うん」と返事するだけ。
 
その夜、美都は前の職場のメンバーで飲み会をしていました。しかし、疲れた美都は途中で抜け出してしまいます。帰り道、ファーストフード店のフライドポテトを食べたくなった美都は一人で入店したのでした。なんと、そこで初恋の有島光輝と再会してしまったのです。
 
昔の話に盛り上がる二人。
 
「え、三好って今何してんの? 一人? この辺? どこいるの?」
「どれから答えればいい?」
「ごめん、懐かしくて焦った」
「えっと、今は医療事務やってて、今日は飲み会だったんだけど、つまんなくて抜けてきて、コーヒーが飲みたくて入ったんだけど、ポテトも買っちゃったとこ。あと、ここは初めて。あと、なんだっけ? あ、いいよ、ここ一緒に座っても」
「ふーん」
「有島くんは今?」
 
彼の冗談に笑う美都。
有島は普通のサラリーマンをしていると伝えます。
 
「三好とまた会えるとは思わなかったな」
「私だってーー」
「飲みにでもいく?」
「うん、飲みたい」
 
そうして二人はバーに来ました。
彼の手を確認して、結婚指輪の有無を確認する美都。しかし、彼の手には指輪はありませんでした。
 
「就職は東京?」
「うん、医療事務の資格とって就職はこっち」
「努力したんだ」
「ううん、ただ手に職つけようと思って。うちの親みたいにならないように」
「お母さん綺麗だったよねえ」
「そう?」
「有島くんはあれからーーあの夏からずっと東京?」
「ううん、親の仕事の都合で所沢に引っ越して、就職はこっち」
 
バーテンがチョコの盛り合わせを出してくれました。
 
「いいお店だね」
「特に、バーテンがイケメン!」
 
二人は互いを懐かしみつつ、お酒を飲みます。
 
「三好、痩せたな。きれいになった」
「有島くんはーー」
「変わった?」
 
(変わらない。私には、私だけには今も光って見える)
 
「あ、背がめちゃくちゃ高くなった。あと、口がうまい。営業って感じ」
「なんだそれ。嘘じゃないよ。腕ほっそいのな。ダイエットしてんの?」
「ううん、歳とって肉落ちただけ。老化?」
「まだ早いだろ」
 
有島はお酒を一口飲むと美都を見つめます。
 
「そろそろ出よっか」
 
帰り道、二人はまだ過去について話します。
 
「あの頃とはやっぱり感じ違うなって。こんなふうに気軽に話せなかったから」
「引っ越して人当たりよくなったのかもなーー中学校で転校とか割とキツいじゃん。授業とかも色々違って大変でさ。受験もギリだったしなあ」
「私なんて受験も就活も全部神頼み。うちの近くに神社あったじゃん。あそこになんでもかんでもお願いして」
「ああ、神社。懐かしいな。四つ葉のクローバーをお守りにしてさ。運頼み」
「え!?」
「え!?」
「それってもしかしてーー」
「ああ、うん、そう。あれって三好がくれたんだよな」
「もしかして、忘れてた?」
「ん? いやあ、えっと本当にあれお守りにしてたんだ、あの頃。あれって探すと意外と見つからないし、大変だったろう。ありがとう」
「ねえ、どうしてあの時、何にも言わないで転校しちゃったの?」
「それは、あのときフラレてガキだったから恥ずかしくてーー」
「フラレたのはあたしのほう。私、有島くんのことずっとーーううん、もう今はあの頃みたいな恋はできないなあ」
「大人になったからなあ、俺たち」
 
有島は夜のホテルの前に立ち止まると、美都の手を引いて中に入ったのでした。なんの躊躇もなく進んでいく彼に美都はただついていきます。
 
(私今きっとものすごく悪いことしてる。でも、今どうしようもなく幸せ)
 
有島には妊娠した妻がおり、そして、美都には帰りを待っている夫がいるのです。しかし、美都は初恋の有島から離れることはできなかったのでした。
第1話の感想はここをクリック
夢見る大人の女性が結婚してからも夢から覚めることなく猪突猛進してしまった話でした。せっかくの安定した幸せを美都は今後どうするのか。
 
初恋の相手を選んで、他の皆を不幸せにしてまで突き進んでいくのか、今後の展開次第では波乱が巻き起こりそうです。
 
とても衝撃的な一話でした。

あなたのことはそれほどの内容

公式サイト

運命だと信じていた男との再会に
心を揺さぶられる女。
不倫されたと知っても妻を愛し、責めない男。
浮気をしている夫を手のひらで転がす妻。
軽い遊びのつもりが抜けられなくなる男。
それぞれがそれぞれのやり方で
大切なものを守ろうとする姿に、
人間の狡さや弱さが描かれる
大人のいびつなラブストーリー。
 
<出典>TBS公式

<出演者>

渡辺美都(武蔵野眼科で医療事務として勤務):波瑠
渡辺涼太(美都の夫):東出昌大
有島麗華(有島の妻):仲里依紗
有島光軌(美都の中学生時代の同級生):鈴木伸之(劇団EXILE)
飯田香子(美都の中学生時代からの親友):大政絢(中学生時代:喜多乃愛)
横山皆美(有島と麗華が暮らすマンションに引っ越してきた主婦):中川翔子
森留美(美都と眼科クリニックの同僚):黒川智花
榎本祐機(有島が行きつけのバーで働くバーテンダー):成田偉心
中野晴夫(悦子のスナックの常連客):春海四方
小田原 真吾(涼太の働くインテリア会社の同期):山崎育三郎
千葉翔太(有島の部下):平間壮一
有島佳菜(有島の妹):大友花恋
有島陽子(有島の母):唐木ちえみ
横山良明(皆美の夫):山岸門人
美苗(有島の大学の同級生):立石晴香
佐藤美由紀(陶芸教室の生徒):山田真歩
和田悟(陶芸教室の講師):長野克弘
戸川多恵(麗華の母):清水ミチコ
花山司(美都の働くクリニックの眼科医。バツ3で独身):橋本じゅん
三好悦子(美都の母。シングルマザー):麻生祐未

<各話の視聴率>

Story1 春の恋、満開!優しすぎる夫×忘れられない運命の人 11.1%
Story2 暴走する春の恋!背徳の温泉旅行 9.0%
Story3 ヤバい夫の哀しみ全てがバレる夜 9.5%
Story4 最愛の妻への最凶のプレゼント 9.9%
Story5 夫VS愛人!地獄の公園デビュー 9.8%
Story6 変身夫と家出妻!決別の赤ワイン 11.5%
Story7 遂に覚醒!誰よりも恐いうちの妻 12.4%
Story8 私、妊娠しました…炎上するW不倫 13.5%
Story9 ずっと好きだった…切なすぎる結末 10.1%
Story10 生まれ直しても今の相手を選びますか夫婦2組の決断 14.8%

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20代女性

美都がどんどん有島くんにしか興味がなくなって、旦那さんの涼太には気持ち悪いと思ってしまうほどの関係になるのが、怖いほどリアルに描かれていてみていてスリルがありました。美都は本気なのに有島くんは、遊びと思っているし、その関係にゴールなんてないと思ったら、やっぱり不倫は怖いし不倫に未来はないと改めて思うドラマでした。美都の浮気を知った夫の涼太が、荒れるシーンが本当に衝撃的でした。ワインを部屋中に撒いたり、家具を壊したり、涼太は大人しくて静かでいつも美都には優しく接していたのに、どんどん狂い始める涼太の演技にはすごく驚きました。そして、有島くんにも近づいて嫌がらせをしようとする涼太には恐怖も感じました。人は些細なことがきっかけで、どんどん変わってしまうんだなと思いました。また、有島くんの奥さん麗華は、涼太のように荒れたりはしなかったけど、言葉や態度で浮気をほのめかすようなことを言って、有島くんに勘付いていることを気づかせようとしていて、あからさまに態度には出していなかったけど、それはそれで怖いと思いました。美都はわざわざ有島くんの家に押しかけたり、もう有島くんしかみえていないような様子で、不倫の恐ろしさを感じました。

30代男性

波留さんと東出昌大さんが演じるどろどろ浮気ストーリーが非常に面白く癖になるドラマでした。波留さんのイメージとしてさばさばしたような役柄が多い印象でしたが、今回のドラマではダメな女役であり、昔から憧れていた男性に浮気してしまうという実際にあったら叩かれまくるようなキャラクターで今まで演じてきた役柄とはまた違った姿を見ることができました。また、このドラマの一番の見どころとしてはなんといっても東出昌大さんのヒステリックなキャラクターです。浮気されてしまうという被害者側なのですが、波留さんのほうに固執してしまっていて絶対に離婚はしないという強い決意がありました。鈴木伸之さんが波留さんの浮気相手の役柄なのですが、この鈴木伸之さんの演じているキャラクターもゲスくて爽快でした。鈴木伸之さん側にも仲里依紗さん演じるお嫁さんがいるのですが、お互いがW不倫しているという衝撃の展開に驚きました。しかも子供ができていて浮気をするというクズっぷり。リアルにも東出昌大さんがそんな感じになってしまいましたが、ドラマの中だけにしておいてほしかったです。最終回では、東出昌大さんが諦めるような展開になるのですがその展開の形も面白くてよかったです。

40代女性

波瑠さん主演のドラマ「あなたのことはそれほど」波留さんのイメージとは程遠い、ドロドロしたドラマでとても面白く大好きな作品でした。既婚している波留さん演じる美都は偶然、小学校の頃から好きだった同級生と再会することから始まる不倫ドラマ。不倫ドラマって、どこかネチネチした湿度のある関係を思い浮かべるのが通常だが、このドラマは美都の心が空っぽになっているところや彼女が醸し出す透明感などが影響してか、負の感情や暗さがなく、なぜか透明感のある不倫ドラマのように感じた。美都の不倫相手の同級生・有島光軌を演じる鈴木伸之さんもまた爽やかで、この二人の空虚なところが本当に不倫なのか?と疑いたくなるドラマだ。一方、美都の夫・涼太を演じる東出昌大さんが、昔のドラマ「ずっとあなたが好きだった」に出てくる佐野史郎さん演じる冬彦さんの、平成版といった感じの、かなり粘着質のある夫。料理の腕前もよく家事もこなし、仕事もそれなりにこなす、はたからみると一見イクメンな感じだが、なかなか上手くいかないのが現状なんだなと思わせられるドラマだ。美都の母・麻生祐未さんもさすが円熟で、ドラマのいいスパイス的な感じでいい味をだしている。

50代男性

結婚から離婚するまでの物語でしたが、あなたのことはそれほど好きではなかったと言いたいと思いました。二組の夫婦はそれぞれ離婚に直面して、この結婚は失敗だったと痛感しています。二番目に好きな人と結婚すると幸せになれると言い伝えがあり、その言葉通り公約を果たしました。誰がこの言葉をつくったのかは定かではありません。なぜなら好きな人が二人以上いるところで結婚には向いていないからです。好きな人はひとりで十分だと思います。離婚を美学にしてる人もいますが、自分は失敗したことに気付きていません。辞めてしまえば仕事でも結婚でも失敗だと思うからです。四者四択で、それぞれ考えは違うので合うことはありません。美都はなぜ有島を選ばなかったのか?後悔しても手遅れでした。美都の離婚届になかなか印を押さなかった涼太でしたが、気持ちは分かります。人間は同じ過ちを繰り返す生き物なので、再婚してもまた離婚することが明らかです。好きな者同士が結婚すれば、あらゆる困難を乗り越えられることができます。自分は幸せにはなれなかったと思っても、相手も同じくらい思っています。赤の他人が夫婦になるのですから、覚悟は持っていた方が身のためです。

40代男性

このドラマが放映されていた当時も、そして現在も芸能界や一般社会でも話題になっているのが不倫です。ごく平凡な結婚生活を送っていた主婦が中学時代の初恋の男性に偶然出会ってしまったことから不倫にハマってしまい、それに気づいた夫から異常な監視に怯えながらも不倫を続けるという作品でした。僕自身も結婚しているので、もし妻が不倫をしている事実もしくは疑惑があったらば、主人公の夫の様に裏切られた感が高まってしまい、恐らく同じような行動をしてしまうのかなとまるで自分を見ている様に感じていました。逆に、僕自身が妻と結婚する前に別の女性と2股を掛けていた事がありましたので主人公の様に1番好きな人ではなく、2番目に好きな人と結婚したので再び出会ってしまったら彼女との関係を持ってしまうのではと思いました。主人公の夫が言うセリフである「お天道様は、見てるよ」が頭から離れずに不倫ではないですが、少しだけ何か悪いことをしようと考えた際に躊躇する様になりました。この作品で、不倫をした妻と妻を寝取った相手に対して復讐をする役を演じていた東出昌大が、この作品の数年後に実生活で不倫をしてしまい叩かれている現状がまさに「お天道様は、見ているよ」であると思いました。

20代女性

東出さんが出演していて不倫のドラマだったのが今となっては少し不謹慎だったなと思いましたが、話的にはとてもおもしろくて先が気になって毎週楽しみにしていました。子持ちと不倫するのって近くに子供がいる友達がいるので親身になって考えてみたのですが、最悪だなと思いましたがあんなかっこいい旦那がいるならそういうところも見逃さなければいけないのかなとも思いました。東出さんと波瑠さんの夫婦は旦那さんが、ストーカーみたいで好きで気持ちが溢れているのはわかりますがやりすぎだったなと思いました。小さい頃からずっと結婚したら幸せになれると思っていたのですが、最近の不倫のドラマをみているとそういうことが思えないことが多くて悲しくなりました。初恋というか昔から憧れていた相手が大人になって、そのままのかっこいいと思っているままで現れたら旦那さんがいても気がいってしまうのは仕方ないことだし恋愛って単純だよなと思いました。昔からよく言われていますが不倫とかしていたら気づいたりするんだろうなと周りでも思うしこの作品でもとても思わされました。私が結婚していてもそういうことが起こるかもしれないなと思いながら真剣にみた作品でした。

20代女性

自分自身が浮気性なところがあるので、みつや有島くんに共感しながら観ていました。ただ、みつは少し詰めが甘すぎるなと感じました。まず、旦那にスマホの中身を見られたことがアウトだし、有島くんに会う日が分かりやすすぎるし、人目につく場所でイチャつくのはありえないです。ただ、好きな人に会いに行く日にとびきりのお洒落をしたい気持ちは共感できました。そして、有島くんについてですが、すごくクズなのにすごくかっこよくて優しくて、こんな男性が現実にいたら絶対にモテるだろうなと思いながら観ていました。1番印象的だったセリフは、「俺の趣味はみつ」と言っていたシーンです。こんなことを好きな人に言われたら絶対に落ちるだろうし、このセリフをサラッと言える有島くんは生粋の遊び人だなと感じました。そして、このドラマのラストですが、みつは離婚して1人寂しい生活を送ることになりますが、有島くんはれいかと和解し、元の生活に戻っています。これが本当に納得がいきませんでした。同じように不倫していたにも関わらず、一方は転落人生、一方は幸せな家庭生活に戻っていて、正直有島くんももっと制裁を受けて欲しかったなと思いました。ただ、この不条理さがとてもリアルで面白かったです。

30代女性

私の好きな東出昌大君が出演、しかも眼鏡を掛けている役柄で、めちゃくちゃかっこいい!ということで見始めたのですが、内容としては一話目から気分が悪かったです。というより、頭がクラクラするような恐怖を覚えました。昔とても好きだった人と再開して、想いが再燃してしまう。それはあることかもしれません。が、あまりにもナチュラルにというか、何の悪気もなく、不倫を始めてしまう2人が恐ろしかったです。「そりゃホテルに行くのも当たり前でしょ?」という感じ。罪悪感のない軽い不倫が恐ろしく、二話目を見るかどうか迷ったほどです。結局なんだかんだで続きが気になるので、最終話まで見ることとなりましたが。やはり軽い不倫ゆえに、こじれていくなという印象でした。覚悟がない不倫なので、色々と取り繕うとして、また大変なことになる。後になって、とんでもないことをしてしまったと後悔する。そもそも不倫に軽いも重いもないのかもしれませんが、一体何やってんだ…と呆れるばかりでした。皆それぞれ思いがちぐはぐで、上滑りばかりしている。でも実際の人間関係も端から見ると案外こんなものなのかもな…と思いました。相手の何が好きなのか、何が大切なのか、大切にしているのは本当は相手じゃなくて自分じゃないのか。そんなことを考えていました。演技としては、仲里依紗がとても良く、このドラマを見てからぐっと好きになりました。派手な女性も地味な女性も演じることのできる素敵な女優さんです。

30代女性

波瑠さんのお花畑具合がすごすぎて逆の意味で見入ってしまうようなそんなストーリーでした。東出さんの狂気じみた演技は冬彦さん(観たことないですが)を彷彿とさせると話題になりましたよね。あのときに東出さんは、クールな人物も、コンフィデンスマンに出てくるようないじられキャラ?も、狂気に満ち溢れた役もできるのだなと関心しました。波瑠さんはあまり似合ってないと思いました。かくして付き合っている(不倫状態)ならまだしも、ばれたのにそれを隠そうとしなくて開き直ってしまうところは不思議でしたし、不倫したから離婚してなんてそんな身勝手なことがあるわけなくて、そこで離婚しないよという選択でしたが、離婚するにしてもドロドロの展開が待っているんだろうなと思いました。離婚しないと言われたから開き直っちゃうなんてお花畑すぎてひえーとなりました(笑)。もうちょっと最後に波瑠さんが落ちぶれてほしかったなというのが本音です。離婚しないと言われたから開き直って不倫をして、それで慰謝料を請求されてそれに苦しむ。東出さんはそこまでは妻を愛しているのにとか熱演して慰謝料をふんだくって、最後にあなたのことはそれほどというのももっと乾いた感じで言ってくれたら、不倫したら天罰が下るというのがもっと伝わったのかなと思いました。

20代女性

恋愛の泥沼にのめり込んでいってしまう女性の姿が描かれていて、目を離したくなるけれどもなぜか見てしまう魅力のある作品だと思いました。マンガを読んだ後にドラマを見たのですが、出演していた女優俳優の皆さんは、とても上手に演技されているなあと感じました。自分の気持ちに正直になるのではなく、現状の幸せを守ったほうが絶対幸せ、流されてもいいことがないと分かっているけれども心がそちらに持っていかれてしまう、、気持ちはわかりますが、主人公の旦那など、周りの人々の立場になって考えるととても気分の悪くなるドロドロとしたドラマだなと感じます。同時に、そこがこのドラマの魅力なんだろうな、とも考えさせられました。これからドラマを見る方には、現実と重ね合わせるのではなくぜひドラマの中の世界と割り切って見ていただきたいと思います。傷つく人が出てきてしまいそうなので、、、ドラマ自体の感想としては、波瑠さんがひたすらお綺麗でした。かなり痩せられたのでしょうか、?波瑠さんのお相手となる男性も、何を考えているのかわからない、少しミステリアスな男性を上手に演じられていたと思います。
最後まで見てスカッとするかと言われると怪しいところですが、ドロドロしている人間模様を描いたこの作品はとても面白かったです。